前川清成の発言 (憲法審査会)
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○前川委員 日本維新の会、前川清成です。
私は、緊急事態における国会議員の任期延長に関して、各党間の小さな違いを際立たせるためではなく、止揚して大きなコンセンサスを得るために、次のとおり論点を整理したいと思います。
まず第一に、日本維新の会は、緊急事態宣言が発出されていることを任期延長の前提条件と考えています。緊急事態宣言が発出される要件としては、各党と同様に、外部からの攻撃などの四類型及びその他これに匹敵する緊急事態であって、かつ緊急事態宣言の発出が特に必要があるときとしております。
すなわち、一方では、四類型に限定されず、四類型に匹敵する緊急事態を加えており、他方、四類型の発生だけでは足りず、緊急事態宣言の発出を特に必要があるときに限定しております。前者は予測困難な緊急事態に対応するためであり、後者は緊急事態宣言を必要不可欠な場合に限定するためです。
次に、緊急事態宣言発出に関する国会の関与です。
日本維新の会は、内閣が緊急事態宣言を発出し、国会には事後承認を求めることとしています。この点、緊急事態宣言に関する自民党、公明党の見解が明らかではありません。自民党は、二〇一二年の憲法改正草案と同様、緊急事態宣言の仕組みを設けた上で、その発出につき、事前又は事後に国会の承認を得なければならないとの立場でしょうか。そうであるならば、内閣が任意に事前か事後か選択できるのではなく、どのような場合は事前か事後か明記する必要があると考えます。
国会の承認が事前か事後かに関してですが、緊急事態宣言が濫用されてしまうリスクを考えたならば、発出に関しても事前承認が好ましいとは思います。しかし、外部からの攻撃や内乱などで国会を召集するいとまがない場合、大規模な自然災害や感染症の大規模な蔓延などで国会議員が国会に参集できない場合を想定したならば、事後承認でやむを得ないのではないかと考えます。
この点に関して、十一月十日、国民民主党の玉木委員は、原則事前承認、例外的に事後承認と述べておられますが、原則と例外の区分を説明していただいたならば議論が深まるのではないかと考えます。
次に、議員任期の延長などを議論する前提としての参議院緊急集会の位置づけです。
十一月十日、立憲民主党の奥野委員から、緊急集会については任期満了の場合でも招集できるとする説が有力であるとの発言がありました。しかし、先刻中川委員からも発言がありましたが、憲法五十四条は「衆議院が解散されたときは、」と明記しており、奥野委員が紹介した説は明らかに文理に反します。
私も繰り返し申し上げたとおり、法の支配とは、国民の基本的人権を保障するために、憲法というルールで国家権力を縛る仕組みです。文理に反する解釈を許容してしまったならば、憲法による縛りが骨抜きになってしまい、法の支配の否定につながるのではないでしょうか。
次に、議員任期延長の実体的要件につき、十一月十日、自民党の新藤委員は、適正な選挙実施が困難な状態と述べておられますが、日本維新の会は、選挙の適正な実施が困難であると認める特別な事情と、より厳格な要件を設定しています。
この点、十一月十日に有志の会北神委員、十一月十七日に玉木委員が更に具体的で詳細な提案をしておられますので、議論を深めるべきかと存じます。
次に、司法の関与です。
日本維新の会は、議員任期の延長に関して、日本維新の会が提案するところの憲法裁判所による憲法適合性審査を受けることを提案しています。この点、十一月十日、玉木委員と北神委員は、最高裁による勧告に言及しておられ、日本維新の会と国民民主党、有志の会は、憲法裁判所か最高裁か、あるいは法的拘束力か政治的拘束力かの違いはありますが、司法審査が必要だと考えています。
これに対して、十一月十日、自民党の柴山委員は、裁判所に民主的な基盤がないことを理由に、司法の関与はよくよく慎重に考えなければならないと述べておられます。
確かに、裁判官は選挙で選ばれていません。しかし、芦部信喜教授は「憲法訴訟の現代的展開」において、民主主義について、多数決原理に重きを置く多数派支配的民主主義と、自由、平等、それを基礎づける個人の尊厳、人権保障に重点を置く立憲民主主義に区別した後に、多数者支配は民主的な政治制度の要石と考えられてきたが、それは個人の自由、平等、生存の保障という立憲主義の目的を確立し伸長させるための手段であり、特に少数者の不可侵の人権が尊重、擁護されている体制の下でこそ、初めて実効的に機能することができる原則であることを理由に、違憲審査権について、むしろ民主的な制度だと述べておられます。
したがって、司法審査を非民主的と結論づけることは適当ではありません。
その上で、もしも国会の多数派が議員任期の延長を濫用してしまったとき、多数決原理が支配する国会の関与だけではその間違いを是正できません。したがって、日本維新の会は、議員任期の延長に関して司法審査が必要だと考えています。
司法審査に関して、十一月十七日、公明党の北側委員は、司法の関与といっても、詳細な事実関係について材料がない限り、司法だって判断できないと述べておられます。
しかし、例えば交通事故の被害者が加害者に対して損害賠償を請求するごくありふれた民事訴訟であっても、裁判所は、被害者と加害者との間に交通事故があったのかなかったのか、あったとしても被害者にどのような損害が発生したのか、何も判断材料を持ち合わせていません。だから、被害者も加害者も当事者として、裁判所へ判断材料、つまりは主張や証拠を提出し、裁判所は当事者が提出した判断材料に基づいて判決を言い渡します。
議員任期の延長に関しても同様に、司法審査を求める者やこれを争う者が裁判所へ判断材料を提出し、裁判所はこれらに基づいて判断することになります。
次に、立憲民主党と共産党に伺います。
緊急事態条項、とりわけ緊急事態における議員任期の延長に関してどのようにお考えでしょうか。その必要は明らかであり、現行憲法の足らざる点ではないのでしょうか。
緊急事態条項が基本的人権と緊張関係に立つことは承知しています。したがって、私も、十一月十日、そのときの為政者が緊急事態を口実に権力を独占してしまう危惧に言及し、だからこそ慎重で明確な要件や司法審査が必要だと申し上げました。誰も緊急事態の発生など望みませんが、神ならぬ身の我々にとっては、明日何が起こるのか、予想できません。
政府の地震調査委員会は、南海トラフにおいて今後四十年間にマグニチュード八ないし九クラスの地震が発生する確率を九〇%程度と述べています。万が一、緊急事態が発生し、現行憲法が定める統治機構では国民の生命や財産を守ることができない場合、つまりは、政治が生命を守るか憲法を守るかの選択を余儀なくされた場合、法の支配は踏みにじられてしまうのではないでしょうか。そうならないように、緊急事態でも憲法の下で国民の生命や財産を守ることができるよう、今のうちに現行憲法の足らざる点を書き加えておくべきではないでしょうか。
本年四月七日、玉木委員も、緊急事態条項が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下での恣意的な権力行使で憲法上の権利が制限され得る状態こそ危ないと述べておられます。この発言を、いわゆる護憲派の皆さんこそ、より強く共感していただけるはずです。
最後に、もう一度申し上げます。
私たち国会議員に課せられた憲法尊重擁護義務は、未来永劫、憲法の文言を一字一句変えないことではありません。憲法に基づいて国家権力が運営されること、すなわち、法の支配を守ることこそ憲法尊重擁護義務であり、立憲主義であることを是非共有したいと存じます。その上で、緊急事態においても法の支配を守るためには、緊急事態条項や緊急事態における国会議員の任期延長を現行憲法に書き加える必要があることを申し上げて、私からの意見陳述といたします。