草場鉄周の発言 (内閣委員会)

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○草場参考人 一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会理事長の草場と申します。
 私は、プライマリーケア、つまり一次医療、分かりやすい言葉で言いますと、かかりつけ医機能という言葉もございますけれども、そういった立場で働いている医療者として発言をさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 資料の方を使いながらお話をさせていただきます。
 一枚めくっていただいて、今回の特措法の改正に関する基本的な見解でございます。
 私は、昨年の五月、六月に開催された新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議に一委員として参加をさせていただきました。主に、診療所等で発熱外来や有症状者に対する訪問診療を提供してきたプライマリーケア医療者の立場から意見を述べさせていただきました。
 今回の改正は、この提言に基づいて政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が発出した、方向性の方針に沿った法律改正というふうに理解をしております。
 令和四年、昨年の十二月にこの指針にのっとって感染症法等の改正がなされたというふうに理解しておりますけれども、そちらの改正でかなりいろいろなものが反映されておりますが、それと表裏一体の内容であるというふうに理解をしております。
 今回、昨年の議論を直接させていただいた立場から、今回の改正案に対して評価できる箇所と、より今後更なる検討が必要な箇所について、意見をさせていただきたい。それと併せて、これはこの法案だけではないんですけれども、政府全体で取り組んでいただきたいプライマリーケアの課題について最後に意見をさせていただいて、十分間のお話をさせていただきたいと思ってございます。よろしくお願いいたします。
 まず、今回の法案の中の政府対策本部長からの指示権ということに関してでございますけれども、これは有識者会議の中でもパンデミック発生時の初動に非常に手間取ったということで、この経緯を踏まえて、設置時から指定行政機関や都道府県知事に対して早期に指示を出すことが可能になったという点については、大変評価できるかなと私個人も考えてございます。
 とはいえ、これは事前の十分な準備が、体制整備がないと、幾ら早期に指示が出せるといっても、笛吹けど踊らずといった状況になる可能性が高いということをちょっと危惧しているところでございます。
 具体的には、政府、自治体の一体感のある初動ということが非常に重要だと思います。私が今診療しております北海道でも、当初、知事の方から先に緊急事態宣言というものが出まして、その後、国が追認するみたいな形で動いたということで、非常に道民としては混乱した部分がございましたけれども、そのためには、一体感のある初動というものを実現するために、平時から両者の協力体制というものを是非構築していただいて、危機を想定したようなシミュレーション演習みたいなものを是非定期的に実施していただきたいなというふうに考えております。
 また、医療界だけではなく、産業界とかあるいは学術研究機関、感染症の専門的な機関が今後できますけれども、そういったところとも平時からしっかり連携を取っていただいて、次の予兆がある場合にはいち早く戦略を立案し実行できる体制というものも必要ではないかというふうに考えております。特に、地震等で、地震災害への対応というものは非常に練られているものがございますけれども、感染症についても是非そういった対応というものを事前に構築していただきたいなと感じております。
 次のページでございます。
 感染を防止するための協力要請という点に関して、事業者に対する命令とか措置ということに関する議論があったと思います。実効性を高めるために今回一定の基準を策定するということ自体は非常にいいことかなと。今まで都道府県によってかなり発動条件にばらつきが正直あったかなと思っていましたので、これは有効かなというふうに感じて拝見いたしました。
 ただ、これについては有識者会議でもいろいろな議論がございまして、協力要請を行うに当たって、エビデンスに基づいた、病原体の特性に応じた科学的あるいは合理的な対策というものをしっかり議論していただきたい。また、意思決定のプロセスについて、一層の明確化、体系化を図るということ。そして、私、大事だなと思いますのは、根拠のない過剰な不安、こういったものについて、意思決定が余り影響されないように、科学的な議論ということを是非やっていただきたいというふうに感じています。
 また、要請の名の下に私権制限というものが行われたという不安がやはりございましたので、是非、人々の多様な利益、意識に配慮していただくように、専門家の意見ももちろん大事なんですけれども、それに加えて、実際その制限を受ける当事者の声を幅広く聞いていただくようなことを是非意識いただきたいと思っています。特に、なかなかメディアとかでも声が出てこない若者とかいわゆる子育て世代、こういった方とのコミュニケーションというものは非常に重要だなというふうに感じているわけでございます。
 次のページをお願いいたします。
 今回構築される内閣感染症危機管理統括庁についてでございますけれども、今回のパンデミックでは、私自身も、現場で働く中で、いろいろな会議体から指令とか指示みたいなものが発出されて、なかなかそれに混乱するような状況がございました。ですので、この見えにくい問題に関して、各種政策の統一性を担保する仕組みが構築されたということ自体は非常に評価していいかなと私自身は思ってございます。
 ただ、具体的な業務の詳細というものは余り明示されていないところがございますけれども、私、現場の立場からは、こういった点を是非配慮いただきたいなというふうに考えてございます。
 まず、行政からの通知、事務連絡というのが、今回かなり五月雨式に、ほぼ毎週二回とか、月に三、四回、どんどんどんどん通知が来ました。現場ではなかなかそれに対応ができない。ですから、これが指示なのか、単なる情報提供なのか、あるいは技術的なアドバイスみたいなものなのか、こういった性質が通知に余り明確でないので、これを是非明確にしていただきたいというふうに考えています。
 実際、指示が行われたということで、どちらかというといわゆる省庁の方はもう指示を出しましたということで終わりになるんですけれども、ただ、現場で実際にそれが行われているかどうかというモニタリングは、実は余りなされていない。ですから、実際どうなんでしょうかとお聞きすると、分かりませんという話がよく聞かれました。ですので、こういったモニタリングを併せて実施するということを是非お願いしたいなというふうに思っています。
 また、次のページでございますけれども、これはメディアのお話でございます。
 新興感染症に対する正確な理解というものがなかなか難しかった。ですので、政府、自治体、医療界からの発信というものはもちろん不断にやっているわけでございますけれども、是非、メディアから正確な発信を行っていただきたい。特に、若者のメディアについては、SNSなどいろいろな発信方法というものを工夫していただいて、リスクコミュニケーションというものを平時から準備していただきたいというふうに思っています。
 最後に、都道府県の役割でございますけれども、昨年の感染症の改正で、緊急時の入院勧告措置については知事の指示権限を創設するという方向が示されるなど、自主性を高める動きというものが出てきたことは私は評価をさせていただきます。
 ただ、統括庁が今回できるということで、統括庁と都道府県の関係、その際に、都道府県によって状況が相当違うということが、今回、三年間の中でもよく分かったと思います。ですので、自治体ごとの創意工夫というものを発揮いただけるように、戦略の策定、財政支援、医療資源の確保等、こういったものについて、是非、自治体の自由度というものをある程度しっかり拡大していただきたい。そして、地域の実情に応じた対応というものを認められる状況をつくっていただきたいなというふうに考えてございます。
 次のページをお願いいたします。
 そうした統括庁の管理体制については、今回、危機管理監、また危機管理監補、そして医務技監が担う危機管理官という形で、内閣から出る情報と厚労省の情報というものが結構一元化されていなくて、非常に現場は混乱していたんですけれども、それが統一された形で出るということは、非常に次のパンデミックではメリットがあるなというふうに感じています。
 ただ、パンデミックでは、厚労省行政だけではなくて非常に幅広く、休業などの経済的な影響、また、児童など学校教育への影響など、非常に多方面に影響があります。ですので、厚労行政だけではなく幅広い対応というものを、是非統括庁の中でも考えていただきたい。具体的には、平時から様々な省庁のメンバーというものをしっかり配置をいただくことが必要だと思います。そして、密接に連携を取っていただきたい。
 そして、最後に、行政官、医療専門職だけじゃなくて、マスコミュニケーション、そして行動科学、実際に国民がメディアから発信されたときにどういう反応をするか、そういったことに対する専門家というものが今回はなかったという点が、非常に議論の中で難しかったことだと思います。
 ですので、有識者の皆さんからの発言があったり、政府からの発言があったり、これは食い違っているじゃないか、いろいろな議論があったと思うんですけれども、やはり、プロフェッショナルの力を是非生かしていただいて、幅広い専門家を統括庁の中に事前に採用いただくということを検討いただけないかなというふうに、私、考えてございます。
 次のページをお願いいたします。
 これは今回の法案だけではないんですけれども、私の立場、プライマリーケアの立場からの意見でございます。
 今回の危機管理の中で、危機時だけの議論というのがあるんですけれども、やはり、平時からこういった準備を備えながら、危機時にさっと動く、そのための連続性というものは非常に私は重要だと思っています。
 特に、プライマリーケア、診療所とか小病院の立場ですと、突然、危機時にいろいろなことを、重いことをやれと言われても、非常に困るわけですね。ですから、平時からの対応が重要だということをお話しさせていただきます。
 実際、今回、発熱や上気道症状を持ってコロナ感染の可能性がある患者さんに対して診療を提供できた医療機関というものは、外来の検査、診察は四〇%から五〇%程度ということで、半分弱でございます。これは、私が勤務する札幌、北海道の室蘭という町でも、大体これとほぼ変わらない数字。また、往診、訪問診療は実際一〇%から二〇%、非常に少ない医療機関が対応をしたということでございます。これは第六波までのデータでございます。
 ですので、ワクチン接種も含めて、かかりつけ医と思って受診を相談しても、いや、あなたはかかりつけ患者じゃないよという形で断られるような事態というものは、これはあらゆる地域で本当に日常的に今回は起きたということでございます。ですから、かかりつけ医というのは何だろうか、ふだんからかかっているつもりだったけれども診てもらえない、非常に国民にとってはショッキングな出来事が今回は起きたと理解をしています。結果的に、診てくれるところに患者さんが殺到するという形になりました。
 これは、ただ、医師、医療機関のエゴの問題ではない、あくまでもこれは医療の構造的な問題だというふうに私は考えております。
 結果的に、先ほどお話ししたように、一部の医療機関に感染症外来、往診、地域包括ケアの負担みたいなものが集中して、多くの医療機関が疲弊し、対応に限界ができたということが現状であります。
 私の医療法人の中でも、多くの看護師が、これ以上やるのであればもう退職したい、先生、いいかげんにしてほしい、どこまでこの患者さんを診るんですかという声が切実に聞かれました。いろいろな形で慰留をして何とか踏みとどまってもらったんですが、辞めた方も結構いらっしゃったということでございます。
 ですから、こういった状況が今度のパンデミックで起きてほしくないということを切に感じるわけでございます。
 ですので、先ほど冒頭にお話ししたように、危機時に要請という形でお話をしても、対応できる基盤がない医療機関というのは動けません。ですので、平時と危機時を分離した議論というものはよく行われるんですけれども、やはりこれは、私、現場の中では机上の空論だなというふうに感じるわけでございます。
 ですので、今回、この法案とはちょっと違いますけれども、次のページでございますが、政府が提案するかかりつけ医機能が発揮される制度整備というものが、全世代型社会保障会議の中で今後展開されるというふうに理解してございますけれども、ただ、この中に多くの問題がございます。
 今回のこのかかりつけ医に関しては、継続的な医療が必要な方だけ、限定になっています。ですので、継続的な医療は必要ないけれども、何かあれば風邪などで受診する、あるいは健康相談とか予防医療、こういった対応で受診したいという国民はかかりつけ医を持てないという形に今回はなっています。
 ですから、比較的若年の多くの国民にとっては、パンデミック時に受診、ワクチン接種ということに関しては、今回のこの法案では機能が動かない、十分安心できない形になっていますので、これはやはり改善をいただきたいというふうに強く思っています。
 また、今回の法案の中は、かかりつけ医機能というもの、まだ細かいことは決まっていないと思うんですけれども、書かれているものは、慢性疾患、日常的な疾患に対する診療機能、時間外の対応機能、在宅医療、こういったものが含まれてございますけれども、今回、パンデミック時の診療対応というものをやるかどうかということは全く入っていません。ですので、ここは非常にやはり不安な状況。
 また、これが含まれたとしても、かかりつけ医機能というものは全て満たす必要はありません、このうち一部でもいいんです、地域で面として対応しますという議論になっているんですけれども、ただ、面としてというのは、実際、患者さんの立場からいうと、定期的に毎月行っている方がパンデミックに対応しないとなると、では、どうしたらいいんだという大きな問題が起きてくるわけでございます。
 ですから、かかりつけ医がパンデミック時に外来受診可能なのか、ワクチン接種できるのか、あるいは往診ができるのか。こういったものができない場合、どういう形で診るか。受診難民ということで、今後また問題が起きてくる可能性が高いというふうに感じています。
 最後に書いてございますけれども、パンデミック時に診療対応する医療機関、今回、都道府県と協定締結をするという形で決まってございますけれども、この医療機関と今回議論されるかかりつけ医機能を発揮する医療機関というものが、今回は完全に分離された状態で議論されています。
 私は、これはやはり統合して、両方が一致する形じゃないと、安心してパンデミック時に受診ができない、そして、締結医療機関だけに重い負担がかかる。私自身がつらい経験をしたようなことが、多分また次回起きるわけでございます。ですので、継続性を持った安定した医療提供体制というものを実現するために、両者を合致させるような政策を、是非、先生方にはまた検討いただきたいということを、プライマリーケアの立場から考えているわけでございます。
 以上、ちょっと長くなりましたけれども、私からの意見でございます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 草場鉄周

speaker_id: 6847

日付: 2023-03-17

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会