戸ヶ崎勤の発言 (文教科学委員会)

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○参考人(戸ヶ崎勤君) 埼玉県戸田市教育委員会教育長の戸ヶ崎と申します。
 中央教育審議会において、教員養成部会及び「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会及び教員免許更新制の発展的解消についての審議を行う教育免許更新制小委員会などにおいて、これまで臨時委員を務めてまいりました。
 私の方からは大きく三点、中央教育審議会における審議の経緯、二つ目、法案に対する意見、三つ目、研修の在り方についての意見、以上を申し上げさせていただきたいと思います。
 まず、この法案の背景となりました中央教育審議会における審議のあらましについて説明をさせていただきたいと思います。
 中央教育審議会においては、令和三年二月の文部科学大臣の諮問を受け、特別部会において審議を進めてまいりました。教員免許更新制の見直しについては、諮問の中で先行して結論を得ることを求められたところでございます。
 教育公務員特例法の第二十一条に絶えず研究と修養に努めなければならないというようにありますように、昔から教育界では、学び続ける者のみ教える資格があるとか、また書経の教うるは学ぶの半ばなりといった言葉が引用され、学び続ける存在であることが強くこれまでも期待されてきました。
 特に、ソサエティー五・〇が到来しつつあるなど大きな社会変化が生じている現在、教師が時代の変化に対応して求められる資質能力を身に付けるためには、過去に身に付けた知識技能だけで教職生涯を過ごすのではなく、常に最新の知識技能を学び続けていく必要性は現在高まっていると感じております。生涯にわたって学ぶいわゆるリカレント教育のキーワードは、最終学歴ではなく最新の学習歴、いわゆる学歴の更新、つまり学びのアップデートであります。
 教師は、生涯学習分野においても学び続ける大人というロールモデルになることが期待されていると思います。また、主体的に学び続ける教師の姿というものは、児童生徒にとっても極めて重要なロールモデルであろうと思います。教師は子供たちにとって身近な存在の一人でありまして、その人格形成に与える影響というものは極めて大きいものがございます。私は機会あるごとに、子供たちの出ていく未来を積極的に理解してほしいというふうなことを申してきました。主体的に学び続ける教師の姿を目にすることで、自らも主体的に学び続ける意欲を子供たちが培うことができるのではないかと期待しているところであります。
 特別部会及び小委員会では、大きな社会的変化を踏まえて、教師の学びについてどのような在り方が望ましいのかという基本的なところにまで遡って審議を行ってまいりました。審議の中では、教師として必要な資質能力が保持されるよう最新の知識技能をたゆみなく修得することが重要であるということを確認した上で、次の三点について一致を見たところであります。
 一つ目、教師の主体的な姿勢を重視しながら、個別最適な学びと協働的な学びを教師の学びにおいても取り入れていくということ。二つ目、教師と管理職が積極的な対話を行い、具体的な目標などを共有した上で、体系的、計画的な学びを進めていくこと。三つ目、質の高い有意義な学習コンテンツを整備することなどを通じて、令和の日本型学校教育を担う教師にふさわしい新たな教師の学びの姿を確立していく重要性であります。
 この新たな教師の学びの姿というものは、高度な専門職である教師にふさわしい主体的な姿勢の尊重、学びの内容や例えば現場の経験を重視した学びなど、スタイルの多様性の重視等を鍵としているところでございます。十一月に決定されました審議のまとめにおきましては、こうした姿を支える観点から、公立学校の教師について、研修受講履歴の記録や履歴を活用した受講の奨励などの制度改正を行うことや、また現職研修の更なる充実に向けた国による指針の改正を行うことを求めております。また、研修履歴の記録システムや優れたコンテンツなどを構築していくことも織り込まれております。
 教員免許更新制につきましては、教師の学びの機会の拡大、教師の資質能力の向上に対する大学の関与の拡大、また良質な学習コンテンツの形成など、一定の成果は上げてきました。しかしながら、十年に一度、特定の期間に免許状更新講習を受講することが、最新の知識技能の修得に向けて投下した時間や労力に対する効率や、またその成果が上がっているのか、常に学び続ける必要があることと教員免許更新制とが本来ひも付くものなのかどうか、教師の研修はアダプティブで個別最適な学びとすべきであるなどの声がありました。
 これらのことから、教員免許更新制につきましては、教師が常に最新の知識技能を学び続けていくという必要性と整合性とは、整合的とは言えないなど、新たな姿の阻害要因となっていることを否定できないため、大学等のこれまでの成果を生かしながら発展的に解消することが適当とされたところでございます。
 中央教育審議会における審議のあらましにつきましては、以上とさせていただきます。
 続きまして、今回提出された法案について、私なりの意見を申し述べさせていただきます。
 今回の法案の内容につきましては、全体として、中央教育審議会の審議まとめを的確に反映していただいているものと考えておるところであります。
 まず、任命権者による教師ごとの研修等に関する記録の作成につきましては、一人一人の教師の学びの足跡であり、学びを振り返りつつ、また適切な目標の設定と現状の把握を行うため、また自律的、体系的、計画的な学びを実現するなど、個別最適な学びを実現する上でのベースとなるものであろうと思います。
 記録の範囲につきましては、多様な内容、スタイルの学びが教師の資質能力の向上に不可欠なものであるということに鑑みることによって、任命権者だけではなく、市町村教育委員会の行う研修や学校における校内研修、授業研究なども含めて、多様な学びの履歴等も含むことができるような仕組みとされることが望ましいと考えております。
 次に、教育委員会、具体的には、校長による教師に対する相談対応、情報提供、また指導助言、いわゆる対話と奨励の仕組みにつきましては、教師のキャリアアップの段階を適切に踏まえつつ、教師本人のモチベーションとなるような形で実施できるようにしてほしいと思っております。一人一人に最適な研修を奨励することが可能となり、教師の資質向上に関する中核的な仕組みとなることを強く望みたいと思っております。
 一方で、こうした研修履歴等の記録や対話と奨励を実効的に機能させるためには、こうしたプロセスが関係者にとって過度な負担となることのないように留意をすることが重要であろうと思っております。つまり、教師の性悪説ではなくて性善説に基づいたプロセス、教師一人一人を信じて寄り添う姿勢、これを大切にしていく必要があると思っております。
 なお、既に多くの都道府県教育委員会において、教職員の国や県の主な研修会の受講を記録した研修の履歴を蓄積していると思いますけれども、養成や研修を厳格化していくという意味ではなく、今後は教師一人一人が自らの成長の足跡を振り返られるような教師の学びのログの仕組みづくりなどができればよいのではないかとも思っております。
 いずれにいたしましても、研修履歴を作成するという手段が目的化することなく、教師の豊かな学びをサポートするものであってほしいと思っております。教職員の育成には、学校組織の特色でありますフラット型でマトリックス構造の組織の長所を生かしつつ、個人としての能力開発だけではなく、意欲向上や教職員が育つような集団としての学び、学び合いの風土づくりも大切であります。
 次に、研修の在り方についての意見を申し上げたいと思います。
 校長が、教師が研修に参加しやすくなるような環境整備や学び合う風土づくりを積極的に行うことが必要であるとともに、教師の学びが画一的、規格的なものに陥らないように、奨励の候補となる研修自体の多様化、つまり地域や学校現場の課題の解決を通したプロジェクト型、PBLですね、の主体的な学びなども大切であると思っております。また、学校における教職員の育成機会のほとんどが管理職の采配の範囲にあり、校長や教頭のリーダーシップ次第で学校内の様々な機会や場面を教職員育成の教材として活用できるとも考えられます。このように、学校組織マネジメントは教職員の育成に大いなる可能性を秘めているとも考えております。
 一方で、管理職の負担増大、特に規模の大きな学校などへの配慮も必要であろうと考えております。
 現在、本市におきましても、お手元にお配りしました指導の重点、こちらです、また研究集録、これらにもありますように、先ほど申しましたプロジェクト型、いわゆるPBLの学びや教育データ利活用など、様々な授業改善や今日的な教育課題等の研究を独自に行ったり、学校の自走を支援したりしております。
 とはいっても、自治体単位では限界がございます。今後は、文部科学省や独立行政法人教職員支援機構においても、できるだけ速やかに、研修履歴の記録システムの構築や、全国の教育委員会や大学等の優れたコンテンツの集約、また情報発信などに努めていただきたいと思っております。
 教員免許更新制につきましては、今回制度としては廃止ということになりますけれども、先ほども申し上げましたとおり、一定の成果は上げてきたと思っております。教員免許更新制の下で生み出されたこうした成果については、新たな教師の学びの姿を構築する上で発展的に継承していくためにも、先ほど申し上げましたが、システムやコンテンツの整備や構築が重要であろうと考えております。
 その際、教師は、実際の授業などですぐに活用できる実践的なもの、つまりハウツー物の要望が強いのですけれども、即時に役立つ内容は本質が失われる可能性があるので、コンテンツベースからコンピテンシーベースでの見直しが必要との意見も多々ございます。大切なことは、教師のスキルアップには、理論と実践の往還や融合、それらを融合する経験が極めて大切であると私は思っております。
 最後に、審議のまとめの重要なメッセージの一つは、学びに専念する時間を確保した一人一人の教師が、自らの専門職を高めていくその営みであると自覚しながら誇りを持って主体的に研修に打ち込むことができるという姿の実現、それを目指していくというものでございます。
 教師は教える専門家でもありますけれども、学びの専門家でもなければなりません。大学や研究機関、また企業等との積極的な連携などにより、その道のプロの方々と教師の出会いの場や教師自身が本物に触れる場、そういった場も増やしていくべきであろうと思っております。その際、大学等での研修内容も今日的な教育課題に応じて転換していく必要もあると強く思っております。
 また、学校における働き方改革、これを一層進めていくとともに、研修履歴の記録の煩雑さによって研修の意欲が衰退していくことのないような工夫もお願いを申し上げたいと思います。
 教師が学ぶことで感じるわくわく感は、間違いなく子供たちに伝播するはずです。この度の法改正が今後の日本の成長の礎となる子供のわくわく感を育むことにつながることを期待申し上げまして、私からの意見表明を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 戸ヶ崎勤

speaker_id: 25816

日付: 2022-04-28

院: 参議院

会議名: 文教科学委員会