2022-04-22
参議院
加藤隆一
政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会
加藤隆一の発言 (政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会)
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○参考人(加藤隆一君) 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、私とアフリカとの関わりは、TICADⅠが開催された一九九〇年代前半に遡ります。それから約三十年間、私は、TICADの歩みとともに、JICAにおきまして、日本とアフリカの協力関係発展のために微力ながら尽力してまいりました。
本日は、現場での経験も踏まえ、これまでのTICADの変遷を振り返りながら、今後の展望について、主に開発協力の観点から申し述べさせていただきたいと思います。
まず初めに、TICADの歴史を振り返ってみたいと思います。
TICADでは、それぞれの時代の開発をめぐる国際的潮流を踏まえた議論が展開されていきます。一九九三年の最初のTICADは、冷戦後、アフリカの戦略的重要性が失われ、かつ欧米諸国が援助疲れから関心を低下させていた時代に、アフリカのオーナーシップと国際社会のパートナーシップの重要性を掲げて開催されました。
TICADのイニシアチブは、失われた二十年あるいは成長しないアフリカと呼ばれる長期的な経済低迷期にあったアフリカ諸国から新しい風として高く支持され、定期的に開催されることになります。その後、国際社会では二〇〇〇年の国連ミレニアムサミットでMDGsが採択され、二〇〇三年のTICADⅢでは、MDGsを受けて、貧困削減と人間の安全保障が強調されることになります。
潮目が変わったのは二〇〇八年、横浜で開催されたTICADⅣです。二〇〇〇年代半ばからの資源価格高騰もあり、ようやく経済成長を始めたアフリカを希望と機会の大陸として捉え、MDGsの達成とともに、経済成長を加速化する土台をつくるべく、対アフリカのODA倍増がコミットされました。また、TICADの透明性を高めるためにモニタリングシステムがビルトインされたのもTICADⅣでした。
二〇一三年のTICADⅤ以降は、アフリカの経済成長を支えるべく、官民連携による貿易投資の促進が強調され、援助から投資へ焦点が移るようになり、TICAD7でビジネスの主流化が定着します。さらに、二〇一五年の国連持続可能な開発サミットでSDGsが採択され、国際社会がレジリエントで包摂的かつ持続可能な社会を目指す開発のアジェンダにコミットし、現在に至ります。
次に、TICADの特徴について述べたいと思います。
私は、TICADには三つの側面があると考えています。
一つは、日本が言わばプラットフォーマーとして国際社会へ提供している、オープンで包摂的かつ透明なマルチのアフリカ開発フォーラムであるという側面です。共催者として、日本政府のほかに、国連、UNDP、世界銀行、アフリカ連合委員会が参画していることも特徴的ですが、TICAD7においては、五十三のアフリカ諸国、五十二の開発パートナー諸国、百八の国際機関、地域機関並びに多数の民間セクターやNGO等の市民団体など、一万人を超える参加者を得る他に類のない世界最大のアフリカ開発フォーラムとなりました。
二つ目は、日本とアフリカが向き合う対話プロセスであるという側面です。三年に一度開催をされる本会合の間には、国内外で様々なレベルの会合があります。アフリカの声に耳を傾け、日本や国際社会、民間NGOなどの考え方とすり合わせる、時間とコストが掛かる丁寧なプロセスでありますが、これは、日本、アフリカ双方にとってのラーニングプロセスとしての側面もあり、これらを通じて相互の信頼関係を深めてきたのだと感じております。
そして三つ目ですが、TICADは巨大なサラダボウルのような会合ですので、それぞれの参加者にとってそれぞれのTICADがあります。
そのような観点から、次に、JICAにとってのTICADについて述べたいと思います。
まず、アフリカにおけるJICA協力の基本的な考え方について述べたいと思います。
JICAは、組織のミッションとして、人間の安全保障と質の高い経済成長を掲げております。人々の命、暮らし、尊厳を守り、一人一人の能力強化を通じて社会づくり、国づくりへの参画を促進する人間の安全保障と、持続的な経済成長を実現し、その恩恵が貧困層を含めて広く社会に行き渡るバランスの取れた安定的な成長を促進する質の高い経済成長であります。
まずは、人間の安全保障を具現化するプロジェクトとして、みんなの学校プロジェクトを御紹介したいと思います。なお、御紹介させていただく具体的なプロジェクトにつきましては、簡単な資料がお手元にございますので、御覧いただければ幸いであります。
さて、みんなの学校プロジェクトでありますが、親が子供に良い教育を与えたいという気持ちは、願う気持ちに古今東西変わりはないと思います。西アフリカの行政が行き届かない地域において開始されたみんなの学校プロジェクトは、良い教育を与えたいと考える住民コミュニティーに対するエンパワーメントによって、住民コミュニティーと脆弱な行政との協働体制を構築することで、校舎の修繕であるとか給食の提供など学校環境を整え、最終的には子供の学力の向上を目指す取組です。
行政当局が適切な社会サービスを提供できていないがゆえに住民コミュニティーの政府不信を招いているアフリカの脆弱国においては、住民参加型のボトムアップの協力を通じて両者の信頼醸成を促進することが紛争予防にもつながる重要な視点だと考えております。
次の質の高い成長に関しては、西アフリカ成長リング回廊整備プロジェクトを御紹介いたします。
このプロジェクトは、西アフリカの国境をまたがる経済圏の中長期的な広域開発計画、マスタープランを策定をし、ハード、ソフト両面からビジネス環境を整備し、民間投資促進と持続的成長、さらには地域統合を貢献することを目標とする案件です。これまで、港湾、電力、道路など、連結性強化のためのインフラ整備を行ってきました。例えば写真のガーナのテマ交差点案件では、ドローンによる定点観測を行うなど、ICT技術も駆使した工事を日本企業が行っており、また、供用後は道路の維持管理を支援することで質の高いインフラ案件としていきたいと考えております。
さらに、ハードのみならず、国境管理を通じた貿易円滑化のための支援も実施しており、昨年から開始されたアフリカ自由貿易圏、AfCFTAの運用に向けた協力も行っているところです。
さて、その上で、JICAとしては、TICADがマルチのアフリカ開発フォーラムであることを活用して、JICAがイニシアチブを取りつつ、様々なステークホルダーと協働することによるコレクティブインパクトで課題の解決を目指したいと考えております。
例えば、二〇〇八年のTICADⅣで発表したCARD、アフリカ稲作振興のための共同体イニシアチブでは、サブサハラ・アフリカの米生産を二〇〇八年から十年間で倍増することを目標として定め、趣旨に賛同するアフリカ諸国、国際機関等の参画を得て、二〇一八年その目標を達成し、前回のTICAD7では、二〇三〇年までに更なる倍増を目指すことで合意をいたしました。
JICA単独でできることには限界があります。このような取組を他の分野でも展開してまいりたいと考えております。
さて次に、JICAが重視しているポイントについて説明したいと思います。
まず、人づくりであります。人づくりは国づくりの基礎であり、日本の発展のプロセスでも最も重視されたのが人づくりでありました。これはJICAの全ての活動の基本となります。
その上で、一つ目のポイントは、中長期的な視点に立った息の長い協力であります。
ガーナの野口英世記念医学研究所に対しましては、約四十年前の研究所設立から、人材育成と施設整備などを通じた継続した協力を行ってまいりました。コロナ禍における野口研の活躍には大変目覚ましいものがあり、ピーク時には同国のコロナPCR検査数のうち約八割がこの野口研で検査されました。また、テレビでガーナ国内向けに感染防止に対する啓発活動を行い、アフリカ連合傘下にあるアフリカCDCと連携してコロナの遺伝子解析の地域ハブとして役割を果たすなど、誇るべき成果を上げております。
二つ目のポイントは、日本の経験の活用です。
代表例としては、アフリカ・カイゼン・イニシアチブについて説明いたします。日本の高度経済成長を支えた品質・生産性向上アプローチであるカイゼン活動を普及する取組です。アフリカの二十五か国においてカイゼン活動の標準化、企業支援サービス提供モデルの構築などを行い、もってアフリカの工業化に貢献する取組です。カイゼンの普及に当たっては、アフリカ連合傘下の開発庁であるAUDA―NEPADと連携をしており、アフリカのオーナーシップを尊重しつつ、大陸全体への裨益を目指しております。
三つ目は、民間連携であります。
JICAは、中小企業・SDGsビジネス支援事業による日本企業支援に加えまして、アフリカ諸国の投資環境整備に資する協力などを強力に推進しておりますが、本日は、アフリカン・ビジネス・エデュケーション・イニシアチブ・フォー・ユース、通称ABEイニシアチブを紹介したいと思います。
ABEイニシアチブは、経団連等からの要望に応える形で、日本企業のアフリカビジネス進出に貢献する水先案内人を育成することを目的として二〇一四年度から留学生の受入れを開始、これまでに約千五百人を日本の七十七大学で受け入れました。ABEイニシアチブの留学生は日本滞在中に企業でのインターンを行うことがプログラム化されておりますが、協力企業は四百社を超え、卒業生は、日系企業へ就職したり、あるいは現地で起業したり日系企業のパートナーとなるなど、各方面で活躍をしております。
さて、現在、我々はコロナ禍とウクライナ戦争という二つの世界史に残るグローバルクライシスの真っただ中にあるわけですが、これらの危機がアフリカに与えている影響について述べたいと思います。
まずは、コロナの影響です。
アフリカにおいては、当初WHO等が予測していた感染拡大による壊滅的な状況は、アフリカ各国が連帯して助け合ったこともあり、免れることができました。しかし、二〇二〇年においては大陸全体でマイナス成長を記録するなど、大きな経済的打撃を被りました。また、国際的な支援にもかかわらずワクチン接種が約二〇%にとどまるなど、保健システムの脆弱性も露呈しました。教育機会の損失も非常に大きかったと言われております。
さらに、ウクライナ戦争によって、小麦や植物油などの食料あるいは燃料の国際市場価格の高騰による人々の暮らしへの影響は大きく、特に脆弱な都市のインフォーマルセクター層が動揺し、社会的な不安が広がることも懸念されます。
さらに、コロナ禍以前からアフリカにおいては民主主義の後退が各種の報告で指摘されており、また、昨年から今年にかけては複数の国で国内紛争、クーデターが起こるなど、レジティマシーに欠ける政府に対する不信が高まっているケースが見られます。
このような状況を踏まえまして、TICAD8に期待されることを述べたいと思います。
まず、二つのグローバルクライシスの中では、アフリカに対する国際社会の関心が劣後し、再びマージナライズされてしまうのではないかと懸念する声があることを申し上げたいと思います。今般のTICADは、そうしたアフリカ側の懸念を払拭し、アフリカ・アジェンダの重要性を国際社会に改めて喚起する貴重な機会になるのではないかと考えます。これが一つ目です。
二つ目は、基本に立ち返って、人間の安全保障の観点から、二つのグローバルクライシスの中で露呈したアフリカの脆弱性、脆弱層に目を向けることです。まさにSDGsの誰も取り残さない姿勢を示すことが重要だと思います。加えて、アカウンタブルで機能する政府に向けて、特に保健、教育といった公共サービスデリバリーを適切に行えるような支援を強化することが重要であり、この面ではODAの果たす役割が大きいと考えております。
三点目はビジネスです。民間企業の投資なしにアフリカの持続的開発は望むことはできません。ODAでは、民間企業が投資しやすいような環境整備、ビジネスの基盤づくりを進めていきますので、日本の民間企業には、二〇五〇年には二十四億人と世界人口の約四分の一を占めるアフリカ市場への投資を加速していただきたいと切に思っております。その際には、デジタライゼーション、STI、科学技術イノベーションやDXがキーワードになると考えております。
そして最後に、これからの日本、アフリカ関係を担う双方の若者を支援していく視点も非常に重要であることを指摘したいと思います。
最近では、ビジネスを通じたアフリカ開発への貢献を志す日本の若い世代も増えております。JICAの協力隊員の中にも、ビジネスマインドを持ち、帰国後に社会的起業を行うためアフリカに戻る隊員も多数います。このような利他性、利他的精神に富む有為な若者たちをJICAとしてもサポートをしていきたいと思っております。
御清聴ありがとうございました。