大塚耕平の発言 (憲法審査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○大塚耕平君 国民民主党・新緑風会の大塚耕平です。
憲法審査会での議論を始めるに当たり、国民民主党として今年の参議院選挙時に公約集に明記した内容に基づいて発言します。
基本的スタンスは、人権、国民主権、平和主義を守るために憲法の規範力を高める議論を進めるという立場です。
人権分野では、憲法制定時には予測できなかった時代の変化に対応するため、人権保障のアップデートが必要と考えます。特に、人工知能とインターネット技術の融合が進む中、国際社会では個人のスコアリングや差別の問題、国民の投票行動に不当な影響を与えるネット広告の問題などが懸念されています。デジタル時代において個人の自律的な意思決定を保障し、データ基本権を守るための憲法上の議論が必要です。
統治分野に関しては、憲法上の定めが少なく規律密度が低いため、権力による恣意的な解釈、運用を許しやすいという問題があります。その弊害を是正するため、総理の解散権制限、臨時国会の召集期限明文化、憲法裁判所設置などの工夫が考えられます。
コロナ禍で顕在化した課題を解決する観点から、緊急時における行政権限を統制するための緊急事態条項を創設し、いかなる場合であっても立法府の機能を維持できるようにすることが必要と考えます。とりわけ、議員任期満了時に、外国からの武力攻撃、内乱、テロ、大規模災害、感染症の大規模蔓延等の緊急事態に直面し、選挙ができない場合を想定し、議員任期の特例延長を認める規定の創設について議論すべきと考えます。
憲法九条については、これまで九条が果たしてきた役割に配意しつつ、自衛権行使の範囲、自衛隊の保持、統制に関するルール、戦力不保持、交戦権否認を規定した二項の在り方の三つの論点について議論が必要と考えます。
国民民主党は、護憲、改憲という二元論に陥ることなく、国民の皆さんと憲法対話を続け、国会で建設的な憲法論議を進めていきます。
以上の公約集に明記した内容に加えて、二点申し述べます。
第一は、参議院の合区問題に関してです。
本年六月十日の本会議で発言した内容を要約して申し上げます。
国民民主党は、合区はやめるべきだという立場です。その論拠として、憲法に定める法の下の平等は、国民は自らが居住する都道府県代表を最低一人は参議院に選出できることだと考えるからです。法の下の平等が人口割りの単純平等であるとは、憲法にも法律にも明記されているわけではありません。
最高裁平成二十九年判決においても、各選挙区の区域を定めるに当たり、都道府県という単位を用いること自体を不合理なものとして許されないとしたものではない、議員定数の配分に当たり考慮を要する固有の要素があると指摘しているほか、令和二年最高裁判決も、都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮することを是認しています。
合区によって県代表を参議院に送り出せないことが間接的に当該県の行政機能や行政サービスの内容や水準に影響を与え得るという観点から、司法が法的根拠の明確ではない人口割り、単純平等だけで立法府の構成について見解を述べることは三権分立の観点から問題があると考えます。
憲法上の三権分立は、相互牽制にこそ意味があります。立法府、行政府の至らざる点は司法府の見識をもって臨むべきである一方、立法府の意思、行政府の責任に及ぶ問題を司法府が明文上の法的根拠がない判断基準をもって臨むことには、立法裁量権、行政裁量権の侵害という面もあります。裁判官に専門的知識が十分ではない問題や、住民に対する行政サービスやライフライン提供に関して責任が持てない問題に関して、司法が国民世論を二分するような判断を示すことは適当ではありません。
以上のような観点から、三権分立に関する議論も必要だと考えます。
第二に、中央銀行と憲法の関係についてです。
一九九八年の日銀法改正時に私自身は日銀側で仕事をしていましたが、中央銀行の独立性と憲法第六十五条の関係も論点の一つでした。すなわち、同条において「行政権は、内閣に属する。」と定めていますが、中央銀行の権能は行政権に属するか否かという議論です。
現在の日本銀行が大規模な財政ファイナンスを行っていることに加え、日銀は自力で短期間のうちに金融政策を正常化することができない状況に陥っていること、その一方で、今後の諸施策のために財源捻出も不可欠であること等を鑑み、国民民主党は、日銀保有国債の一部永久国債化という技術的手法を提案するに至っています。
加えて、ウクライナ戦争等の影響から物価高騰が恒常化する懸念がある中、今後は中央銀行の独立性と憲法第二十五条との関係も議論する必要があります。
第一項では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」、第二項では「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定していますが、中央銀行の政策が手詰まりに陥っている中で、自己正当化のために憲法第二十五条に抵触するような金融政策を続けようとする場合、第六十五条に定める行政権の帰属との関係で、中央銀行の独立性を憲法上どのように位置付けるかという論点です。
他にも憲法審査会で議論すべき論点は多岐にわたりますので、国民民主党としては、今後も憲法審査会で闊達な議論が行われることを期待します。
以上で発言を終わります。