林芳正の発言 (安全保障委員会)
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○林国務大臣 安全保障委員会の開催に当たり、鬼木委員長を始め、理事、委員各位に御挨拶申し上げ、我が国の安全保障政策について所信を申し述べます。
国際社会が時代を画する変化に直面する中、国際秩序の根幹が揺るがされ、国際社会は歴史の岐路に立っています。我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化することの重要性がより一層高まっています。
こうした中、昨年十二月に策定された国家安全保障戦略は、我が国の安全保障に関わる総合的な国力の主な要素の一つとして、まず外交力を掲げています。我が国の長年にわたる国際社会の平和と安定、繁栄のための外交活動や経済活動の実績を糧に、大幅に強化される外交の実施体制の下、危機を未然に防ぎ、平和で安定した国際環境を能動的に創出するために力強い外交を展開していきます。
既に一年以上も続いているロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を脅かす暴挙です。ウクライナ各地における民間人や民間施設へのミサイル攻撃を含め、ロシアによる一連の行為は深刻な国際法違反であり、決して認められません。
また、ロシアがウクライナにおける核兵器の使用を示唆していることは極めて憂慮すべき事態です。我が国は、唯一の戦争被爆国として、ロシアによる核兵器による威嚇も、ましてや使用もあってはならないと考えています。
さらに、今般ロシアが新戦略兵器削減条約の履行を停止する旨発表したことを強く懸念しています。
侵略開始から一年を前に、私は、二月にミュンヘンにおいて、本年の日本議長国下で初となるG7外相会合を主催し、法の支配に基づく国際秩序を堅持するというコミットメントを強調しました。引き続き、G7を始めとする国際社会と緊密に連携しながら、対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推し進めていきます。
また、我が国の排他的経済水域内に落下した二月十八日のICBM級弾道ミサイル発射を含め、北朝鮮による核・ミサイル活動も活発化しています。北朝鮮が繰り返す弾道ミサイルの発射等は断じて許されず、今後とも、日米、日米韓で緊密に連携して対応していきます。
我が国の外交政策の推進に当たり、同盟国、同志国との連携は不可欠です。
まずは、日米同盟を更に深化させていきます。
一月の日米首脳会談では、我が国の新たな国家安全保障戦略等に関し、反撃能力の保有や防衛費の増額等含めて説明し、全面的な支持を得ました。また、私が出席した一月の日米2プラス2で確認した方向性に従って、日米にとって戦略的に最も重要なインド太平洋地域のポテンシャルを安定と繁栄につなげていくため、日米同盟の抑止力、対処力の強化に日米で共に取り組んでいきます。
その際、同盟調整メカニズムを通じた二国間調整の更なる強化、平時における同盟の取組、日本の反撃能力の効果的な運用に向けた日米間の協力の深化、宇宙、サイバー、情報保全分野での協力、同盟の技術的優位性の確保のための技術協力や、新興技術への共同投資などを重点的に進めていきます。また、米国による拡大抑止が信頼でき、強靱なものであり続けることを確保するための努力も続けていきます。さらに、日本における米軍の態勢の一層の最適化に向けた取組を進めるとともに、普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し辺野古移設を進めるなど、地元の負担軽減と在日米軍の安定的駐留に全力を尽くします。
また、昨年立ち上げた経済版2プラス2を通じて、外交、安全保障と経済を一体として議論し、経済安全保障を含む日米共通の課題について、一層連携を強化していきます。
さらに、ASEAN諸国、豪州、インド、英国、フランス、ドイツ、EU、NATOを始め、基本的価値を共有する国々、パートナーとの協力関係を更に強化し、そのネットワーク化も進めていく考えです。インド太平洋地域における法の支配に基づく自由で開かれた秩序の維持強化により、地域全体、ひいては世界全体の平和と繁栄を確保していくことが重要です。今後も、日米豪印を始め、このような考え方を共有する国々とも連携しながら、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組を強化していきます。
近隣諸国等との間の懸案の解決も重要な課題です。
日本と中国の間には、様々な可能性とともに、尖閣諸島情勢を含む東シナ海、南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、中国による我が国周辺での一連の軍事活動、特に、排他的経済水域を含む日本近海への弾道ミサイルの着弾、また、中国が飛行させたと強く推定される我が国領空内で確認されていた特定の気球型の飛行物体を含め、数多くの課題や懸案が存在しています。また、台湾海峡の平和と安定も重要です。
特に、尖閣諸島周辺の我が国領海で独自の主張をする海警船舶の活動は、国際法違反であり、断じて認められません。我が国としては、我が国の平和と安定、尖閣諸島を含む我が国の領土、領空、領海を、日米同盟を基軸としつつ、しっかりと守り抜いていくと同時に、中国に対しては、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めていきます。
南シナ海をめぐる問題についても、緊張を高めるいかなる行為にも強く反対し、力や威圧によらず、国際法に基づき紛争を平和的に解決することが重要であると改めて強調していきます。今後も、中国の不透明かつ急速な軍事力の増強や活発化する活動を注視しつつ、その透明性の向上を働きかけていきます。
韓国は、国際社会における様々な課題への対応に協力していくべき重要な隣国です。北朝鮮への対応等を念頭に、安全保障面を含め、日韓、日米韓の戦略的連携を強化していくことの重要性は、論をまちません。喫緊の懸案である旧朝鮮半島出身労働者問題について、六日、韓国政府による措置の発表がありました。日本政府としては、これを、二〇一八年の大法院判決により非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価します。今回の発表を契機とし、措置の実施とともに、日韓の政治、経済、文化等の分野における交流が力強く拡大していくことを期待しており、韓国側と緊密に意思疎通していきます。
竹島については、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も日本固有の領土であるとの基本的な立場に基づき、毅然と対応していきます。
ロシアとの関係については、日本の国益を守る形で対応していきます。日ロ関係は、ロシアによるウクライナ侵略によって厳しい状況にあり、平和条約交渉の展望を語れる状況にはありませんが、日本として、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持します。
近隣諸国との関係に加え、北朝鮮との間では、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化の実現を目指します。北朝鮮が前例のない頻度と態様で弾道ミサイル発射を繰り返していることは断じて容認できず、今後とも、米国を始めとする国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の非核化を目指します。政権の最重要課題である拉致問題は時間的制約のある人道問題です。全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、全力で取り組みます。
地域、国際社会が抱える諸課題への対応にも全力で取り組みます。
中東の平和と安定は、我が国を含む国際社会の平和と繁栄に不可欠です。引き続き、これまで中東各国と築いてきた良好な関係を生かし、米国を始めとする関係国とも連携しつつ、中東の緊張緩和と情勢の安定化に向け、積極的な外交努力を展開していきます。
また、中東地域に原油輸入の約九割を依存する我が国を含め、世界経済の安定と成長にとり不可欠であるエネルギーの安定供給、そして、これを支える中東地域における航行の安全の確保に万全を期してまいります。
核軍縮・不拡散については、ヒロシマ・アクション・プランを始め、核兵器のない世界に向けた現実的かつ実践的な取組を進めていきます。国際賢人会議等の取組を進めていくとともに、G7広島サミットで力強いメッセージを発信できるよう、G7メンバー等と議論を深めていきます。
経済安全保障も岸田政権の優先課題の一つであり、昨年五月には経済安全保障推進法が成立しました。また、新たな国家安全保障戦略でも、日本の自律性の向上や、技術等に関する日本の優位性、不可欠性の確保に向けて措置を講じていくことを確認しており、その中で、外国からの経済的な威圧に対する効果的な取組を進めることも確認したところです。外務省として、安全保障政策や対外経済関係、国際法を所管する立場から、今後の情勢の変化を見据えた更なる課題について不断に検討を進めつつ、同盟国、同志国との連携強化や新たな課題に対応する規範の形成等、積極的に取り組んでまいります。
鬼木委員長を始め、理事、委員各位の御指導、御理解を心からお願い申し上げます。