稲垣照哉の発言 (農林水産委員会)
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○参考人(稲垣照哉君) 全国農業会議所の稲垣でございます。
本日は、このような機会を頂戴し、本当に深く感謝申し上げます。
全国の農業委員会、現在、千六百九十七委員会ございます。そこに、約二万三千人の農業委員さん、さらに約一万七千人の農地利用最適化推進委員さん、両委員合わせると約四万人の委員さんとそれを支える約八千人を超える事務局の職員の皆さん、そういう声を踏まえ、法案審議に少しでも参考になるようなお話ができればと思い、お話をさせていただきます。具体的には、今回の法律改正の意義と課題を中心に意見を申し述べさせていただきます。
御案内のように、農業委員会は、平成二十七年の農業委員会法の改正を踏まえ新たな必須業務となった農地利用の最適化の活動に、農業経営基盤強化促進法などをフル活用して、組織を挙げて取り組んでまいりました。そして、毎年、その成果と課題を踏まえて、政策提案を国会、政府へ取りまとめてお届けしてまいりました。
今申し上げました詳細は、別添の資料の最終ページに、昨年の政策提案のうち今般の法律改正の条文に反映された部分だけを抜いてまいりました。こんなにも多くの条文に、この間の農業委員会の政策提案、農業委員会の思いが受け止めていただいていると認識している次第でございます。
以上を踏まえて、本日は、この法案の四つの点について意義と課題を申し述べさせていただきます。
一つは人・農地プランの法定化について、二つは農地バンクの運用の抜本見直しについて、三つ目は多様な農地利用について、そして最後に農地法の下限面積の撤廃の問題についてでございます。
まず、人・農地プランの法定化の意義でございますが、やはり、地域における話合いの結果が地域の農業の将来の在り方、農地利用などについて法律にしっかりと根拠を持つものとなり、その意義は大変大きいものがあると思っております。
その際、基盤法の中に、効率的かつ安定的な農業経営に加えて、農業を担う者を新たに明記いただいたことは、従来、ややもすると、現場でプランの話合いをする際に、中心経営体のためにやるのかとか、また農家の方から、俺に農業をやめるのかみたいな感情的なやり取りがあることも事実だったわけでありますが、今般、この一文を入れていただいたことによって、地域一丸となって取り組める契機ができたものと考えております。
そして、基盤法の二十一条に、地域計画の実現に向け、我々農業委員会が農家の皆さんに積極的に働きかけることを法律に明記いただきました。現在、農業委員会は、農家の皆さんからあっせんなどの申出があってから農地の利用関係の調整、売買、貸借に動くという受動的な立場にあるわけですが、今回の改正で、能動的に地域のために働きかけてまいるように位置付けていただいたものと考えております。
課題でございますが、この法定化の取組に当たっては、今回の基盤法の十八条、農業者などによる協議の場の設定、ここが決定的に重要だと思っております。これは、市町村のリーダーシップの下、JAさんの農業生産であるとか販売、また土地改良区さんの農地整備などの知見を持ち寄って地域のグランドデザインを描く、これで今後の成否が決まると認識しております。
それを踏まえて、我々農業委員会が目標地図の素案を作るとされておりますが、現場の委員会では、やはり令和七年までに農業委員会だけで作り上げることができるのかという不安があることは事実です。
地域の農業の実態や農業委員会の体制など、様々な市町村の実態を踏まえると、農業者の今後の営農意向や農地の貸借意向を地図に落としたあらあらの素案を作る農業委員会から、地域の農業を担う者ごとに利用する農地が明確になったほぼほぼ完成版、聞くところによりますと、今日御参集の先生方は、先日、埼玉県の東松山市の方に調査に行かれたと思いますが、あれがほぼほぼ完成版という理解だと思っているんですが、かなり幅広くその地図ができてくるということを強調させていただきたいと思います。
また、農業委員会によっては、事務局に職員が一人しかいないところ、又は専任職員が一人もいないような、そういうところも少なくございません。目標地図の作成に当たっては、市町村の農政部局など関係機関と一体となった体制を築けるかが成否を握っていると認識しております。
したがって、人・農地プランの法定化とは、従来以上に農業委員会が地域の農業者の皆さんの意向把握を徹底し、それを地図に落とし込んで、その取組を踏まえて現在各地で進められている人・農地プランの実質化の取組を更に発展させ、地図化、図示することについて地域の皆さんで合意、公表していくことだと思っております。
実質化が既に済んだところ、現在実質化に取り組んでいるところは話合いがなされているわけですので、そのような地区では地域計画の作成にさほど抵抗感なく取り組めるんだろうと思っております。ただ、法律の施行当初は、担い手が不在、そこへ農地を集積することを地図化することが困難なケースが少なくないと思います。その場合でも、JAさんの農作業受委託などを活用して、順次目標地図の完成に向けて練り上げていくことになると思っております。息の長い地域の話合いに取り組める手だてが重要であろうかと思っております。
次に、農地バンクの運用の抜本見直しの意義について申し述べます。
基盤法の二十二条に、農地バンクの事業推進に当たっては、地域計画の達成に資すると明記されたことについて、個人的にも非常にうれしく思っております。地域計画の達成に資するということになれば、バンクさんは、バンクは、農業委員会、市町村など現場の関係者とともに計画の実現を目指す同志的な、より身近な存在になってくださると期待をしております。
また、バンク法の第十八条で、農地バンクさんがバンク計画を策定するに当たって、我々農業委員会の意見を漏れなく聞くということも明記いただきました。これによって、現在、農業委員会は、バンク計画の設定に当たって、極めて限定的な関与から全面的に関与できるようになり、農業委員会と農地バンクの一体的な運用が進むものと期待しております。
一方、課題としては、市町村の利用集積計画を新たなバンク計画である農用地利用集積等促進計画に統合、一体化することについて、現場の農業委員会には不安と戸惑いがあることは事実でございます。二つございます。
一点は、農地バンクさんが本当に農地法第三条以外の農地の権利移動に遺漏なく対応できるのかということであります。農地バンクさんが間に入ることにより、農地の権利設定の手続について全て都道府県知事さんが扱うこととなり、これに伴う時間と手間の発生、小作料などの受取の問題、これに対して農水省さんは事務の抜本的な簡素化ということをうたっていらっしゃいますが、一刻も早くその姿をつまびらかにしていただきたいと思っているところであります。
一本化の二つ目の課題は、市町村の利用集積計画による利用権設定がなくなることへの不安です。一九八〇年、基盤法の前身法であります農用地利用増進法制定以来、耕作権の強い農地法三条に基づき、一旦農地を貸したら返ってこないという不安を払拭するため、期間の定めのある賃借権を設定することにより、期間が終了すれば農地が確実に戻り、安心して再設定ができるという制度が現場に果たしてきた役割は非常に大きかったわけでございます。これがなくなることについて、えっと懸念があるわけでございます。
しかし、今般の改正で、バンク法の第十八条第十一項に、農業委員会がバンクさんに対して農用地利用集積促進計画を策定することを要請できるという条文を明記いただきました。これと農用地利用集積促進計画に関する都道府県知事さんの認可権限を市町村に移譲することをセットで運用すれば、毎月、市町村で利用集積計画を決定、公告しているのと同等、むしろ現行の利用権設定にバンク特約が付いたと認識、運用すれば、農地バンクへの農地集積が促進され、地域計画への取組と一石二鳥の効果をもたらすと思っております。何とぞ、政府におかれましては、このような取組について前広に御指導をいただけたらと思うわけであります。
三点目の多様な農地利用については、農地利用の最適化に取り組む農業委員会の多くは、担い手に直ちには集積できない条件の悪い農地、また遊休農地でも直ちに非農地判断できないような農地がたくさんある中で、すぐに圃場整備などができるわけではなく、暫時遊休化したり、遊休化の度合いが増していることに、その対応に苦慮しているわけであります。
今回、活性化法で、農用地保全として放牧、鳥獣害緩衝帯、林地化など多様な取組が明らかにされ、事業にもつながるため、地域計画の取組とうまく活用して地域全体の効率的かつ総合的な取組と持続的な土地利用の実現に資するものと思っております。このような、圃場整備のように多額なコストと時間を要する手だてに代わり、コストを掛けずに農地保全ができる手だてが講じられたその意義は大変大きいのではないかと思っております。
私ども農業委員会は、農地法や基盤法に比べて活性化法について余りまだ周知が徹底されておりませんので、その徹底と御指導の強化が必要かと思っております。
課題としては、基盤法で進める地域計画とこの活性化法の活性化計画が、現場で取り組む際に調和して取り組めることが大事であり、競合したり、二度手間になったり、手戻りのないような運用が重要かと思っております。
最後に、農地法三条の下限面積の撤廃についてでございます。
意義としては、農業者の減少、高齢化が進行する中で、農村の定住、活性化のため、野菜、果樹など多様な新規参入を受け入れたり、さらには半農半Xを推進することは、農村、特に中山間地域などの振興を図る上では意義があると思っております。
課題としては、下限面積要件は農地法三条による権利移動を判断する際の有力な根拠条文でございます。下限面積がなくなった場合、投機的な農地取得が行われるのではないかとの不安が現場にはございます。一方で、下限面積要件を廃止しても、農地を全て効率利用する、常時農業に従事する、周辺の農業に悪影響を与えないといった他の要件は引き続き存置されるわけであります。
今後、目標地図に基づいて農地の集約化などを進めていくことになります。こうした動きと半農半Xなどの農地利用についていかに調和させていくのか、そういうことを地域計画の中で、農地権利取得に当たってのルール作りなりその運用を明らかにしたガイドラインなどの提示が重要であろうかと思っているところであります。
以上、今回の法案についての意義と課題を申し述べさせていただきました。
参考資料にも記載いたしましたように、農業委員会系統組織は、市町村、農業委員会、農地バンクなど関係機関が一丸となって人・農地プランの作成に取り組めるよう、その法定化を要望してまいりました。また、これを見越して、我々は本年度の事業推進も計画しております。
そういう意味では、今国会での審議について、全国の農業委員会の委員さんは固唾をのんで見守っていらっしゃるのだろうと思います。どうか枝ぶりの良い法律となりますよう、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。そして、今後とも、地域の実態に即した農業委員会の活動を尊重いただき、御支援、御指導を賜りたくお願い申し上げまして、話を閉じさせていただきます。
どうも本日はありがとうございました。