山内弘隆の発言 (経済産業委員会)

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○山内参考人 山内でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。日頃からエネルギーあるいはこういった事業環境を研究する者にとって、こういう陳述の機会を与えていただいたことは大変幸せに思っております。
 まず、お手元の資料を御覧いただきたいんですけれども、一ページ目の下の部分、そこにJ・S・ミルの引用を掲載しております。これは一八四八年ですから二百年近く前ですけれども、私、経済学が専門でございまして、その経済学からこういった分野をどう見るかということについて、自分の研究分野といいますか対象を皆さんにお分かりいただくために書いております。
 ミルの「経済学原理」の中の一部に、当時のロンドンのいわゆる公益事業、水道とかあるいはガス事業というのがあったんですけれども、これについての記述がございまして、当時、こういうガスとか水道とかというのはロンドンの市内に数多く存在した。ところが、ミルが言うには、こういったことで数多く存在するよりも一つにまとめた方が効率的じゃないか、こういうようなことを言ったわけであります。まあ、非常に分かりやすい議論ではなくて、これは我々の分野では自然独占、こういうふうな言い方をするわけですけれども、その自然独占ということから公益事業の研究というのは始まっているところがございます。
 そういった前提ですので、一ページめくっていただいて、次のページの下を御覧いただきたいんですけれども、こういった公益事業の自然独占性ということから始まって、二十世紀それから二十一世紀になって大きく事業のやり方を変えてきたというのが、これは世界全体のトレンドということであります。
 我が国におきましては、電力システム改革、あるいは、エネルギーシステムということで、ガスも含んでシステム改革をするということで、そういった自然独占の状況から、競争をここに導入する。逆に、ミルとは反対の方向で、競争を導入して、そこで競争を進めることによって効率化あるいはイノベーション、こういうものが生まれるんだ、こういう議論があって、それが実施されたのが特に二十一世紀になってから、日本の場合ですと、ということだと思います。二〇一四年に電力システム改革が法的には完了した、こういうことになるわけであります。
 それで、今日ここで申し上げたいのは、私の研究分野からいうと、こういったシステム改革というのは、これは間違っていたとは思いませんけれども、一つの転換期を迎えているのではないか、こういうふうなことを皆さんに申し上げたいということであります。
 二枚目の、これはスライドの四、そこのところに電力供給の特性と安定供給というふうに書いてあります。言わずもがなでありますけれども、日本で電力を安定的に供給することの重要性、これは国民的な価値ということだというふうに思っております。この安定性というのは、容量の問題もありますし、それから、国際的なリスク、経済安全保障も含めて、安全を含めて安定供給をしていく、こういう姿勢を考えるということだと思います。
 そこで、二十一世紀になって、システム改革を進めて、競争が進んで、いろいろ効率化が進んだわけではありますけれども、大きなポイントとして、そこにありますように、需要が変動するリスクとか、あるいは供給変動のリスクというものを、マーケットだけでは耐え切れない、こういう状況が生じているのではないかというふうに考えております。
 今回、特に、国際情勢から、ウクライナ問題から世界的エネルギー価格の高騰ということがあり、これによって、昨日も東京電力の料金値上げについて議論があったところでありますけれども、こういった大きな変動が起きてくる、こういうようなことがあるということであります。特に、これに加えて、もちろん、今回の法律の主眼でありますけれども、脱炭素、長期的にこれを進めていかなければならない、こういうようなことからしますと、将来に向かっての不確実性に加えて、マーケットでどういうふうにそれを処理していくか、こういうことが問われているのが現代であるというふうに思っております。
 それで、先ほど申し上げましたように、マーケットだけでは耐え切れないところを、今、少し軌道修正する時期に来ているというのが私の主張でございまして、例えば、具体的な例で挙げた方が分かりやすいと思います、そこに長期脱炭素電源オークションというのがありますけれども、御承知のように、これは、長期的に見て脱炭素しなければいけないということで、その電源の投資を促すような仕組みをつくったということであります。二十年間ぐらい固定費の大宗の部分を何らかの形で償還すること、保障することによって、新しい電源を導入するということであります。
 さっき、マーケットの限界と言いましたけれども、我々、経済の目からすると、マーケットというのは、やはり短期的な視点というのが基本であります。十年先、二十年先、硬い言葉で言うと、異時点間の資源配分効率と書いてありますけれども、要するに、今の時点から見たときと、十年先、二十年先にどうなるべきかということ、これは、政府目標で脱炭素と言ったとしても、それぞれの事業者がどう行動するかという面においてはかなりリスクがあって、なかなかそれを実現することが難しいというのが実態だと思います。要するに、マーケットだけでは二十年先、十年先の資源配分を適正化できない、こういうことであります。
 こういったときに、そこに補整をするという意味で、何らかの形の介入、介入といいますか支援をしていく、こういうようなことの必要性がある、これが長期脱炭素電源オークションという形になっているわけであります。
 ここに競争がないかというと、そんなことはなくて、イン・ザ・マーケット、フォー・ザ・マーケットと書いてありますけれども、コンペティションというのは、まずは参入するときに、オークションですから、それぞれの電源について、オークションで安いものを選ぶ、革新的なものを選ぶ、効果的なものを選ぶ、そういうコンペティションがある。それから、脱炭素の場合には、作ったところで、これはまた卸売市場にその電源を出していく、こういうことでありますから、そこでもまた競争がある。こういうことでありますので、いろいろな意味で競争は使うんですけれども、リスクの部分を公的な負担として取ってあげる、こんなようなことが重要ではないかなというふうに思っています。
 そこで、もう一つ、変動に対する対応ということでいうと、まさに、我々が求めている再生可能エネルギーの変動性、これについてどう対応していくのかという問題があります。
 これには幾つかの手法があって、それで対応していくわけですけれども、それはもう皆さん御承知のとおりでありますけれども、一つは、ストレージでためておいて、いつでも使えるようにする、こういうやり方。もう一つは、広域的に運用することによって、それによって変動リスクを除去する、こういうやり方。それからもう一つは、もちろん、需要側をコントロールすること、デマンドレスポンスとかいろいろなやり方、これによってこれを制御するというやり方があるわけであります。
 そのために、今回の法律で書かれた、次のページをお願いしますけれども、ここから少し法律の内容について具体的にお話ししたいと思いますけれども、系統整備について、これを進めましょうということ。マスタープランを作って、それに従って、具体的にやるのは電気事業者さんあるいはそれに関係する事業者さんということになるわけですけれども、系統整備を進めるということが提案されているわけであります。
 私は、これは非常にすばらしいことだというふうに思っております。簡単に言ってしまうと、道路を造るということに近いわけでありまして、道路を造っていろいろなところの流通を促進する、それによって経済全体を浮揚する、こういうようなことが行われるということであります。
 それで、実は私は、PFIとかPPPという分野の仕事を随分実際に今行わせていただいているんですけれども、電気の道路をどう整備するかというときに、官民協調型、パブリック・プライベート・パートナーシップ、こういうものを使ってそれを整備したらいいんじゃないかということを考えておりましたところ、今回の法案で実現されているのがそういった内容になるというふうに思っております。
 六ページのスライドは、これはお役所の方が作られた、今回の再エネ導入の環境整備ということで、特に連系線とか系統を整備するときに、かなり大きなやはり投資になる。
 次のページを開いていただくと、マスタープランが下の方にありますけれども、例えば、これは今まであったような系統の問題もあるし、それから連系線の問題もあるんですけれども、大規模に、例えば北海道の再生可能を東京に持ってくるというときに、ここはよく議論されているように、海底に直流送電線を引いて、それで持ってくるというような提案がある。これが一兆、二兆というようなことで言われるわけでありますけれども、民間企業で一兆、二兆というのは、これは大変な投資でありまして、そういったところのリスクを取ってやる、これによって道路を造ろうというのが、ここで言うPPP的な発想に基づくインフラ整備だというふうに思っております。
 それで、そこには、財源的に言うと、先にある程度一定の、事業期間中にも、建設工事の段階にもお金を交付する、あるいは貸し付ける、こういう形で資金を提供してあげて、それで、運用になった、供用になった後はそれを料金で回収していく、こういうシステムだというふうに思っています。
 それで、次のページ、ちょっと御覧になったかもしれませんけれども、スライドの七というのは、実はこれは、私、二十年ぐらい前に教科書に書いたものなんです。
 昔、この当時はまだ道路公団というのがございまして、道路公団が有料道路を整備する、そういうとき、どうしたかというと、そこに書いてありますように、Aの部分、これは建設費、これに相当するものを、借入れもあるんですけれども、基本的に政府のお金を入れて、それでその建設を行う。その後、収入が入ってくる、それから維持管理費もありますけれども。
 要するに、AとCというところを、長期にわたって、最初の基本ですと、三十年間の償還期間、こういう形でBの収入と合わせる、こういうことをしてきた。基本的にはこれと同じような仕組みで送電線を整備したらどうかということでありまして、その意味では、こういったインフラ整備の官民協調型、これが望ましいのではないかということであります。
 五ページにありますように、さっき見ていただきましたけれども、いろいろな系統整備の提案があります。これは、マスタープランをまず作りましょうということであります。マスタープランを作る重要性というのは、ある程度将来を見通して、こうなるということを示すことによって、電源の立地の促進とか開発の促進、これが成るわけで、マスタープランを作るということです。
 ただ、やみくもに造ると国民負担だけが増える、こういうことになるわけでありますので、レジュメの方にありますけれども、BバイCとか費用対効果、これをきちっと見定めながらこれを進めていくということが必要ではないかなというふうに思っております。
 それから、今回の法律で太陽光パネルの更新とか増設に対して支援をするということでありまして、ある意味では、現状で認定を受けて、それで事業をしていくところ、それが少し毀損したとか、一部ですね、それから、更にそれに増設するということもあり得るわけでありますけれども、こういったものというのは非常に重要なこれからの再生可能エネルギーの供給源になろうかというふうに思っています。
 そのために、今回、その部分を認めようということでありますが、注意すべきは、新しい増えた部分の買取り価格は、買取りとか、あるいはFIPでもそうですけれども、支援部分というのは現在のシステムのやり方。ですから、例えば、昔、一番古いのは四十円でやっていましたけれども、四十円、三十円と下がっていって、今支援の価格は随分下がりましたけれども、増設部分というのはその安い支援のやり方でありますので、こういった増設というのは、非常に安い価格で再生可能エネルギーを増やすということであります。
 昨今、さっきもちょっと言いましたけれども、御承知のとおりでありまして、エネルギー価格の高騰を受けて、電力の発電単価というのが上がって、それで、今回、七社が値上げ申請しているわけですけれども、そういうふうに変動していく高い価格と比べると、再生可能エネルギーは、確かに変動もあって、それから利用率も一〇〇%というわけにはいかないんですけれども、ただ、かなり競争的な、十分匹敵し得るような価格で電気が提供できるようになってきたということでありますので、これを生かさない手はないというふうに思うわけであります。
 ちょっと余談になりますけれども、御承知のように、今、日本の最大の期待といいますか、洋上風力というのがございますけれども、洋上風力の今第二ラウンドを、公募をして第二ラウンドをやっています。第一ラウンドで商社が中心になって提案した案件というのは、今の卸売価格よりも全く安い価格の電力の価格で発電する、こういうことになっているわけであります。
 それから、ちょっと時間があれですので少し簡単にいきますけれども、次に、事業規律の問題というのがある。
 これは、私も実は、調達価格等算定委員会というのをお手伝いしていた時期もございます。今は違いますけれども。実際に再エネを入れていくと、いろいろな不具合とか地域、周辺との摩擦、あつれきというのがあるわけでありまして、それについてはきちっと対応しよう、こういうことでありまして、ある意味ではクオリティーをちゃんと確保した上で量を増やしていく、このために必要だということで、十ページのところに少しそれについて書いてあるところでございます。
 さて、時間でございますので、最終的に私の結論的なことを申し上げると、私の立場としては、やはりこういった再生可能エネルギー、これを大量に日本に導入する、それが、第六次エネルギー基本計画でもありますように、三六から三八ぐらいまで非化石を増やそうと言っていることであるとすれば、これをどう増やしていくかというところが持続的な脱炭素戦略ということになると思います。
 それで、これは声を大にして言いたいんですけれども、これはエネルギー業界だけでやっていても恐らく達成できないんですね。いろいろな分野とカップリングをしてそれを達成するということ、政府としてはそういうことを主導していっていただきたいというのが、まず一つ私が申し上げたいこと。
 もう一つは、国を見ていると、実は私は財政制度等審議会の、国有財産というのをいろいろ議論する場にいるんですけれども、例えば行政財産で目的外使用みたいなものというのは極めて厳しかったんですけれども、だんだんと規制が緩んで、あるいは、もっと国有財産を利用しよう、こういうような立場の今議論をしていますけれども、でも、こういった脱炭素について、それをどう利用するかなんということについては、まだまだ開発の余地があるといいますか、議論の余地がある。ここは、国全体でこういう脱炭素を進めるというのであれば、そういった財産を使っていくというのが一つ重要なことだと思っています。
 皆さんに参考資料としておつけしたのは、成田空港。成田空港は、実は私、成田の出身でございまして、それでこれに非常に関心を持ってやっておりまして。
 成田空港というのは、御承知のとおり、いろいろ問題もある、騒音の問題もあるわけですけれども、非常に広大な土地をお持ちでいらっしゃるということでありまして、そこに新しい電力会社をつくって、基本的には、太陽光でありますけれども、将来的には百八十メガぐらいの発電所を造って、成田空港の電気をそれで賄おうと。
 それだけではなくて、恐らくこれは余っちゃうので、一つは、それを使って、今話題になっているSAFなどございますけれども、航空機に対する脱炭素燃料、これを作る。水素を作ってそれに持っていくという手もあるし、それからもう一つ、地元としては非常に重要だと思っていますのは、実は成田というのは地域電力会社というのを周辺市町でつくっているんですけれども、そこと連携してこの電気を地域に流す、こういうようなこともあるわけであります。
 それで、百八十メガというと十八万キロワットでありまして、本当に小さい火力発電所ぐらいのものであります。もちろん、設備利用率が違いますから、それを全部、常時発電するというわけじゃないんだけれども、非常に重要な電源になる。こういう施設、要するに、国の資産を使いながら長期的な脱炭素の電源を入れていくという、まだまだ余地があるというふうに思っていまして、これは国全体の対応としてそれをお願いしたい。それこそ本当にGXの真骨頂ではないかなというふうに思うわけであります。
 そのほかにも、ちょっと書いてありますけれども、例えば鉄道を使うとかいうこともそうですし、それから、こういう運輸分野だけではなくて営農の発電というのもあるわけでありまして、こういった、要するに範囲の経済とか書いてありますけれども、いろいろなことを組み合わせながら脱炭素を進めていく、この姿勢が非常に重要ではないかなというふうに思っております。
 ただ、このときに重要なのは、最初に申し上げたように、やはり電気というのは、全体をコントロールする、そういった、すり合わせという言葉を書きましたけれども、個別の企業が提供するものをちゃんと効率的にすり合わせて、そして安定的に供給する、これが大事でありまして、その意味では、その点での公的主体のイニシアティブ、そういうものが必要だというふうに思っております。
 そういった観点からすると、今回の法案というのは、再エネ関係のところでいうと非常に重要な法案であるというふうに考える、これを私の結論として、陳述を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 山内弘隆

speaker_id: 8182

日付: 2023-04-14

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会