2022-03-25
参議院
西田睦
政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会
西田睦の発言 (政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会)
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○参考人(西田睦君) ありがとうございます。
琉球大学学長の西田でございます。
本日は、このような意見陳述の機会をいただき、ありがとうございます。
私の生まれは京都でありますが、沖縄が復帰して八年後の一九八〇年に琉球大学理学部の助手として採用され、途中、福井県立大学あるいは東京大学での勤務もありましたけれども、合計二十二年琉球大学で過ごしてまいりました。
琉球大学は、一九五〇年五月二十二日、戦火で灰じんに帰した首里城の跡地に、沖縄県民や海外の県系人の大学設立に対する熱い思いと関係者の尽力により開学いたしました。そのような大学の学長に就任して三年になりますが、地域に貢献する大学として沖縄振興に貢献できるよう、大学運営に努めてまいりました。また、沖縄県振興審議会の会長を務めてまいりました。
本日は、お手元の資料の一ページ目に示したような内容でお話をいたします。まず、沖縄県振興審議会会長として取りまとめた答申、新たな振興計画について説明させていただきます。その後、それに関連する琉球大学などでの取組、あるいは西田個人としての思いをお話しさせていただければと思います。
一ページをめくった、A3判ですね、A3判の資料一を御覧ください。
これは、本年一月、沖縄県振興審議会会長として玉城デニー沖縄県知事に答申した新たな振興計画の概要です。資料左上の第一章、総説に、一、計画策定の意義といたしまして、(1)沖縄振興策の推進とあります。これは、特別措置法の根拠となる沖縄の特殊事情を示したものでございます。加えて、(2)日本経済発展への貢献、(3)海洋島嶼圏の特性を生かした海洋立国への貢献と、これら合わせて三つに意義を整理しております。
なお、資料には記しておりませんけれども、計画策定の意義についてもう少し説明させていただきたいと思います。
これまでの振興策の推進により社会資本の整備が進められ、この新型コロナウイルス感染症拡大前の令和元年ですけれども、この年には入域観光客数が、これは玉城さんも述べていただきましたけれども、一千万人を超える、そして完全失業率は復帰後初の二%台まで低下する、そして経済成長率は全国を上回る高い伸びを示すなど、多くの成果を上げてまいりました。
しかしながら、一人当たりの県民所得は依然として全国最低水準、子供の貧困率は全国値の約二倍の水準である、そして非正規雇用率は全国一高い水準にあることなど、なお多くの課題が残っております。
加えて、離島の条件不利性、それから基幹的公共交通システムですね、これの不備等による深刻な交通渋滞、私も毎日通勤で痛感しているところですけれども、そして米軍基地問題など、沖縄県が抱える特殊事情から派生する固有課題も残されており、沖縄振興特別措置法が最終目的とする沖縄県の自立的発展と豊かな住民生活の実現は十分とは言えない現状にあります。
このため、引き続き沖縄振興策を総合的、積極的に推進することが重要であると考えます。すなわち、沖縄県が有する我が国の南の玄関口に位置するという地理的特性、それから広大な海域を確保する海洋島嶼性、アジア諸国と交易、交流の中で培ってきた歴史的、文化的特性、これらを十分に生かし発展可能性を引き出すということ、これが沖縄県振興、発展にとどまらず、我が国全体の発展につながるものというふうに考えます。
さて、お手元の資料ですけれども、A3広げていただいておりますが、その第二章では基本的課題を、そして第三章では基本方向を整理しております。第四章、これはこの資料の右半分の中段に記載しておりますけれども、基本施策では、平成二十二年三月に県民の意見を基に策定した基本構想、すなわち沖縄二十一世紀ビジョンにおける県民が望む五つの将来像ですね、一、沖縄らしい自然と歴史、伝統、文化を大切にする島、二が心豊かで安全、安心に暮らせる島、三、希望と活力にあふれる豊かな島、四、世界に開かれた交流と共生の島、五、多様な能力を発揮し、未来を開く島のそれぞれに施策を設定しております。
このような答申を出させていただいたところでございますが、私が学長を務める琉球大学でもこれらに沿った取組を既に行っているところです。残りの時間で、人材育成という面が中心になりますけれども、幾つかの事例を御紹介させていただきます。
まず、心豊かで安全、安心に暮らせる島を目指した施策として、子供の貧困の解消に向けた総合的支援の推進があります。これに関連して、子供の貧困の負の連鎖を断ち切るための取組として、子どもの居場所学生ボランティアセンターというものがございます。詳しくは別添の資料二ですね、を御覧いただければと思いますが、このセンター、県内の子供の居場所と、それからボランティアを希望する学生とのマッチングを行っております。子供の自己肯定感の向上、子供に寄り添ったサポートを行うことで、子供の居場所への安心感が高まり、子供の自己肯定感の向上につながっております。
なお、この取組は、琉球大学だけではなくて、沖縄県内の十一の高等教育機関を構成員とする大学コンソーシアム沖縄として行っているものでありまして、私はその代表理事としてこの取組にも関わっております。
次に紹介したいのは、ICT人材を育成する取組として、数理、データサイエンス、AI教育の推進であります。詳しくは次の資料ですね、三を御覧ください。
二枚目に、受講した学生からの声がございます。データ解析の手法を学び、論理的思考力や課題発見力を身に付けた学生がこれからの沖縄で活躍してくれることを期待させてくれるコメントが出ております。元々文科系の学生なんですけれども、もうデータサイエンティストとして育ったという自覚を持ってくれております。
この取組も、琉球大学が中心ですけれども、先ほど申した大学コンソーシアム沖縄のつながりを活用して、沖縄県内の高等教育機関とも連携をして実施しております。
なお、この取組ですけれども、希望と活力あふれる豊かな島を目指した施策として、デジタル社会を支える情報通信関連産業の高度化、高付加価値化というものに関連するものであります。先ほどの子供の貧困問題も、その抜本的な解決策としては生産性向上による県民所得の改善が必要でありまして、そのような意味からも重要な取組であると認識しております。
ここからは、私個人として今後十年の沖縄振興に期待するところとして、あと二つほど事例をお話ししたいと思います。
沖縄が直面する特殊事情として、地理的事情、自然的事情などがございますが、これらは克服すべき条件不利性であると同時に、優位性へと転化する可能性も秘めたものであると考えております。今回の答申の基本施策でも、沖縄らしい自然と歴史、伝統、文化を大切にする島を目指してとありますけれども、そのような観点から、これからの沖縄振興策は沖縄の特色を生かした取組がより重要ではないかと感じています。
その一つの事例として、琉球大学での研究プロジェクト、資源循環型共生社会実現に向けた農水一体型サステーナブル陸上養殖のグローバル拠点を御紹介いたします。詳細は別添資料四を御覧ください。
これは、科学技術振興機構の共創の場形成プログラムに採択されたものでもあります。他大学や民間企業、地元自治体も参画するプロジェクトです。沖縄をベースに食とエネルギーの循環社会モデルの形成を目指す取組であり、閉鎖循環型陸上養殖、再生可能エネルギー、廃棄食料の資源化等をデジタル技術でうまく連携させて、最適な循環社会を実現することを目標としています。これにより、沖縄だけではなく、亜熱帯海洋性の島嶼モデルとして、東南アジアの循環社会モデルとなるのではないかと期待しております。
もう一つの事例として、世界トップクラスの豊かな自然、これを活用する事例を御紹介します。
昨年七月、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の世界自然遺産への登録が決定されました。この地域の生物多様性等については別添の資料五を御覧いただければと思いますが、琉球大学では、この地域内に教育研究施設を有しております。そして、長年にわたってこの地域の自然の研究と教育に深く携わってまいりました。これらは、地域にある貴重な自然の価値を科学的な観点から正確に把握し、それを後世に伝えていくための大切な基礎づくりだと考えています。
一方、この地域では、観光客の増加に伴うオーバーツーリズムに対応する適正な観光管理の実現、ヤンバルクイナやイリオモテヤマネコ等の希少種のロードキルの防止、包括的な河川再生、さらに緩衝地帯における森林伐採の適切な管理等、多くの課題も指摘されており、これらを総合的に把握し、解決していくことが不可欠です。琉球大学としても、地域社会や国際社会と協力し、教育研究を通じて、周辺地域を含む世界自然遺産登録地域の生態系や生物多様性を将来世代に引き継ぐための努力を惜しまぬ所存であります。
また、これは琉球大学の取組ということではございませんけれども、今申し上げたような取組の延長線上にあるものとして、国立自然史博物館構想がございます。詳細は別添の資料六を御覧いただければと思います。
自然史博物館を沖縄につくることは、自然史研究の観点のみならず、沖縄観光等の産業振興面、それから人材育成面、さらにはアジア地域、さらに全世界への貢献という面からも重要な取組になると確信しております。
以上、沖縄振興に関連する取組事例を幾つか御紹介してまいりました。本委員会で審議されている沖縄振興特別措置法等の一部を改正する法律案が成立し、来年度以降も引き続き国からの支援の下で県の施策が実施され、沖縄振興策が総合的、積極的に推進されることを期待しております。また、沖縄県内唯一の国立大学の長として、微力ながらその実現に貢献したいというふうに考えております。
これにて私からの説明を終わります。
御清聴ありがとうございました。