橘幸信の発言 (憲法審査会)

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○橘法制局長 衆議院法制局の橘でございます。
 会長の御指示に基づきまして、私ども衆議院法制局と神崎一郎事務局長を始め衆議院憲法審査会事務局の皆さんとの共同で、お手元配付の論点資料を取りまとめさせていただきました。この資料は、あくまでも事務方の責任で取りまとめたものですが、幹事懇談会で御報告の上、各会派においても御確認いただいているものでございます。
 さて、資料の内容報告に入る前に、資料取りまとめの基本方針について御確認いただきたいと存じます。
 まず、資料の形式につきましては、昨年十二月一日の論点整理ペーパーに倣って、各論点ごとの先生方の御発言のポイントやその比較が分かりやすくなるように、比較対照表の形式とし、同趣旨の御発言をまとめる形で要約させていただきました。御発言の趣旨にたがわないよう、客観的かつ公正中立に要約したつもりですが、要約作業の性格上、先生方の御発言の微妙なニュアンスまでは表現し切れていない部分もあるかと存じます。あらかじめ御容赦願います。
 次に、資料の内容に関しましては、次のような観点から論点整理をさせていただきました。
 第一は、取り上げる御発言の範囲についてですが、一つ、前回論点整理をさせていただきました昨年十二月一日以降の御発言を中心とし、今国会の三月二日から先週六月八日まで合計十四回の憲法審査会の議事録を参照しつつ、先生方の緊急事態に関する御発言を対象として、分類、整理をいたしました。また、二つ目として、基本的に各会派の一巡目の先生方の御発言を中心としつつも、当該論点について一巡目の先生方の御発言がないような場合には、補充的に二巡目以降の先生方の御発言も対象といたしました。
 第二に、分類、整理の基準となる論点項目の設定についてですが、これも基本的には昨年十二月一日の論点整理ペーパーの分類を踏襲いたしました。ただし、今国会では参議院の緊急集会の位置づけについて深掘りした議論が行われ、これに関連する御発言がかなり多く見られましたので、この部分については論点を細区分してございます。先生方の議論の趣旨と趨勢ができるだけ分かりやすく反映されるようにいたしたつもりでございます。
 以上、よろしく御理解のほどお願い申し上げます。
 それでは、早速内容の御報告に入ってまいりたいと存じます。お手元配付の資料を御参照願います。
 今回、特に深掘りした議論が行われたのが、一の参議院の緊急集会についてでございます。1の総論を御覧ください。
 まず、自民、公明、維新、国民、有志の五会派の先生方は、1の制度趣旨について、参議院の緊急集会は総選挙の実施を前提とする平時の制度であると述べられた上で、2の五十四条のような例外規定の解釈姿勢については、厳格に解釈すべきとの意見で一致されているものと拝察いたします。
 他方、立憲の先生方は、憲法制定時、緊急政令等に代わって参議院の緊急集会が設けられたという制度趣旨に留意すべきであり、また、ルールの形式的解釈ではなく、権力の恣意的行使を防止する観点から解釈をすべきと述べられています。
 また、共産党の赤嶺先生は、参議院の緊急集会の制度趣旨は、戦前の緊急勅令等の濫用という歴史の反省に立ち、民主政治を徹底するためということにあり、その解釈も、このような規定の趣旨、目的を踏まえて考えるべきと述べられています。
 次に、2の各論に掲げる1から4までの四つの論点に入ります。
 まず、自民、公明、維新、国民、有志の五会派の先生方は、1の、解散時に限られるか、それとも任期満了時にも類推適用できるかといった場面の限定については、基本的には例外規定の厳格解釈の原則に照らして拡張解釈は望ましくないが、短期の衆議院不在という状況の共通性に鑑みれば、類推適用についても検討の余地ありとか、疑義が生じないように、任期満了時にも開催できることを憲法に明記すべきといった意見が大勢でした。
 また、2の期間限定につきましても、文言どおり最長七十日という意見で基本的に一致されていましたが、自民党の新藤先生からは、選挙が予定されている状況の中では、七十日ぴったりでなくても、多少の延長について検討の余地はある旨の留保的御発言もございました。
 次に、3の権限・案件の限定につきましては、参議院の緊急集会においては、総理の指名や条約締結承認、内閣不信任決議などは行使できないことについて、共通の認識が表明されていたと思います。議論がございましたのは、過去の緊急集会で処理された実例が暫定予算であったことを念頭に置きつつ、本予算はおろか補正予算についても権限外と考えるべきではないかといった御意見が相次ぎました。
 なお、4として、事後に衆議院の同意がないとその効力を失うといった、緊急集会で取られた措置の効力の暫定性につきましては、異論は全くなかったものと承知いたしております。
 他方、立憲の先生方は、1の場面の限定について、大石、長谷部両参考人の御発言を引用されつつ、任期満了時にも類推適用は可能であると述べられていました。2の期間限定については、七十日を超えても開催可能としつつ、同時に選挙困難事態の認定基準等についても議論すべきことが述べられ、また、3の権限・案件の限定に関しましては、七十日を超えて開催が可能であることを前提に、権限の拡大も選択肢としてあり得る旨述べられていました。
 また、共産党の赤嶺先生は、1の場面限定及び2の期間限定に関して、衆議院不在時は、憲法の規定に沿って、国民から選ばれた参議院の緊急集会で対応するべきとの意見を述べられております。
 以上を踏まえて、次に、二の議員任期延長の必要性の部分を御覧ください。
 まず、自民、公明、維新、国民、有志の五会派の先生方は、以上のように、参議院の緊急集会は、憲法の規定内容及び文言から、一時的、限定的、暫定的制度であることは明白であり、また、国会は二院制が原則であって、その平常時における例外である参議院の緊急集会では、国政選挙が実施困難となるような真の緊急事態への対応は想定されていないし、また対応できないとの御認識から、緊急事態においてこそ二院制国会を機能させることが必要であり、そのためには議員任期延長が必要と結論づけておられました。
 他方、立憲の先生方は、議員任期延長は国会議員を固定化し、内閣の独裁を生むおそれがある、本来、選挙で民意の審判を仰ぐべきであり、任期延長された議員には民主的正統性が欠けるとして、参議院の緊急集会で対応すべきとの御意見でした。
 なお、そもそもの前提として、選挙困難事態を早期に解消できるよう、国難時にも対応できる投票環境を整備しておくべきとの意見も併せて述べられていました。
 また、共産党の赤嶺先生は、議員任期延長は選挙権を停止することであり、国民主権の侵害につながり、また、権力の濫用と恣意的延命にもつながることを強調されるとともに、長期間総選挙が実施できない事態を招かない選挙制度の改善をすればよく、憲法改正による議員任期延長は本末転倒と述べられております。
 次に、三の議員任期延長の要件及び効果に関する論点を御覧ください。
 まず、自民、公明、維新、国民、有志の五会派の先生方は、1の実体的要件として、対象とすべき緊急事態の範囲は、大規模自然災害、テロ・内乱、感染症蔓延、国家有事・安全保障の四事態に、これらに匹敵する事態を加えた五事態とし、このような事態の発生によって選挙実施困難事態がもたらされることを要件としております。
 この選挙実施困難事態の要件化については、更に具体化が必要との御指摘がある一方、その要件具体化の例として、選挙の一体性が害されるほどの広範な地域において国政選挙の適正な実施が七十日を超えて困難であることが明らかであることといったように、広範性と長期性といった二要件による認定基準の具体化の提案が既になされているところです。
 次に、2の手続的要件として、内閣の認定と国会の事前承認を要することについては、五会派では意見は一致しておりますが、国会の議決要件については、議員任期の延長といった例外的事項を定める点に着目して、出席議員の三分の二以上の特別多数を要することとすべきとの見解と、二院制国会の原則に回帰する制度であることや現行憲法における両院での議決の重み及び位置づけに鑑みて、過半数でよいのではないか、更に議論が必要といった御意見とがあります。
 また、この内閣及び国会といった政治部門による判断に対して、裁判所による関与といった第三者的なチェックが必要ではないかといった論点があります。これについては、憲法裁判所による拘束的な関与とするか、最高裁判所による勧告的な関与とするか、あるいは、基本的には政治部門が責任を持って判断すべきだが、現行憲法下でも法律によって定めることが可能な客観訴訟として裁判所の一定の関与を組み込むことも検討の余地ありとする御意見が唱えられています。
 最後に、3の効果についてですが、任期延長の幅については、一年あるいは六月といった違いはありますが、上限を定めるべきこと、そして、選挙が可能な状態となったときは速やかに延長された任期は終了し、直ちに選挙を実施すべきことについては、認識が共有されているところと拝察いたします。
 また、解散後総選挙前の緊急事態の発生の際には前議員の身分復活を認めるべきことについても、意見は一致しております。
 他方、立憲の先生方からは、選挙困難事態の認定基準、効果が生じる期間と地域、そしてその認定主体について議論をすべきとの意見が述べられております。
 また、共産党の赤嶺先生からは、極端な事例を出して議論すれば間違う可能性が高いとの指摘がなされております。
 ページを繰っていただきまして、最後に、四のその他「緊急事態」に関する論点を御覧ください。
 まず、1の議員任期延長以外の国会機能維持策につきましては、自民、公明、維新、国民、有志の五会派の先生方は、選挙実施困難事態とは別に、一般的な緊急事態の要件の下での緊急事態宣言を前提に、国会の閉会禁止、即時召集や、衆議院の解散禁止、そして内閣不信任決議案の議決禁止の、いずれの措置も必要と述べられています。
 他方、立憲の先生方は、平時からの措置として、臨時会の召集期限明記や解散権制限の検討が必要との意見が述べられています。
 また、共産党の赤嶺先生からは、臨時会召集を無視しながら、緊急時の国会機能維持を言うのは無責任との発言がなされております。
 なお、昨年の国会において本審査会で議論され、森会長から細田議長に申入れがなされましたオンライン出席、オンライン国会につきましては、その検討状況について本幹事会に報告をしていただきたいとか、議運で速やかに結論を得るべきとの御意見や、憲法改正の際にはオンライン国会についても明文の規定を設けるべきとの御意見がある一方で、そもそも憲法五十六条一項の「出席」の解釈を多数で確定させるべきではないとの意見も述べられています。
 また、国民民主の玉木先生からは、ドイツ基本法を参照しつつ、フルスペックの国会がどうしても機能しない場合のミニ国会、すなわち両院合同委員会の制度に関する御提言もなされているところです。
 最後に、2のその他として掲げております緊急政令及び緊急財政処分につきましては、自民、維新、国民の三会派の先生方からは、任期延長その他の国会機能維持策を講じてもどうしても国会が機能し得ない万々が一の場合も考えられ、そのような場合において、超法規的措置に委ねることなく、立憲主義の観点を堅持しつつ、そのような緊急事態に対応するために、緊急政令や緊急財政処分の制度をも講じておくべきではないかとの御意見が述べられています。
 これに対して、有志の北神先生からは、まずは法律対応の可否の検証をすべきではないかとの御意見が述べられています。
 また、公明党の北側先生は、白紙委任的な政令委任等は不要であり、現行憲法四十一条の下で認められる個別法による具体的な政令委任や予備費で対応すべきと述べられた上で、仮に憲法に規定するとしても、そのことを確認する規定にとどめるべき、さらには、そもそも緊急政令や緊急財政処分は任期延長とは別次元の問題であり、憲法改正原案策定の際のいわゆる個別発議の原則に照らしても、別個の問題として検討されるべき論点ではないかと指摘されています。
 他方、立憲及び共産の先生方からは、緊急政令、緊急財政処分については不要との意見が述べられるとともに、それぞれ、任期延長と内容において関連する項目として一括した国民投票しか許されないとすれば問題とか、緊急政令、緊急財政処分のような緊急事態条項は、政府に権力を集中させ、国会の権能を奪い、国民権利を制限する憲法停止条項である、このような条項がなかったから対応できなかった問題はこれまで起きていないといった意見が述べられているところです。
 私からの御説明は以上です。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 橘幸信

speaker_id: 27991

日付: 2023-06-15

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会