草場鉄周の発言 (厚生労働委員会)
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○草場参考人 おはようございます。日本プライマリ・ケア連合学会の草場でございます。
本日は、こうした貴重な機会をいただき、心より感謝しております。
それでは、資料に沿ってお話をさせていただきたいと思いますので、お手元によろしくお願いいたします。
まず、私自身は、北海道の地域医療に二十四年間従事してきた一人の家庭医であり、十六年間、家庭医療を提供する医療法人、診療所グループの経営に携わってまいりました。また、コロナ禍では、北海道や市町村と協力しながら、有症状者に対する発熱外来、自宅、施設への往診、あるいは感染防御支援、またワクチン接種をグループ診療で一貫して提供してまいりました。
また、学会の立場としましては、プライマリーケア医療に従事する医療者が自己研さんあるいは学術発信を目的として参加する団体の理事長として、二〇一九年より、全国のプライマリーケア従事者の状況というものを幅広く知る機会にも恵まれた立場でございます。
今回の改正は大変対象が広範囲にわたりますけれども、私自身は、専門とするプライマリーケアに特化した医療、介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化、この評価できる箇所と今後の更なる検討が必要な箇所について意見をさせていただき、最後に、プライマリーケア全般の課題についてコメントをさせていただきたいというふうに思ってございます。
まず最初に、介護情報の基盤整備ということで、自治体、利用者、介護事業者、医療機関などが利用者に関する介護情報を電子的に閲覧できる情報基盤の整備というお話がございますけれども、こちらは、非常に、利用者にとっても、自分自身の介護・医療情報を閲覧することができ、自らの健康状態を知ることができます。また、介護予防、重度化防止の取組につながるということも大変価値がありますので、是非進めていただきたいなと思っています。
ただ、小規模な事業者、我々も介護事業をやっているんですけれども、設備投資に対する経費、デジタル化に対応できる人材が果たしているのかという点は結構不安な部分がございますので、こういった講習なども併せて政策展開をいただきたいと思っています。
また、実際に利用者が閲覧する際には、かなり専門的な情報になってまいりますので、ちゃんと理解できるかという点。ですので、場合によっては、サービス提供者への不信感とか誤解につながるリスクがやはりあるというふうに思います。ですので、理解を促す工夫も一体的に展開いただきたいということが一つの要望でございます。
次のページです。
医療法人、介護サービス事業者の経営情報の見える化でございますけれども、こちらは、本当に、医療・介護保険政策の課題、また、コロナ感染症の流行によって明らかになった医療・介護サービスの提供体制の課題というものがたくさんございますので、まず、行政が医療、介護の置かれている現状と実態を経営的な観点から把握するという価値はあるというふうに思っています。
実際、民間医療機関が地域医療の確保のために不採算事業に取り組まざるを得ないこと、また、コロナ禍のように回避できない経営危機に陥るということもございますので、こういった公表された医療機関単位の精密な経営情報に基づいて、個別的な行政からの支援を迅速に行うということが可能になれば大変いいなと考えてございます。
また、実際、介護者の待遇改善、コロナ禍での看護師の負担増大に対する看護師の処遇の改善などもございましたけれども、医療法人、介護事業者ごとにその設定にはばらつきがかなりございます。ですので、公的資金を用いて支援をいただく場合には、医療・介護施設単位の情報がございますと大変めり張りのある待遇改善支援ができると思いますので、こちらも高く評価できるのではないかなと感じてございます。
最後に、かかりつけ医機能が発揮される制度整備について、次のページからお話をさせていただきます。
私自身は、北海道を中心に、全国のプライマリーケア従事者の話も聞きながら携わってまいりましたけれども、発熱、上気道症状を持って、コロナ感染の可能性がある患者に対して診療を提供する医療機関は、ちょっと第六波までのデータにとどまりますけれども、やはり、外来の検査、診察は四〇から五〇%程度、往診をする医療機関は一〇から二〇%程度ということで、政府あるいは日本医師会さんが必死に呼びかけたにもかかわらず、動いた医療機関は限定的だったなというのを現場では非常に肌身で感じておりました。
ワクチン接種も含めて、かかりつけ医と思って受診相談をしても、いや、あなたは違うということで断られるケースが全国的に相次ぎました。結果的に我々の仲間たちの医療機関にかかるという方が非常に多かったというものを経験してございます。ですから、かかりつけ医というのは一体何なんだろうという、医療体制上の位置づけに対して疑問が出たということを感じております。
ただ、これは決して個々の医師、医療機関のエゴとかそういった問題ではなくて、やはり構造的な問題というふうに私は考えてございます。
結果として、献身的な、一生懸命頑張っている医療機関はたくさんございますが、そういったところに感染症外来、往診、そして地域包括ケアの負担というものが集中して、多くの医師あるいは看護師たちが疲労して、対応に限界を感じたのが現実にございました。また、医療機関に到達できなかった国民の不安の高まり、また、自宅療養者がなかなか、保健所等も厳しかったのでつながらなかったという過酷な状況というのも避け難かったということを感じています。
ですので、政府あるいは関連団体が危機時に要請をしても、対応できる基盤がない医療機関というのは結局動けない。ですから、頑張ってください、何とか力をかしてくださいと一生懸命声をかけても、その機能がない、そこが一番の私は問題だったというふうに考えています。ですので、危機時であれば協定を結んで対応しますという形ではなくて、平時からその基盤をしっかり整備して、危機時にも動けるところを増やしていく、平時と危機時を分離しない議論というものを考えていただきたいと考えているわけでございます。
次のページをお願いいたします。
次は、我々の学会のメンバーでもあるんですけれども、研究がございまして、かかりつけ医機能が高いほどコロナ禍での入院リスクが低下したという全国の前向きコホート研究の結果でございます。
右のグラフを見ていただくと、かかりつけ医がない方が入院リスク一だとすると、かかりつけ医がありで、低機能、中機能、高機能とございますけれども、リスクはどんどんどんどん下がっていく。高機能のかかりつけ医を持っていた方は入院のリスクが何と四分の一ぐらいになったということで、非常に効果があったということでございます。
ということで、やはり、かかりつけ医機能の強化によって、パンデミックにおける健康状態悪化の予防だけでなく、入院医療にかかる負荷も軽減できる、結果的に入院にも非常に負荷が大きくかかったということがございますけれども、そういった意味にも役立つという研究で、海外の論文の方にも採用されたということで、非常に価値がある研究だなと考えています。
ですので、有事のときの対応というのはもちろん大事なんですが、有事でも機能する平時からのプライマリーケア提供体制の強化、これを考えていただきたい。
次のページに書いてありますように、いわゆる公衆衛生、保健行政というものは、これは法的に行われますが、一番右側にある専門医療ですね、専門外来、入院医療、集中治療、これは必要です。その間に、しっかりとしたプライマリーケア。具体的には、外来診療を包括的に行い、また、訪問診療、往診もいとわない、そして、予防医療や健康増進活動、健康な方にもサポートができる、そして、地域包括ケア、あるいは全人的なケア。こういったことをちゃんと組織的に展開できるプライマリーケアをふだんより強化すると、危機時にも専門医療や公衆衛生の負担が相当軽減できるということであると考えてございます。
次のページをお願いいたします。
ということで、私自身が考えていたのは、かかりつけ総合医ということで、国民が平時から自身の健康管理に対応するかかりつけ総合医というものを選べる、選択をする。割当てではありません。そこで、ほとんどの健康問題を相談でき、訪問診療、オンライン診療、予防医療なども支援を受けられる。そして医療機関側も、この人は選択をしてくれた患者であるということを登録をして、確認をして、日々の診療だけじゃなく有事にも保健所、行政と連携して管理ができる。また、総合病院などで各科の専門医療を受ける場合には、このかかりつけ総合医の方がしっかり専門医と連携をする枠組みをつくっていく。そして、健康管理に対する対価、いわゆる、ふだん元気なときの収入というのはございません、診療報酬はございませんので、そういったことは出来高払いにはなじまないので、そこを包括払いみたいな形で、ある程度財政的にも応援をする。こういった枠組みはどうかなと考えています。
具体的には、次のページに書いていますように、かかりつけ総合医の位置づけなんですけれども、コモンディジーズに対する幅広い検査、治療の提供、そして、健康関連データの把握、電話診療、オンライン診療への対応、また、二十四時間対応の在宅医療であったり、医療、介護の連携活動、さらに、保健事業、予防医療活動なども当然行政と連携して行ってまいります。もう一つ大事なのは、日本の中でいろいろな社会課題がございますけれども、やはり、貧富の問題、格差の問題、そしていわゆる母子家庭の問題、こういった地域が抱える社会的課題に向き合って、地域包括ケアのチームのメンバーとしてかかりつけ総合医が関わっていく、そういったことも非常に重要な役割ではないかなと考えてございます。
次のページにございますように、理想的には、このかかりつけ総合医というのはプライマリーケアの専門家である方が本当は望ましいとは思います。ただ、私どもの学会でもこういった医師を養成してございますが、残念ながらまだ千百人程度ということで、医師三十万人から見たら本当に微々たるものでございます。日本専門医機構でも総合診療専門医の養成を開始していますが、二一年にようやく百名ぐらい誕生ということで、これもまだまだ少ない状況です。ただ、十年後、二十年後はこういった医師たちが将来の日本のプライマリーケアを担っていくのではないかなと私自身は期待をしているところでございます。
こういった情勢ですので、このプライマリーケアの専門家が増えるまでの間は、現にプライマリーケアを担っておられる開業医の先生方あるいは病院勤務医の先生方を対象に、公的な研修、認証制度で位置づけることが重要だと考えています。
次のページのように、かかりつけ医機能報告制度の概要、これは、先ほどもうお話がございましたように、既に御存じの内容ですので、ちょっと省略をさせていただきます。
その次のページ、十二ページをお願いします。
今回の制度の評価できる点でございますけれども、一九八五年の家庭医に関する懇談会以来、かかりつけ医というちょっと曖昧な表現で抽象的に議論されてきたプライマリーケアについて、少なくとも、かかりつけ医機能という表現で全国共通の定義づけがなされる方向性が示されたということ、また、法整備、情報収集も含めた国、都道府県が関与する枠組みが出てきた、それ自体は、今まで全くありませんでしたので、画期的なことだと考えてございます。
国民にとっても、かかりつけ医を持ちましょう、かかりつけ医を受診しましょうと国や自治体に言われていましたけれども、どこにそうした医師、医療機関があるんですかと度々問われることがございましたけれども、今回、その道筋が生まれたことにも意義があると思っています。
そして、専門的な医療については紹介受診重点医療機関というものが創設されましたが、その対となるべきプライマリーケアの医療機関がこれまでございませんでした。今回そのための枠組みが整備されたということは非常に重要で、医療機関の機能分担の議論が進展するのではないかなと期待をしています。
その一方で、今回の制度はまだまだ問題があると思ってございます。
まずは、継続的な医療は必要ないけれども、何かあれば受診、あるいは健康相談、予防医療を、対応を求めているという国民が対象外になっている。ですので、結果的に、比較的若年の多くの国民にとっては、パンデミック時の受診、ワクチン接種、予防医療、健康増進支援に対して今回の制度が機能を発揮することは非常に難しいという点、これは、本当はできる限りこういった方を対象にすべき、全世代的に対象にすべきと考えています。
また、かかりつけ医機能の定義がまだ曖昧でございますが、慢性疾患や日常的な疾患に対する診療機能、休日、時間外の対応機能、在宅医療の提供機能などと挙げられましたけれども、その全てを満たす必要はない、地域で面として対応できればいいという、今のところ議論が進んでいますので、そうなりますと、一体どこが中核となって責任を持って診療を担ってもらえるんですかという点は、やはり今回の制度でも国民にとっては分からない。自分のかかりつけ医がパンデミック時に外来受診が可能なのか、ワクチンを接種してくれるのか、つらいときには往診もしてくれるのか、これが分かりません。ですので、今回、また同じようなパンデミックが起きたら、全く同じように受診難民と化す国民が多数生まれるリスクが相当高いと私自身は考えています。
ですので、また十年後、二十年後に同じことが起きたときに、今の我々の議論がある意味審判を受けるということを非常に恐れている状況でございます。
次のページでございます。
かかりつけ医と患者さんの間の関係性については、今回、医師からの書面の認定という形になってございますけれども、本来は、医師が恩恵的に与えるものではなくて、医師、患者双方がお互いの義務と責任を持つ対等な関係で協働する合意を取る仕組みが望ましいと考えております。
また、かかりつけ医機能について情報提供することはよいのですが、その内容に関する第三者からの質保証は今回ございません。ですから、こういう機能を果たしていますと手を挙げたらおしまいですので、国民にとってそれを評価するのはかなり難しいので、情報の非対称性がある国民に対しては、その質担保というものは、本当は第三者機関が行うべきかと思っています。
また、パンデミック時に診療対応する医療機関、これは感染症法の改正で生まれたものでございますけれども、それと今回のかかりつけ医機能を発揮する医療機関が分離された状態ですので、締結医療機関には結局、重い負担がかかる、危機時に継続性を持った医療提供は難しい可能性が高いですので、これを近づける努力というのも今後進めていきたいと考えています。
まとめでございますけれども、今回の制度は評価できる点もございます。ですので、かかりつけ医機能に関する医療提供体制改革のあくまでも本当の第一歩、小さな一歩だというふうに位置づけるべきだと思っています。
ただ、問題をこうやって先送りすることなく、未曽有の超高齢化社会かつ人口が急減少していくこれからの日本の社会の中で堅牢に機能するプライマリーケア体制というものを再構築すべき、今回は絶好の機会ではないでしょうか。
できればこの法案の改善を望みたいところでございますが、難しい場合は、施行の細則における改善、厚労省の省令等だと思いますが、そういったもの、また、近い将来に、二十一世紀前半、二〇五〇年までにきちんと日本社会が進むべき道を考えていく骨太の政策展開というものを改めて考えていただきたいと切に思ってございます。
以上、ちょっと長くなりましたけれども、私からのお話でございます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)