柳澤協二の発言 (財務金融委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○柳澤参考人 柳澤でございます。
時間が限られておりますので、お手元に二枚のレジュメを用意させていただきました、それに従って考えを述べさせていただこうと思っています。
私の問題意識は、経済の専門家でもありません、この間の、昨年のいわゆる安保三文書の閣議決定以来、そしてこの国会での議論も伺いながら、どうも、これは政策に対する財源手当てを今論じておられるわけですけれども、その前提になる政策そのものの妥当性が私にはまだまだ、十分詰められているようには思えないのであります。
そういう観点から、二つの点について主に申し上げていきたいと思っています。
まず、いわゆる反撃能力ということなんですけれども、これは、政府の説明の論理は、そして国会における議論もそうでしたけれども、いわゆる先制攻撃になるのかならないのかということであったわけですけれども、先制攻撃にはならないというためのキーワードは、我が国に対する武力攻撃の着手があったとみなされるかどうかということなんですね。
私はこれがどうも分からなくて、なぜかというと、相手はまさにミサイル、弾道ミサイルなわけで、弾道ミサイルというのは、発射準備にあるという段階では、実は、それがどこに向けられたものかというのは物理的に分からないんですね。撃たれてみないと、どこに飛んでいくかというのが、その撃った後の航跡を解析して初めて分かるものであるわけですね。
そして、それに対して、ミサイル防衛システムなんかでは有効に対処できないので、発射前にそれに対応しなければいけない。そのために四百発のトマホーク巡航ミサイルを購入するというような政策の中身があるわけですけれども、ただ、このトマホーク巡航ミサイルというのは、長射程の巡航ミサイル、ジェットエンジンで飛ぶミサイルですから、仮に我が国への攻撃準備だということが正しく判定できたとしても、それを長距離の地点、離れた地点から巡航ミサイルで破壊しに行っても、恐らく数十分単位の時間がかかるはずなので間に合わないんじゃないかという、非常に素朴、単純な疑問があって、それが私はどうしてもいまだに納得できないのであります。
これは、だから、第一撃を防ごうとする議論をするからこういうことに多分なってしまうので、恐らく、最初のミサイル攻撃というのは、これはどこの国でも防ぐということは不可能に近いんですね。だから、そこの議論じゃなくて、やられた後に、第二撃以降にどう対応するかという議論であればまだ物理的には分からないではないのですけれども、だとすると、それは、じゃ、そういう体制を持つことが果たしていわゆる抑止力になるのか、抑止として機能するかということを考えなければいけないんだろうと思うんですね。
例えば、仮に、さっき申し上げた四百発の巡航ミサイル、これは四百発一遍に撃てるわけではありません。例えばイージス艦に搭載してそこから発射するとなると、どういう積み方をするか分かりませんが、恐らく二十発とか三十発とかが一度に撃てる数になってくるんだろう。では、それだけ撃って相手のミサイル攻撃力を減殺したところで、相手は残ったミサイルで必ず再反撃をしてくるわけですね。つまり、普通にミサイルの撃ち合いの戦争に拡大していくという流れになっていくんだろうと思うんですね。
さらに、イージス艦が一番ああいう大型のミサイルを撃つプラットフォームとしては適しているんだろうとは思うんですが、これは、私はちょっと兵器のプロでもありませんし、弾を改造するのか発射台を改造するのか分かりませんけれども、イージス艦を改造して、反撃能力、トマホーク発射能力を与えてそういう任務に就かせた場合に、その間、つまり、ミサイル防空のシステムは使えなくなるんですね、それはトレードオフの関係にあるので。果たしてその辺の最適なすみ分けというのをどう考えたらいいのかというようなことは、私のような半分兵器の素人でも気がつくような疑問点なわけですね。こういうことをきっちり議論していく必要があるんだろうと私は思っております。
さらにもう一つ言えば、巡航ミサイルの弾頭の破壊力は限られておりますので、地上にむき出しになっているものは破壊できるけれども、強固に防護されたような陣地を破壊するようなことはできないわけで、そういうことをトータルに考えて、これは本当に、分かりません、いいのかもしれないけれども、私には納得できるだけの構図が見えないということを申し上げたいと思います。
それから二番目の、いわゆる台湾有事が今懸念される焦点になっていると思うんですけれども、これも私もあちらこちらで、新聞へのコメントなんかでも申し上げているんですけれども、台湾有事がいきなり日本有事になるのかというと、実は、論理的な構造はそうではなくて、台湾有事というのは中国が台湾に武力行使をすることなんですね。そこでアメリカがその防衛に参加すると、今度はそれが中国とアメリカの戦争になってくるわけで、その際に、アメリカ軍は日本の基地、日本を拠点にしないととても戦えないわけですから、日本の基地を使うことも含めて、あるいは自衛隊がサポートすることを含めて、日本がそれに協力するとなった段階で初めて台湾有事が日本の日本有事という形に変わってくる、そういう流れになっていくんですね。
つまり、そこで日本が協力すれば日本が戦争の当事者になってしまうということ、そして、日本がアメリカ軍に協力しなければ恐らく日米同盟はもうもたないことになるだろうという、こういう実は究極の選択が迫られる、非常に考えたくもない、悪夢のような事態なんだろうと私は思っているんですね。
次のページですが、やはりそういうことそのものを避けなければいけない。だとしたら、台湾有事そのものを何とか回避するという政治の努力が必要なんじゃないかと思っています。
これは、台湾についての武力行使の心配というのは、中国は台湾の分離独立に対しては武力行使も辞さないと言っている、武力行使すれば米軍は守ると言っている、だとすると、台湾の地位に関する現状維持というものを改めて確認するということが、当面、戦争の動機を、敷居を下げる、下げるというか上げるというか、動機を少なくする道なのではないか。
それは、抑止、ディターランスというのは、基本的には、武力による相手への被害を与える予測によって戦争を抑えつけるということなんですけれども、それはあくまでも相手の心理作用であって、こちらがミサイル一発持ったらその分プラスされるというような足し算の話ではないので、だから、誤算の危険も必ずあるので、それをカバーするための外交手法として、いわゆる安心供与という手段も取られている。アメリカと中国の間でも、相互のレッドラインを認識するための対話を続けるということを去年の十一月の首脳会談で合意しています。今、バルーンの問題があってちょっと中断しているわけですけれども。
そういう形で、私は、ウクライナについてこれが通用したかどうか分かりませんが、台湾について、あるいは体制維持が最大の目的である金正恩の北朝鮮との間では、何らかの形の安心供与、つまり戦争の動機を下げる外交が可能であると思っています。
そして、最後になりますが、国民もさることながらですけれども、戦争になれば真っ先に命を落とすことになるのは自衛隊員であるわけで、戦争が、政治の目的達成の手段としての戦争であると私は思いますけれども、だとすると、政治が何とか、政治の力で防げる戦争は是非防いでいただきたいということを最後に申し上げて、私の意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)