若尾勝己の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(若尾勝己君) 埼玉県東松山市にあります特定非営利活動法人東松山障害者就労支援センター代表理事の若尾です。
 初めに、この度の厚生労働委員会におけるこのような貴重な意見陳述の機会をいただきましたことを感謝申し上げます。
 私ども特定非営利活動法人東松山障害者就労支援センターは、平成十四年十一月、法人化いたしました。この十一月でちょうど二十年を迎える団体でございます。団体の実施している主な事業活動は、障害者就業・生活支援センター事業、訪問型職場適応援助者助成金事業、障害福祉サービスにおける就労移行支援事業並びに自立訓練事業多機能型として、かつ就労定着支援事業も併せ実施しているところでございます。
 また、都道府県事業として、埼玉県障害者雇用総合サポートセンター事業、県職業能力開発事業として、知識技能習得コースや精神障害者等向け実践能力習得コースなどの障害者委託訓練も実施しております。そのほか、法人独自事業として、障害のある方の就労アセスメントを提供する事業所を県内に二か所設置、運営をしているところです。従業員数僅か三十名程度の非常に小さな団体ではありますが、就労支援に関わる様々な事業を多角的に運営、実施をしてまいりました。
 この度の総合支援法改正案に関しましては、そのような立場から、改正概要の二、障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進に関する三点、一、就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等、二、短時間労働者、括弧、週所定労働時間十時間以上二十時間未満に対する実雇用率算定等、三、障害者雇用調整金等の見直しと助成措置の強化等について御意見を述べさせていただきたいと存じます。
 まず初めに、就労アセスメントの手法を活用した支援の制度等についてですが、見直し内容に示されている就労選択支援の創設につきまして、おおむね賛成でございます。
 障害福祉サービスの利用に際しましては、サービス等利用計画の策定に基づいた支給決定が必須となりますが、就労系障害福祉サービス事業の利用決定プロセスにおいて、一般就労の経験のない障害のある方の就労継続支援B型事業の利用には、就労移行支援事業所等による就労アセスメントにより、その利用の妥当性について検討することとなっております。
 しかし、地域の様子を俯瞰してみると、非常に形骸化している現状があると感じております。特に、特別支援学校卒業と同時に利用を希望する場合の就労アセスメントは、利用を前提とした免罪符的なプロセスとなっており、ともすれば、意中の就労継続支援B型事業の利用にストップが掛けられてしまうことを危惧した担当する進路指導教員から、このプロセスは進路指導の妨げになっているんだと、そういうことを市町村行政へ意見するという場面も散見しておりました。
 私どもが運営する障害者就業・生活支援センターは、平成二十四年度から二十六年度に実施された国の障害者就業・生活支援センターによる就労アセスメントのモデル事業に参画させていただいたところ、障害者就業・生活支援センターが行う就労アセスメントを、地域の協議会、これは障害保健福祉圏域自立支援協議会の就労支援連絡会議に当たるものなんですが、その中で、そのアセスメントの結果を協議するモデルを実施いたしました。地域における就労アセスメントの体制の構築にも貢献いたしました。現在も一部その役割を残し、その妥当性を地域で検討することとしております。
 このような経験から、就労アセスメントによる一つの結果を地域でしっかりとその妥当性について検討することや、仮に就労継続支援B型事業の利用が妥当であると判断されたとしても、継続的にその方の希望や可能性を完結させないための定点観測をすることを地域がしっかりと保障する、そんな仕組みづくりがとても重要であると考えております。
 このような観点からも、新たに制度化を検討されているこの就労選択支援サービスには期待するところですが、一方で課題もあると感じております。
 このサービスを行う事業者の該当基準はどのようになるのでしょうか。これまでも課題となっていた、自身の事業継続のためにあらゆる手で利用者獲得のための利益誘導をしようと考える事業者は少なくない中、新たに創設を検討されているこのサービスについても、同様の利益誘導のために活用しようと考える事業者が出現するということを否めません。
 そして、就労アセスメントの方法や実施するアセスメントの基準となる指標や共有のためのコンセンサスシートなど様々に氾濫している現状の中で、何を基準としてどのように評価することが妥当性のあるアセスメントとなり得るのか、また、従来の相談支援の仕組みと連動し、かつ就労支援の専門機関がその専門的な知見から障害のある方の働く力やその可能性についてアセスメントを実施した結果を地域の様々な機関が共有し、そして活用できる地域の就労アセスメント体制の構築の必要性についても、この制度化と同時にしっかりとその方向性を示唆していただきたいと考えております。
 次に、短時間労働者、括弧、週所定労働時間十時間以上二十時間未満に対する実雇用率算定等についてですが、見直し内容に示されております、週所定労働時間が特に短い精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者について、特例的な取扱いとして事業主が雇用した場合に雇用率に算定できるようにするにつきましては、おおむね賛成でございます。
 最初にお伝えいたしましたが、私どもは三十名程度の非常に小さな団体でありますが、身体障害者二名、知的障害者二名、精神障害者二名の計六名を雇用しております。
 この中で、身体障害者二名については重度身体障害のある方で、一名は筋ジストロフィーによる筋力低下の障害をお持ちの方です。現在は週平均労働時間二十五時間で就業していただいております。採用から約六年が経過いたしましたが、採用時よりも機能低下が見られ、当初の週平均労働時間三十時間から、御自身の申出により、現在の週所定労働時間まで漸減いたしました。
 もう一名は、脳性麻痺が主となる筋硬直の障害をお持ちの方です。現在は週平均労働時間九時間から十二時間ですが、やはり採用当時からは体力的な低下が見られております。特に最近では、終業後に筋硬直の度合いが高くなる日が多いことから、体調の維持のために就業と休暇を交互に確保していただいて、その休暇時には定期的にリハビリを利用する状況となっております。このようなことから、現在の週平均労働時間数がぎりぎりの状況であるということも、御本人や御家族からもお話をいただいているところです。
 このように、お伝えした私どもの従業員の様子からも、雇用率該当の短時間労働者の基準が引き下げられることは、働く機会に恵まれる可能性のある重度身体障害の方が、マイノリティーかもしれませんが、まだまだいらっしゃるのではないかというふうに考えております。
 その他、重度知的障害の方や精神障害の方も同様で、新たに働きたいと考えている対象となる方にとっては、この要求される拘束時間が引き下げられ、かつ事業主の雇用率の算定に加えられることは、働くことへの不安や自信を失った方であっても、スモールステップとなり得る可能性のあることが考えられます。
 また、既に雇用されている障害のある方にとっては、加齢や疾病による段階的な機能低下による障害の重度化が、これまでの労働時間数を下回ってしまうことで継続的な雇用を諦め、雇用から福祉へと流れざるを得なかったのが現状です。
 しかし、前述したとおり、障害のある方の段階的な機能低下に合わせた段階的な労働時間数の引下げが可能となれば、少しでも長く働く場での活躍を維持することができる、そんな可能性があると期待しているところです。
 しかしながら、一方で、課題も散見していると考えております。
 週所定労働時間数が引き下げられ、その対象となるということは、大局的に見れば、労働という社会活動参加の時間数が漸減するということでもあり、先述させていただいた就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等における見直し内容に示されております、就労中の就労系障害福祉サービスの一時利用に関連し、この労働者として確保される時間数と就労系福祉サービスの利用を通じた社会活動への参加の時間数の確保は、まさしく労働と福祉サービスの併用という観点であり、とても重要であると考えております。
 特に、より障害の重たい方々にとって、この障害は固定されているものであり、時間経過で軽減されるものではないという点からも、従来からある働く障害のある方の福祉サービス併用に関して、地方自治体の行政機関によってその対応が異ならないよう改めて事務処理に関する通達をお願いしたい、そして更なる柔軟な運用をお願いしたいと考えております。
 また、特定の企業における、雇用率ありきとする雇用機会に質が伴わないところでは、カウント確保の目的から、働く力が伴っているにもかかわらず、あえて短時間による労働にとどまらせてしまう可能性について、最初に述べさせていただいた就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等における見直し内容に示されております、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援する新たなサービスを創設し、ハローワークはこの支援を受けた者に対してアセスメント結果を参考に職業指導を実施するものとするに関連し、対象となる範囲であり、かつ短時間雇用である必要性をしっかりとアセスメントできる職業リハビリテーション機関や地域の就労支援機関等によって、短時間雇用が妥当であるという背景因子や障害特性等のエビデンスに基づくことが重要であると考えています。しっかりとその是非をフィルターに掛け、企業都合優先となる雇用にならぬよう具体的なプロセスを示唆していただきたいというふうに考えております。
 三つ目になりますが、障害者雇用調整金等の見直しと助成措置の強化について見直し内容に示されております、限られた財源を効果的に運用し、雇用の質の向上に向け、事業主による障害者の職場定着等の取組に対する支援を充実させるため、当該超過人数分の調整金や報奨金の支給額の調整、事業主の取組支援のための助成金の新設につきまして、こちらもおおむね賛成でございます。
 中小企業における障害者雇用の促進はとても重要であると考えておりますが、私たちの地域を見渡していても、なかなか進んでいないのが現状です。地域における中小企業の状況から見れば、中長期的な伴走型の支援が提供されることで障害者雇用へシフトする企業も少なくありません。助成金の措置とともに、中小企業の障害者雇用促進のための具体的な仕組みづくりについても期待しているところです。
 また、障害者の納付金制度における調整金や報奨金の状況を鑑みると、規模の大きい企業に流用されている状況があることは、需給バランスの観点から見ても是正が必要と考えております。限りある財源の有効活用のためにも、雇用の質への助成という新たな局面について、是非とも進めていただきたいと考えております。
 最後に、これら障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進には、良質な就労支援サービスを提供できる人材が必要不可欠と考えております。
 雇用と福祉施策の連携強化においても議論されてきております、雇用、福祉、横断的な就労支援専門人材の養成につきましては喫緊の課題であり、障害者就業・生活支援センターの就業支援担当者、生活支援担当者、訪問型並びに企業在籍型職場適応援助者、就労系障害福祉サービス事業所における就労支援員や就労定着支援員、その他障害のある方の就労支援に関わる人材や、企業における職業生活相談員等のより専門的な就労支援、雇用支援スキルを付与する研修の体系化や実施の早期実現、並びに、就労支援専門人材の一つでもありますジョブコーチの国家資格化へのロードマップの実現についても切にお願いしたいと考えております。
 また、制度や施策を運用するのは人でございます。現場では、障害福祉並びに障害者就労支援に携わる人材の確保が大変困難になっております。この障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進に必要となる人材の確保や養成に関しても、併せて力強く推進していただけることを期待しております。
 以上、私の意見陳述について終了とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 121014260X00920221205_020

発言者: 若尾勝己

speaker_id: 5241

日付: 2022-12-05

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会