村山裕三の発言 (安全保障委員会)

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○村山参考人 村山と申します。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
 レジュメが配られていると思うんですけれども、防衛産業の基本問題と防衛産業強化法案というタイトルで話をさせていただきます。
 私、実は過去三十年間にわたり防衛産業の調査研究をやっておりまして、それで、この三十年間、防衛産業というのはよい状態になかったんですけれども、残念ながら大きな改革というのはなされずにここまで来たんですね。それで、今回初めて政府の方でこの問題を真摯に捉えていただいて、かなり大きな解決策を出していただいたということで、この側面は非常に私は評価しております。
 その一方で、防衛産業の研究家として、若干まだ不十分なところもありますので、そういうところも含めて今日はお話をさせていただければというふうに思います。
 まず、日本の防衛産業がどういう問題を抱えているかという、レジュメの一枚目なんですけれども、私は三つの基本問題があるというふうに考えております。
 一つ目が、世界から見てみるともう二周遅れになってしまっているという問題なんですね。
 一つ目は産業再編という問題で、冷戦後に世界の防衛産業は再編されて、有力な国際防衛企業に集約されました。これはもう、巨大企業になって、量産体制が整ったということなんですね。ところが、日本では冷戦後も産業再編は起こりませんでした。大きなものは起こっていないということなんですね。これが一つ目です。
 それから、二周目が民生技術の活用ということで、世界では一九八〇年代後半から民生技術を活用した体制へ移行しました。これは、まずアメリカが軍民統合というのを始めます。その後で、中国がこれをコピーして軍民融合ということをやり始めました。それから、韓国などもこういう戦略を取っています。ところが、日本の場合は、優れた民生技術がありながらも、まだ各国並みにはこれは進んでいないということなんですね。
 私はデュアルユース技術の専門でもありますので、防衛省それから装備庁と協力して、何とか民生技術を入れるプログラムということでつくってきたんですけれども、まだまだ世界と比べると遅れている分野があるということです。
 それから、次のレジュメですけれども、これが大きな問題で、日本の防衛産業は産業ではないという話なんですね。使われない装備品の問題点と私は呼んでいるんですけれども、産業として維持できない。それから、日本が得意とする改善ベースの開発ができない状況にあるということなんですね。
 これはどういうことかといいますと、欧米の防衛産業、これは、よい、悪いということではないんですけれども、事実として、戦争、紛争があればそこで装備品が使われるということなんですね。それで在庫がなくなって、新しい生産をする。その新しい生産をするときに戦争で使ったデータが入ってくるので、それで改善をして、よりよい兵器にしてまた売るということなので、ということは、これは産業として回るわけですよね。
 ところが、残念ながら、日本の場合は、多くの兵器が演習のみで使われる場合なんですね。ということはなかなか改善サイクルが回せないという非常に大きな問題を抱えているかと思います。
 二つ目が、コストプラス利益の契約方式の問題です。
 これは、コスト削減インセンティブがなかなか働かないということがありますし、それから、競争原理が働かずに、弱小企業も温存しているという問題があるかと思います。したがって、日本の場合は、防衛市場の規模と比べてやはり企業数が多いんですね。この辺も大きな問題かというふうに思っています。
 したがって、使われない装備品、これは残念ながら国際競争力はありません。ところが、その一方で、競争力のある装備品はどういうところかというと、やはり使われる部分なんですね。
 例えば、潜水艦。これはかなりリスキーなミッションをやっておりますので、そういうところからフィードバックが入るわけですよね。それをベースにして改善していったら、潜水艦自体も非常にクオリティーの高いものができ上がってくるということです。
 それから、レーダー。これは、日本は技術力もありますし、それから、監視で常時使っているわけですから、もう改善せざるを得ないわけですよね。そのサイクルが回っていますので、なかなかいいレーダーのシステムができ上がっているということが言えるかと思います。
 それから、次が装備品の輸出なんですけれども、日本の場合は輸出戦略が作られてこなかったという問題があります。
 武器輸出三原則というのがありまして、これをいかに緩和していくかというところに政策が絞られていって、その裏にある戦略というのはなかなか正面から議論されなかったというか、できなかったかも分からないんですね。そういう側面があります。
 本来は、まずは輸出戦略を作って、そこから規制緩和をやらないと駄目なわけですよね。戦略を作って、ここは駄目だから、ここを緩和してこういうふうにやろうとして、そういう形で進めていかなきゃならないのが、日本の場合はなかなかできなかったということです。したがって、非常に場当たり的な対応になってきて、こういう要求が来たからこう緩和しようということで、そうしている間にプリンシプルがなくなってきたということなんですね。ここは非常に大きな問題かと思います。
 したがって、何のために、どのような装備品輸出をするのか、ここをはっきりしなければ駄目だというふうに私は考えております。
 それでは、今回の法案、こういう問題に対してどういう対応をしているのかというところを次に見ていきたいと思います。
 まず、防衛産業の維持強化というところで、法案では、これは基盤強化の措置、資金の貸付け、製造施設などの国による保有というところですけれども、これは防衛産業への補助ということです、端的に言えば。これは短期的には致し方はないと思います。今の安全保障環境を考えると、それから防衛産業の状況を考えると、これは致し方ないと思いますけれども、これはあくまでも緊急治療ということですので、もう少し長期的な視野を持った改革策も同時にやらなければならないというふうに考えております。
 例えばどういうところに問題があるかといいますと、装備品製造業者の認定制度というのが今回出てくるわけですよね。ところが、これをやりますと、防衛産業のメンバーを固定化してしまう可能性があって、新規参入がしにくくなる可能性がある、こういう問題があるかと思います。それから、利益率の引上げということですけれども、これは防衛企業にとってはいいんですけれども、引き上げれば、当然、国際競争力が更になくなっていくということなんですね。
 だから、ここから何とか出口を見出さなきゃならない。これはアメリカでも同じでして、アメリカも、戦後ずっとコストプラス利益でやってきて、ここからいかに抜け出すかというのですごく努力してきたわけですよね。だから、日本も、一部やっておられますけれども、これからもっと努力をしていかなきゃならないというふうに思います。
 その中で私が興味深いと思うのが、国による製造施設などの保有ですね。これは非常に重要な部分だと思います。
 どういうことかといいますと、政府が施設を所有し、運営は防衛企業、これに任せることによってインセンティブが生まれて、競争原理が働く防衛産業への転換の第一歩になるというふうに考えております。
 これは、整備新幹線の上下分離方式を考えていただくとよく分かるんですけれども、新幹線の場合は、国と地方自治体が線路部分を整備するんですね、上のオペレーションはJRがやる。JRの経営努力で幾らでも利益が出るわけですよね。だから、防衛産業も、こういう方向に持っていければ、インセンティブが働いて、産業として機能するようになるんじゃないかということです。
 したがって、こういうことにすることによって、防衛企業への援助的投資として機能させる。だから、救済のためじゃなくて、政府が、必要なところに、これが必要だから、こういうところに持っていきたい、そのために投資をする、そこに防衛企業がついてきてもらう、そういうシステムですよね。
 それで、面白いのは、私、三十一条というのは非常に面白いと思っていまして、これは装備品だけじゃなくて民生品もそこで製造してもいいですよという条項なんですよね。これをうまくやるとデュアルユース工場みたいにできるわけです。だから、民生品も軍用品も造れる工場、これは画期的ですよね。だから、こういう方向に進めていっていただきたいということです。
 それから、次が装備移転の円滑化措置です。これも必要です。ところが、残念ながら、防衛三文書を含めて、その裏にある戦略が見えてこないということなんです、先ほどもちょっと言いましたけれども。
 それは、具体的にどういう戦略が考えられるかということで、私はもう随分昔から言っている意見なんですけれども、守る装備は日本に、こういうイメージで国際市場に出たらどうかということなんです。日本の戦略的不可欠を確立できる輸出戦略ということで、日本は守る分野に特化して競争力を向上させる。向上させることによって他国から、日本はこの分野では戦略的に不可欠だということで、日本の存在感を高めていく、そういうやり方ですね。
 それから、これは使われる装備品ですので、実績、経験に基づいた改善サイクルを回せていけます。したがって、改善サイクルを回せれば国際競争力として確立できるし、ビジネスとしても成り立っていくということなんですね。
 それから、これは専守防衛の日本の基本政策にも合致しますし、人や社会を守ることは技術者の開発意欲の向上にもつながるということです。したがって、民生企業の参入促進や予見可能性を高めることにもつながるということになるかと思います。したがって、この分野を手がければ、何の障害もなく輸出もできるということなんですね。だから、こういう世界を確立することによって、企業もここに参入できるんじゃないかというふうに考えております。
 ここまで法案絡みのところで防衛産業のお話をしてきたんですけれども、最後に、最後のレジュメのところで、全体像のお話を少し触れたいと思います。
 まず、今まで、財源問題が主となり、防衛費を効果的な装備に結びつける議論が弱かったということが言えるかと思います。実は、防衛費を装備品に結びつけるというのはより難しい問題なんですよね。だから、ここをしっかり議論していかないといけないのかなというふうに思っています。
 それでは、その基盤強化のためには、防衛費増額とともにどういうことをしなきゃならないかということなんです。
 一つ目は、防衛技術基盤の形の議論。戦略的不可欠性、自律性、これをどこで確立するかということですね。私は、一つの例として守るということを言いましたけれども、ほかもあると思うんですよね。だから、ここをどう確立していくかという議論をしなきゃならない。
 それから、防衛産業を産業として機能させるための改革。一部話をしましたけれども、ほかにもいろいろな方策があります。だからこれを、いろいろなことを試していかなきゃならないということです。
 それから、民生技術活用のための戦術ということで、クボタだとか島津、これはグローバルな優良企業ですよね。こういう企業は、もう防衛はやりたくないということで退出するわけです。これは非常にシリアスな事態でして、そういう企業をもう一度防衛分野に引き入れなきゃならない。そのためには、ちゃんとした戦術をつくって引き入れなきゃならないということが言えるかと思います。
 それから、装備品輸出の戦略。これは一つ言いましたけれども、もう一つあるのは、サプライチェーンの戦略をどうするか。今、半導体のサプライチェーンを同盟国の間でつくり始めていますけれども、恐らく、これから重要になるのは、防衛装備品のサプライチェーンを同盟国の間でどうするかという問題ですよね。ここもやはり日本が戦略を作ってちゃんとやっていくべきところだと思います。それから、国際共同開発。これももう始まっていますけれども、この中で日本が存在感を持って、ちゃんとした国際共同開発をするためには、どんな戦略が必要かということも考えていかなきゃならないと思います。
 したがって、今問われているのは、日本の経済力と技術力を生かした防衛力強化をどう考えるかということかと思います。私は、経済安全保障、そこが専門でもありますので、日本の経済安全保障の要はここにあると思います。もう一度言いますと、日本の経済力、技術力を生かして、いかに防衛力強化を進めていくかということです。
 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 村山裕三

speaker_id: 10917

日付: 2023-04-25

院: 衆議院

会議名: 安全保障委員会