折木良一の発言 (安全保障委員会)
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○折木参考人 皆さん、おはようございます。
御指名いただきました折木でございます。
今日は、このような貴重な機会をいただきまして、感謝申し上げます。
早速ですけれども、この度の防衛装備品の開発、生産のための基盤強化ということで、意見を述べさせていただきます。
昨年末、国家安全保障戦略を始めとして安保三文書が策定をされ、我が国の防衛生産・技術基盤は、防衛装備品の研究、生産、調達のため必要不可欠であり、防衛力そのものとしてその強化を求めました。また、伝統的な戦い方に加え、大規模なミサイル攻撃、ハイブリッド戦などの新しい戦い方に必要な力強い持続可能な防衛産業の構築ということで取り組んでいくことを明示されました。戦略全般を通じて、防衛産業事業というのは国の事業であり、国の防衛問題そのものであるという認識が改めて示され、大いに評価をしております。
日本においては、自衛隊は独自の工廠を保有せず、防衛装備品の生産に限らず、研究開発、調達、補給整備等に至るまで防衛産業が関与して初めて防衛力として完結できます。例えば、可動率の向上も部品不足だけの問題ではなくて、防衛産業の高度の修理能力の確保、維持が必要です。作戦活動全般を考えた場合、自衛隊は自己完結できる組織ではなく、防衛力としての防衛産業は不可欠な存在です。
それらの重要性にかかわらず、例えば、過去には厳しい予算編成の中で、無理を言えば聞いてもらえる産業界という官側の甘えもあり、防衛事業に取り組む企業のマインドを低下させていった側面もあったかもしれません。これからは、継続、参入したくなる防衛産業にしていく必要があります。こういうことは、決して、防衛産業を単に維持をするとか、あるいは優遇するための施策が目的ではなく、国家安全保障、防衛力の強化のためだというふうに思います。
まず、防衛装備品の開発、生産は一朝一夕にできるものではありませんが、特に現在の技術力の進展は目覚ましく、まさに戦い方を変えています。将来の戦い方は想像もつかないほど変化することでしょう。このような時代に、過去の基盤的防衛力構想で示した、いざというときのエクスパンド的発想では全く対応できません。自衛隊が必要とする装備を保有し、そして、それを継続的に生産できる体制を維持しておくことが最小限の条件だと思います。
今後五年間の防衛力強化の最優先課題は、現有装備品を最大限活用するための可動率の向上や弾薬の確保、そして将来の中核となる防衛能力の強化であります。それらの達成のために、防衛産業の基盤強化と前向きな取組が欠かせません。
ロシアの不法な侵攻に始まったウクライナ戦争は一年を超えました。ウクライナは二〇一四年のロシアのクリミア侵攻以来、サイバー戦対処はもちろん、軍事力整備を積極的に進めてきましたが、再度のロシアの侵攻に対処するため、現在は、ハイテクな軍事手段を活用しつつも、火力や兵力を主体とした伝統的な戦い方が継続をしています。
そして、この戦い方を支えているのは、国民の強い抵抗意識と、欧米の結束したウクライナへの軍事支援です。欧米からは、防空火器、火砲、無人機等に加え、戦車や戦闘機も投入、支援されようとしています。これからは、大国ロシアとの戦いのためにウクライナ一国の軍事力では対応できず、欧米の軍事支援が戦いの帰趨を握っていることも示しています。
一方で、我が国自身としてウクライナ戦争を見た場合、最新技術の装備に加えて、火力を主体にした従来の主要装備品を保有することや、弾薬を始めとする継戦能力の重要性を学ぶべきだと思っております。
我が国において、今回の三文書が示しますように、これから、二〇二七年度、さらには十年後まで、領域横断作戦能力等に加えて、スタンドオフ防衛能力等の防衛力の抜本的な強化を進めることになります。そのためには、官民の緊密な連携とスピーディーな取組が欠かすことはできません。
その観点からも、本法律案で示した様々なリスク対応等を考慮して、サプライチェーン調査を軸にした基盤強化の措置等の取組については大いに評価できます。特に、助成金の交付や資金貸付け等について法的、制度的、財政的裏づけを明確にしたということは画期的な施策であるというふうに思います。
昨年、経団連や防衛装備工業会が産業界の要望を取りまとめ、提言を行いました。防衛産業の位置づけを始めとして、助成金交付、研究開発促進等に向けて法整備を含めた新たな枠組みの構築が要望されておりますけれども、本法律案は、それらの多くの案件を受け入れた形になっているというふうに思います。
これから法律案の実行に当たって、まず防衛省の主導性の下に防衛産業との連携が重要だと思います。数年前には、産業界も防衛省に対して、政府の一体的な取組と緊密な官民の連携なしには防衛力の強化は達成できないと要望しておりますけれども、まさにそのとおりだと思います。
また、これから官民の取組に当たって、単なるリスク対応や過去の問題解消という捉え方ではなくて、新しい施策により防衛基盤を強化をし、更なる防衛力を高めていくということが目的であるという前向きの意識が必要だというふうに思います。今後も、よりよい実効性ある制度に、今回の審議も含めて議論をし、高めていっていただきたいというふうに思っております。
一方で、今回の法律案は、製造、生産分野が主対象であるように思えます。防衛力の基盤強化には、そのほかに、研究開発、調達制度、民生技術の活用、セキュリティークリアランス、知財管理など多くの問題が相互に関連をしています。また、既存の防衛産業に加えて、スタートアップ企業や新規企業の育成、参入も重要です。
防衛省では、利益率の見直しや防衛技術基盤の抜本的強化についても検討されておりますが、今回の法律案と連携をして、総合的な施策の推進を期待をします。そのためには、新しい時代における防衛生産・技術基盤戦略の取りまとめが必要であり、それは関連企業に対して中長期の目標を与えることにつながります。
最後に、企業にとって防衛生産等に関わることは、いまだに一種のマイナスイメージがつきまとっていることも聞き及びます。防衛省では、昨年から、防衛大臣と企業トップの意見交換会も始まりました。これからの取組や、今回の法律案、そして政治サイドからの国民の理解を深めるための努力等をお願いをして、防衛産業も、国家が本当に防衛力だと理解をしてくれた、我々の責任は重いという意識になり、それが最終的には企業の誇りとなってくれることを期待をしたいと思います。さらには、国民の理解の下、国家としての制度が整えられ、関係産業と連携した取組が強化をされることを期待をしています。
お時間をいただき、ありがとうございました。(拍手)