杉尾秀哉の発言 (本会議)
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○杉尾秀哉君 立憲民主・社民の杉尾秀哉です。
ただいま議題となりました経済安保推進法案について、会派を代表して質問いたします。
まず、岸田政権が発足して半年となりました。新型コロナにウクライナ危機、まさに内憂外患の中で、緊張感を持って政権運営を続けておられることに敬意を表します。
ただ、残念ながら、岸田政権の業績はと聞かれて即答できる人は少ないでしょう。なぜなら、岸田総理は、社会的に重要な課題について聞かれても、緊張感を持って注視すると答えるだけで、実は何もしないからだと、ある文筆家は喝破しています。何もしないことをバリエーション豊かに表現するおじさんというネットでの評価もあるようです。つまり、やってるふり内閣と表現すればいいんでしょうか。そうでないと言うのなら、まず、目玉の政治スローガンである新しい資本主義の全体像を早く示すべきではないですか。
ロシア軍によるウクライナ市民への虐殺の惨状が連日メディアで伝えられています。ロシアのプーチン大統領に対する国際社会の怒りと抗議の声は強まるばかりです。
かかる蛮行に対して代償を支払わせ、一刻も早く侵略行為をやめさせ、ウクライナに平和を回復させるために日本ができることはまだまだあります。その象徴として、原油と天然ガス開発のサハリン1、サハリン2からのエネルギーの輸入を停止する考えはありますか。
私が予算委員会で総理に要請したとおり、日本もウクライナの避難民保護にかじを切りました。しかし、まだまだ中途半端で、しかも、政府が避難民という言葉に固執し、難民と峻別することには違和感があります。元々、日本が国際社会から難民鎖国と批判され、世界の難民に固く門戸を閉ざしてきたのは恥ずかしい限りです。
そこで、一過性の政治的パフォーマンスと言われないためにも、これを機に難民認定の拡大に大きくかじを切るべきではないでしょうか。
新型コロナについても伺います。
先月、まん延防止等重点措置を解除する際、岸田総理は、第六波の出口ははっきり見えてきたと豪語されました。しかし、これは完全なミスリードで、全国的な再拡大傾向が明らかです。
そこで、総理に伺いますが、既に第七波に突入したという認識か、また、その場合、まん延防止等重点措置を再発出するつもりはあるのか、明快な答弁を求めます。
政府は、ワクチン三回接種済みの人を対象に、イベントワクワク割を来月から始めると伝えられています。何とすばらしいネーミングと思いきや、ワクワクのワクはワクチンのワクでもあるらしい、そう考えると、ばかにされているような気がしてきました。感染が再拡大しているのに、本当に来月から始めるんでしょうか。そもそも、行政サービスをワクチン接種の有無で差別するのはおかしくないですか。総理、お答えください。
本日の議題であります経済安保推進法案は、仮に成立すれば、岸田政権にとって、発足以来唯一と言ってもいい具体的業績となり得るものです。目下のウクライナ危機やコロナ禍による物流問題、米中間の対立や厳しくなる安保環境等に鑑みれば、経済安全保障を確立し、国民の安全、安心を守る必要性を私たちも否定するつもりはありません。
しかし、この法案は、企業活動や国民の暮らしに影響を及ぼし、萎縮効果をもたらすおそれがある上、具体的な運用や規制対象などに関して政省令で決める項目が百三十八か所もあり、政府の裁量が広過ぎるなど、数々の問題点が指摘されてきました。ところが、衆議院での質疑の中でも、例えば総理自身の、慎重に検討、丁寧に説明、真に必要なものに絞り込むなどという答弁に象徴されるように、政府側は終始一貫して曖昧な説明を繰り返しています。
そこで、岸田総理に伺います。
こうした懸念について、衆議院段階でどれだけ払拭できたとお考えでしょうか。なお、本院の質疑では、慎重に、丁寧になど、曖昧な答弁のオンパレードは厳に慎んでいただきたいと思います。
私たち立憲民主党は、本法案の審議に臨むに当たり、一、自由で開かれた経済活動、二、民間活力と経済の成長、三、経済安全保障の実効性確保の観点から、自由と規制、経済と安全保障のバランスを最重要視し、経済安全保障の基本理念を新たに条文として盛り込んだ修正案をまとめ、衆議院に提出をいたしました。残念ながら、我々の修正案は否決されましたが、外部有識者からは高く評価されております。
そこで、まず、この法案の第五条に、法律の規制措置は、経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確立するため合理的に必要と認められる限度において行われなければならないと、こう定められていることについて伺います。
これは、あくまで安全保障を経済に優先するという、こういう趣旨なんでしょうか。一方、私たち立憲民主党は、経済活動に対する規制は必要最低限としなければならないと考えておりますが、これについての見解、並びに、政府提出法案に経済安保の定義がない欠陥を補うために我々が修正案で示した基本理念についての総理の評価と併せて御答弁願います。
特定重要物資は、国民の生存に必要不可欠で、広く国民生活若しくは経済活動が依拠しているなどの要件に合致するものを政令で指定すると、こういう規定になっております。この物資の指定は、財政・金融支援スキームの出発点となるもので、政府の一存で決めることは望ましくありません。
そこで、特定物資の指定に係る政令を定めるに当たっては、外部有識者の意見を聞くこととすべきと考えますが、担当大臣の見解を伺います。
また、この法案の目的は、産業基盤の強靱化を通してサプライチェーンのリスクを低減することにあると、こういうふうに理解しますけれども、問題は、どこまでコストを掛けて強靱化を実施するべきか、目安が全く示されていないことです。
これについて衆議院での質疑では、特定重要物資の対象として、半導体と電池、レアアースを含む重要鉱物、医薬品などが挙げられていますが、これ以外に対象が広がる可能性はないのでしょうか。
また、国内生産拠点の強化等のために、どこまで国が支援を続けるのか。恣意的な運用に歯止めを掛けるためにも、支援の条件や規模などを示す必要があるのではないかと考えますが、リスク・コスト・ベネフィットという観点からの担当大臣の見解を求めます。
経済団体は、本法案の基本的な方向性については支持しつつも、特に規制が強化される部分に警戒感を持っていることは間違いありません。その一つが特定社会基盤事業、いわゆる基幹インフラです。
本法案では、対象分野として、電気、鉄道、金融など十四の事業が示されていますが、規制の対象が必要最低限のものとなるかどうか、明確になっていません。これらが曖昧なままでは、関係企業の設備投資計画にも重大な影響が出ることが予想されます。
そこでまず、ほかの法案の条文が対象を曖昧にしているのに、なぜこの基幹インフラのみ十四業種に絞ったのか、ほかの業種が対象となることはないのか。また、審査の対象となる重要システムが明確でなく、政府がこうした専門的な設備やシステムを広範に適正評価できるのか甚だ疑問であることを踏まえ、これらの懸念に応えるためにも、対象事業者の基準を主務省令で定めるに当たっては、事業者や外部有識者の意見を十分に聞くべきと考えますが、担当大臣、御答弁ください。
本法案の官民技術協力の対象となる技術分野については、民生用に限らず、軍事利用可能な先端技術開発に財政支援を行うことも可能なスキームになっていると指摘されています。
現に、有識者会議の議事録要旨を見ても、防衛など政府部門の具体的ニーズを研究者と結び付けていくことが非常に重要だという指摘がありました。また、この会議のメンバーの兼原元内閣官房副長官補は、本法案で最も重要なのは官民技術協力だと繰り返し発言し、軍事利用につながる技術開発を重要な目的としていることを隠そうとしておりません。
そこで、岸田総理に伺います。
本法案の言う先端的な重要技術の開発支援制度の目的の一つは、学術界や民間企業と軍事研究を結び付けること、つまり軍産複合体をつくることにあるんでしょうか。もしそうなら、経済安保の経済という名前を冠することによって研究内容を曖昧にしようとしていると指摘されても仕方ありませんが、なぜ正々堂々議論しようとしないのか。さらに、官民パートナーシップの具体的役割や機微情報の共有を含めた情報管理の基準についても併せてお答えください。
我が国の現行の特許制度では、出願された発明は一年六か月後に一律に公開されることになっています。それを本法案では、安全保障の観点から非公開化しようとしています。非公開とすべきかどうかを判断する保全審査の対象となる発明について、有識者会議の提言では、核兵器の開発につながる技術及び武器のみに用いられるシングルユース技術が挙げられており、政府が作成した法案説明資料においても、核技術、先進武器技術等の中から絞り込んだものと、こういう説明がされています。しかし、本法案の六十六条を見ても、この点について明確に書かれておりません。
そこで、技術分野の絞り込みに国際特許分類を用いるのなら、核関連技術など非公開化の対象となる重要分野だけでも法律に明記することはできなかったのか。有識者会議でも、経済活動等に及ぼす影響を十分考慮し、安全保障上極めて機微な発明を対象にすべきとの提言をしておりますけれども、本法案はこれに逸脱してはいないでしょうか。また、現在は様々な民生技術が軍事目的に利用されていることから、こうした軍民利用技術が非公開化の対象になれば、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与するという特許制度の本旨に反するのではないでしょうか。担当大臣の答弁を求めます。
ここまで述べてきました物資の調達を始めとした本法案による様々な規制には、取引先など重要な企業秘密に触れる部分があり、情報の漏えいは企業の存続そのものに深く関わります。これが本法案に対する経済界の懸念点の一つでもあります。
その意味でも、内閣官房で法案取りまとめの実務を仕切ってきた経済安保法制準備室の藤井敏彦前室長の更迭と、明らかになった数々の非違行為は極めて深刻です。
そこで、岸田総理に伺います。
総理は、経済安保法制に係る情報保護の重要性をどこまで認識しているんでしょうか。また、藤井前室長による重要情報流出の可能性についてどこまで厳しく調査をしたのか。さらには、経済安保と関わりのある企業やメディア関係者と不適切とも言える行為を続けてきた人物を、あろうことか経済安保法制の事務方トップに据えた総理自身の任命責任をどう考えるのか、総理、明確にお答えください。
岸田総理が情報保護の重要性を認識されておられるのなら、機密情報の取扱資格制度、いわゆるセキュリティークリアランスの導入をなぜ見送ったのか、この見送りの理由について、また、今後の導入に向けた検討状況を御答弁ください。
一方で、日本企業の退職者が外国企業に再就職したり機微な情報を持つ研究者のヘッドハンティングが、人の移動に伴う情報や技術の流出として大きな問題となってきました。本法案ではこうした問題がカバーできておりませんけれども、政府としてどう対処するつもりでしょうか。
問題は、頭脳や技術の流出もそうですが、日本の産業競争力そのものが低下をしているという厳然たる事実です。経済安保の言う戦略的不可欠性とは、日本が他国が持たない技術や製品を持ち、その流出を食い止め、他国が日本を不可欠な存在と認めてくれること、これが何より重要です。日本の産業競争力の低下を含め、こうした思想が本法案には見えません。総理の問題意識をお答えください。
大川原化工機という横浜の会社で起きた冤罪事件を皆さんは御存じでしょうか。
この事件は、食品製造に欠かせない噴霧乾燥装置で知られる町工場が中国に輸出した装置が武器転用可能だとして、二年前に社長ら三人が逮捕されたというものです。ところが、なぜか初公判直前になって突然起訴が取り消される事態となり、逮捕された元専務はこの間にがんが悪化して、刑事被告人のまま無念の死を遂げてしまいました。功を焦った公安警察の勇み足とも言えるこの事件は、反中ムードに乗じた経済安保の危うさを象徴しているとも言えます。
事ほどさように、経済安保は、企業活動や市民生活にも重大なマイナスの影響を与えかねません。だからこそ、この法案審議に当たって、本院では良識の府として将来に禍根を残すことがないよう慎重審議に徹するよう求めまして、私の代表質問といたします。
御清聴大変ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕