黒田東彦の発言 (財政金融委員会)
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○参考人(黒田東彦君) このマネタリーベースの拡大につきましては、二〇一六年に行った総括的な検証でお示ししたとおり、物価安定の目標に対するコミットメント、あるいは国債買入れと併せて金融政策レジームの変化をもたらすことにより、人々の物価観に働きかけ、予想物価上昇率の押し上げに寄与してきたと考えております。これに加えて、イールドカーブコントロールの下で大規模な国債買入れを行って、長期金利を押し下げてきております。これらによって、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利を引き下げて緩和的な金融環境を実現することで需給ギャップを改善し、物価に影響を及ぼすというメカニズムが働いてきたと考えております。
実際、昨年三月に実施した点検でも確認したとおり、大規模な金融緩和が行われなかった場合と比べますと、この間の実質GDPは平均プラス〇・九から一・三%程度、消費者物価の前年比は同じくプラス〇・六から〇・七%程度押し上げられていたという試算結果を得ております。そういう意味で、量的・質的金融緩和というのは、予想物価上昇率の押し上げとともに、何といっても長期金利、名目長期金利を押し下げて、それによって実質金利を引き下げて緩和的な金融環境を実現することで需給ギャップを改善して物価に影響を及ぼすというメカニズム、これが一定程度働いてきたということは確かですが、確かに御指摘のとおり、九年半たってもというか、むしろコロナを除いたその前の段階でも、物価上昇率は二%に達していなかったわけですね。
その意味では、二%の目標が達成されていなかったということは事実なんですけれども、その背景には、やはり一九九八年から二〇一二年まで続いた長期のデフレの中で、賃金も上がらない、物価も上がらない、成長もしないという形の、賃金、物価に対する非常に消極的なマインドセットというものが深く企業あるいは組合側にも根付いていたということが影響したのではないかというふうに思っておりますが、それもこのところ少し変化の兆しが見られまして、御承知のように、連合は来年の春闘で三%のベアを目指すということを明言しておられまして、少し変化の兆しがあるのかもしれませんが、まだ二%の物価安定目標を安定的、持続的に達成する状況になっていないというのは、大変残念ですが、そのとおりであります。