真山勇一の発言 (本会議)

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○真山勇一君 立憲民主・社民会派の真山勇一です。
 会派を代表して、刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案について質問をさせていただきます。
 まず初めに、ロシアによるウクライナへの侵攻を強く非難します。他国の領土に武力をもって攻め入り、一方的に命、権利、財産などを奪い、民主的な体制を破壊する行為は絶対に許されるものではありません。
 私は、記者時代に三度の戦争取材を経験しました。一度目はイラン・イラク戦争、二度目はカンボジア内戦、そして九・一一後のアフガニスタンに対するテロとの戦いです。私が歩いたどの戦場でも、犠牲を強いられるのは一般市民であり、子供たちでした。戦場では、銃を肩に掛けた少年兵、また遺書を内ポケットに忍ばせた兵士たちにも会いました。私自身も命の危機を何度か感じました。戦争はどんな理由にせよあってはならない、私のその思いはそこから生まれました。戦争が終わるまで声を上げ続けていかなければならないと思います。
 さて、今回の改正案を読みながら、私は冷戦時代の旧共産圏で広く知られたジョークを思い出しました。ある独裁国家の国民が広場で最高指導者はばかだと叫んだところ、すぐさま逮捕されました。逮捕の理由は、指導者を侮辱した罪かと思いきや、国家機密漏えい罪だったそうです。しかし、しばらくして、その指導者が国連総会で演説をしたら、その国民はすぐに釈放されました。彼が、なぜ私は釈放されたのですかと聞いたところ、看守は、あの発言はもう国家機密ではなくなったからだと答えたということです。
 指導者に向かって投げた言葉が侮辱罪どころかとんでもない罪になったわけですけれども、落ちまで付いた風刺、ウイットに富んだこれは笑い話です。しかし、権力者を侮辱したと受け取られたら最後、問答無用で逮捕されるというのではとても笑えません。言いたいことは言えなくなり、どんな不正や悪もまかり通ることになります。そんな社会にしてはならないからこそ、我が国には日本国憲法があり、刑法を始めとする法体系が整備されてきたはずです。しかし、本法案にはそれを破壊しかねない重大な疑念があるのです。
 本改正案の中身について、古川法務大臣に具体的にお尋ねいたします。
 まず、今回の立法の趣旨についてです。受刑者の処遇を充実させ更生を支援することと、侮辱罪の法定刑の引上げは全く個別、別個の内容であり、別々に諮問されてきたはずです。しかし、なぜ、今回、同時に改正するのでしょうか。国会の日程は限られています。どの法案も抱き合わせで提出されるのでは、充実した審議は望めません。
 本改正案では、懲役と禁錮を一つにまとめ、拘禁刑が創設されます。我が国の刑事法制の根幹に関わる明治以来の大改正ですが、不明な点ばかりです。拘禁刑は受刑者の改善更生を図るためとされ、作業と指導が挙げられていますが、それらは刑の内容として義務化されたのでしょうか。拘禁刑により、改善と更生が可能になるという根拠は何でしょうか。実効性のある改善更生を図るためには、受刑者一人一人の生育歴や精神状態などを把握した専門家がきめ細かく対応する必要がありますが、そうした人材をどう確保し、養成するのでしょうか。また、刑務官に対して今回の法改正の趣旨をどのように徹底し、人的体制を整備するのでしょうか。高齢の受刑者、障害のある受刑者は福祉的支援が必要であり、出所後の就労は考えづらい場合もありますが、それでも作業と指導を課すのでしょうか。法務大臣、これら拘禁刑についての疑問にお答えください。これほど大切な法改正を、理由や根拠も示さずに、見切り発車で実施することは大変に危険なことであると考えます。
 法務大臣にお尋ねしたいことはまだたくさんあります。受刑者の処遇要領の策定に当たっては、被害者等の被害に関する心情、被害者等の置かれている状況、被害者等から聴取した心情等を考慮するものとされます。どのような形で処遇要領に反映させ、どのように受刑者に伝達し、何を達成しようとするのでしょうか。さらに、受刑者の社会復帰を支援するために、本人の意向も踏まえて刑事施設の外で支援を行うこともあるといいます。それは、どのような場所や施設を想定しているのでしょうか。
 出所者を受け入れる側の社会の準備、意識改革も必要ですが、どのようにしてそれを行うのでしょうか。更生緊急保護の対象者を処分保留釈放者まで拡大しますが、その理由は何でしょうか。また、更生緊急保護の期間延長に関して、金品の供与又は貸与及び宿泊場所の供与は現行と同じく六か月を超えない範囲とあり、その他のものは一年六か月を超えない範囲とあります。延長幅に差がある理由は何でしょうか。答弁をお願いします。
 今回の改正案には少年院法、少年鑑別所法も含まれます。罪を犯した少年の社会復帰支援に当たって、矯正教育の実施状況、被害者等から聴取した心情等その他の被害者等に関する事情、在院者が社会復帰をするに際し支援を必要とする事情を考慮するとされていますが、具体的にどのような形で支援に反映されるのか。また、鑑別対象となる受刑者の年齢の上限が撤廃されますが、その理由は何でしょうか。
 少年鑑別所職員の仕事の量と内容は大きく変化すると思われますが、それらに対応した人的整備について具体的な計画はあるのか、法務大臣、お答えください。一人一人の人生を左右する問題であり、社会に対する影響も大きい以上、こうしたことが見切り発車では、やはり困ります。
 そして、今回の最大の懸念は侮辱罪についてです。本改正案では、侮辱罪の法定刑が引き上げられることに伴い、侮辱罪に認められてきた条文上の制限を失わせることになります。刑法第六十四条の教唆及び幇助の制限、刑事訴訟法第百九十九条第一項の逮捕の要件、同第六十条第三項の勾留の要件などがそれに当たりますが、これによって言論の自由が大幅に制限されかねないという指摘があります。これによって言論の自由が大幅に制限されかねないという指摘があり、これについて法務大臣はどう考えるのでしょうか。
 名誉毀損罪については、指摘した内容に公共性や公益性があり、内容が真実だと証明されるか、真実と信じる相当の理由があるときには処罰されないことになっています。しかし、侮辱罪にはそうした明文規定はありません。これでは、政治家や公務員を批判しづらくなるという指摘もあります。侮辱罪についてそうした制限を設けない理由は何でしょうか。
 制限がないというのは怖いことです。特に、公権力の側を批判したら侮辱だといって逮捕されるようになっては、どこかの独裁国家と同じですが、本改正案ではその可能性が排除されなくなります。気に入らない者の言葉尻を捉えて市民やジャーナリストを逮捕できるというのは権力者にとってはとても都合がいい話ですが、社会全体は闇に包まれてしまいます。そんな社会には決してなってはなりません。
 これほど重要な改正であるにもかかわらず、深い論議が行われた形跡は見当たりません。侮辱罪の法定刑引上げについては、法務大臣の諮問から答申が行われるまでたった一か月余り、しかも、侮辱罪関係部会の開催は二回だけでした。これでは余りにも拙速過ぎないでしょうか。法務大臣、十分な議論が行われたとする根拠をお示しください。
 侮辱罪の法定刑の引上げは、インターネット上の表現活動を大きく萎縮されるとの指摘もあります。先ほども述べましたが、侮辱罪には公共の利害に関する場合の特例などがないため、今回の厳罰化によって公益的な論評についても処罰の対象となる可能性が排除されません。実際には有罪とならず、処罰されないとしても、公権力の側が難癖を付けて逮捕し、収監されるおそれがあるのでは、よほど腹の据わった人でない限り、政治家や公務員の批判はできなくなるでしょう。繰り返し言いますが、そんな世の中は闇です。憲法上で保障される表現の自由に萎縮効果をもたらすおそれについては、法制審議会でもはっきり指摘されているのです。法務大臣、言論の萎縮を招かないと断言できますか。その根拠は何でしょうか。
 そもそも、侮辱罪や名誉毀損罪といったものは、世界的には非犯罪化の流れがあるという指摘もあります。表現の自由に関する国連の自由権規約第十九条に関し、規約委員会が二〇一一年に採択した一般的意見三十四の四十七項では名誉毀損罪について、締約国は犯罪の対象から外し、どのような場合でも刑法の適用は最も重大な事件にのみ容認されなければならないとし、殊に拘禁刑は適切な刑罰ではないと明記しています。今回の侮辱罪の厳罰化は、こうした世界的潮流に完全に逆行するものですが、法務大臣の考えはいかがでしょうか。
 今、インターネット上の誹謗中傷などが社会問題化しており、深刻な人権侵害が多発していることに対しては、迅速で実効性のある対応が必要であるのは言うまでもありません。痛ましい自殺事件なども発生しており、一刻の猶予も許されません。法務大臣、侮辱罪を厳罰化すればこうした事案が減少するという具体的な根拠はあるのでしょうか。
 残念ながら、インターネット上の誹謗中傷は余りにも数が多過ぎて、よほど重大な事案でなければ広く知られることなく、多くの場合が泣き寝入りになっています。また、相当に重大な誹謗中傷があったのに、警察が適切に動かなかったため悲劇につながった事例も多々あります。そもそも、侮辱、名誉毀損といった行為は、現行法でも犯罪に当たります。罰則が軽いとか重いとかではなくて、警察が動くか動かないかの問題であるという指摘があるのです。
 国家公安委員会委員長にお尋ねします。
 事実として犯罪が行われているのに、罰則の軽重によって警察の対応が変わるということはあり得るのでしょうか。厳罰化されたならば、インターネット上などの侮辱について、適切に対処していただく人的体制の整備はできているのでしょうか。
 法務大臣にもお尋ねしますが、法務省人権擁護局などで、インターネット上の誹謗中傷といった人権侵害について、その全てを救済する体制はでき上がっているのか。そうした体制のないままに罰則だけを引き上げても、全ては絵に描いた餅です。きちんとした捜査体制、救済体制ができ上がってもなお誹謗中傷の事案が減らないため罰則を引き上げるというのなら分かりますが、そうしたことには手を付けず、ただただ罰則化を、厳罰化を推し進めるというのは理解できません。
 一般国民の人権擁護などが目的ではなく、公権力にとって都合の良い武器を手に入れることが真の目的なのではないかと勘ぐられても、これでは仕方がないでしょうか。こうした様々な懸念があるからこそ、衆議院では本改正案に修正が付されたと聞きます。
 法務大臣にお尋ねします。新たに加えられた附則において、侮辱罪に関わる改正がインターネット上の誹謗中傷に適切に対処できるのか、表現の自由その他の自由に対する不当な制約にならないかということが明記されています。これについて、具体的にどのような懸念が衆議院において議論されたのか、御説明ください。
 また、こうした懸念について、外部有識者を交えて検証を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずることも明記されていますが、どのような有識者が、いつ、どのような頻度で、どのような会議体等において検証を行うのが適当か、また、それについて政府はどのような措置を講ずるつもりか、具体的に御説明ください。
 以上、本改正案について質問をさせていただきました。
 与党の皆さん、考えてみてください。安倍元総理は度々、悪夢の民主党政権とおっしゃっています。これは、見方によっては侮辱ではないでしょうか。将来的な政治状況のいかんによっては、皆さんや皆さんの関係者が逮捕されるおそれもあるような法律を成立させてしまってよいのでしょうか。権力者が侮辱だと感じたら最後、逮捕され、処罰できるというのでは、この世は闇ではないでしょうか。
 権力を持つ者を批判するのは国民の権利であり、公共性、公益性のある論評は当然許されるべきです。私たち政治家同士も、堂々とちょうちょうはっしのやり取りをしていきましょう。我が国の健全な民主主義を守り抜くためにも、本改正案の充実した深い審議が何より必要であることを申し上げまして、私の代表質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣古川禎久君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 120815254X02420220520_005

発言者: 真山勇一

speaker_id: 19724

日付: 2022-05-20

院: 参議院

会議名: 本会議