福山宏の発言 (法務委員会)

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○福山参考人 ただいま御紹介にあずかりました福山と申します。
 この度は、当法務委員会におきまして、参考人としてお招きいただき、貴重な機会をいただいたことを大変ありがたく思っております。
 それから、亡くなられたウィシュマ・サンダマリさん、心より御冥福をお祈り申し上げます。また、御家族の方々には心よりお悔やみ申し上げます。
 それでは、入ります。
 私自身、元職員という立場ではありますが、現在の入管法、入管行政には足りない部分もあり、より適正な出入国管理行政を実現するために改善すべき点があると考えております。これから私が述べる意見が国会議員の皆様による充実した法案審議の一助となれば幸いに存じます。
 さて、本題に入ります。
 私は、送還忌避、難民認定申請濫用、誤用、長期収容の問題は、目的、手段、結果という一連のつながりがあるものと考えております。
 まず、二〇〇四年の法改正において、難民認定申請の申請期間が、上陸日又は難民該当事由発生日から六十日以内とされていたものが無制限となりました。さらに、難民認定申請に送還停止効が加わりました。
 次に、二〇一〇年に、被収容者が難民認定申請を提起した場合には、適正手続の保障のため、できるだけ仮放免を許可すること、さらに、弁護士が仮放免許可申請の保証人である場合には柔軟な判断をすること、こういった実務上の方向性が示されました。
 加えて、難民認定申請から六か月経過した難民認定申請者に対しては、その希望により一律にフルタイムの就労が認められることになったのもこの年のことでありました。
 その結果、二〇一〇年には約千二百人であった難民認定申請者は、二〇一七年には二万人近くと、約十六倍になりました。その推移は、就労目的、仮放免目的のための手続の濫用を疑わせるものです。
 また、子供と家族の在留許可の問題の原因も、この長期化にあります。手続中に、日本で出生した、また幼児期に入国した児童が学齢期に達すると、こういった現象が起こるからです。
 翌二〇一八年一月、この就労許可を厳格化したところ、同年の難民認定申請者数は半減いたしました。難民認定申請の実態を示唆する推移ですが、その後も、借金、駆け落ち、隣人とのいさかい、こういった難民条約上の迫害とは無縁の申請、さらには、日本滞在が目的なので理由は後で考えます、こういった申請も目立ちました。依然として認定に値する申請がほとんどないとの感想は複数の難民審査参与員からも伺っております。
 このようなことから、グレーゾーンの申請というものは理論上あり得たとしても、入管行政の現場において果たして実際存在するのか、非常に疑問なところであります。
 以上に関連いたしまして、入管行政の現場において起きていることについて申し上げます。
 まず、難民認定申請濫用の入管業務への影響です。
 申請の濫用が真に認定すべき方々の見落としや手続の遅延につながることへの懸念です。また、入管には、難民認定以外にも重要な業務がたくさんあります。一定の経験を積んだ審査官を難民業務に集中的に配属せざるを得ないことに起因する、他の業務の弱体化への懸念です。私自身、担当官不足により、空港審査業務にやむなく会計担当職員を充てたことがあります。
 次に、収容です。
 収容状態を脱したいと望むのは人の常です。仮放免許可の典型例が健康上の理由であることから、収容施設においては、全快、異常なしという診断は歓迎されません。仮放免許可にとって不利に解釈されやすいからです。
 ですから、被収容者は、次々と様々な自覚症状を訴え、診察希望を繰り返します。中には、医師や看護師に暴言を吐き、診療行為を妨害し、診療時間を長引かせる被収容者もいます。本当に診療が必要な被収容者の診療がおろそかになる危険性を感じます。このような被収容者の診療をやむなく中止すると、診療拒否、人権侵害、脆弱な診療体制との批判に転化します。
 このように、情報が正確に伝わらないことはしばしばです。
 被収容者が処方薬について、この薬は嫌だ、ジェネリックは効かないと言って、様々な薬の処方を求めてくることも少なくありません。外部からは、これに応じると、薬物中毒の助長、応じないと、不十分な診療との批判になり、最終的には人権侵害だというふうに言われます。
 被収容者が発症した限局性腹膜炎も、腹膜炎併発といかにも手遅れであるかのような批判に変形されます。医師によれば、限局性腹膜炎とは、いわゆる盲腸炎、正確には虫垂炎の初期段階で腹痛など自覚症状が表れ始めたときの状態です。五年前に手術を受けたプロ野球選手がいらっしゃいます。同じ病名でした。しかし、手遅れとの報道は一切ありません。当然です。手遅れなのは汎発性腹膜炎であって、限局性腹膜炎ではないからです。
 国内で新型コロナの感染が拡大したときには、マスクを始め消毒薬など必要な物品を提供し、その使用を指導したにもかかわらず、多くの被収容者が感染防止策を取ろうとせず、入国警備官に繰り返し唾を吐きかけておりました。これが外部に伝わると、入管が感染防止を怠っている、このようになります。
 このような状況から、身の危険を感じて辞職を申し出る医師も少なくありません。そのうわさが広まった結果、収容施設での医療を引き受けてくれる医師も減少します。
 かつて、勤務先の大村センターで、常勤医師が退職したので、勤務経験がある医師全員に往診をお願いしたところ、全員から即座に拒否されました。
 また、被収容者が仮放免を求めて、ハンストと称する官給食の集団拒否をすることがあります。その結果、数日間で約五十万円相当の食料が無駄になりました。
 しかし、最大の懸念は被収容者の健康です。体重を減らした人、差し入れのジャンクフードや他の被収容者からもらった給食の食べ過ぎで体重を増やした人が半々でしたが、いずれも危険な兆候です。ですから、集団摂食拒否の防止に努めました。
 その中にあって、事情を御理解の上、摂食拒否をしないよう呼びかけてくださった国会議員の皆様、支援者の方々には深く感謝を申し上げております。
 他方、自分の豚肉入りの給食を回教徒の給食とすり替えて騒ぎを起こす被収容者もいます。これも外に出ますと、入管が回教徒に豚肉入りの食事を与えた、そういう報道になります。
 さらに、被収容者が物を投げる、蹴る、たたく、熱湯をまき散らすというのは日常的風景です。規則、入国警備官の指示を無視し、収容施設内で暴れ、他人に危害を加え、物を破壊する事案が頻繁に起こります。中には、汚物、ふん尿のことです、で施設を汚損し、暴力で毀損し、多額の被害を発生させる事例もあります。ある所長は、汚損状況の御視察においでになられた方から、おまえのせいだとどなりつけられたそうです。
 それはさておき、このような場合の対処方法は、単独室の使用と制圧です。
 単独室は、暴力を振るい、興奮状態にある本人に冷静になっていただくための部屋です。そもそも、入管に懲罰という発想はありません。単独室の中には、監視カメラが設置されている部屋もあります。この部屋は、本人の自損行為を防止するため、又は体調を継続的に観察するために使用されます。単独室のトイレが密室でないのも、自殺防止、病気で倒れてしまったときの即時対応のためです。物理的に、男女は厳格に分かれていて、女性区の室内の状況は肉眼でも動画でも男性職員が見ることは不可能になっております。それにもかかわらず、これが外部に伝わると、男性入国警備官が女性区をのぞき見た、セクハラをした、このようになります。
 それから、再三の警告、説得に応じない場合の制圧です。制圧とは、暴れている自傷他害に至る可能性のある被収容者を抑える行為のことで、被収容者を負傷させないことが大原則です。そのためには、暴れている者の動きを短時間のうちに完全に止める必要があります。そのために役割分担をします。頭を防護する、手足を抑える、本人をなだめる、全体を見て指示を出す、状況を記録するなどのために、入国警備官七、八人ぐらいは必要です。これが外部に伝わると、入国警備官が、口論の末、無抵抗の被収容者に集団で暴行を加えた、こういうことになります。過剰な制圧行為が認められるものでないことは当然ですが、暴れている者を制圧することは容易なことではないということを御理解いただければ幸いです。
 暴力行為の常習者、性犯罪、殺人、傷害、強盗、放火、薬物犯罪の前科がある者、配偶者間暴力の加害者であっても、収容の長期化や病気により、仮放免許可への圧力が高まります。しかし、仮放免中に性犯罪や殺人など新たな犯罪に手を染める例も少なくありません。引率者である支援団体の責任者は何も説明しないんでしょうか、性犯罪を繰り返していた男性被収容者との面会で自宅が近いとの話題で盛り上がったと喜んでいる女子学生の姿には驚愕いたしました。他の官署で仮放免を許可された者の妻とその母親が、身の危険を感じて保護を求めてやってきたこともありました。このようなことから、仮放免許可の決裁のときには、私自身、新たな被害者が出ないかと判こを持つ手が震えておりました。
 他の長期収容の原因として、被退去強制者の本国及びその駐日公館の非協力的な姿勢があります。自国民の引取りや自国民への帰国用の旅券の発給すら拒否する国、送還日の開示を旅券発給の条件とし、入管がそれを伝えると、大使館がそれを被収容者に伝えて、難民認定申請や訴訟により送還を免れる、逃れる機会をつくり出す国、根拠なく被収容者の在留許可を求めてくる国などがあります。経験上、自国民保護の範囲を超えていると感じます。
 しかし、ほとんどの国は、法違反をした自国民に冷淡です。自国民が収容施設を汚損、毀損し、多額の損害を発生させた場合も含めて無反応です。帰国の説得、本国の親族との連絡、帰国旅費の送金の仲介など、日本の在外公館が行っている邦人保護のせめて半分だけでもいいので、御対応いただきたいと思っております。このような非協力的姿勢が入国審査の厳格化をもたらし、最終的には円滑な人の流れを妨げることになり得るということを忘れるべきではありません。
 なお、自発的な帰国は、以上のような負担が大幅に軽減されるので、お互いにとって理想的な形です。
 しかし、入国警備官が法律に従って退去強制令書執行の一環として帰国説得を行うと、即、被収容者に対する嫌がらせ、脅し、精神的拷問との批判になります。その結果、入国警備官が被収容者と意思疎通を図ることが一段と難しくなっております。
 その他の点について申し上げます。
 まず、退去強制の決定がなされた者に、送還が不可能であるからといって就労を認めることは適切でないと考えます。たとえ送還までの生活費獲得のためであっても、就労の容認はかえって入管法違反を助長することになるからです。
 次に、収容決定の際の司法権による事前審査導入にも疑問があります。
 入管法違反者のほとんどを占める不法残留者の違反事実は、客観的証拠により既に明白です。しかし、経験上、実際に収容されるのは、不法残留状態に陥った者全体の三割から四割です。最近の公表資料によると、現在ではもう少し少なくなっているというふうに伺っております。といいますのも、当初の時点で在留を付与すべきことが明らかである者、逃亡のおそれがなく自発的な帰国が見込まれる者を、制度上、運用上、収容しない、こういうことにしているからであります。
 そもそも、入管の手続では、いわゆる三審制の下、慎重な手続を行っており、事後的な司法審査を受けることも可能です。事前の司法審査が必要なのか、司法審査になじむのか、非常に疑問を持っております。
 さらに、収容期間の上限設定も不適切と考えます。
 一律放免には、既に申し上げたような、新たな被害者の発生の問題があります。他方、実定法上、上限のない国も少なくありません。事後的であっても司法審査の対象ですので、現状でも適正手続は保障されております。
 出入国在留管理は、国家の三要素の一つである国民の構成など、国家のありように大きな影響を与える重要な業務であります。その中で、本件法案は、現在及び将来の国民及び在留外国人が平和な社会の中で暮らす共生社会の実現という目的を達する手段と、それを行使する根拠を与えようとするものです。
 「世界をつなぐ。未来をつくる。」という入管庁の新しい標語のとおり、入管庁職員が一丸となって、健全な国際交流の発展に寄与していくことを期待するものです。
 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 福山宏

speaker_id: 7576

日付: 2023-04-21

院: 衆議院

会議名: 法務委員会