橘幸信の発言 (憲法審査会)
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○橘法制局長 衆議院法制局の橘でございます。
御指示に基づきまして、私より事務的な論点説明をさせていただきます。
お手元にA3横長の一覧表を配付してございますが、この資料及び本日の私の説明は、ただいまの新藤先生の御発言にもございましたように、新藤先生の御要請により、各会派の委員の先生方の御発言を私どもが事務的に分類、整理をして、その議論の概要をお示しするものでございます。
また、私どもが次に述べる一定の基準で分類、整理をしたものであって、それぞれ御発言された先生やその所属会派の御了承をいただいているものではございません。あらかじめ御承知おき願います。
さて、その資料作成の基準ですが、次のようなものでございます。
第一に、分類、整理の対象とした御発言は、基本的に、今国会の十一月十日及び十七日の各会派一巡目の先生方の御発言といたしております。同時に、これを補う必要があると思料される場合におきましては、まず、さきの通常国会で本件に関する総括的な御発言がなされた四月七日等の一巡目の御発言でこれを補うとともに、さらに、御指示があった場合やその他論点整理に有益と思料した場合には、二巡目以降の委員の御発言も、一部ですが取り上げることといたしております。
第二に、資料の形式につきましては、各論点ごとの先生方の御発言のポイントやその比較が分かりやすくなるように比較対照表とし、同趣旨の御発言をまとめる形で要約いたしました。先生方の御発言の趣旨にたがわないように要約したつもりですが、その微妙なニュアンスまでは表現し切れていない部分もあるかと存じます。御容赦願います。
第三に、一覧表への記載に当たっては、本件に関する御発言が多かった自民、維新、公明、国民、有志の各会派所属委員に関する部分と、御発言が少なかった立憲、共産の所属委員に関する御発言を区分するとともに、それぞれの区分内における掲載順序は大会派順といたしております。
以上です。
それでは、まず、議員任期延長及びこれに関する論点の御説明に入りたいと思います。
ここでは大きく三つに区分して整理してございます。
まず、参議院の緊急集会の位置づけについてですが、自民、維新、公明、国民、有志の五会派所属の委員は共に、参議院の緊急集会は、衆議院解散中の最大七十日の期間を想定した一時的、暫定的な制度であり、このことは、そこで取られた措置について衆議院の同意がないときはその効力を失うとされているところからも読み取れるといった、共通した認識を表明されているところです。その上で、いずれの会派の委員とも、議員任期延長の措置が必要と表明されています。
なお、その際、有志の会の北神先生が、任期延長の対象を衆議院議員のみと明言されている点が注目されます。参議院議員は半数が必ず残っており、その機能不全は考えにくいといった御趣旨かと存じます。
次に、議員任期延長に係る実体的要件についてですが、まず、対象とする緊急事態の範囲については、大規模自然災害、テロ・内乱、感染症蔓延、国家有事といった四つの事態と、これに加えて、これに匹敵する、あるいはこれに相当する事態を想定することについては、五会派の所属委員とも、ほぼ異論はないように見受けられます。国民民主の玉木先生も、基本的には限定列挙とすべきと述べつつも、同時に、準ずる事態として法律に定める緊急事態として追加することも一案と述べておられるところです。
そして、五会派所属の委員は共に、このような四事態プラスアルファの緊急事態が発生しただけで議員任期延長が行われるのではなくて、そのような事態の発生によって適正な選挙の実施が困難な状態が生じた場合といった加重要件を満たして初めて、議員任期延長の措置が講じられるとの見解を表明しておられます。
その上で、この適正な選挙の実施が困難な状態のより具体的な意味、内容については、例えば、広範な地域で長期間、明らかに、かつ客観的に困難な場合とか、七十日を超えた長期にわたって全国一斉の選挙が困難な場合、あるいは、選挙の一体性が害されるほどに長期にわたり困難な場合といったように、具体的な要件化を見据えた御議論に踏み込みつつある点が注目されるところです。
次に、手続的要件に入ります。
選挙実施困難要件の判断主体は、その情報収集や選挙事務執行に関する知見を有していることに鑑みて内閣とするのが適切であること。その上で、これに対する民主的統制の観点から、国会の事前の承認や議決を必要とするべきこと。この二点については、五会派所属の委員においては認識は一致しているものと拝察いたします。
なお、その際の議決要件については、自民党以外の四会派の所属委員からは、重要な事項であり、三分の二以上の特別多数決を要するべきと述べられております。
他方、この点に関して、自民党の新藤先生からの言及は現時点ではございません。
また、内閣、国会といった政治部門の判断に対する司法による事後的コントロールについては、拘束力のある憲法裁判所による関与を主張する維新の三木、岩谷両先生と、勧告にとどめつつも最高裁判所による関与を主張する国民民主の玉木先生、有志の会の北神先生の御発言がございます。
これに対して、公明党の北側先生からは、判断の基礎となる事実関係に関する材料などの情報を持たない司法の関与に疑問を呈する旨の御発言がなされているところです。
なお、この論点につきましても、現時点で自民党の新藤先生からの御発言はございません。
次に、三番目の、効果についてですが、ここではまず、議員任期延長の期間に上限を定めておくべきかといった論点がございます。
これにつきましては、一年、半年、あるいは七十日といったように、その具体的な期間について様々な御発言がなされておりますが、何らかの上限期間の設定は必要といった点については、五会派所属の委員においておおむね共通認識が形成されつつあるように思われます。
ただし、自民党の新藤先生は、議員任期を次の議会期の開始までなどとすることについても問題提起をされておりますので、この点も今後議論になっていくのではないかと拝察されます。
さて、次に、前議員の身分復活あるいは職務継続を認めるべきかどうかといった大きな論点がございます。
例えば、衆議院議員の任期満了直前に大規模自然災害が発生した場合と、解散直後に発生した場合とを念頭に置いてみましょう。
災害発生により選挙実施が困難に陥って衆議院不在が長期間にわたることが予想されるときは、いずれの場合でも、二院制国会の機能維持の必要性は同じではないか。そして、この必要性を認めることとした場合、現職議員の身分を持っていれば任期延長で対応できるが、既に延長の対象となる現職議員としての任期がなくなってしまっている場合については、身分復活あるいは職務継続の容認、これが必要となるのではないか。このような問題意識が背景にあるものと拝察いたします。
この論点については、四月七日の公明党の北側先生の御発言、そして、これを受けた十一月十七日の国民民主の玉木先生の御発言のように、解散権を行使した内閣自らによる選挙実施困難の判断は、一旦行使した解散権を撤回したものと理解することができ、これによって解散の効力が失われたものとして、前職の衆議院議員の身分は復活すると理解できるのではないのか、このような理論構成も披瀝されているところであります。
このような議論を背景にして、前議員の身分復活の必要性については、自民党を除く四会派の所属委員においては必要との認識で一致しているものと拝察いたします。
他方、自民党の新藤先生は、この論点は民主主義の根幹である議員の身分の取扱いに関する極めて重大な問題であり、更に議論が必要として、改めて各会派の意見を聞きたいと述べられているところです。
次に、議員任期延長以外の国会機能維持策に関する論点に入ります。
議員任期延長は、そもそも、選挙実施困難事態において、法律、予算の議決や行政監視機能といった国会機能を維持しようとするものですから、その前提として、国会が活動できる状態にしておかなければなりません。
このような観点から、選挙実施困難事態においては、国会が開会中であれば閉会を禁止し、また閉会中であれば即時召集あるいは自動集会をすること、また、内閣による衆議院解散を禁止すること、そして、内閣、衆議院間のチェック・アンド・バランスの手段として、解散権とセットになっている衆議院の内閣不信任決議案についても、その議決を禁止することといった一連の措置も併せて講じておくべきではないか、そうしないと首尾一貫しないのではないかといった指摘が有識者からもなされているところです。
この点については、当然のことで明文規定を設ける必要はないと述べる有志の会の北神先生も、明文規定を設けることそれ自体に反対するものではないと述べておられますので、五会派所属の委員においては、その必要性について認識は一致しているものと思われます。
なお、国会が閉会中であった場合の国会の開き方については、内閣に即時召集の義務を課する考え方と、召集行為を要せずに国会が自動的に集会する考え方の二つの見解が表明されており、今後、御議論がなされていくものと拝察いたします。
次に、大きな二つ目の分類である、議員任期延長以外のその他の緊急事態全般に関する御発言についてですけれども、ここでは大きく四つの論点にまとめました。
一つ目は、様々な緊急措置の効果を生じさせる一般的要件として緊急事態宣言の仕組みを導入するべきか、それとも、議員任期延長とか緊急政令といったように、個別の緊急措置の発動に関する要件を一つ一つ制度設計していくべきかといった論点です。維新の三木先生と国民民主の玉木先生から、前者の一般的な緊急事態宣言の御提案がなされております。
二つ目として、オンライン国会の導入や議員任期延長などによってぎりぎりまで国会機能を維持させることは当然だが、それでもどうしても国会が機能不全に陥る場合も想定され得ることに鑑みて、そのような究極の事態、いかなる事態においても国民の生命、自由、そして日々の生活を守るための備えとして、内閣の緊急政令や緊急財政処分の制度を整備しておくべきではないかといった問題提起がございます。
これについては、自民、維新、国民の所属の委員から、あらかじめ法律で定めるところによりといった委任規定の下でこれを必要とする御発言がございます。これに対して、公明党の北側先生からは、そのようなことを認めることは国の唯一の立法機関としての国会の責任を放棄することになる、あくまでも個別法の政令委任や予備費で対応するべきとの御発言がなされておりますし、また、有志の会の北神先生からは、更に議論が必要との御発言もなされています。
第三に、緊急事態においても制約できない人権規定の一覧を憲法に明記しておく必要性については、自民、維新、国民の三会派所属の委員から、必要との御発言がなされています。
最後に、四つ目の論点である緊急事態中の憲法改正の禁止については、そのような明文規定を設けることに反対しないとの有志の会を含めれば、四会派所属の委員から、必要との御発言がなされているところです。
なお、自民党の新藤先生は、憲法改正の禁止規定について、フランス憲法を始めとして多くの国の憲法に見られる規定であるが、あえて明文規定を設けておくべきかどうか、各会派の意見を聞きたいと述べておられます。
以上が、議員任期延長を中心とする緊急事態に関する御発言が多かった自民、維新、公明、国民、有志の会の五会派所属委員の御発言に関する分類、整理の概要です。
次に、立憲、共産の先生方の御発言について、その概要を御説明申し上げます。
まず、立憲民主党の中川正春先生は、緊急事態条項に関する議論について、一つ、臨時会召集義務の無視、過剰な予備費の計上、恣意的な解散権の行使などにより、憲法の意図する民主主義が機能していないこと、二つ、そのような中での緊急事態条項の提案には疑念を抱かざるを得ないこと、そして三つ目として、民主主義が正しく機能する環境をつくることこそ先であることを述べておられます。
なお、自由討議の中で、前野党筆頭幹事の奥野総一郎先生から、議員任期延長の論点に関する少し具体的な御発言もございましたので、補足して掲記してございます。
奥野先生は、まず、参議院の緊急集会の位置づけに関して、国会機能の維持については各会派共に合意しているものと理解できる、また、参議院の緊急集会は、条文上は解散時のみとされているが、任期満了時への類推適用などを説く学説も有力であると述べられた上で、このように理解された参議院の緊急集会と現行公選法上の繰延べ投票をできるだけ活用すれば、基本的には緊急事態条項は不要ではないかと述べられています。
他方、その上でと限定を付された上で、戦時等の究極の事態を念頭に、議員任期の延長を検討する余地はあるとも述べられています。そして、その際の議員任期延長の判断主体については、内閣では濫用のおそれがあり、国会ではお手盛りのおそれがあるとした上で、司法の関与が必要との有識者の見解があることに言及しておられます。
また、議員任期延長の効果に関しては、何らかの期間を定める必要があると述べられています。
さらに、国会の即時召集と衆議院解散の禁止に関連して、そもそも、緊急時に限らず、平時から国会機能の維持は必要であるとして、臨時会召集期限の明記と内閣による恣意的な解散権制限の必要性を指摘しておられます。
その他、オンライン審議については、議運で速やかな結論を得るべきと述べられています。
なお、緊急政令、緊急財政処分については、明確に不要であると述べられています。
次に、共産党の赤嶺先生の議員任期延長に関する御発言を御紹介させていただきます。
赤嶺先生におかれましては、さきの通常国会の四月七日の御発言を始め、一貫して、まず、国民の多くが改憲を重要課題と考えていない中、憲法審査会を動かすべきではないこと、そして、改憲のための議論ではなく、憲法の原則に反する政治を正す議論こそが必要であることを述べておられます。
その上で、議員任期延長についても、一つ、戦時下の一九四一年に、国会議員の任期を延長し、戦争翼賛体制がつくられたこと、二つ、だからこそ、日本国憲法は緊急事態条項を廃し、国会議員の任期を明記したことに言及された上で、この歴史は極めて重いと述べられて、議員任期延長を含めて緊急事態条項は一切不要とされています。
以上、御指示によりまして、議員任期延長を中心とした緊急事態に関して、各会派一巡目の先生方の御発言を中心とした事務的な論点説明をさせていただきました。御清聴ありがとうございました。