猪瀬直樹の発言 (憲法審査会)
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○猪瀬直樹君 日本維新の会、猪瀬直樹です。
最近、インターネットで、ウクライナに千羽鶴を贈ったと、ウクライナ側では迷惑しているというのがネットで炎上しているんだけれども、そもそもそのウクライナに千羽鶴を贈ったという話自体がフェイクニュースっぽい。まあそういう混乱したその世論が起きているのは、国際貢献ということについて、ウクライナで戦争がある、日本は何をしているのかということの議論が足りないからだというふうに思うんですね。
そこで、世界の中の日本としての国際貢献をどのように憲法に位置付けるべきなのかについて考えを述べたいというふうに思っています。
かつて、一九九一年の湾岸戦争のときに、日本は多国籍軍への財政支援として百三十五億ドル資金援助を行いました。当時の為替レートで一・七兆円、年間防衛費の四・二兆円の実に四割に当たる大きな金額でした。にもかかわらず、当時のアメリカ・ブッシュ大統領が一般教書演説で言及した貢献に感謝する国々や、湾岸戦争終結後にクウェート政府が発表した感謝国リストの中に日本の名前は存在しませんでした。金だけ出して人的貢献をしない日本の姿勢に対して世界各国から批判を浴びることになったわけであります。
このことを機として、国際貢献をどう出すべきか国内でも議論となり、紆余曲折の結果、一九九二年にいわゆるPKO、PKO協力法が成立、施行されました。その後の安全保障環境の変化に伴って数度にわたり改正も行われ、戦闘状態にない各国に対しては様々な人的、物的国際協力が行われるようになりました。
内閣府の資料によれば、一九九二年のPKO協力法施行以来、日本はこれまでに二十九の国際平和協力業務に対し、延べ一万二千七百名の要員を派遣してきたということです。また、二〇一五年の国際平和支援法の成立により、国連決議に基づく諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等が実施できるようになりました。
このように、我が国の国際貢献の幅は徐々に広がりつつありますが、この間、憲法九条の制約との兼ね合いは常に議論の種となってきました。
一方、世界情勢は近年急速に緊迫の一途をたどり、本年三月にロシアがウクライナに対して侵略戦争を仕掛けるに至りました。このウクライナ戦争に対する日本政府の対応について、問題点を指摘したいと思います。
今回の戦争で、日本は民主主義陣営の一員として一体どれだけの貢献をしてきたのかと。外務省がまとめた日本政府による対ウクライナ問題支援資料によれば、自衛隊による装備品の提供として、三月八日より、防衛装備移転三原則にのっとり、防弾チョッキ、ヘルメット、防寒服、テント、カメラ、さらには衛生資材、非常用糧食、発電機等、ウクライナに提供されました。その後、四月十九日に民生用ドローンの提供、また、八月四日に新たに民生車両をウクライナ政府に提供し、小型ドローンの追加提供も発表されています。
自衛隊は、自前の装備品の中から分け与えることしか許されておらず、しかも、防衛装備移転三原則により、その品目は非殺傷の物資、つまり相手を殺してはいけないという、そういう物資に限られています。このような制約の下、車両はたったの数台、小型ドローンも追加分合わせて僅か四十数台、微々たる規模でしか貢献することはできません。
一方、外務省は、ODA予算を活用した総額約五億ドルの緊急支援を行ってはいるが、物的支援は国際機関を通じた生活必需品や保健医療、衛生関係などの物資にとどまっています。ほかに、ウクライナ政府に対する六億ドルの借款、民間から寄贈された物資の輸送協力、避難民の受入れ支援などが行われていますが、現状の制約条件の中で事務方に任せていてはこの程度の支援にとどまざるを得ないのが自明であります。
事務方の判断ではそれしかできない、厳しい言い方をすれば、ただのアリバイづくりでしかない。このようなときに必要なのは、政治の決断がなければいけないけれども、全く見えてこないです。こんな程度で本当に目に見える国際貢献を日本が果たせるかということが問題なんです。
ウクライナでは、武器弾薬はNATO諸国が支援をしています。また、報道によれば、現地の民間支援団体がウクライナ軍に対してピックアップトラックの提供を行っているとのことです。言うまでもなく、自動車は日本が世界に冠たる基幹産業の一つであります。トヨタを始め世界的なメーカーが幾つもあります。これこそが日本が貢献すべき分野ではないでしょうか。
自動車は民生品であり、防衛装備移転三原則には抵触しません。また、提供した車両が現地で何を装備されるか、どう改造されるかは現地のニーズ次第です。特に、世界中で評価の高いトヨタのいわゆるランクル、ランドクルーザーや日産のパトロールのようなクロスカントリー車、あるいはトヨタのハイラックスや日産のナバラのようなピックアップトラック、こうしたオフロードに適した車両は、前線と後方をつなぐ人員輸送や物資の補給など、幾らでも活用方法は見付かるはずです。例えば、思い切って一千台の車両をウクライナに送っても、一台一千万円としてたったの百億円です。
湾岸戦争から約三十年たちました。あのときの屈辱を二度と味わうことがないよう、機を捉えて国際的プレゼンスを向上させていくことが肝腎です。
この話は岸田総理にも届かないといけないんですが、防衛大臣や外務大臣にも勇気を持って決断していただきたい。今、具体論の話をしていますが、なぜそうしているかというと、ウクライナ戦争で日本がどれくらい国際貢献をしているのかということですよね。
北朝鮮が連日のようにミサイルを日本海に向けて発射して日本を威嚇している、中国は台湾併合への意欲を隠さなくなってきている。これらの事態に対して、何となく遠くの他人事と思っている国民に向けて今なし得る現実的な政策を提示し、その実現を目指していくことが必要なんです。
そうした国際的な視点を持たずに、憲法九条の改正に対する賛成、反対を幾ら議論しても、それは観念的なイデオロギー論争にとどまり、何をゴールとしてなぜ改正を進めていくのかの具体的なコンセンサスは決して得られない。具体的にどんな課題に対処するために憲法の何をどう変えていくのか、それを考えることが議論の前提であると強くお伝えし、私の話を終えたいと思います。
ありがとうございました。