真山勇一の発言 (本会議)
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○真山勇一君 立憲民主・社民会派の真山勇一です。
会派を代表して、刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律について、反対の立場から討論いたします。
今回の刑法等改正案のように、重要な論点が幾つもある法案を抱き合わせで国会に提出してくるということが、このところ常態化しています。こうした振る舞いは国会での議論を軽視するものであり、猛省を促したいと思います。
本改正案は、受刑者の処遇の充実や改善更生を進め、その一方で、侮辱罪の厳罰化という二つの大きな柱が盛り込まれます。どちらも複数国会をまたいで審議してよいほどの重要な論点です。それを短期間に、しかも一括で審議せよとは余りにも乱暴ではないでしょうか。
本改正案だけではありません。今国会で既に成立した改正民事訴訟法においても、訴訟手続のIT化を議論している中に、抱き合わせでいわゆる期間限定裁判という新たな制度が盛り込まれていました。審理期間を六か月に区切るという諸外国に例を見ないものです。これで裁判の公正さ、適切さが維持されるのか、新しい制度だけに、立法事実を踏まえた上でのしっかりとした検証と議論が必要だったはずですが、短期間の日程で押し切りました。
刑法や民法といった基本法は、国家の、国家と社会の骨格を形成するものです。一たび成立すれば、数十年あるいは百年単位で使われる可能性があります。だからこそ、立法府においては、あらゆる観点から徹底した議論が必要であるはずです。にもかかわらず、重要事項を抱き合わせで盛り込んだ改正案を国会に提出し、短い期日で成立させてしまうという手法を多用することは、明らかに国会軽視であり、これでは熟議などしようがありません。
民主主義を守り、発展させることの重要性については、同じ思いを共有していると思います。与党も野党もないはずです。発展させることの重要性について共有している、このことは、政府・与党の皆さんにはいま一度考えていただき、このような乱暴な法改正を慎まれるよう強く要望いたします。
今回もまた、こうした抱き合わせ法案であることもあり、法務委員会での審議は全く深まったとは言えませんでした。幾つもの重要な論点の詳細が不明のまま、今日の本会議を迎えています。
本改正案は、刑法制定当初からの刑罰である懲役と禁錮を廃止し、拘禁刑に一本化されるという明治以来の大改革です。映画やテレビドラマの法廷シーンでおなじみの被告を懲役○○年に処すといったせりふは日本社会から消えてしまうわけです。悪いことをすれば罰を受けるといういわゆる応報刑論の立場ではなく、受刑者の改善更生に重点を置いたものへと大きく変わることになります。
受刑者の改善更生と社会復帰に力点を置くこと自体は、基本的に評価すべきことではあります。しかし、どのような処遇を行い改善更生を図るのか、委員会の審議で具体的に示されることはありませんでした。拘禁刑を科された受刑者は、今後、作業と指導に服することになりますが、どのような基準に基づいてどのようなカリキュラムが組まれているかなどの詳細はこれから決めるというのです。目指すところはよしとしても、その効果のあるなしが判別できない法律を成立させるのは不安が残ります。
また、作業と指導は法律の条文上、義務とは書いてありません。しかし、受刑者がこれを拒否したら、刑務所内で懲罰を科すことができるようになります。明らかに論理が矛盾しているように思えるのですが、法務委員会の審議では納得できる答弁は得られませんでした。
ほかにも幾つも重要な点が不明なままです。
受刑者には処遇を通じて被害者の心情を理解させるといいます。どうやって理解させるのか、それで被害者とその御家族が納得するのか、政府からは具体的な答弁はありませんでした。また、悪いことをすれば罰を受けるという応報刑論からの転換を図るとの説明がありましたけれども、刑法が犯罪を防止する効果が高まるのかどうか、知見やデータのようなものも示されませんでした。明治以来となる基本法の大改正をこのような生煮えの論議で断行することについて、改めて危ういものを感じます。
もう一つの改正の柱である侮辱罪の厳罰化は、もっと大きな問題をはらんでいます。
侮辱罪には元々、公共の利害に関する場合の特例がありません。名誉毀損罪では、公共性、公益性、真実相当性などが勘案されて有罪かどうかが決まりますが、侮辱罪にはそうした特例がない上に、さらに、法定刑で懲役まで引き上げるという改定を行い、現行犯逮捕も可能にするものです。つまり、条文を読む限りでは、政治家や公務員を批判した国民を侮辱だといって逮捕することが可能になります。こんなことができるのは恐ろしいことです。
実際、選挙演説中に、安倍辞めろと声を上げた聴衆を警察が実力で排除したこともあります。今後は、公権力の側が侮辱を理由に国民を逮捕、拘束できるというのでは、この世は闇になってしまいます。この点は非常に重要ですので、法務委員会では国家公安委員会委員長に対して各会派から何度も何度も質問がなされましたが、絶対に逮捕されることはないという確約はついにありませんでした。
無論、憲法は表現の自由、言論の自由を保障していますので、公権力に対する侮辱が裁判で有罪とされることはないのかもしれません。しかし、たとえ有罪の判決が出ないとしても、不当な逮捕や勾留があり得るのであれば、表現の自由は大幅に損なわれ、萎縮してしまいます。
いかなる理由があっても、一般の国民は逮捕された瞬間に大きな不利益を受けますし、後に裁判に勝訴したとしても、回復は著しく困難になるでしょう。仕事を失い、社会的な制裁を受け、一家離散もしかねないリスクを覚悟しないと権力を批判できなくなります。社会には大きな言論萎縮が発生し、悪いものを悪いと言えない世の中になってしまいます。だからこそ、世界の潮流は、侮辱や名誉毀損を非犯罪化していくというのが昨今の動きです。今回の改正は明らかにこれに逆行するものです。
そもそも本改正案は、深刻な社会問題になっているインターネット上の誹謗中傷事案に対処するものとされます。インターネットにおける誹謗中傷には、一対一、つまり相対で行われるものが多く含まれますが、そうした事案は今回の本改正案の対象の外にあるのです。公然と人を侮辱すれば侮辱罪ですが、SNSのダイレクトメッセージなどで相手を誹謗中傷しても、本改正では対応できないというのです。これでは一体何のための改正か分からなくなります。
百歩譲って、法定刑を引き上げればインターネット上の誹謗中傷が減るという確固とした知見があるのなら改正案を提出する理由になるのでしょうが、そうしたものは全く示されませんでした。今も膨大な数の誹謗中傷が行われており、中には明らかな犯罪行為と思われる事例も多いのですけれども、警察はめったに動いてくれません。厳罰化よりも、犯罪取締りの努力の方が先だと思われますが、国家公安委員会委員長からは具体的な体制整備の話はありませんでした。
以上述べたように、確固とした改正理由もなく、根本的なところでの論理的な矛盾が目立ち、施行の詳細も決まっておらず、効果も疑わしい改正案を成立させる理由は見当たりません。重い法案の改正です。ここに挙げた疑問にきちんと答えられるように準備をして、一つ一つ丁寧に熟議を重ねた上で法改正をすべきであることを強く申し上げまして、私の反対討論を終わります。
ありがとうございました。(拍手)