笠原尚美の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(笠原尚美君) ありがとうございます。笠原尚美と申します。ただいま御紹介いただきましたように、新潟県阿賀野市農業委員会会長職務代理を務めております。
 本日は、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案と農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案に関する参考人質疑の場にお呼びいただき、誠にありがとうございます。このような場でお役に立てることは大変光栄なことでございますが、大変緊張もしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、市町村合併の平成十四年七月から二十年間農業委員を務めております。委員を拝命したのは、一番下の息子が一歳になるかならないかのときでした。家族の理解もあり、委員活動の際には子供の世話の必要はありませんでしたが、一度だけ家族の都合が付かず欠席の連絡をしたところ、合併前の旧京ケ瀬村村長から、預かり保育ができるように手配するので気にせずに職務に就いてください、あなたの仕事は公職なのですと言っていただいたことが私の農業委員としての原動力の一つとなっております。
 農業委員を拝命した当初は農地の権利移動は多くなかったのですが、七年ほど前から私が担当する地域でもあっせんの申出が年々増加し、現在は、人・農地プランの実質化も相まって、まさに農地を動かしていると日々実感しております。
 お手元にお配りしております資料は、全国農業新聞に隔月掲載されているもので、私の日々の農地あっせん活動を構成、作画されたものです。農地あっせんの際、どんなふうに農業者と向き合い、思いを受け止めて農地を動かしているかを知っていただきたく、今回の資料とさせていただきました。御覧いただければ幸いです。
 私自身が農地のあっせんで権利移動した面積は二百ヘクタールを超えたと思います。昨年度一年間だけでも、隣接市町村を越えて行ったあっせんも含めると十五ヘクタールほどとなっており、近年どれだけ農地が動いているかを御想像いただけるのではないかと思っております。
 こうした長年の農業委員会活動の中で行ってきた現場での活動や、各種の農業施策に取り組んできた現場経験を踏まえ、私の考えを申し上げたいと思います。
 まず、新潟県阿賀野市の農業について御説明いたします。
 阿賀野市は、越後平野の北東に位置し、新潟市内まで車で三十分程度の距離にあります。耕地面積は六千四百五十七ヘクタール、そのうち約六千百ヘクタールが水田となっております。農業はイコール稲作と誰もが思っているような水田地帯で、土地利用型の営農がほとんどを占めております。令和三年四月現在の数字ではありますが、これまでの担い手への集積面積は四千百七十三ヘクタール、集積率は六四・六三%です。
 続いて、当市の農業委員、農地利用最適化推進委員についてです。現在の農業委員数は十九名、農地利用最適化推進委員数は十五名ですが、本年七月に改選があり、農業委員十五名、農地利用最適化推進委員十一名と、それぞれ四名ずつが減員されることになっています。事務局は専任職員六名と臨時職員二名の八名で、県内でもかなり恵まれた事務局体制となっております。
 当委員会の特徴を幾つか挙げさせていただきます。
 一点目は、農業委員会として、経営状況等の証明事務、並びに市全体の農地、農家の最新情報を整理し、現況との乖離を防ぐことを目的に、毎年一月一日現在の経営状況調査を行っております。既に七年分の調査の蓄積があり、あっせん活動や相談業務などの個別資料として活用しています。
 二点目は、誰にどんなふうに農地を動かすのかを明確にし、あっせん担当委員のばらつきを減らすため、昨年十二月に阿賀野市あっせんマニュアルを委員が作成し、そのマニュアルを基にあっせん活動を行っております。
 三点目は、市町村境のスムーズなあっせんや農地価格の情報を得るため、隣接する新潟市北区、新発田市の市町村境を担当する農業委員、農地利用最適化推進委員同士での情報交換を改選のたびに行っていることで、こちらについても委員からの提言から行っているものです。
 以上三点は、いずれも農地利用の最適化を目的としており、円滑な農地の権利移動の一助となっております。
 それでは、まず、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案の内容について、私の意見を述べさせていただきます。
 今回の改正法律案では、これまで地域で進めてきた人・農地プランを法定化し、農地の集約化を図るため、地域での話合いで十年後の農地利用の姿を目標地図として明確にすることだと理解しています。
 私は、以前から、人・農地プランの話合いや規模の大きなあっせん等の際には、委員としてその地域の将来を見据えた青写真を持って地域に入るべきだと考えてきました。実際に私が地域に入る際は、対象となる地域の担い手は誰なのか、どの程度の規模拡大が可能なのか、自分が把握していない隠れた担い手はいるか、地域の担い手に集約まで見据えた権利移動を行うにはどういった手法を取るといいかなど、先ほどお話しした経営状況調査や周辺の情報収集を行った上で地域に入るようにしています。ただ目の前の農地を動かすことに注力するのではなく、地域にある農地や農業者の十年先、二十年先を想像するわけですが、もちろん私が描いていた青写真は正しいものでもなく、完成したものでもありません。地域の中で話合いをするたびに描き直しをし、地域の皆さんと共有し、一緒に考え、作り上げていくものだと思っています。今回の農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案の要の一つである目標地図は、私の考える青写真を見える化することではないかと思います。
 ただ、農地は個人資産であり、一筆一筆に農業者それぞれの思い入れがあるものです。所有者の合意や地域の賛同が必要であり、地域での丁寧な説明は必須と考えます。
 これまで、人・農地プランがどういったものなのかの説明をし理解を得るまで、それぞれの地域で何度も説明を重ねてまいりました。それは決して単純なものではなく、かなりのマンパワーと時間を要します。また、人・農地プランが実質化したことで満足し、その先に進んでいない地域が多数あるのも現実です。こうした状況を打開するためにも、丁寧な説明を重ねることが必要だと考えます。先ほど当市の農業委員会事務局の体制は恵まれていると申し上げましたが、それでも十分ではありません。他の市町村も同様ですので、マンパワー不足への手当てについては特段の御配慮をお願いしたいところです。
 また、一口に集約と言っても、基盤整備が進んでいる地域と進んでいない地域、基盤整備事業を希望しない地域では集約の在り方も違います。地図上では一見集約されていないように見える場合であっても、水利状況などによっては担い手の作業性が良いケースもありますので、現場に即した目標地図の作成が必要であり、図面の上だけで集積、集約を判断することはできないと考えております。
 地域計画、目標地図の作成は、受け手である地域の担い手を現在よりも更に明確にし、出し手となる農業者が今後自分の農地を誰が担ってくれるのかを見える化するものと考えます。受け手である担い手は将来の経営計画を描きやすくなりますし、出し手の農業者は自分の農地を将来誰が担ってくれるのか明確になる安心感を得ることができます。双方が制度をしっかりと理解して定期的に見直していくことで農地を通して地域の将来を考えることができるものであり、この後に意見を述べさせていただく農山漁村活性化法にもつながるため、本改正案の成立に大きな期待を持っております。
 続いて、農地バンク運用の抜本見直しについて申し述べさせていただきます。
 農地バンクの運用が始まった当初は、農地バンク経由での農地の貸し借りを促してもちゅうちょする農業者が大変多くいましたが、近年は、賃借料支払の簡便性などを理由にバンク利用が大変増加しております。
 これから先、集積、集約が進めば、新規受付の増加に加え、農地利用集積円滑化事業からの移行や利用権の再契約手続が大幅に増えるとともに、移転手続や賃借料の変更等が増加すると考えられます。農地バンクが滞りなく事務手続ができるよう配慮が必要と感じております。
 さらに、現状の農地中間管理権の設定には、配分には都道府県知事の認可が必要なため、利用権設定の倍の時間が掛かることを嫌がる農業者もいます。
 こうした懸念を払拭するため、農地中間管理権の設定等に係る都道府県知事の認可は市町村長に権限を移譲していただき、農用地利用集積計画と同様に遅滞なく権利移動ができるよう御配慮いただくことで、バンク一本化にスムーズに移行できると感じております。
 農地中間管理事業への一本化は、貸し借りを促進するルートが農地バンクに集中されることにより手続の煩雑さが緩和され、地域が一体となった貸し借りの手続が可能となるなど、担い手への一層の集積、集約や目標地図の実現につながるものと期待しています。
 続いて、農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案について述べさせていただきます。
 私は、農林水産省において開催された長期的な土地利用の在り方に関する検討会の委員として、土地利用の観点から検討に参加させていただきました。
 既に人口減少社会が到来し農業の担い手も減少する中、特に中山間地を中心に農地の集積や集約、新規就農支援やスマート農業の普及など、様々な政策努力が払われてきましたが、それでもなお耕作困難な農地が発生しています。また、今後も増加することが予想されています。このため、検討会では、地域の将来像について話合いを促しながら、放牧や蜜源等に活用する農地の粗放的利用など、人口減少や高齢化にも対応できる多様な土地利用とその実施の仕組みについて検討を進めてきました。
 検討会における議論の基本的な考え方は、地域の土地利用に関して地域で徹底した話合いをすること、様々な政策努力の下、放牧や景観作物などの粗放的利用も含め、農地を農地として利用することを基本としつつ、それでもなお農地として利用が困難な土地については、鳥獣害被害軽減のための緩衝帯など、農業生産の再開が容易な用途として利用することです。
 しかし、そうした用途を検討してもなお農地として維持することが極めて困難であり、将来にわたって農地として利用される見込みがない土地があるのも現実です。そうした農地ではあるものの林地として利用することが有望な土地については森林として利用することも検討し、貴重な地域資源である農地を極力保全することに重きを置いた検討が進められました。
 その検討結果が現在御審議いただいている農山漁村活性化法の改正であり、農用地保全事業として結実しています。
 地域の土地利用の在り方については、人・農地プランの話合いと一体的に話し合っていくことが何よりも大切だと思います。基盤強化法と活性化法の両方を一体的に話し合うことで、現場における話合いの手戻りや競合を防ぐことができると考えるからです。
 また、粗放的利用や管理については面的集約が必要ですが、既に非農地となっている元農地が虫食い状態で存在している中山間地もかなりあると思われますので、そういった元農地なども一元的に管理、活用ができるようにする必要があると思います。農山漁村活性化法案の改正は、そうした取組を行う際にも役立つものだと思っております。
 農業委員会は、農地パトロールを行い、遊休化した農地を農地に戻すよう指導してきました。しかし、特に中山間地域の多くの現場を見るたびに心苦しく思っていた農業委員、農地利用最適化推進委員がたくさんいます。
 中山間地の農地の荒廃は、水利などで平野部にも大きく影響を及ぼします。是非、今回の農山漁村活性化法の改正で現場での農地保全の選択肢を増やしていただきますようお願い申し上げます。
 以上、今回の改正法案について、私自身が感じている課題等も併せて所見を述べさせていただきました。いずれの法案についても賛成であり、早期の成立をお願いしたいと考えております。また、法律の周知や施行、運用については、でき得る限り無理のない方法の検討をお願いいたします。
 農業委員会は、活動の見える化を強く進めております。今回の両法案の改正によって、まさに活動の見える化が体現でき、地域農業の将来あるべき姿を地域とともに考え、農地という観点から携わっていけることは大きな喜びであり、誇りでもあります。今後も、農業委員として、地域の農業者と信頼関係を深めながら活動してまいりたいと思います。
 本日は、拙い御意見を御清聴いただき、大変ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 笠原尚美

speaker_id: 10628

日付: 2022-05-17

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会