大島堅一の発言 (経済産業委員会)

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○大島参考人 おはようございます。龍谷大学の大島と申します。
 私は、環境経済学を専門にしておりまして、大学院時代から、気候変動問題、原子力問題、また再生可能エネルギーの政策について研究してまいりました。
 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、GX脱炭素電源法に関する御意見を申し上げます。
 お手元の資料に従って申し上げたいというふうに思います。
 二ページ目を御覧ください。
 GX脱炭素電源法は、GX推進法と一体の関係にあると理解します。今回御意見を申し上げますGX脱炭素電源法は、いわゆる束ね法案として政府より提出されました。大変重要な法律が五つ組み合わされたものとなっております。それぞれが重大な論点を含んでいます。内容は極めて複雑で、今ほかの参考人の方からも御指摘があったように、再エネ特措法なども含まれています。こういったものを、束ね法案という形では十分な審議が尽くせないというふうに考えておりまして、非常に残念に思っております。また、広範な影響を及ぼすにもかかわらず、国民理解も進みにくいというふうに考えております。まずは、このような束ね法案とするのは大変不適切であったと言わざるを得ません。
 再エネ特措法に関して、再エネ事案に関しては、例えば長崎県の五島列島の宇久島で、いまだに一キロワットアワー当たり四十円で買い取る案件が残っておりまして、四百八十メガワット、四十八万キロワットがこれから建設されるというようなことがあります。これは、電気料金の高騰が問題になる中で、今これをやるのかというような事案が残っているという問題もあります。
 ですが、今回、束ね法案ということなので、余りそのことについてはお話しできません。したがって、特に原子力についての論点についてお話ししたいと思います。
 三ページ目を御覧ください。
 今般の法案は、気候変動対策、電気料金高騰、電力需給逼迫が背景となっております。では、これらが現在の原子力の状況で解決できるのかということが問題になります。
 四ページ目を御覧ください。
 政府は、二〇三〇年度に二〇一三年比四六%排出削減という目標を掲げています。ところが、これは現段階で、恐らく達成できないというふうに考えます。
 第六次エネルギー基本計画には、原子力を二〇から二二%にするという目標が含まれています。
 今年三月に、電力広域的運営推進機関、OCCTOが電力供給計画の取りまとめを発表いたしました。これによると、二〇二二年度の場合では、石炭三一%、LNG三六%、石油四%、原子力六%、再エネ二二%でした。これに対し、二〇三二年度の計画ですが、石炭三一%、LNG二九%、二〇二二年度のものとほぼ同じになります。原子力は五%にとどまります。再エネは三〇%に拡大します。原子力は目標に到達できない、大幅に下回るという見込みです。
 これからすれば、原子力はまず可能性に低く、これにかけるのは危険です。むしろ、世界的にも需要が大きい省エネ、またビジネス界からも期待が大きい再エネに政府は集中的に取り組むべきだというふうに考えます。
 次に、五ページ目を申し上げます。
 原子力とCO2排出削減については、国際的にも注目される研究領域です。イギリスのサセックス大学のソバクール氏は国際科学雑誌のネイチャーエナジーに、原発と再エネ、CO2排出削減の関係について論文を発表しております。これによると、これは大ざっぱに申し上げますが、原子力が増えてもCO2排出削減が国レベルではもたらされなかったということが分かっております。一方、再エネを増やした場合はCO2排出削減がもたらされました。また、再エネと原子力にはトレードオフの関係、二律背反の関係があって、原子力発電を増やすと再エネが伸びにくい傾向があるということも分かっています。
 したがって、CO2排出削減のためには、原子力も再エネも両方やるということは誤りです。再エネを増加させることこそがCO2排出削減に直結します。
 次に、六ページ目を御覧ください。
 日本の原子力発電の現状を改めて確認したいと思います。福島原発事故以降、原子力発電は大きく衰退しました。二〇二〇年度の割合は約四%にすぎません。もはや原子力は主力電源でもベースロード電源でもありません。
 次に、七ページ目を御覧ください。
 これは今後も続くと思われます。この図は私が作りましたが、原子力発電の設備容量をグラフにしたものです。縦軸に原子力発電の設備容量、横軸に年を表しています。仮に二〇三〇年度に原子力の割合を二〇から二二%にしようとすると、このグラフにありますように、大ざっぱに言うと三千万キロワット程度の原発が必要です。
 ところが、1の稼働原発を見ていただくと分かりますように、現在稼働している原発は約一千万キロワット程度しかありません。今後、2、3にあるように、運転を四十年、六十年と考えた場合、いずれ寿命に達し、次々に廃炉になっていきます。これは、どのような原発であっても必ず寿命が来ます。それに伴い、4、5のように、原発の容量は次第に減っていきます。運転延長をしたとしても、結局は同じ運命をたどります。これに加えて、実際には規制基準適合性の審査に申請していない原発が多数あります。そのため、申請した原発は現在三千万キロワットもありません。
 したがって、どんなにうまくいったとしても二〇三〇年度に原発比率二〇から二二%の目標を到達するということはありません。まさに、原発は衰退しています。その衰退に依存すれば、国家にとって重要な温暖化対策目標を達成できなくなってしまいます。
 八ページ、九ページを御覧ください。
 これは国の原子力小委員会に昨年資源エネルギー庁が示した資料の一部です。厳しい現実が具体的に示されています。これを見ますと、国内プロジェクトは中断、輸出案件は全て失敗、サプライチェーンは存続危機、さらに、大手企業が原子力事業から撤退、中核サプライヤーは次々に廃業しています。
 一方で、ここではお示ししませんが、核燃料サイクルも破綻しています。
 これらの事実に鑑みれば、原子力発電事業は衰退産業だと言えます。今後は、福島原発事故の後始末、通常炉の廃炉、放射性廃棄物の処分、また、福島原発事故から発生する膨大な放射性廃棄物、これに対して非常に長い期間、後始末事業を続けていくことが必要です。これが原子力事業の中心的な部分になります。
 次に、十ページ目を御覧ください。
 電力価格高騰の問題に移ります。電力価格の高騰は、原発とは直接の関係を持ちません。
 ちょっと急がせていただきます。済みません。
 十一ページ目ですけれども、福島原発事故後の原発に関連するコストについて見てみます。
 電力各社の原子力発電費、国費投入額、事故対策費用で、合計およそ三十三兆円が原子力に投じられてきました。あるいは、今後確実に投じられる費用も含めて三十三兆円というふうになっております。三十三兆円を一・二億人の人口で割りますと、一人当たり二十七万円、四人家族で百万円を超えています。
 これらは、主に電気料金を通じて国民負担になっています。まさに、原子力発電は電気料金の底上げ要因になっています。別の言葉で言えば、原子力は国民に経済的恩恵をもたらしているのではありません、コスト負担をもたらしているのです。
 十二ページ目を御覧ください。
 昨年の電力需給逼迫も、実は原発とは基本的に関係ありません。このときの逼迫は、十年に一度の希頻度現象が、電力施設がメンテナンスする時期に重ねて起こったということによって発生しました。原発が動いていても同じことが起こっていたと言えます。また、今冬は対策が取られていましたので、特段電力逼迫は起きませんでした。これも原発とは直接の関係がありません。
 以上の観点から、改正案について御意見を申し上げます。
 十三ページ目を御覧ください。
 原子力基本法改正案についてです。今回、大幅な変更が含まれています。書換えと言ってもいいかもしれません。
 十四ページ目です。
 まず、目的です。温暖化防止が目的に位置づけられたため、原子力がいわゆる脱炭素電源として今後用いられる可能性があります。効果がほとんど見込めない原子力を温暖化対策に含める必要は特にありません。むしろ、そのことが、先ほど申しましたように、必要な再エネ拡大を妨げる要因にすらなります。
 十五ページ目を御覧ください。
 基本方針についてです。ここでは、福島原発事故の教訓が踏まえられていません。各種の裁判で被害者側、被害を受けた人たちが提起してきた、国と事業者の福島原発事故発生責任が書かれていません。これを明記すべきです。
 十六ページ目です。
 法案では、国の責務が新設されています。全体として見れば、原子力発電促進政策を講じること、これを専ら国の責務にしています。
 十七ページ目を御覧ください。
 福島原発事故が実際に起きました。福島原発事故を踏まえれば、事故が発生したときの国や事業者の責任はどうなるのか、どう責任を取るのか。これについては、法案では全く書かれておりません。安全確保が前提と書かれていますが、事故が発生したときの国、事業者の責任が書かれていない、これは大変な問題です。これでは、対策をすれば大丈夫なのだということの安全神話の上書き、安全神話の再来と言わねばなりません。
 十八ページ目を御覧ください。
 国の講じる施策に関する部分です。国が講じる施策が非常に詳しく具体的に書かれています。これが特徴です。専ら開発に力点が置かれている、これでは原子力基本法とは呼べません。
 十九ページ目を御覧ください。
 開発法としての性格が最も表れているのが、原子力基本法第二条の三の三の改正です。ここに書かれているのが条文です。ここでは、電気事業に係る制度の抜本的改革が実施された状況においても原子力事業を安定的に行うことができるよう、国が事業環境整備をすると書かれています。
 この事業環境整備という言葉は、私、原子力政策をずっと研究しておりますが、これまで原子力発電の国民的な追加的コストが発生した場合に、追加的な国民負担制度をつくる、このときに使われる、都合よく経済産業省が使ってきた政策用語です。このような政策用語は原子力基本法にふさわしくありません。
 二十ページ目を御覧ください。
 次は、原発運転延長に関わる電気事業法改正案について述べます。
 第一の問題は、安全規制の観点から定められた運転期間に関する権限を経済産業省に移すことです。これは、新たな形で規制のとりこをつくり出すことにつながります。第二の問題点は、バックフィット義務履行のための停止期間や行政指導による自主的な停止期間、仮処分などの司法判断があったときの停止期間、そのほか予見し難い事由による停止期間など、ありとあらゆる非常に幅広い理由で停止期間を運転期間から除外するということになります。
 二十一ページ目を御覧ください。
 バックフィット義務履行のための停止期間を、一律、運転期間から除外する合理的な理由はありません。これは、法律に従う、義務だからです。
 二十二ページ目です。
 仮処分についても書かれています。仮処分というものは、行政規制によるものではなくて、私人間の問題解決のために裁判所が判断したものです。これを、幾ら仮処分が取り消されたからといって、行政側が勝手に、必要がなかったとの理由で運転期間から除外することはあり得ません。これは、裁判官の独立を定めた憲法第七十六条に抵触する可能性すらあります。大変問題な条項だと思います。
 二十三ページ目です。
 行政指導による停止期間についても書かれています。これも、行政指導に従うか従わないかというのは事業者の自主的な判断によります。当然ながら、自主的に停止した以上、自主的停止期間を運転期間から除外することに根拠はありません。
 二十四ページ目、申し上げます。
 まとめさせていただきます。以上、るる申し上げましたように、原発は、危険なだけでなく、温暖化対策として効果はほとんどなく、コストも高く、時間的に間に合いません。仮にGX脱炭素電源法が成立すれば、原子力法体系は、原子力開発推進法ないしは衰退する原子力を救済する法律に変貌することになります。
 具体的な将来は、次のようになると考えます。
 第一に、国として、原子力から撤退できなくなります。その結果、原子力発電のための国民負担が一層増加することになります。これによって、原子力事業者には深刻なモラルハザードが生じます。
 第二に、原子力事業者、産業が法律上特別視され、優遇され続けます。裏を返せば、原子力事業者以外の事業者との間で著しい不公平が発生します。これは電力自由化が進んでも起きます。そのように書かれています。
 第三に、原子力発電に関する問題が深刻化し、ますます解決困難になります。利用側から運転期間が定められるようになるため、安全性軽視が制度化されてしまいます。また、破綻した核燃料サイクルが放置され、国民負担が拡大していきます。放射性廃棄物処分に関連する地域では、要らぬ対立を引き起こすことになります。
 今、原子力発電について、このような法律を作ると、建設二十年、運転が四十年から六十年、廃炉に二十年から三十年、およそ百二十年の間、また原子力発電を新設するようなことにつながります。
 以上、御意見を申し上げましたが、このような機会をいただきまして、本当に心より感謝申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 大島堅一

speaker_id: 21033

日付: 2023-04-14

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会