階猛の発言 (憲法審査会)

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○階委員 立憲民主党の階猛です。
 本題に入る前に、前回の國重委員からの二つの質問にお答えしたいと思います。
 一つ目は、政党について国民投票の放送CMを全面禁止する我が党の案は、選挙の場面で政党CMは禁止されていないことと比較して、規制の厳しさが逆転しているのではないかという質問でした。
 確かに、CMという側面で見れば、本来自由であるべき国民投票運動の方が、選挙運動に比べて規制が厳しいように思われるかもしれません。しかしながら、選挙の場面と異なり、国民投票の場面では、国民投票広報協議会を通じ、政党による国民への情報提供の機会が公正かつ公平に与えられます。
 これに加え、我が党の案では、国民投票広報協議会がプラットフォームとなり、各党が参加してのオンライン等による国民向け説明会を開催したり、各党が動画や図表などを用いて意見表明するためのウェブサイトを設けたりすることなども可能となります。
 したがって、政党の表現の自由や国民の知る権利には十分配慮しており、放送CMを発信できないことだけをもって、規制の厳しさが逆転しているとは言えないと考えます。
 二つ目は、政党について国民投票のネットCMを規制し、その他の主体は自由にネットCMを発信できるとすると、言論空間がゆがめられるのではないかという質問でした。
 まず、政党以外についても、ネットCMを自由に認めるわけではありません。我が党の案では、国民投票広報協議会のガイドライン策定や名称等の表示義務、資金規制などにより、間接的にネットCMを規制します。さらに、五月二十五日の当審査会で私が申し上げたとおり、日弁連の最近の意見書や諸外国の規制状況も参考にしつつ、今後、ネットCM規制の在り方について更に検討していきます。
 加えて、先ほど申し上げたとおり、我が党の案では、国民投票広報協議会がプラットフォームとなり、ネット上の政党の発信が量的にも質的にも充実するようにします。
 以上により、言論空間がゆがめられるといった事態は避けられると考えております。
 それでは、次に、本日の本題である緊急事態について、我が党の見解を述べます。
 最初に結論を申し上げれば、衆議院の解散や任期満了に伴う総選挙が実施できない状況が相当期間継続すると見られる事態、すなわち選挙困難事態においても、議員任期の復活や延長は必要なく、参議院の緊急集会が暫定的に国会の機能を果たすべきだというのが我々の考え方です。
 ただし、立憲主義の観点から、時の権力者が恣意的に選挙困難事態を認定し、緊急集会が濫用されないような方策を講じるべきです。すなわち、選挙困難事態を予防ないし早急に解消するための方策として、選挙人名簿のバックアップシステムの構築や、避難先やネットで投票できる仕組みの導入などを行うべきです。
 また、選挙困難事態の恣意的な認定を避けるための方策として、当該事態の認定基準、認定を行う主体や手続、認定された場合にその効果が生じる期間や地域といった点については、当審査会での議論を進め、必要な法制上の手当てを講じるべきです。
 以上のとおり、選挙困難事態に備え、権力を縛るという立憲主義的な観点からあらかじめ対応方法を決めるという点については、我が党の考え方も大方の会派と一致します。
 東日本大震災に際し、私の地元の岩手県では、統一地方選挙について選挙困難事態を経験しました。私自身は、なおさらその思いを強く持っています。ただし、選挙困難事態への対応としては、議員任期の延長ではなく、参議院の緊急集会で行うべきです。今からその理由を述べます。
 お手元の資料を適宜御参照ください。
 なお、立憲の発言欄については、衆参の憲法審査会でのこれまでの議論の経過を踏まえて、現時点での我が党の到達点だというふうに御理解ください。
 第一に、議員任期の延長は、国会議員を固定化し、内閣の独裁を生むおそれがあるということです。議院内閣制の下では、解散や任期切れによりその地位を失うはずであった国会議員が議席にとどまることになり、議員の信任を受けて成立している内閣もその地位に居座ることになります。
 しかしながら、本来であれば選挙によって民意の審判を仰ぐべき国会議員は民主的正統性を欠くことになっており、それに依拠する内閣もまた、民主的正統性を欠くものと言わざるを得ません。
 この点、参議院の緊急集会で対応しても、国民の代表者から成る衆議院を欠いている以上、民主的正統性を欠くという点では変わりないとの反論もあり得ます。しかしながら、議員任期延長では、形式上二院制が保たれ、国会の権限を確定的に行使できます。それゆえに、その状態が続くことは時の政権として極めて都合のよいことであり、選挙困難事態を口実に、時の政権がいつまでも権力をほしいままにする内閣の独裁化が進むおそれ、すなわち民主的正統性を欠く状態が恒久化するおそれが生じるのです。
 一方、参議院の緊急集会で対応するのであれば、そのおそれはありません。なぜなら、憲法五十四条三項により、緊急集会で取られた措置は臨時のもので、選挙が実施された直後の国会で十日以内に衆議院の同意がなければ、その効力を失うからです。民主的正統性を欠く間は国会の権限を限定的、暫定的にしか行使できないことにして、時の政権の暴走を防ぐ趣旨だと思われます。と同時に、時の政権にとって、国会を正常に機能させるために、選挙困難事態を早急に解消しようというインセンティブも働くわけです。
 北神先生がお得意の逆説的な言い方をすれば、選挙困難事態において参議院の緊急集会で対応することは、民主的正統性を欠くがゆえに、民主的正統性を早期に取り戻せるやり方だと言えるのではないかと思います。民主的正統性を欠く状態を恒久化するおそれがある議員任期の延長に比べて、はるかに優れていることは明らかです。
 第二に、選挙困難事態において参議院の緊急集会で対応する場合、場面、期間、権限や案件、暫定性など様々な限定ないし制約があり、国政に支障を来すとの指摘がありますが、この批判は当たらないということです。
 まず、場面の限定については、憲法の文言を根拠に、任期満了時に緊急集会は開催できないという説もありますが、当審査会にお招きした両参考人が述べたとおり、任期満了時にも緊急集会は開催できるという解釈が今や多数説であり、あえて憲法を改正する必要はありません。
 また、期間の限定については、解散から四十日以内に総選挙を実施し、総選挙後三十日以内に特別国会を召集すべしという憲法の定め、いわゆる七十日ルールに縛られる必要がないとの長谷部参考人の見解に対し、立憲主義に反するなどとしてこれを批判する意見が、議員任期延長を主張する会派の委員から、参考人質疑が終わっているのに、欠席裁判のように続いています。しかしながら、そうした会派に所属する参議院議員の中にも、七十日ルールに縛られないとする見解を披瀝する方々がいらっしゃるようです。是非、会派の意見を統一していただきたいと思います。
 そして、そもそも立憲主義は、憲法によって権力を縛り、恣意的な権力行使を防ぐことにその本質があり、ルールを形式的に解釈して、恣意的な権力行使の余地が広がるように憲法を運用したり解釈したりすることは、むしろ立憲主義に反すると言わざるを得ません。
 玉木委員は、参議院の緊急集会の開催期間を七十日以内とすべき根拠として、立憲主義の見地から、憲法が定める統治機構のルールは遵守されなくてはならないとかねがね主張されています。しかし、それを貫くのであれば、永田町の常識とされる衆議院の解散は総理の専権事項という考え方こそ、憲法の統治機構のルールに明らかに反しており、問題ではないでしょうか。もし同意いただけるのであれば、この問題の解決策について共に議論していきましょう。
 なお、緊急集会について、権限や案件の限定があること、暫定性があることは、先ほど述べた民主的正統性の早期回復を促すという大きな利点があり、これを緊急集会の欠点とみなすことはできません。ただし、緊急集会の権限につき、参議院と合同で協議を行い、足らざる部分がないかを検証し、必要な法制上の手当てを講じることについては、私どもも異存ありません。
 また、本日の主要テーマからは外れますが、緊急事態条項の中に緊急政令や緊急財政処分を設けることは、既存の法制度を勘案した場合にその必要性が乏しく、民主主義や自由主義の観点からも問題であることから、明確に反対します。
 そして、緊急事態条項の名の下に、例えば議員任期の延長に関する憲法改正案と緊急政令や緊急財政処分を一括して国民投票に付すことは、主権者の国民投票の機会を不当に制限し、判断を誤らせる危険があるため、許されないということも述べておきます。
 最後になりますが、本日のテーマに限らず、国民投票法の改正案は論点を整理できる段階に来ていると思いますので、是非次回はそれを行っていただくよう、会長にお願いいたします。
 あわせて、デジタル化の進展に伴う新たな人権保障の問題、先ほども申し上げた衆議院解散や臨時国会の召集、予備費を含めた財政民主主義、地方自治や選挙制度、婚姻の在り方など、我が党が提案しているテーマについても、次期国会以降、順次、当審査会の議題としていただくことを会長にお願い申し上げ、私の発言を終わります。

発言情報

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発言者: 階猛

speaker_id: 32961

日付: 2023-06-15

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会