鈴木浩の発言 (財務金融委員会)
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○鈴木浩君 御指名いただきました鈴木です。
発言の機会をいただき、どうもありがとうございます。
今日、皆さんのお手元には私の発言要旨を用意してありますので、基本的にはこれに基づいて御説明させていただきます。
この法案について、今、参議院で緊迫した状況が続いていて、そういう中で、私はあえて、やはりこの法案について粛々と反対の意見を述べさせていただきます。
何点かあります。
まず一点ですが、皆さんも御承知のとおり、東日本大震災によって復興庁が創設されました。当初、二〇二一年度までの設置期間でしたが、復興課題の大きさやその長期性から、これが二〇三一年まで延長されました。二〇三一年で終息するとは思えませんが、取りあえず、そこまで延長されています。
また、帰還困難区域の今後の除染や中間貯蔵施設の管理運営を担う環境省は、幾多の困難が予想される中で、最終処分場の県外移転を二〇四五年には終了させなければなりません。
これらの復興庁や環境省の今後の困難な課題に取り組む重要な時期に、二〇二四年から財源を他に流用することは、復興推進に対する大きな阻害要因になります。もちろん、被災市町村の復興への道のりは険しいのです。
第二に、福島における被災者の実情の一端を、避難者数を通して説明いたします。
避難者数は、今年の三月現在、公式発表では二万七千三百九十九人とされていますが、これは外形的に避難者の数を低く抑えてきた結果であることを御理解いただきたいのです。つまり、当初から、避難指示区域以外からの避難者は、自主避難者として、避難者扱いになっておりません。
しかし、避難指示区域に設定されていなかった区域でも、年間一ミリシーベルト以上の場合には汚染状況重点調査区域として指定され、市町村による除染に取り組んだのです。岩手県から千葉県まで九十三の自治体が、二〇一八年の三月までに除染を実施しています。この地域から多くの住民が避難しましたが、子供を抱えている若い世帯など、不安を抱えて避難したことは容易に想像できます。
二〇一二年六月、議員立法で子ども・被災者支援法が成立しました。これも実は、避難指示がされていない地域の被災者の支援を中心にしたものでした。彼らをなぜ自主避難者として区別し、復興の外形的なスピード感を示すようなことをするのか、私にはちょっと理解ができません。
さらに、避難指示区域からの避難者も、避難指示が解除されて一定期間過ぎると、帰還せず避難し続ける場合は自主避難者です。また、地元自治体から離れた復興住宅に入居すると、この方々も自主避難者。さらに、地元自治体外に住宅を確保した被災者も自主避難者です。多くの方々は、住民票をそのままにして、実は、自分たちの自治体以外のところで生活を実現しているのです、確保しているのです。つまり、現在でも多くの被災者が、原発災害から逃れるために避難しています。
三つ目に、原発事故の収束は見通しすら立っていません。
第一原発一号機は、原子炉下部の基礎に当たるペデスタルがデブリによってコンクリートは溶け落ち、鉄筋がむき出しになっています。原子炉の設計技術者は、震度六強でも倒壊のおそれと警告を発しています。これは昨年の十一月九日、朝日新聞の福島県版に掲載されています。
また、山中伸介原子力規制委員長は、今年の四月、東電と規制庁は世間の受け止め方を無視している、起こり得るリスクと対応策を考えておくべきであると指摘しています。
さらに、原子炉格納容器の上蓋、シールドプラグには大量の放射性物質が堆積しております。再び三・一一程度の地震が発生すれば、当時の拡散量よりも多い放射性物質が飛散する可能性が大きいと言われています。
四つ目に、今年五月、飯舘村長泥地区を最後に、県内六地区に指定された特定復興再生拠点の避難指示が解除されました。六月一日の県内のテレビ報道によると、この地域の中では、たくさんの住宅などの建物が、およそ三千戸、三千棟といいましょうか、除却されています。しかし、中には、山合いの地域社会のシンボル的な旅館の経営を続けてきた建物もあり、地域再生、ふるさと再生のために保存したいと悩み続けている被災者もいます。来年三月までに申し入れれば公費で解体できる、しかし修復したいという気持ちを持ち続けています。修復は自己負担だからです。地域社会を再生させたい、地元の自然、風景、伝統、文化、地域社会のきずなを取り戻したいという要望は強いのですが、そのような復興の道筋と支援の仕組みは示されていないのです。
私はかねがね、原発災害は三つの課題を抱えていると考えてきました。一つは、原発事故の収束と廃炉。二つは、ふるさとの地域社会、地域経済の再生。三つは、被災者の生活、なりわいの再建です。この三番目の課題がずっと後送りにされています。岩手県や宮城県などの地震、津波被災地では既に災害ケースマネジメントが具体的な展開を見せていますが、福島県では現在なおそのような動きは見えません。
五つ目です。政府、東電は、処理水の海洋投棄の課題について地元との合意が前提と言ってきましたが、強行突破の勢いで今日を迎えています。過酷な原発災害を教訓にした、原発の廃炉に向けた真摯な取組どころか、GX脱炭素電源法案の制定も、被災地の住民の声を逆なでしています。原発災害被災地は、なお地場産業やなりわいなどの再生の見通しがついているとは言えない状況です。復興へのシナリオ、手がかりを被災者とともに築き上げていこうというときに、復興予算を取り崩し、防衛力増強に転用することは、決して許されることではありません。
六番目です。今年の憲法記念日に、憲法学者、樋口陽一氏の「いま日本の立憲主義は」と題するインタビュー記事が新聞に掲載されていました。近代立憲主義は、一人一人の個人が自分らしく生きていくために、他者とともによりよい社会、公共社会をつくっていこうとするプロジェクトです、公の私化、私の公化が進み、みんなの領分であるはずの公共社会が私によって侵食されているのですと指摘されています。
現在の政策決定過程は、国民の声を広く聞き、国会の十分な議論の下に行われているとは言い難い状況が続き、原発被災地だけでなく、防衛力増強の最前線に立っている沖縄などでも大きな不安、不信が広がっていると言えるでしょう。政治の混乱、衰退は国民の不安や不信を招くことになります。
最後に、お願いです。
国会事故調が、二〇一二年の七月、報告書を発行いたしました。これは被災地にとっても大きな役割を果たしてきました。国会で是非、第二次国会事故調を設置していただき、十五年後、二十年後の原発事故とその後の復興の実情と課題を改めて提起されることを強く希望します。国会が良識の府として、正義感と倫理観に裏打ちされた公共社会の構築に向けてその役割を果たしていくことを、切に期待しております。
以上です。ありがとうございました。