法務委員会
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会
会議録情報#0
令和五年四月二十一日(金曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 伊藤 忠彦君
理事 谷川 とむ君 理事 藤原 崇君
理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君
理事 鎌田さゆり君 理事 寺田 学君
理事 沢田 良君 理事 大口 善徳君
東 国幹君 五十嵐 清君
石橋林太郎君 岩田 和親君
上杉謙太郎君 奥野 信亮君
加藤 竜祥君 熊田 裕通君
鈴木 馨祐君 田所 嘉徳君
高見 康裕君 土田 慎君
鳩山 二郎君 平口 洋君
深澤 陽一君 務台 俊介君
山下 貴司君 山本ともひろ君
鈴木 庸介君 中川 正春君
山田 勝彦君 吉田はるみ君
米山 隆一君 阿部 弘樹君
漆間 譲司君 日下 正喜君
平林 晃君 鈴木 義弘君
本村 伸子君
…………………………………
法務大臣 齋藤 健君
法務大臣政務官 高見 康裕君
政府参考人
(法務省大臣官房司法法制部長) 竹内 努君
政府参考人
(出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君
参考人
(慶應義塾大学名誉教授)
(弁護士) 安冨 潔君
参考人
(東洋英和女学院大学名誉教授) 滝澤 三郎君
参考人
(一橋大学大学院社会学研究科准教授)
(ロンドン大学難民法イニシアチブ リサーチ・アフィリエイト) 橋本 直子君
参考人
(元東京出入国在留管理局長) 福山 宏君
法務委員会専門員 白川 弘基君
―――――――――――――
委員の異動
四月二十一日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 務台 俊介君
熊田 裕通君 山本ともひろ君
鳩山 二郎君 土田 慎君
深澤 陽一君 上杉謙太郎君
同日
辞任 補欠選任
上杉謙太郎君 深澤 陽一君
土田 慎君 鳩山 二郎君
務台 俊介君 岩田 和親君
山本ともひろ君 熊田 裕通君
―――――――――――――
四月二十日
外国人住民基本法と人種差別撤廃基本法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第八四一号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)
――――◇―――――
この発言だけを見る →午前九時開議
出席委員
委員長 伊藤 忠彦君
理事 谷川 とむ君 理事 藤原 崇君
理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君
理事 鎌田さゆり君 理事 寺田 学君
理事 沢田 良君 理事 大口 善徳君
東 国幹君 五十嵐 清君
石橋林太郎君 岩田 和親君
上杉謙太郎君 奥野 信亮君
加藤 竜祥君 熊田 裕通君
鈴木 馨祐君 田所 嘉徳君
高見 康裕君 土田 慎君
鳩山 二郎君 平口 洋君
深澤 陽一君 務台 俊介君
山下 貴司君 山本ともひろ君
鈴木 庸介君 中川 正春君
山田 勝彦君 吉田はるみ君
米山 隆一君 阿部 弘樹君
漆間 譲司君 日下 正喜君
平林 晃君 鈴木 義弘君
本村 伸子君
…………………………………
法務大臣 齋藤 健君
法務大臣政務官 高見 康裕君
政府参考人
(法務省大臣官房司法法制部長) 竹内 努君
政府参考人
(出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君
参考人
(慶應義塾大学名誉教授)
(弁護士) 安冨 潔君
参考人
(東洋英和女学院大学名誉教授) 滝澤 三郎君
参考人
(一橋大学大学院社会学研究科准教授)
(ロンドン大学難民法イニシアチブ リサーチ・アフィリエイト) 橋本 直子君
参考人
(元東京出入国在留管理局長) 福山 宏君
法務委員会専門員 白川 弘基君
―――――――――――――
委員の異動
四月二十一日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 務台 俊介君
熊田 裕通君 山本ともひろ君
鳩山 二郎君 土田 慎君
深澤 陽一君 上杉謙太郎君
同日
辞任 補欠選任
上杉謙太郎君 深澤 陽一君
土田 慎君 鳩山 二郎君
務台 俊介君 岩田 和親君
山本ともひろ君 熊田 裕通君
―――――――――――――
四月二十日
外国人住民基本法と人種差別撤廃基本法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第八四一号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)
――――◇―――――
伊
伊藤忠彦#1
○伊藤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、慶應義塾大学名誉教授、弁護士安冨潔君、東洋英和女学院大学名誉教授滝澤三郎君、一橋大学大学院社会学研究科准教授、ロンドン大学難民法イニシアチブ リサーチ・アフィリエイト橋本直子君及び元東京出入国在留管理局長福山宏君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から是非忌憚のない御意見を賜れれば幸いと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、安冨参考人、滝澤参考人、橋本参考人、福山参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
それでは、まず安冨参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、慶應義塾大学名誉教授、弁護士安冨潔君、東洋英和女学院大学名誉教授滝澤三郎君、一橋大学大学院社会学研究科准教授、ロンドン大学難民法イニシアチブ リサーチ・アフィリエイト橋本直子君及び元東京出入国在留管理局長福山宏君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から是非忌憚のない御意見を賜れれば幸いと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、安冨参考人、滝澤参考人、橋本参考人、福山参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
それでは、まず安冨参考人にお願いいたします。
安
安冨潔#2
○安冨参考人 御紹介をいただきました安冨でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
この度は、参考人として意見を述べる機会を頂戴いたしましたこと、誠に光栄に存ずる次第でございます。
私は、慶應義塾大学名誉教授でございますが、法務大臣の私的懇談会である第七次出入国管理政策懇談会の座長代理を務めましたときに、送還忌避、長期収容問題の解決策を検討するために令和元年十月に政策懇談会の下に設置されました収容・送還に関する専門部会の部会長を務めておりました。
今回の入管法等改正法案は、現行入管法下で生じている送還忌避、長期収容問題の解決などを目的として、収容・送還に関する専門部会の提言を受けて立案されたものと承知しております。
専門部会では、私のほかに、様々な分野から選ばれた有識者である九名の委員に加え、当時のUNHCR駐日事務所副代表にもオブザーバーとして御参加いただき、幅広い観点から御議論をいただいた上で、令和二年六月に、送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言を取りまとめました。
専門部会では、基本的な考え方として、送還すべき者と在留を認め又は庇護すべき者を適切に判別すべきであること、送還すべき者については送還を促進すべきであること、長期収容を解消するための方策を講ずるべきであること、そして、被収容者の処遇は人権に配慮して適正に行うこと、この四点について委員の間で認識が共有されました。
本日は、時間の関係もありまして、専門部会における議論の全てを御紹介することはかないません。主に、送還すべき者についての送還の促進と長期収容を解消するための方策に係る議論を中心に御紹介させていただきます。
専門部会では、送還すべき者の送還促進のため、現行法下で問題となっている送還回避を目的とする難民認定申請に対処するための措置について議論がなされました。
現行法上、難民認定申請を行った場合、申請の理由や回数を問わず一律に送還が停止されることから、送還忌避者の中には、その手段として繰り返し難民認定申請を行う者が相当数存在しており、速やかな送還を実現するに当たって重大な支障となっております。
そこで、専門部会では、このいわゆる送還停止効に一定の例外を設けることを提言するとともに、難民条約上、送還が禁止されている国への送還を行わないことに十分配慮すべきことを併せて提言しました。
改正法案では、専門部会の提言を踏まえ、難民認定申請中の送還停止効に例外を設けることとしています。
具体的には、三回目以降の難民等認定申請者、無期若しくは三年以上の実刑に処せられた者、外国人テロリスト等は、難民等の認定申請中であっても送還することを可能としています。
他方で、立法論としては、二回目の申請者についても送還停止効の例外とし、あるいは再申請自体を制限することもあり得るところではありますが、法案では、二回目の申請者については送還停止効を認めています。そして、三回目以降の申請者についても、難民等の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した場合には、送還を停止するということとしています。
このような送還停止効の例外は、送還すべき者を速やかに送還する必要性と難民等認定申請者などの法的地位の安定を図る必要性のバランスを取る制度となっており、妥当なものと考えます。
専門部会では、送還すべき者の送還促進のため、我が国から退去しない行為に対する罰則の創設についても議論いたしました。
送還を忌避する者の送還を実施するには、送還先国の協力が必要でありますが、限られた国ではありますが、送還忌避者の受入れを拒否する国があり、また、送還忌避者が、送還に使用する民間航空機の中で大声を出すなどの送還妨害行為をすることにより搭乗を拒否され、送還の実現に至らない事例というものも存在いたします。現行法下では、そのような送還を忌避する者については、送還を遂げることが不可能又は著しく困難であります。
そこで、専門部会では、こうした現行法下の課題を踏まえて、正当な理由なく送還を拒む者に対し、一定の期日までに我が国から退去することを義務づける命令を発し、この命令違反に対する罰則を設けることが相当である旨の意見が述べられ、多くの意見がこれを支持いたしました。
他方で、退去が困難な事情は様々であります。命令や罰則の対象範囲を適切に定めることが困難であるなどと反対する意見や、退去しない者に一律に罰則が適用される制度は好ましくないなどとする指摘もございました。
そこで、専門部会としては、この反対意見があったことを明記した上で、多数の委員が支持した内容として、退去の命令制度やその違反に対する罰則の創設を検討することを提言するとともに、命令や罰則の対象者を適切に限定することも提言いたしました。
これを踏まえて、改正法案では、退去強制を受ける者を送還先に送還することが困難である場合に、その者の意見を聞いた上で、相当と認めるときは、その者に対し、我が国からの退去の命令を発して退去を義務づけることを可能とし、この命令に違反した場合の罰則が設けられています。
加えて、改正法案では、命令や罰則の対象者を適切に限定するという提言における指摘を踏まえまして、退去の命令を発することができるのは、退去の意思がない自国民の送還に協力しない国を送還先とする者、送還を妨害したことがあり、再び同様の行為に及ぶおそれがある者のいずれかにより送還が困難な場合に限られており、命令の対象者が適切に限定されております。
また、難民等の認定申請により送還が停止される場合や、退去強制の処分の効力に関する訴訟が係属し、かつ、当該訴訟で執行停止決定が裁判所によりなされた場合などには、命令の効力が停止するということとされています。
このように、退去の命令制度は、専門部会の提言を踏まえ、命令や罰則の対象者が厳格に限定され、適切な制度となっていると考えます。
なお、この退去命令違反の罪は、送還忌避罪などと、あたかも送還忌避者であればおよそ処罰されるかのような誤解を生じさせかねない形で批判が展開されているようですが、実際の命令や罰則の対象範囲は、今申し上げたとおり限定されたものとなっていますので、正しい前提に基づいて御議論をいただくことが重要であるというふうに考えます。
次に、収容の長期化を解決するための施策について申し上げます。
現行法では、退去強制令書の発付を受けた者は原則として送還可能のときまで収容することとされており、送還を忌避する者について収容が長期化しかねないということが問題となっております。
収容の長期化は、被収容者の健康上に問題を生じさせたり、仮放免許可を求めて集団で拒食するなどの収容施設内において生ずる様々な問題の原因となるだけでなく、現場の職員が処遇業務を行う上でも大きな負担となっています。
そこで、専門部会では、こうした収容をめぐる実情を踏まえて、新たな収容代替措置、例えば、第三者の支援などにより、当該外国人が違法な就労に及ぶことなく生活手段を確保することが可能となることを前提に、逃亡防止や出頭確保を図りつつ、収容施設外で生活することを認める措置の導入を検討すべきことを提言いたしました。
改正法案では、この提言を踏まえまして、収容に代わる監理措置制度を創設するとしております。
具体的には、逃亡等のおそれや本人が収容により受ける不利益の程度等を考慮して、監理人の監理の下で、収容せずに退去強制手続を進めるという措置になっております。
監理措置制度では、監理措置に付される者が監理措置条件に違反して逃亡等した場合の罰則の整備や、監理人に、必要な場合に限り主任審査官の求めに応じて報告することなどとしていますが、これらは監理措置の目的に照らして必要不可欠であると考えます。
監理措置に付される者は、強制退去事由に該当しており、基本的に我が国から退去しなければならない者であります。監理措置により収容しないで手続を進めた結果、その者が逃亡するなどし、送還ができなくなるということは、公正な出入国在留管理という入管法の目的に照らし、許容できるものではありません。
収容の長期化を解消しつつ、収容施設外における外国人について、適切な在留管理を行い、逃亡等を防止するため、改正法案により創設される監理措置制度は必要な仕組みであると考えます。
以上のほか、専門部会では、収容制度の在り方についても議論いたしました。一部の委員からは、外国の立法例などを踏まえ、退去強制令書による収容について、収容期間の上限を定めることを提案する意見が示されました。
しかし、これに対しましては、長期収容を可能な限り解消するという問題意識自体は異論はありませんでしたが、上限を定めると、逃亡のおそれが否定できない者であっても収容を解かれることになり、確実な送還の実現が困難になる、必ずしも諸外国の立法例が一致を見ているわけではなく、国際標準と言える状況にはないことなどから、その提案に従って制度を導入することは困難であるという意見が多数となりました。
また、一部の委員からは、収容の開始前又は継続中に司法審査を経ることを提案するという意見も示されました。
しかし、これについても、現行法上、退去強制令書は行政手続として慎重な事前の手続を経て発付されるものであり、事後的にも行政訴訟制度による司法審査の機会が確保されており、事前の司法審査の導入が必要と考えることは困難であること、退去強制令書による収容は、円滑な送還の確保及び在留活動の禁止を目的としてなされるものであり、刑事手続における被疑者、被告人の身柄拘束に求められる要件がそのまま妥当するものではないこと、必ずしも諸外国の立法例が一致を見ているわけではなく、事前の司法審査などを導入することが国際標準と言える状況にはないことなどを理由に、提案に従って制度を導入することは困難であるとする意見が多数となりました。
そこで、専門部会では、収容期間の上限や事前の司法審査の導入を提案する意見が一部の委員から示されたことを明記しつつ、多数の委員の支持があった内容として、一定期間を超えて収容を継続する場合にその要否を吟味する仕組みを設けることなど、行政手続の一層の適正確保を図るための方策を検討することを提言いたしました。
一定期間を超えて収容を継続する場合にその要否を吟味するという仕組みは、令和三年の法案では特段規定が設けられていませんでした。しかし、今回の改正法案では、新たに、退去のための計画として三か月ごとにその進捗状況を確認して、収容の要否を必要的に見直し、監理措置に移行する仕組みが導入されており、この点は、提言を一歩前に進めていただいたものと評価しております。
このほか、改正法案では、第六次出入国在留管理政策懇談会の下に置かれた難民認定制度に関する専門部会の提言を踏まえ、補完的保護対象者の認定制度を創設することとしています。
補完的保護対象者の認定制度は、昨年来続くロシアによるウクライナ侵攻を受けて、いわゆる紛争避難民を保護する制度として社会的にも注目されるようになっておりますが、紛争避難民は、補完的保護対象者ではなく、そもそも難民条約上の難民として保護すべきという御主張もございます。
この点につきましては、私は、確かに、事情によっては難民条約上の難民の定義を満たす場合があること自体は否定いたしませんが、紛争避難民は直ちに難民条約上の難民の定義を満たすとは言えないと考えており、そのため、補完的保護対象者の認定制度を創設し、この制度により紛争避難民を保護することの意義は大きいと考えております。
改正法案は、送還停止効の例外規定や罰則つきの退去命令制度など、送還を促進するための施策が注目を集めがちですが、今御説明申し上げました補完的保護対象者の認定制度の創設や、本日は時間の都合で御紹介できませんでしたけれども、在留特別許可制度について、考慮事情を明示する、そしてまた申請手続を創設するなどの手続保障の充実も図られており、保護すべき者を確実に保護するための施策を含んでいて、全体としてバランスの取れた法案であると評価しております。
出入国在留管理行政というのは、他の様々な行政分野と関連し、我が国の在り方に関わる重要な国家作用の一つであると言っても過言ではありません。今回の改正法案により、我が国の出入国在留管理行政がより一層よいものとなるよう、充実した御審議をお願いして、私の意見とさせていただきます。
どうもありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →この度は、参考人として意見を述べる機会を頂戴いたしましたこと、誠に光栄に存ずる次第でございます。
私は、慶應義塾大学名誉教授でございますが、法務大臣の私的懇談会である第七次出入国管理政策懇談会の座長代理を務めましたときに、送還忌避、長期収容問題の解決策を検討するために令和元年十月に政策懇談会の下に設置されました収容・送還に関する専門部会の部会長を務めておりました。
今回の入管法等改正法案は、現行入管法下で生じている送還忌避、長期収容問題の解決などを目的として、収容・送還に関する専門部会の提言を受けて立案されたものと承知しております。
専門部会では、私のほかに、様々な分野から選ばれた有識者である九名の委員に加え、当時のUNHCR駐日事務所副代表にもオブザーバーとして御参加いただき、幅広い観点から御議論をいただいた上で、令和二年六月に、送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言を取りまとめました。
専門部会では、基本的な考え方として、送還すべき者と在留を認め又は庇護すべき者を適切に判別すべきであること、送還すべき者については送還を促進すべきであること、長期収容を解消するための方策を講ずるべきであること、そして、被収容者の処遇は人権に配慮して適正に行うこと、この四点について委員の間で認識が共有されました。
本日は、時間の関係もありまして、専門部会における議論の全てを御紹介することはかないません。主に、送還すべき者についての送還の促進と長期収容を解消するための方策に係る議論を中心に御紹介させていただきます。
専門部会では、送還すべき者の送還促進のため、現行法下で問題となっている送還回避を目的とする難民認定申請に対処するための措置について議論がなされました。
現行法上、難民認定申請を行った場合、申請の理由や回数を問わず一律に送還が停止されることから、送還忌避者の中には、その手段として繰り返し難民認定申請を行う者が相当数存在しており、速やかな送還を実現するに当たって重大な支障となっております。
そこで、専門部会では、このいわゆる送還停止効に一定の例外を設けることを提言するとともに、難民条約上、送還が禁止されている国への送還を行わないことに十分配慮すべきことを併せて提言しました。
改正法案では、専門部会の提言を踏まえ、難民認定申請中の送還停止効に例外を設けることとしています。
具体的には、三回目以降の難民等認定申請者、無期若しくは三年以上の実刑に処せられた者、外国人テロリスト等は、難民等の認定申請中であっても送還することを可能としています。
他方で、立法論としては、二回目の申請者についても送還停止効の例外とし、あるいは再申請自体を制限することもあり得るところではありますが、法案では、二回目の申請者については送還停止効を認めています。そして、三回目以降の申請者についても、難民等の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した場合には、送還を停止するということとしています。
このような送還停止効の例外は、送還すべき者を速やかに送還する必要性と難民等認定申請者などの法的地位の安定を図る必要性のバランスを取る制度となっており、妥当なものと考えます。
専門部会では、送還すべき者の送還促進のため、我が国から退去しない行為に対する罰則の創設についても議論いたしました。
送還を忌避する者の送還を実施するには、送還先国の協力が必要でありますが、限られた国ではありますが、送還忌避者の受入れを拒否する国があり、また、送還忌避者が、送還に使用する民間航空機の中で大声を出すなどの送還妨害行為をすることにより搭乗を拒否され、送還の実現に至らない事例というものも存在いたします。現行法下では、そのような送還を忌避する者については、送還を遂げることが不可能又は著しく困難であります。
そこで、専門部会では、こうした現行法下の課題を踏まえて、正当な理由なく送還を拒む者に対し、一定の期日までに我が国から退去することを義務づける命令を発し、この命令違反に対する罰則を設けることが相当である旨の意見が述べられ、多くの意見がこれを支持いたしました。
他方で、退去が困難な事情は様々であります。命令や罰則の対象範囲を適切に定めることが困難であるなどと反対する意見や、退去しない者に一律に罰則が適用される制度は好ましくないなどとする指摘もございました。
そこで、専門部会としては、この反対意見があったことを明記した上で、多数の委員が支持した内容として、退去の命令制度やその違反に対する罰則の創設を検討することを提言するとともに、命令や罰則の対象者を適切に限定することも提言いたしました。
これを踏まえて、改正法案では、退去強制を受ける者を送還先に送還することが困難である場合に、その者の意見を聞いた上で、相当と認めるときは、その者に対し、我が国からの退去の命令を発して退去を義務づけることを可能とし、この命令に違反した場合の罰則が設けられています。
加えて、改正法案では、命令や罰則の対象者を適切に限定するという提言における指摘を踏まえまして、退去の命令を発することができるのは、退去の意思がない自国民の送還に協力しない国を送還先とする者、送還を妨害したことがあり、再び同様の行為に及ぶおそれがある者のいずれかにより送還が困難な場合に限られており、命令の対象者が適切に限定されております。
また、難民等の認定申請により送還が停止される場合や、退去強制の処分の効力に関する訴訟が係属し、かつ、当該訴訟で執行停止決定が裁判所によりなされた場合などには、命令の効力が停止するということとされています。
このように、退去の命令制度は、専門部会の提言を踏まえ、命令や罰則の対象者が厳格に限定され、適切な制度となっていると考えます。
なお、この退去命令違反の罪は、送還忌避罪などと、あたかも送還忌避者であればおよそ処罰されるかのような誤解を生じさせかねない形で批判が展開されているようですが、実際の命令や罰則の対象範囲は、今申し上げたとおり限定されたものとなっていますので、正しい前提に基づいて御議論をいただくことが重要であるというふうに考えます。
次に、収容の長期化を解決するための施策について申し上げます。
現行法では、退去強制令書の発付を受けた者は原則として送還可能のときまで収容することとされており、送還を忌避する者について収容が長期化しかねないということが問題となっております。
収容の長期化は、被収容者の健康上に問題を生じさせたり、仮放免許可を求めて集団で拒食するなどの収容施設内において生ずる様々な問題の原因となるだけでなく、現場の職員が処遇業務を行う上でも大きな負担となっています。
そこで、専門部会では、こうした収容をめぐる実情を踏まえて、新たな収容代替措置、例えば、第三者の支援などにより、当該外国人が違法な就労に及ぶことなく生活手段を確保することが可能となることを前提に、逃亡防止や出頭確保を図りつつ、収容施設外で生活することを認める措置の導入を検討すべきことを提言いたしました。
改正法案では、この提言を踏まえまして、収容に代わる監理措置制度を創設するとしております。
具体的には、逃亡等のおそれや本人が収容により受ける不利益の程度等を考慮して、監理人の監理の下で、収容せずに退去強制手続を進めるという措置になっております。
監理措置制度では、監理措置に付される者が監理措置条件に違反して逃亡等した場合の罰則の整備や、監理人に、必要な場合に限り主任審査官の求めに応じて報告することなどとしていますが、これらは監理措置の目的に照らして必要不可欠であると考えます。
監理措置に付される者は、強制退去事由に該当しており、基本的に我が国から退去しなければならない者であります。監理措置により収容しないで手続を進めた結果、その者が逃亡するなどし、送還ができなくなるということは、公正な出入国在留管理という入管法の目的に照らし、許容できるものではありません。
収容の長期化を解消しつつ、収容施設外における外国人について、適切な在留管理を行い、逃亡等を防止するため、改正法案により創設される監理措置制度は必要な仕組みであると考えます。
以上のほか、専門部会では、収容制度の在り方についても議論いたしました。一部の委員からは、外国の立法例などを踏まえ、退去強制令書による収容について、収容期間の上限を定めることを提案する意見が示されました。
しかし、これに対しましては、長期収容を可能な限り解消するという問題意識自体は異論はありませんでしたが、上限を定めると、逃亡のおそれが否定できない者であっても収容を解かれることになり、確実な送還の実現が困難になる、必ずしも諸外国の立法例が一致を見ているわけではなく、国際標準と言える状況にはないことなどから、その提案に従って制度を導入することは困難であるという意見が多数となりました。
また、一部の委員からは、収容の開始前又は継続中に司法審査を経ることを提案するという意見も示されました。
しかし、これについても、現行法上、退去強制令書は行政手続として慎重な事前の手続を経て発付されるものであり、事後的にも行政訴訟制度による司法審査の機会が確保されており、事前の司法審査の導入が必要と考えることは困難であること、退去強制令書による収容は、円滑な送還の確保及び在留活動の禁止を目的としてなされるものであり、刑事手続における被疑者、被告人の身柄拘束に求められる要件がそのまま妥当するものではないこと、必ずしも諸外国の立法例が一致を見ているわけではなく、事前の司法審査などを導入することが国際標準と言える状況にはないことなどを理由に、提案に従って制度を導入することは困難であるとする意見が多数となりました。
そこで、専門部会では、収容期間の上限や事前の司法審査の導入を提案する意見が一部の委員から示されたことを明記しつつ、多数の委員の支持があった内容として、一定期間を超えて収容を継続する場合にその要否を吟味する仕組みを設けることなど、行政手続の一層の適正確保を図るための方策を検討することを提言いたしました。
一定期間を超えて収容を継続する場合にその要否を吟味するという仕組みは、令和三年の法案では特段規定が設けられていませんでした。しかし、今回の改正法案では、新たに、退去のための計画として三か月ごとにその進捗状況を確認して、収容の要否を必要的に見直し、監理措置に移行する仕組みが導入されており、この点は、提言を一歩前に進めていただいたものと評価しております。
このほか、改正法案では、第六次出入国在留管理政策懇談会の下に置かれた難民認定制度に関する専門部会の提言を踏まえ、補完的保護対象者の認定制度を創設することとしています。
補完的保護対象者の認定制度は、昨年来続くロシアによるウクライナ侵攻を受けて、いわゆる紛争避難民を保護する制度として社会的にも注目されるようになっておりますが、紛争避難民は、補完的保護対象者ではなく、そもそも難民条約上の難民として保護すべきという御主張もございます。
この点につきましては、私は、確かに、事情によっては難民条約上の難民の定義を満たす場合があること自体は否定いたしませんが、紛争避難民は直ちに難民条約上の難民の定義を満たすとは言えないと考えており、そのため、補完的保護対象者の認定制度を創設し、この制度により紛争避難民を保護することの意義は大きいと考えております。
改正法案は、送還停止効の例外規定や罰則つきの退去命令制度など、送還を促進するための施策が注目を集めがちですが、今御説明申し上げました補完的保護対象者の認定制度の創設や、本日は時間の都合で御紹介できませんでしたけれども、在留特別許可制度について、考慮事情を明示する、そしてまた申請手続を創設するなどの手続保障の充実も図られており、保護すべき者を確実に保護するための施策を含んでいて、全体としてバランスの取れた法案であると評価しております。
出入国在留管理行政というのは、他の様々な行政分野と関連し、我が国の在り方に関わる重要な国家作用の一つであると言っても過言ではありません。今回の改正法案により、我が国の出入国在留管理行政がより一層よいものとなるよう、充実した御審議をお願いして、私の意見とさせていただきます。
どうもありがとうございました。拍手
伊
滝
滝澤三郎#4
○滝澤参考人 この度は、参考人として意見を述べる機会をいただき、誠に光栄に存じます。
私は、国連パレスチナ難民機関に始まり、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRの本部財務局長、それから駐日代表を務めるなど、二十八年間にわたって国際機関で働きました。その後、大学で移民、難民問題、特に日本の難民政策について研究する傍らで、第六次と第七次の出入国在留管理政策懇談会にも関わりました。
本日は、こういった経験に基づいて、本改正案について、やや俯瞰的なコメントをさせていただきます。
まず、国際的な難民の状況ですが、二〇一五年から、シリア人など百万人を超える移民、難民が欧州に流入し、いわゆる欧州難民危機が起きました。二〇一七年にはロヒンギャ難民問題、二〇二一年にはミャンマー国軍のクーデター、それからアフガニスタンのタリバン制圧によってたくさんの難民が出ました。昨年にはロシアのウクライナ侵略によって七百万人以上の避難民が出ました。このほかにも、世界各地で紛争が続き、移民や難民の数が一億人を超えるという人道危機が続いております。
他方で、難民、避難民の流入が一挙に、時として無秩序に起きる中で、国家の安全保障上の懸念が受入れ国の政府や国民の間に広がり、欧州各国では極右政党が勢力を伸ばしました。先進国では難民を受け入れる政治的意思は低下し、難民締め出しの動きが強まっています。
例えば、難民保護の先進国とみなされてきたイギリスは、ボートでフランスから不法入国した者が昨年は四万五千人を超え、政府は先月、これらの者の難民申請を認めず、出身国又はルワンダなど第三国に送還できるとする法案を議会に提出し、現在審議中です。
最大の難民受入れ国であるアメリカでは、昨年半ばまでの一年間で、二百三十八万人に上る中南米諸国からの不法入国者が国境で拘束されました。彼らは難民申請も許されないまま国外退去となっています。
ウクライナ避難民を七百万人以上受け入れたポーランドですけれども、北部のベラルーシとの国境では壁を造って、中東、アフリカからの移民、難民の流入を阻止しています。
スウェーデンは、受け入れたシリア難民を本国に送還しようとしています。
これらは難民条約のノン・ルフルマン原則の明確な違反です。このような先進国の難民排除の流れの中で、近年の日本は逆に難民、避難民の受入れに前向きです。
今回の改正案の難民受入れに関する部分は、第六次出入国管理政策懇談会の下に設けられた難民認定制度に関する専門部会が二〇一四年に出した提言を反映しています。私もこの専門部会の委員でしたが、同専門部会は四つの提言をしました。提言の履行状況を見ていきましょう。
第一の提言は、補完的保護の明確化による的確な庇護であり、それは補完的保護対象者という制度で今回の法案に組み入れられています。
補完的保護とは、難民条約上の難民には当たらないものの、紛争避難民など不特定多数に対する無差別暴力に直面した人々を保護することです。補完的保護の制度は、EU諸国、アメリカ、オーストラリア、カナダ、韓国など数十か国に広まっています。今回、法改正がなされれば、ウクライナ避難民を始めとして、紛争地域からの避難民などが救済されることになります。
第二の提言は、難民該当性に係る判断要素の明確化です。この提案は、入管庁がUNHCRの難民認定ハンドブックや先進国の事例などを調査して先月に公表した難民該当性判断の手引によって実現されました。
同手引は、迫害の定義に、人権の重大な侵害や差別的措置、例えば生活手段の剥奪や精神に対する暴力も迫害を構成し得ると明示されている点や、性的マイノリティーであることを理由とした迫害も明記するなど、多様化する迫害の形態に対応しており、難民認定判断の要素は先進国と並ぶようになります。
手引は、日本の難民認定制度の基盤をなすものであり、百名を超える難民調査官の判断の一貫性、透明性、信頼性の向上に役立ちます。それは申請者による不服申立てや裁判での根拠になるほか、ホームページで英語でも閲覧が可能なため、これから日本で庇護を求めようとする人にとっては予見可能性を増し、今後、難民認定制度の濫用、誤用は減り、また、救われるべき者は救われるようになることでしょう。
第三の提言は、手続の明確化を通した適正迅速な難民認定であり、その中心は難民制度の濫用、誤用対策です。
そもそも難民認定制度には、ただ乗り問題、つまり難民でない者が難民制度を利用する問題があります。国際的にも、就労目的の経済移民によって難民認定制度が利用され、難民の迅速な保護が難しくなることは三十年ほど前から問題となり、UNHCRの執行委員会もこれを何度か取り上げてきました。
この問題に対して、先進諸国は、複数回申請を制限する又は重大な前科者など公共の安全に危険がある者は送還するなどの方策を取っています。
この点、今までの日本の手続は特異なものでした。理由がいかなるものであろうとも、前回と同じ内容であろうとも、何度でも難民申請ができました。さらに、二〇一〇年に難民認定申請から六か月後には就労を一律に認める運用が開始され、難民性が低いと思われる申請者が急増し、二〇一七年には二万人近くになりました。これは制度の運用に支障が出る結果となりました。
その後、入管庁が就労を一律に認める運用を改めるなどした結果、濫用、誤用的申請は減り、申請総数も四千件ほどになるなど、制度の正常化が進んでいます。
しかし、難民不認定とされても送還停止効によって送還忌避をする者は逆に増え続け、今日では四千二百人になるなど、残された課題があります。現行法の送還停止効には例外がなく、殺人などの重罪を犯した者であっても退去を強制できないといった定めは他の国に例を見ないものですし、また、遵法精神に富む多くの日本国民には納得のいかないものでしょう。
私は、難民認定制度を申請者の人権保障と国家の安全保障のバランスを取った適正なものとするため、送還停止効に例外を設けることは必要と考えます。ただし、例外の適用は、真にやむを得ない場合にのみ、慎重になされるべきことは言うまでもありません。
第四の提言は、認定実務に携わる者の専門性の向上です。
制度、手続が効率的、効果的に運用できるか否かは、運用を担うスタッフの人権意識、難民認定の知識と経験、そして出身国情報の収集、分析体制にかかります。この点は、入管庁は、UNHCRの協力も得て、研修体制を年々充実しつつあると理解しています。
このように、専門部会の四つの提言は実施されつつありますが、日本の難民受入れ数が少ない又は認定率が低いという指摘は今も続いています。これをどう考えるべきでしょうか。
まず、日本に逃れてくる真の難民は多くありません。日本は、難民が多く発生する中東やアフリカ、中南米の国々から遠く離れており、日本までたどり着くには、航空運賃や生活費のみならず、パスポートやビザが必要で、空港でのチェックが厳しい今日、日本まで来るのは容易ではありません。
例えば、今混乱の続くスーダンのハルツームから日本に逃げてくる又は来れる人はどのくらいいるでしょうか。さらに、内外メディアが日本は難民を受け入れない国といった報道を繰り返してきました。そのような評判を持つ日本を難民があえて選ぶ合理的理由は乏しいと考えます。難民には避難できる国が身近に幾つもあります。難民も逃げる国を選ぶのです。
もちろん、日本にまで来ても、日本の難民認定制度の壁があります。それについては、まさに本委員会で今議論がなされているところでございます。このほか、国民の難民に対する姿勢も絡んでくるなど、難民受入れは極めて複雑な問題です。
このような中でも、日本政府は昨年、ミャンマー、アフガニスタン、ウクライナからの難民や避難民を約一万三千五百人受け入れました、又は国内で庇護しました。これは、一九七八年から二〇〇五年までの二十八年間に受け入れられたインドシナ難民一万千三百十九人を上回ります。また、日本が二〇二一年までの四十四年間に受け入れた人々の総数が一万五千七百十七人であったことを見るならば、昨年の受入れ一万三千五百人は画期的であり、いわゆる日本の難民鎖国は終えんしたと言うべきでありましょう。
では、難民認定率が一%以下という指摘はどうでしょうか。他国との比較のために、難民認定数を分子、その年の処理人数を分母とし、一次審査で比較しますと、二〇二二年でいえば、認定数が百八十七人、取下げを除いた処理人数が五千六百五ですので、認定率は三・三%となります。
ただ、EU諸国では、補完的保護も分子に加えた数字を難民認定率としています。UNHCRはそれを庇護率と呼びます。昨年の日本では、本国事情などによる在留許可が千四百八十一件あり、実質的にはほとんどの者が補完的保護対象者となるので、これを入れて計算すると、庇護率は約三〇%になります。
注意すべきは、昨年三月から受け入れられている二千二百三十八人のウクライナ避難民のほとんどや、ミャンマー特別措置によって特定活動資格で在留するミャンマー人の多くは難民認定申請をしていないため、庇護率の計算には入っていません。これらの人々を考慮するならば、昨年の庇護率は五〇%を超すでしょう。資料一を御覧ください。日本の難民認定率は一%以下というのは、今では誤りです。
ちなみに、日本よりずっと高いと言われる欧米諸国の難民認定率については、国境で難民申請も許されないまま追放され、そういった数十万人の人々が入っていません。彼らは実質的には難民不認定とされたのであって、欧米諸国の本当の認定率は公表数字よりも低いと考えられます。
次に、国際機関からの指摘について述べます。
UNHCR駐日事務所は、二〇二一年に提出された入管法改正案の送還停止効の例外規定に懸念を示しました。これをもって、改正案は国際法違反、国際人権法違反であるといった意見が見られましたが、これは正しいとは言えません。
難民条約上、加盟国がどのような難民認定手続を採用するかについては各国に委ねられています。UNHCRの役割は条約の適用を監督することであって、この監督とは、情報収集や評価をして意見を述べることです。UNHCRは難民の定義や解釈について意見を述べることはできますが、加盟国が従わなければならない最終的な解釈権限はUNHCRにはありません。自由権規約委員会は解釈権限を有していますが、その解釈に基づく勧告についても同様に拘束力はありません。
また、いわゆる国際基準というものは曖昧なものです。各国はそれぞれの事情に応じて国内法を定めており、全ての国を拘束する統一的な国際基準はありません。また、仮にそのような国際基準があったとしても、さきに述べたように、主要先進国がそれを守っていません。日本の制度を評価するには、抽象的な国際基準だけでなく、各国の政策実行の実態も視野に入れた複眼的な評価が必要です。
各国の難民政策は、難民の人権を中核に、国家の安全、経済的必要性、そして、重要ですが、社会の支持といった複数の事情に目を配りながら実施されます。資料二を御覧ください。
難民政策は、具体的には、難民の受入れと、多数の難民を受け入れる途上国の負担を分担する資金協力の形を取ります。日本の資金協力について議論されることはほとんどありませんので、一言触れますと、日本は官民合わせてUNHCRに毎年二百億円近い資金協力を行い、ドナーランキングは四番前後にいます。この日本の資金によって、大ざっぱに言って三百万人近い難民や国内避難民が助けられています。資料三を御覧ください。
このような日本の最近の難民政策は注目を集めています。日本に対して批判的だったUNHCRも、昨年十二月に来日したトリッグス副難民高等弁務官が日本の難民政策は大きく変わっていると再評価しています。資料四を御覧ください。
また、難民研究の世界的権威であるオックスフォード大学難民研究所の所長、アレクサンダー・ベッツ博士も、先日、次のようなメッセージを私に送ってきました。日本は、今、難民政策において極めて重要な時期にある。日本国内での庇護へのアクセスを広げる一方で、海外での人道支援や開発支援を継続している。世界の難民制度が脅威にさらされ、改革を必要としている今、日本は重要な指導的役割を果たすことができると。
最後になりますが、私がUNHCRに入って二十年、この間、日本の難民政策は非常に大きく変わりました。また、余談ですけれども、一九七六年から一年間、私は入管局にいました。四十七年前、先生方にはまだ生まれておられない方もいらっしゃると思います。その頃の入管局と今の入管庁はほとんど別の組織です。入管庁は大きく変わりました。
今回の法改正は、日本的な、規律ある人道主義に基づくものと言えます。それは、効果的な国境管理ができず、難民や移民をめぐって政治的な分断が進む先進諸国にとって、一つの方向性を示すものと言うことができましょう。
以上のような理由から、私は改正案に賛成いたします。
御清聴ありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →私は、国連パレスチナ難民機関に始まり、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRの本部財務局長、それから駐日代表を務めるなど、二十八年間にわたって国際機関で働きました。その後、大学で移民、難民問題、特に日本の難民政策について研究する傍らで、第六次と第七次の出入国在留管理政策懇談会にも関わりました。
本日は、こういった経験に基づいて、本改正案について、やや俯瞰的なコメントをさせていただきます。
まず、国際的な難民の状況ですが、二〇一五年から、シリア人など百万人を超える移民、難民が欧州に流入し、いわゆる欧州難民危機が起きました。二〇一七年にはロヒンギャ難民問題、二〇二一年にはミャンマー国軍のクーデター、それからアフガニスタンのタリバン制圧によってたくさんの難民が出ました。昨年にはロシアのウクライナ侵略によって七百万人以上の避難民が出ました。このほかにも、世界各地で紛争が続き、移民や難民の数が一億人を超えるという人道危機が続いております。
他方で、難民、避難民の流入が一挙に、時として無秩序に起きる中で、国家の安全保障上の懸念が受入れ国の政府や国民の間に広がり、欧州各国では極右政党が勢力を伸ばしました。先進国では難民を受け入れる政治的意思は低下し、難民締め出しの動きが強まっています。
例えば、難民保護の先進国とみなされてきたイギリスは、ボートでフランスから不法入国した者が昨年は四万五千人を超え、政府は先月、これらの者の難民申請を認めず、出身国又はルワンダなど第三国に送還できるとする法案を議会に提出し、現在審議中です。
最大の難民受入れ国であるアメリカでは、昨年半ばまでの一年間で、二百三十八万人に上る中南米諸国からの不法入国者が国境で拘束されました。彼らは難民申請も許されないまま国外退去となっています。
ウクライナ避難民を七百万人以上受け入れたポーランドですけれども、北部のベラルーシとの国境では壁を造って、中東、アフリカからの移民、難民の流入を阻止しています。
スウェーデンは、受け入れたシリア難民を本国に送還しようとしています。
これらは難民条約のノン・ルフルマン原則の明確な違反です。このような先進国の難民排除の流れの中で、近年の日本は逆に難民、避難民の受入れに前向きです。
今回の改正案の難民受入れに関する部分は、第六次出入国管理政策懇談会の下に設けられた難民認定制度に関する専門部会が二〇一四年に出した提言を反映しています。私もこの専門部会の委員でしたが、同専門部会は四つの提言をしました。提言の履行状況を見ていきましょう。
第一の提言は、補完的保護の明確化による的確な庇護であり、それは補完的保護対象者という制度で今回の法案に組み入れられています。
補完的保護とは、難民条約上の難民には当たらないものの、紛争避難民など不特定多数に対する無差別暴力に直面した人々を保護することです。補完的保護の制度は、EU諸国、アメリカ、オーストラリア、カナダ、韓国など数十か国に広まっています。今回、法改正がなされれば、ウクライナ避難民を始めとして、紛争地域からの避難民などが救済されることになります。
第二の提言は、難民該当性に係る判断要素の明確化です。この提案は、入管庁がUNHCRの難民認定ハンドブックや先進国の事例などを調査して先月に公表した難民該当性判断の手引によって実現されました。
同手引は、迫害の定義に、人権の重大な侵害や差別的措置、例えば生活手段の剥奪や精神に対する暴力も迫害を構成し得ると明示されている点や、性的マイノリティーであることを理由とした迫害も明記するなど、多様化する迫害の形態に対応しており、難民認定判断の要素は先進国と並ぶようになります。
手引は、日本の難民認定制度の基盤をなすものであり、百名を超える難民調査官の判断の一貫性、透明性、信頼性の向上に役立ちます。それは申請者による不服申立てや裁判での根拠になるほか、ホームページで英語でも閲覧が可能なため、これから日本で庇護を求めようとする人にとっては予見可能性を増し、今後、難民認定制度の濫用、誤用は減り、また、救われるべき者は救われるようになることでしょう。
第三の提言は、手続の明確化を通した適正迅速な難民認定であり、その中心は難民制度の濫用、誤用対策です。
そもそも難民認定制度には、ただ乗り問題、つまり難民でない者が難民制度を利用する問題があります。国際的にも、就労目的の経済移民によって難民認定制度が利用され、難民の迅速な保護が難しくなることは三十年ほど前から問題となり、UNHCRの執行委員会もこれを何度か取り上げてきました。
この問題に対して、先進諸国は、複数回申請を制限する又は重大な前科者など公共の安全に危険がある者は送還するなどの方策を取っています。
この点、今までの日本の手続は特異なものでした。理由がいかなるものであろうとも、前回と同じ内容であろうとも、何度でも難民申請ができました。さらに、二〇一〇年に難民認定申請から六か月後には就労を一律に認める運用が開始され、難民性が低いと思われる申請者が急増し、二〇一七年には二万人近くになりました。これは制度の運用に支障が出る結果となりました。
その後、入管庁が就労を一律に認める運用を改めるなどした結果、濫用、誤用的申請は減り、申請総数も四千件ほどになるなど、制度の正常化が進んでいます。
しかし、難民不認定とされても送還停止効によって送還忌避をする者は逆に増え続け、今日では四千二百人になるなど、残された課題があります。現行法の送還停止効には例外がなく、殺人などの重罪を犯した者であっても退去を強制できないといった定めは他の国に例を見ないものですし、また、遵法精神に富む多くの日本国民には納得のいかないものでしょう。
私は、難民認定制度を申請者の人権保障と国家の安全保障のバランスを取った適正なものとするため、送還停止効に例外を設けることは必要と考えます。ただし、例外の適用は、真にやむを得ない場合にのみ、慎重になされるべきことは言うまでもありません。
第四の提言は、認定実務に携わる者の専門性の向上です。
制度、手続が効率的、効果的に運用できるか否かは、運用を担うスタッフの人権意識、難民認定の知識と経験、そして出身国情報の収集、分析体制にかかります。この点は、入管庁は、UNHCRの協力も得て、研修体制を年々充実しつつあると理解しています。
このように、専門部会の四つの提言は実施されつつありますが、日本の難民受入れ数が少ない又は認定率が低いという指摘は今も続いています。これをどう考えるべきでしょうか。
まず、日本に逃れてくる真の難民は多くありません。日本は、難民が多く発生する中東やアフリカ、中南米の国々から遠く離れており、日本までたどり着くには、航空運賃や生活費のみならず、パスポートやビザが必要で、空港でのチェックが厳しい今日、日本まで来るのは容易ではありません。
例えば、今混乱の続くスーダンのハルツームから日本に逃げてくる又は来れる人はどのくらいいるでしょうか。さらに、内外メディアが日本は難民を受け入れない国といった報道を繰り返してきました。そのような評判を持つ日本を難民があえて選ぶ合理的理由は乏しいと考えます。難民には避難できる国が身近に幾つもあります。難民も逃げる国を選ぶのです。
もちろん、日本にまで来ても、日本の難民認定制度の壁があります。それについては、まさに本委員会で今議論がなされているところでございます。このほか、国民の難民に対する姿勢も絡んでくるなど、難民受入れは極めて複雑な問題です。
このような中でも、日本政府は昨年、ミャンマー、アフガニスタン、ウクライナからの難民や避難民を約一万三千五百人受け入れました、又は国内で庇護しました。これは、一九七八年から二〇〇五年までの二十八年間に受け入れられたインドシナ難民一万千三百十九人を上回ります。また、日本が二〇二一年までの四十四年間に受け入れた人々の総数が一万五千七百十七人であったことを見るならば、昨年の受入れ一万三千五百人は画期的であり、いわゆる日本の難民鎖国は終えんしたと言うべきでありましょう。
では、難民認定率が一%以下という指摘はどうでしょうか。他国との比較のために、難民認定数を分子、その年の処理人数を分母とし、一次審査で比較しますと、二〇二二年でいえば、認定数が百八十七人、取下げを除いた処理人数が五千六百五ですので、認定率は三・三%となります。
ただ、EU諸国では、補完的保護も分子に加えた数字を難民認定率としています。UNHCRはそれを庇護率と呼びます。昨年の日本では、本国事情などによる在留許可が千四百八十一件あり、実質的にはほとんどの者が補完的保護対象者となるので、これを入れて計算すると、庇護率は約三〇%になります。
注意すべきは、昨年三月から受け入れられている二千二百三十八人のウクライナ避難民のほとんどや、ミャンマー特別措置によって特定活動資格で在留するミャンマー人の多くは難民認定申請をしていないため、庇護率の計算には入っていません。これらの人々を考慮するならば、昨年の庇護率は五〇%を超すでしょう。資料一を御覧ください。日本の難民認定率は一%以下というのは、今では誤りです。
ちなみに、日本よりずっと高いと言われる欧米諸国の難民認定率については、国境で難民申請も許されないまま追放され、そういった数十万人の人々が入っていません。彼らは実質的には難民不認定とされたのであって、欧米諸国の本当の認定率は公表数字よりも低いと考えられます。
次に、国際機関からの指摘について述べます。
UNHCR駐日事務所は、二〇二一年に提出された入管法改正案の送還停止効の例外規定に懸念を示しました。これをもって、改正案は国際法違反、国際人権法違反であるといった意見が見られましたが、これは正しいとは言えません。
難民条約上、加盟国がどのような難民認定手続を採用するかについては各国に委ねられています。UNHCRの役割は条約の適用を監督することであって、この監督とは、情報収集や評価をして意見を述べることです。UNHCRは難民の定義や解釈について意見を述べることはできますが、加盟国が従わなければならない最終的な解釈権限はUNHCRにはありません。自由権規約委員会は解釈権限を有していますが、その解釈に基づく勧告についても同様に拘束力はありません。
また、いわゆる国際基準というものは曖昧なものです。各国はそれぞれの事情に応じて国内法を定めており、全ての国を拘束する統一的な国際基準はありません。また、仮にそのような国際基準があったとしても、さきに述べたように、主要先進国がそれを守っていません。日本の制度を評価するには、抽象的な国際基準だけでなく、各国の政策実行の実態も視野に入れた複眼的な評価が必要です。
各国の難民政策は、難民の人権を中核に、国家の安全、経済的必要性、そして、重要ですが、社会の支持といった複数の事情に目を配りながら実施されます。資料二を御覧ください。
難民政策は、具体的には、難民の受入れと、多数の難民を受け入れる途上国の負担を分担する資金協力の形を取ります。日本の資金協力について議論されることはほとんどありませんので、一言触れますと、日本は官民合わせてUNHCRに毎年二百億円近い資金協力を行い、ドナーランキングは四番前後にいます。この日本の資金によって、大ざっぱに言って三百万人近い難民や国内避難民が助けられています。資料三を御覧ください。
このような日本の最近の難民政策は注目を集めています。日本に対して批判的だったUNHCRも、昨年十二月に来日したトリッグス副難民高等弁務官が日本の難民政策は大きく変わっていると再評価しています。資料四を御覧ください。
また、難民研究の世界的権威であるオックスフォード大学難民研究所の所長、アレクサンダー・ベッツ博士も、先日、次のようなメッセージを私に送ってきました。日本は、今、難民政策において極めて重要な時期にある。日本国内での庇護へのアクセスを広げる一方で、海外での人道支援や開発支援を継続している。世界の難民制度が脅威にさらされ、改革を必要としている今、日本は重要な指導的役割を果たすことができると。
最後になりますが、私がUNHCRに入って二十年、この間、日本の難民政策は非常に大きく変わりました。また、余談ですけれども、一九七六年から一年間、私は入管局にいました。四十七年前、先生方にはまだ生まれておられない方もいらっしゃると思います。その頃の入管局と今の入管庁はほとんど別の組織です。入管庁は大きく変わりました。
今回の法改正は、日本的な、規律ある人道主義に基づくものと言えます。それは、効果的な国境管理ができず、難民や移民をめぐって政治的な分断が進む先進諸国にとって、一つの方向性を示すものと言うことができましょう。
以上のような理由から、私は改正案に賛成いたします。
御清聴ありがとうございました。拍手
伊
橋
橋本直子#6
○橋本参考人 この度は、重要法案の参考人として招致していただき、光栄に存じております。
私は、現在は一橋大学で教鞭を執っておりますけれども、以前は、外務省、UNHCR、IOM、国際移住機関の職員、また法務省入国者収容所等視察委員会の西日本委員、そして現在も難民審査参与員として、過去約二十五年間にわたり、国際難民法、庇護政策を中核的専門として、実務と研究の双方で研さんを積んでまいりました。
それらを踏まえつつ、完全に個人的な見解として、今国会に再提出された入管法改正案について、具体的な修正案を時間的な制約もございますので三点に絞って提案させていただきます。配付資料も五点ございます。併せて御参照ください。
一点目が、三回目以降の複数回申請者に対する送還停止効の解除の問題です。相当の理由がある資料を新たに提出していないと判断された三回目以降の申請者に対して直ちに送還停止効を外してしまうのではなく、代わりに迅速簡易手続を通じて難民申請を審査するのが、現時点では妥当ではないかと考えます。
確かに、全く同じ状況、主張、証拠に基づいて何度でも申請できるというのが一般的な法原則に照らしておかしいという指摘は分かります。けれども、日本の難民認定基準が諸外国と比べて大変厳しい、だから条約上の難民が日本では保護されていない危険がある、また、複数回申請後に裁判を経て難民認定された者がいるというのも事実です。
実は、私は、難民該当性に関する規範的要素の明確化を通じて、もし日本の難民認定基準が大幅に見直される、改善されるのであれば、複数回申請者で新たな事情が一切ない者に対しては、そもそも申請自体を受理しないこともやむを得ないのかもしれないと先月までは考えておりました。そのような可能性も視野に入れて、難民審査参与員の一人として、明確化作業には多くのコメントを提出させていただきました。
去る三月二十四日に公表された難民該当性判断の手引を拝見したところ、確かに、入管庁による解釈が明確になった、部分的には改善されたところもあります。しかし、法務大臣がおっしゃったとおり、従来の解釈を大幅に変更、緩和するものではありません。特に、難民申請審査上、肝となる、迫害のおそれの概念について、難民条約の解釈としては不適切、不正確と私は思う点がまだ幾つかあります。
複数回申請者の排除と難民認定基準の見直しはセットで行われなければなりません。現状においては、送還停止効を解除するのではなく、迅速簡易手続を導入するのが適切と考えます。
なお、迅速簡易手続については、EUの手続指令でも既に十年前から導入されており、また、UNHCRが二〇二一年四月に公表した旧法案に対する見解においても、一定の条件下で許容されています。また、入管庁御自身も、二〇一八年から、難民申請書類を受理した直後の振り分け作業において、ある意味で実質的に迅速手続を既に実施しています。したがって、全く新たな手続を提案するものではありません。
確かに、迅速簡易手続の導入では、送還停止の対象となる難民認定申請期間が短くなるだけで、必ずしも出国、帰国につながらない、根本的解決にならないという反対意見も出るでしょう。
確かに、原則論に立ち返れば、在留資格のない外国籍者で、本国に迫害や拷問等、また強制失踪のおそれも一切なく、さらに、日本での在留を特別に認めるべき人道的事情も全くない方については、速やかに帰っていただくのが原則です。実際、入管庁の資料でも、退去強制令書が発付された方のうち約九割は自発的に自費で出国しています。
と同時に、日本での生活が長くなり帰国後の生活が心配で帰国に踏み切れない方や、そもそも帰国費用が賄えない人もいます。
非正規滞在者は強制送還しろと威勢よく唱えるのは簡単ですけれども、そう唱える方々は、日本政府が物理的、強制的に退去強制を執行する際の費用は、日本の納税者、外国籍を含めてですね、納税者の税金で賄われていることを御存じなのでしょうか。
税金を使っての強制送還者や被収容者をできる限り減らすために、手前みそでございますけれども、私が国際移住機関勤務中に、当時の入国管理局警備課の方々との丁寧な協議に基づき、自主的帰国支援・社会復帰事業というのを立ち上げました。この事業も種々の批判があることは承知しておりますけれども、ヨーロッパ諸国では既に一九七〇年代から実施されており、世界では毎年約五万人以上の方々がこの形で穏便かつ比較的安価に帰国しています。
要するに、難民認定基準がしっかりと見直されるまでは、送還停止の解除ではなく、迅速簡易手続を導入し、その間に自主的帰国支援を使って自発的に帰っていただくのが、日本政府にとっても、納税者にとっても、御本人にとっても最も合理的な方策と考えます。
二点目が、犯罪者や入管法二十四条の幾つかの条項に該当する疑いがある方に対する送還停止効の解除です。
この条項は、難民条約三十三条二項、つまりノン・ルフールマン原則の例外規定を国内で実施することを可能にする趣旨と理解します。難民条約三十三条二項は、実際に迫害を受けるおそれがある方、命の危険が待ち受ける者ですら送還を可能にしてしまう条文ですから、その趣旨に鑑みて極めて限定的に解釈することが重要です。配付資料二を御覧いただけると、実際、諸外国の法令でも極めて限定的な規定となっていることをお分かりいただけると思います。
ところが、今回の法案では、無期若しくは三年以上の拘禁刑全てとしており、日本の刑法では、通貨偽造罪、詔書偽造罪、虚偽詔書作成罪、虚偽詔書行使罪なども入ってきてしまい、それらは難民条約三十三条二項に言う特に重大な犯罪とは言えません。
よって、下段に、かつ本邦の社会にとって危険な存在となった者として法務大臣が認定する者と限定することにより、難民条約三十三条二項の趣旨を直接的に反映させるとともに、配付資料にもありますとおり、他のG7諸国などの事例を参考にすることを提案いたします。
また、入管法二十四条四号のオ、ワ、カのうち、ワには、「密接な関係を有する」という曖昧な文言が含まれており、また、カには、単なる印刷物の頒布や展示なども入っています。
例えば、余り日本社会に慣れていない難民がだまされて好ましくない集団の一員と友人関係になってしまうことや、日本語がまだ不自由な難民が内容を理解せずチラシ配りのアルバイトをしてしまうこともあるでしょう。そのような間接的関与や軽微な活動は、難民条約三十三条二項の趣旨にはそぐわないと世界的難民法学者も明確に否定しています。
よって、ワとカは削除を提案いたします。
さらに、二十四条三号の二は、公衆等脅迫目的の犯罪行為等の予備行為や実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として法務大臣が認定する者を含んでおり、それ自体の範囲が広過ぎます。
それに加えて、法案第六十一条の二の九第四項の第二号の末尾で更に、そのような者に該当すると疑うに足りる相当の理由がある者としており、要するに、二十四条と六十一条で疑いが二重にかかっています。
その結果、究極的には全ての難民や庇護申請者の送還停止効の解除が可能となるような文言となってしまっています。
そこで、配付資料のとおりの文言修正を提案いたします。
なお、二及び四の末尾に法務大臣による個別認定を挿入したのは、難民の追放、送還は、場合によっては死刑執行と同じ効力を持つ行為であるため、法務大臣までお諮りすることが重要と考えるからです。
ここで一つ基本的な事実確認ですけれども、毎年警察庁や法務省が発表している統計資料によれば、来日、在留外国人の数は、コロナ禍や東日本大震災直後を除いて、過去約七十年にわたってずっと増加しています。その一方、近年の刑法犯外国人検挙人員数は、ほぼ横ばい、ないし微減しています。要するに、難民などの外国人が増えると治安が悪くなるというのは、単なる妄想にすぎません。また、警察庁のデータに基づけば、日本国籍者よりも外国籍者の方が凶悪犯罪を起こしやすいという結論を導き出すこともできません。
ただし、今後もし日本の安全にとって危険となるような難民が万が一出てきた場合に、重要になってくるのが送還先の問題です。既に、入管法五十三条三項において、送還可能な対象国は限られています。拷問等や強制失踪のおそれがある国にはいずれの場合でも送還できません。
よって、法案六十一条の二の九第四項に更に新たな号を追加して、ただし、送還先については、第五十三条第三項に従って定めると再確認することを提案いたします。
これにより、民意に基づいて日本が締約国となっている国際難民法や国際人権法に規定されている原則を、過不足なく実施することができるようになります。
ただし、現行法五十三条三項一号の下段、括弧内にある、日本国の利益という概念は、例えば財政的利益や文化的利益なども含まれるので、広過ぎます。
よって、括弧内については、法務大臣が第六十一条二の九第四項の第二号から第四号のとおり認める場合を除くと修正することで、全ての関連条項の内容を合致させることができます。
三点目が、いわゆる補完的保護についてです。
法案二条三号の二において、迫害を受けるおそれが難民条約上に規定する理由であること以外の要件を満たす者となっています。
しかし、日本政府は迫害の定義を狭く解釈しているので、武力紛争下における無差別暴力や副次的被害を逃れた方が、現在提案されている条項によって補完的保護を受けられるようになるのか定かではありません。
また、配付資料三にもお示ししましたとおり、G7諸国では全く違う規定を採用しています。確かに、日本は主権国家ですので外国の国内法をそのまま採用する法的義務はありませんが、ウィーン条約法条約三十一条、三十二条の趣旨にのっとり、他の当事国間の合意については考慮することが妥当と考えます。
よって、私の提案イにおいては、EUの資格指令を参考に、日本語としての表現を整えた文言を提案しています。
なお、入管庁が二〇一二年から毎年発行している事例集、難民申請者に対する人道配慮による在留許可の事例では、既に紛争待避機会ですとか武力衝突という言葉が使われています。よって、私の修正提案は、既に入管庁御自身が実施している実務を踏まえたものと言えます。
また、ロは、既に日本が民意に基づいて締約国になっている拷問等禁止条約、また市民的、政治的権利に関する国際規約の条文を反映させたものです。新たな義務を創設するものではありません。
一部には、補完的保護の導入は、特にウクライナ避難民を確実に保護するために必要という説明があります。けれども、ウクライナ避難民は、官邸主導の下、既に一年以上にわたって、一切何の法改正もなく、極めて速やかに例外的に寛大な措置がつつがなく実施されています。
配付資料四にもお示ししましたとおり、ウクライナ避難民は条約難民よりも優遇されている面まであり、ウクライナ避難民のためであれば、入管法を急いで改正する必要はありません。
また、去る火曜日に議論がありました、反戦派のロシア人、良心的兵役忌避者については、条約難民としての保護の検討がなされるべきで、補完的保護の対象にはなりません。補完的保護は、むしろ、ウクライナ以外の国の同じような無差別暴力状態から逃れてきた方々に、ウクライナ人と同じような支援と保護を差し伸べるためにこそ、必要と考えます。
最後になりますが、与党又は賛成派の議員におかれましては、この法案をこのまま通すということは、最悪の場合には、無辜の人間に対して間接的に死刑執行ボタンを押してしまうことに等しいということを是非御理解ください。
特に、自民党の委員におかれましては、御子息様がいらっしゃる前で恐縮ではございますけれども、奥野誠亮議員がこの国会の場で一九七八年二月十四日に行われたすばらしい演説を是非思い出していただきたいです。
また、野党、反対派の議員におかれましては、現在の国会の勢力図に鑑みれば、数の論理で無修正採決という最大のリスクがあることを思い出していただきたいです。
その上で、全ての委員に何とか修正の可能性を探っていただきたく、そのために私の拙い提案が何らかの一助になれば幸いでございます。
御清聴ありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →私は、現在は一橋大学で教鞭を執っておりますけれども、以前は、外務省、UNHCR、IOM、国際移住機関の職員、また法務省入国者収容所等視察委員会の西日本委員、そして現在も難民審査参与員として、過去約二十五年間にわたり、国際難民法、庇護政策を中核的専門として、実務と研究の双方で研さんを積んでまいりました。
それらを踏まえつつ、完全に個人的な見解として、今国会に再提出された入管法改正案について、具体的な修正案を時間的な制約もございますので三点に絞って提案させていただきます。配付資料も五点ございます。併せて御参照ください。
一点目が、三回目以降の複数回申請者に対する送還停止効の解除の問題です。相当の理由がある資料を新たに提出していないと判断された三回目以降の申請者に対して直ちに送還停止効を外してしまうのではなく、代わりに迅速簡易手続を通じて難民申請を審査するのが、現時点では妥当ではないかと考えます。
確かに、全く同じ状況、主張、証拠に基づいて何度でも申請できるというのが一般的な法原則に照らしておかしいという指摘は分かります。けれども、日本の難民認定基準が諸外国と比べて大変厳しい、だから条約上の難民が日本では保護されていない危険がある、また、複数回申請後に裁判を経て難民認定された者がいるというのも事実です。
実は、私は、難民該当性に関する規範的要素の明確化を通じて、もし日本の難民認定基準が大幅に見直される、改善されるのであれば、複数回申請者で新たな事情が一切ない者に対しては、そもそも申請自体を受理しないこともやむを得ないのかもしれないと先月までは考えておりました。そのような可能性も視野に入れて、難民審査参与員の一人として、明確化作業には多くのコメントを提出させていただきました。
去る三月二十四日に公表された難民該当性判断の手引を拝見したところ、確かに、入管庁による解釈が明確になった、部分的には改善されたところもあります。しかし、法務大臣がおっしゃったとおり、従来の解釈を大幅に変更、緩和するものではありません。特に、難民申請審査上、肝となる、迫害のおそれの概念について、難民条約の解釈としては不適切、不正確と私は思う点がまだ幾つかあります。
複数回申請者の排除と難民認定基準の見直しはセットで行われなければなりません。現状においては、送還停止効を解除するのではなく、迅速簡易手続を導入するのが適切と考えます。
なお、迅速簡易手続については、EUの手続指令でも既に十年前から導入されており、また、UNHCRが二〇二一年四月に公表した旧法案に対する見解においても、一定の条件下で許容されています。また、入管庁御自身も、二〇一八年から、難民申請書類を受理した直後の振り分け作業において、ある意味で実質的に迅速手続を既に実施しています。したがって、全く新たな手続を提案するものではありません。
確かに、迅速簡易手続の導入では、送還停止の対象となる難民認定申請期間が短くなるだけで、必ずしも出国、帰国につながらない、根本的解決にならないという反対意見も出るでしょう。
確かに、原則論に立ち返れば、在留資格のない外国籍者で、本国に迫害や拷問等、また強制失踪のおそれも一切なく、さらに、日本での在留を特別に認めるべき人道的事情も全くない方については、速やかに帰っていただくのが原則です。実際、入管庁の資料でも、退去強制令書が発付された方のうち約九割は自発的に自費で出国しています。
と同時に、日本での生活が長くなり帰国後の生活が心配で帰国に踏み切れない方や、そもそも帰国費用が賄えない人もいます。
非正規滞在者は強制送還しろと威勢よく唱えるのは簡単ですけれども、そう唱える方々は、日本政府が物理的、強制的に退去強制を執行する際の費用は、日本の納税者、外国籍を含めてですね、納税者の税金で賄われていることを御存じなのでしょうか。
税金を使っての強制送還者や被収容者をできる限り減らすために、手前みそでございますけれども、私が国際移住機関勤務中に、当時の入国管理局警備課の方々との丁寧な協議に基づき、自主的帰国支援・社会復帰事業というのを立ち上げました。この事業も種々の批判があることは承知しておりますけれども、ヨーロッパ諸国では既に一九七〇年代から実施されており、世界では毎年約五万人以上の方々がこの形で穏便かつ比較的安価に帰国しています。
要するに、難民認定基準がしっかりと見直されるまでは、送還停止の解除ではなく、迅速簡易手続を導入し、その間に自主的帰国支援を使って自発的に帰っていただくのが、日本政府にとっても、納税者にとっても、御本人にとっても最も合理的な方策と考えます。
二点目が、犯罪者や入管法二十四条の幾つかの条項に該当する疑いがある方に対する送還停止効の解除です。
この条項は、難民条約三十三条二項、つまりノン・ルフールマン原則の例外規定を国内で実施することを可能にする趣旨と理解します。難民条約三十三条二項は、実際に迫害を受けるおそれがある方、命の危険が待ち受ける者ですら送還を可能にしてしまう条文ですから、その趣旨に鑑みて極めて限定的に解釈することが重要です。配付資料二を御覧いただけると、実際、諸外国の法令でも極めて限定的な規定となっていることをお分かりいただけると思います。
ところが、今回の法案では、無期若しくは三年以上の拘禁刑全てとしており、日本の刑法では、通貨偽造罪、詔書偽造罪、虚偽詔書作成罪、虚偽詔書行使罪なども入ってきてしまい、それらは難民条約三十三条二項に言う特に重大な犯罪とは言えません。
よって、下段に、かつ本邦の社会にとって危険な存在となった者として法務大臣が認定する者と限定することにより、難民条約三十三条二項の趣旨を直接的に反映させるとともに、配付資料にもありますとおり、他のG7諸国などの事例を参考にすることを提案いたします。
また、入管法二十四条四号のオ、ワ、カのうち、ワには、「密接な関係を有する」という曖昧な文言が含まれており、また、カには、単なる印刷物の頒布や展示なども入っています。
例えば、余り日本社会に慣れていない難民がだまされて好ましくない集団の一員と友人関係になってしまうことや、日本語がまだ不自由な難民が内容を理解せずチラシ配りのアルバイトをしてしまうこともあるでしょう。そのような間接的関与や軽微な活動は、難民条約三十三条二項の趣旨にはそぐわないと世界的難民法学者も明確に否定しています。
よって、ワとカは削除を提案いたします。
さらに、二十四条三号の二は、公衆等脅迫目的の犯罪行為等の予備行為や実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として法務大臣が認定する者を含んでおり、それ自体の範囲が広過ぎます。
それに加えて、法案第六十一条の二の九第四項の第二号の末尾で更に、そのような者に該当すると疑うに足りる相当の理由がある者としており、要するに、二十四条と六十一条で疑いが二重にかかっています。
その結果、究極的には全ての難民や庇護申請者の送還停止効の解除が可能となるような文言となってしまっています。
そこで、配付資料のとおりの文言修正を提案いたします。
なお、二及び四の末尾に法務大臣による個別認定を挿入したのは、難民の追放、送還は、場合によっては死刑執行と同じ効力を持つ行為であるため、法務大臣までお諮りすることが重要と考えるからです。
ここで一つ基本的な事実確認ですけれども、毎年警察庁や法務省が発表している統計資料によれば、来日、在留外国人の数は、コロナ禍や東日本大震災直後を除いて、過去約七十年にわたってずっと増加しています。その一方、近年の刑法犯外国人検挙人員数は、ほぼ横ばい、ないし微減しています。要するに、難民などの外国人が増えると治安が悪くなるというのは、単なる妄想にすぎません。また、警察庁のデータに基づけば、日本国籍者よりも外国籍者の方が凶悪犯罪を起こしやすいという結論を導き出すこともできません。
ただし、今後もし日本の安全にとって危険となるような難民が万が一出てきた場合に、重要になってくるのが送還先の問題です。既に、入管法五十三条三項において、送還可能な対象国は限られています。拷問等や強制失踪のおそれがある国にはいずれの場合でも送還できません。
よって、法案六十一条の二の九第四項に更に新たな号を追加して、ただし、送還先については、第五十三条第三項に従って定めると再確認することを提案いたします。
これにより、民意に基づいて日本が締約国となっている国際難民法や国際人権法に規定されている原則を、過不足なく実施することができるようになります。
ただし、現行法五十三条三項一号の下段、括弧内にある、日本国の利益という概念は、例えば財政的利益や文化的利益なども含まれるので、広過ぎます。
よって、括弧内については、法務大臣が第六十一条二の九第四項の第二号から第四号のとおり認める場合を除くと修正することで、全ての関連条項の内容を合致させることができます。
三点目が、いわゆる補完的保護についてです。
法案二条三号の二において、迫害を受けるおそれが難民条約上に規定する理由であること以外の要件を満たす者となっています。
しかし、日本政府は迫害の定義を狭く解釈しているので、武力紛争下における無差別暴力や副次的被害を逃れた方が、現在提案されている条項によって補完的保護を受けられるようになるのか定かではありません。
また、配付資料三にもお示ししましたとおり、G7諸国では全く違う規定を採用しています。確かに、日本は主権国家ですので外国の国内法をそのまま採用する法的義務はありませんが、ウィーン条約法条約三十一条、三十二条の趣旨にのっとり、他の当事国間の合意については考慮することが妥当と考えます。
よって、私の提案イにおいては、EUの資格指令を参考に、日本語としての表現を整えた文言を提案しています。
なお、入管庁が二〇一二年から毎年発行している事例集、難民申請者に対する人道配慮による在留許可の事例では、既に紛争待避機会ですとか武力衝突という言葉が使われています。よって、私の修正提案は、既に入管庁御自身が実施している実務を踏まえたものと言えます。
また、ロは、既に日本が民意に基づいて締約国になっている拷問等禁止条約、また市民的、政治的権利に関する国際規約の条文を反映させたものです。新たな義務を創設するものではありません。
一部には、補完的保護の導入は、特にウクライナ避難民を確実に保護するために必要という説明があります。けれども、ウクライナ避難民は、官邸主導の下、既に一年以上にわたって、一切何の法改正もなく、極めて速やかに例外的に寛大な措置がつつがなく実施されています。
配付資料四にもお示ししましたとおり、ウクライナ避難民は条約難民よりも優遇されている面まであり、ウクライナ避難民のためであれば、入管法を急いで改正する必要はありません。
また、去る火曜日に議論がありました、反戦派のロシア人、良心的兵役忌避者については、条約難民としての保護の検討がなされるべきで、補完的保護の対象にはなりません。補完的保護は、むしろ、ウクライナ以外の国の同じような無差別暴力状態から逃れてきた方々に、ウクライナ人と同じような支援と保護を差し伸べるためにこそ、必要と考えます。
最後になりますが、与党又は賛成派の議員におかれましては、この法案をこのまま通すということは、最悪の場合には、無辜の人間に対して間接的に死刑執行ボタンを押してしまうことに等しいということを是非御理解ください。
特に、自民党の委員におかれましては、御子息様がいらっしゃる前で恐縮ではございますけれども、奥野誠亮議員がこの国会の場で一九七八年二月十四日に行われたすばらしい演説を是非思い出していただきたいです。
また、野党、反対派の議員におかれましては、現在の国会の勢力図に鑑みれば、数の論理で無修正採決という最大のリスクがあることを思い出していただきたいです。
その上で、全ての委員に何とか修正の可能性を探っていただきたく、そのために私の拙い提案が何らかの一助になれば幸いでございます。
御清聴ありがとうございました。拍手
伊
福
福山宏#8
○福山参考人 ただいま御紹介にあずかりました福山と申します。
この度は、当法務委員会におきまして、参考人としてお招きいただき、貴重な機会をいただいたことを大変ありがたく思っております。
それから、亡くなられたウィシュマ・サンダマリさん、心より御冥福をお祈り申し上げます。また、御家族の方々には心よりお悔やみ申し上げます。
それでは、入ります。
私自身、元職員という立場ではありますが、現在の入管法、入管行政には足りない部分もあり、より適正な出入国管理行政を実現するために改善すべき点があると考えております。これから私が述べる意見が国会議員の皆様による充実した法案審議の一助となれば幸いに存じます。
さて、本題に入ります。
私は、送還忌避、難民認定申請濫用、誤用、長期収容の問題は、目的、手段、結果という一連のつながりがあるものと考えております。
まず、二〇〇四年の法改正において、難民認定申請の申請期間が、上陸日又は難民該当事由発生日から六十日以内とされていたものが無制限となりました。さらに、難民認定申請に送還停止効が加わりました。
次に、二〇一〇年に、被収容者が難民認定申請を提起した場合には、適正手続の保障のため、できるだけ仮放免を許可すること、さらに、弁護士が仮放免許可申請の保証人である場合には柔軟な判断をすること、こういった実務上の方向性が示されました。
加えて、難民認定申請から六か月経過した難民認定申請者に対しては、その希望により一律にフルタイムの就労が認められることになったのもこの年のことでありました。
その結果、二〇一〇年には約千二百人であった難民認定申請者は、二〇一七年には二万人近くと、約十六倍になりました。その推移は、就労目的、仮放免目的のための手続の濫用を疑わせるものです。
また、子供と家族の在留許可の問題の原因も、この長期化にあります。手続中に、日本で出生した、また幼児期に入国した児童が学齢期に達すると、こういった現象が起こるからです。
翌二〇一八年一月、この就労許可を厳格化したところ、同年の難民認定申請者数は半減いたしました。難民認定申請の実態を示唆する推移ですが、その後も、借金、駆け落ち、隣人とのいさかい、こういった難民条約上の迫害とは無縁の申請、さらには、日本滞在が目的なので理由は後で考えます、こういった申請も目立ちました。依然として認定に値する申請がほとんどないとの感想は複数の難民審査参与員からも伺っております。
このようなことから、グレーゾーンの申請というものは理論上あり得たとしても、入管行政の現場において果たして実際存在するのか、非常に疑問なところであります。
以上に関連いたしまして、入管行政の現場において起きていることについて申し上げます。
まず、難民認定申請濫用の入管業務への影響です。
申請の濫用が真に認定すべき方々の見落としや手続の遅延につながることへの懸念です。また、入管には、難民認定以外にも重要な業務がたくさんあります。一定の経験を積んだ審査官を難民業務に集中的に配属せざるを得ないことに起因する、他の業務の弱体化への懸念です。私自身、担当官不足により、空港審査業務にやむなく会計担当職員を充てたことがあります。
次に、収容です。
収容状態を脱したいと望むのは人の常です。仮放免許可の典型例が健康上の理由であることから、収容施設においては、全快、異常なしという診断は歓迎されません。仮放免許可にとって不利に解釈されやすいからです。
ですから、被収容者は、次々と様々な自覚症状を訴え、診察希望を繰り返します。中には、医師や看護師に暴言を吐き、診療行為を妨害し、診療時間を長引かせる被収容者もいます。本当に診療が必要な被収容者の診療がおろそかになる危険性を感じます。このような被収容者の診療をやむなく中止すると、診療拒否、人権侵害、脆弱な診療体制との批判に転化します。
このように、情報が正確に伝わらないことはしばしばです。
被収容者が処方薬について、この薬は嫌だ、ジェネリックは効かないと言って、様々な薬の処方を求めてくることも少なくありません。外部からは、これに応じると、薬物中毒の助長、応じないと、不十分な診療との批判になり、最終的には人権侵害だというふうに言われます。
被収容者が発症した限局性腹膜炎も、腹膜炎併発といかにも手遅れであるかのような批判に変形されます。医師によれば、限局性腹膜炎とは、いわゆる盲腸炎、正確には虫垂炎の初期段階で腹痛など自覚症状が表れ始めたときの状態です。五年前に手術を受けたプロ野球選手がいらっしゃいます。同じ病名でした。しかし、手遅れとの報道は一切ありません。当然です。手遅れなのは汎発性腹膜炎であって、限局性腹膜炎ではないからです。
国内で新型コロナの感染が拡大したときには、マスクを始め消毒薬など必要な物品を提供し、その使用を指導したにもかかわらず、多くの被収容者が感染防止策を取ろうとせず、入国警備官に繰り返し唾を吐きかけておりました。これが外部に伝わると、入管が感染防止を怠っている、このようになります。
このような状況から、身の危険を感じて辞職を申し出る医師も少なくありません。そのうわさが広まった結果、収容施設での医療を引き受けてくれる医師も減少します。
かつて、勤務先の大村センターで、常勤医師が退職したので、勤務経験がある医師全員に往診をお願いしたところ、全員から即座に拒否されました。
また、被収容者が仮放免を求めて、ハンストと称する官給食の集団拒否をすることがあります。その結果、数日間で約五十万円相当の食料が無駄になりました。
しかし、最大の懸念は被収容者の健康です。体重を減らした人、差し入れのジャンクフードや他の被収容者からもらった給食の食べ過ぎで体重を増やした人が半々でしたが、いずれも危険な兆候です。ですから、集団摂食拒否の防止に努めました。
その中にあって、事情を御理解の上、摂食拒否をしないよう呼びかけてくださった国会議員の皆様、支援者の方々には深く感謝を申し上げております。
他方、自分の豚肉入りの給食を回教徒の給食とすり替えて騒ぎを起こす被収容者もいます。これも外に出ますと、入管が回教徒に豚肉入りの食事を与えた、そういう報道になります。
さらに、被収容者が物を投げる、蹴る、たたく、熱湯をまき散らすというのは日常的風景です。規則、入国警備官の指示を無視し、収容施設内で暴れ、他人に危害を加え、物を破壊する事案が頻繁に起こります。中には、汚物、ふん尿のことです、で施設を汚損し、暴力で毀損し、多額の被害を発生させる事例もあります。ある所長は、汚損状況の御視察においでになられた方から、おまえのせいだとどなりつけられたそうです。
それはさておき、このような場合の対処方法は、単独室の使用と制圧です。
単独室は、暴力を振るい、興奮状態にある本人に冷静になっていただくための部屋です。そもそも、入管に懲罰という発想はありません。単独室の中には、監視カメラが設置されている部屋もあります。この部屋は、本人の自損行為を防止するため、又は体調を継続的に観察するために使用されます。単独室のトイレが密室でないのも、自殺防止、病気で倒れてしまったときの即時対応のためです。物理的に、男女は厳格に分かれていて、女性区の室内の状況は肉眼でも動画でも男性職員が見ることは不可能になっております。それにもかかわらず、これが外部に伝わると、男性入国警備官が女性区をのぞき見た、セクハラをした、このようになります。
それから、再三の警告、説得に応じない場合の制圧です。制圧とは、暴れている自傷他害に至る可能性のある被収容者を抑える行為のことで、被収容者を負傷させないことが大原則です。そのためには、暴れている者の動きを短時間のうちに完全に止める必要があります。そのために役割分担をします。頭を防護する、手足を抑える、本人をなだめる、全体を見て指示を出す、状況を記録するなどのために、入国警備官七、八人ぐらいは必要です。これが外部に伝わると、入国警備官が、口論の末、無抵抗の被収容者に集団で暴行を加えた、こういうことになります。過剰な制圧行為が認められるものでないことは当然ですが、暴れている者を制圧することは容易なことではないということを御理解いただければ幸いです。
暴力行為の常習者、性犯罪、殺人、傷害、強盗、放火、薬物犯罪の前科がある者、配偶者間暴力の加害者であっても、収容の長期化や病気により、仮放免許可への圧力が高まります。しかし、仮放免中に性犯罪や殺人など新たな犯罪に手を染める例も少なくありません。引率者である支援団体の責任者は何も説明しないんでしょうか、性犯罪を繰り返していた男性被収容者との面会で自宅が近いとの話題で盛り上がったと喜んでいる女子学生の姿には驚愕いたしました。他の官署で仮放免を許可された者の妻とその母親が、身の危険を感じて保護を求めてやってきたこともありました。このようなことから、仮放免許可の決裁のときには、私自身、新たな被害者が出ないかと判こを持つ手が震えておりました。
他の長期収容の原因として、被退去強制者の本国及びその駐日公館の非協力的な姿勢があります。自国民の引取りや自国民への帰国用の旅券の発給すら拒否する国、送還日の開示を旅券発給の条件とし、入管がそれを伝えると、大使館がそれを被収容者に伝えて、難民認定申請や訴訟により送還を免れる、逃れる機会をつくり出す国、根拠なく被収容者の在留許可を求めてくる国などがあります。経験上、自国民保護の範囲を超えていると感じます。
しかし、ほとんどの国は、法違反をした自国民に冷淡です。自国民が収容施設を汚損、毀損し、多額の損害を発生させた場合も含めて無反応です。帰国の説得、本国の親族との連絡、帰国旅費の送金の仲介など、日本の在外公館が行っている邦人保護のせめて半分だけでもいいので、御対応いただきたいと思っております。このような非協力的姿勢が入国審査の厳格化をもたらし、最終的には円滑な人の流れを妨げることになり得るということを忘れるべきではありません。
なお、自発的な帰国は、以上のような負担が大幅に軽減されるので、お互いにとって理想的な形です。
しかし、入国警備官が法律に従って退去強制令書執行の一環として帰国説得を行うと、即、被収容者に対する嫌がらせ、脅し、精神的拷問との批判になります。その結果、入国警備官が被収容者と意思疎通を図ることが一段と難しくなっております。
その他の点について申し上げます。
まず、退去強制の決定がなされた者に、送還が不可能であるからといって就労を認めることは適切でないと考えます。たとえ送還までの生活費獲得のためであっても、就労の容認はかえって入管法違反を助長することになるからです。
次に、収容決定の際の司法権による事前審査導入にも疑問があります。
入管法違反者のほとんどを占める不法残留者の違反事実は、客観的証拠により既に明白です。しかし、経験上、実際に収容されるのは、不法残留状態に陥った者全体の三割から四割です。最近の公表資料によると、現在ではもう少し少なくなっているというふうに伺っております。といいますのも、当初の時点で在留を付与すべきことが明らかである者、逃亡のおそれがなく自発的な帰国が見込まれる者を、制度上、運用上、収容しない、こういうことにしているからであります。
そもそも、入管の手続では、いわゆる三審制の下、慎重な手続を行っており、事後的な司法審査を受けることも可能です。事前の司法審査が必要なのか、司法審査になじむのか、非常に疑問を持っております。
さらに、収容期間の上限設定も不適切と考えます。
一律放免には、既に申し上げたような、新たな被害者の発生の問題があります。他方、実定法上、上限のない国も少なくありません。事後的であっても司法審査の対象ですので、現状でも適正手続は保障されております。
出入国在留管理は、国家の三要素の一つである国民の構成など、国家のありように大きな影響を与える重要な業務であります。その中で、本件法案は、現在及び将来の国民及び在留外国人が平和な社会の中で暮らす共生社会の実現という目的を達する手段と、それを行使する根拠を与えようとするものです。
「世界をつなぐ。未来をつくる。」という入管庁の新しい標語のとおり、入管庁職員が一丸となって、健全な国際交流の発展に寄与していくことを期待するものです。
御清聴どうもありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →この度は、当法務委員会におきまして、参考人としてお招きいただき、貴重な機会をいただいたことを大変ありがたく思っております。
それから、亡くなられたウィシュマ・サンダマリさん、心より御冥福をお祈り申し上げます。また、御家族の方々には心よりお悔やみ申し上げます。
それでは、入ります。
私自身、元職員という立場ではありますが、現在の入管法、入管行政には足りない部分もあり、より適正な出入国管理行政を実現するために改善すべき点があると考えております。これから私が述べる意見が国会議員の皆様による充実した法案審議の一助となれば幸いに存じます。
さて、本題に入ります。
私は、送還忌避、難民認定申請濫用、誤用、長期収容の問題は、目的、手段、結果という一連のつながりがあるものと考えております。
まず、二〇〇四年の法改正において、難民認定申請の申請期間が、上陸日又は難民該当事由発生日から六十日以内とされていたものが無制限となりました。さらに、難民認定申請に送還停止効が加わりました。
次に、二〇一〇年に、被収容者が難民認定申請を提起した場合には、適正手続の保障のため、できるだけ仮放免を許可すること、さらに、弁護士が仮放免許可申請の保証人である場合には柔軟な判断をすること、こういった実務上の方向性が示されました。
加えて、難民認定申請から六か月経過した難民認定申請者に対しては、その希望により一律にフルタイムの就労が認められることになったのもこの年のことでありました。
その結果、二〇一〇年には約千二百人であった難民認定申請者は、二〇一七年には二万人近くと、約十六倍になりました。その推移は、就労目的、仮放免目的のための手続の濫用を疑わせるものです。
また、子供と家族の在留許可の問題の原因も、この長期化にあります。手続中に、日本で出生した、また幼児期に入国した児童が学齢期に達すると、こういった現象が起こるからです。
翌二〇一八年一月、この就労許可を厳格化したところ、同年の難民認定申請者数は半減いたしました。難民認定申請の実態を示唆する推移ですが、その後も、借金、駆け落ち、隣人とのいさかい、こういった難民条約上の迫害とは無縁の申請、さらには、日本滞在が目的なので理由は後で考えます、こういった申請も目立ちました。依然として認定に値する申請がほとんどないとの感想は複数の難民審査参与員からも伺っております。
このようなことから、グレーゾーンの申請というものは理論上あり得たとしても、入管行政の現場において果たして実際存在するのか、非常に疑問なところであります。
以上に関連いたしまして、入管行政の現場において起きていることについて申し上げます。
まず、難民認定申請濫用の入管業務への影響です。
申請の濫用が真に認定すべき方々の見落としや手続の遅延につながることへの懸念です。また、入管には、難民認定以外にも重要な業務がたくさんあります。一定の経験を積んだ審査官を難民業務に集中的に配属せざるを得ないことに起因する、他の業務の弱体化への懸念です。私自身、担当官不足により、空港審査業務にやむなく会計担当職員を充てたことがあります。
次に、収容です。
収容状態を脱したいと望むのは人の常です。仮放免許可の典型例が健康上の理由であることから、収容施設においては、全快、異常なしという診断は歓迎されません。仮放免許可にとって不利に解釈されやすいからです。
ですから、被収容者は、次々と様々な自覚症状を訴え、診察希望を繰り返します。中には、医師や看護師に暴言を吐き、診療行為を妨害し、診療時間を長引かせる被収容者もいます。本当に診療が必要な被収容者の診療がおろそかになる危険性を感じます。このような被収容者の診療をやむなく中止すると、診療拒否、人権侵害、脆弱な診療体制との批判に転化します。
このように、情報が正確に伝わらないことはしばしばです。
被収容者が処方薬について、この薬は嫌だ、ジェネリックは効かないと言って、様々な薬の処方を求めてくることも少なくありません。外部からは、これに応じると、薬物中毒の助長、応じないと、不十分な診療との批判になり、最終的には人権侵害だというふうに言われます。
被収容者が発症した限局性腹膜炎も、腹膜炎併発といかにも手遅れであるかのような批判に変形されます。医師によれば、限局性腹膜炎とは、いわゆる盲腸炎、正確には虫垂炎の初期段階で腹痛など自覚症状が表れ始めたときの状態です。五年前に手術を受けたプロ野球選手がいらっしゃいます。同じ病名でした。しかし、手遅れとの報道は一切ありません。当然です。手遅れなのは汎発性腹膜炎であって、限局性腹膜炎ではないからです。
国内で新型コロナの感染が拡大したときには、マスクを始め消毒薬など必要な物品を提供し、その使用を指導したにもかかわらず、多くの被収容者が感染防止策を取ろうとせず、入国警備官に繰り返し唾を吐きかけておりました。これが外部に伝わると、入管が感染防止を怠っている、このようになります。
このような状況から、身の危険を感じて辞職を申し出る医師も少なくありません。そのうわさが広まった結果、収容施設での医療を引き受けてくれる医師も減少します。
かつて、勤務先の大村センターで、常勤医師が退職したので、勤務経験がある医師全員に往診をお願いしたところ、全員から即座に拒否されました。
また、被収容者が仮放免を求めて、ハンストと称する官給食の集団拒否をすることがあります。その結果、数日間で約五十万円相当の食料が無駄になりました。
しかし、最大の懸念は被収容者の健康です。体重を減らした人、差し入れのジャンクフードや他の被収容者からもらった給食の食べ過ぎで体重を増やした人が半々でしたが、いずれも危険な兆候です。ですから、集団摂食拒否の防止に努めました。
その中にあって、事情を御理解の上、摂食拒否をしないよう呼びかけてくださった国会議員の皆様、支援者の方々には深く感謝を申し上げております。
他方、自分の豚肉入りの給食を回教徒の給食とすり替えて騒ぎを起こす被収容者もいます。これも外に出ますと、入管が回教徒に豚肉入りの食事を与えた、そういう報道になります。
さらに、被収容者が物を投げる、蹴る、たたく、熱湯をまき散らすというのは日常的風景です。規則、入国警備官の指示を無視し、収容施設内で暴れ、他人に危害を加え、物を破壊する事案が頻繁に起こります。中には、汚物、ふん尿のことです、で施設を汚損し、暴力で毀損し、多額の被害を発生させる事例もあります。ある所長は、汚損状況の御視察においでになられた方から、おまえのせいだとどなりつけられたそうです。
それはさておき、このような場合の対処方法は、単独室の使用と制圧です。
単独室は、暴力を振るい、興奮状態にある本人に冷静になっていただくための部屋です。そもそも、入管に懲罰という発想はありません。単独室の中には、監視カメラが設置されている部屋もあります。この部屋は、本人の自損行為を防止するため、又は体調を継続的に観察するために使用されます。単独室のトイレが密室でないのも、自殺防止、病気で倒れてしまったときの即時対応のためです。物理的に、男女は厳格に分かれていて、女性区の室内の状況は肉眼でも動画でも男性職員が見ることは不可能になっております。それにもかかわらず、これが外部に伝わると、男性入国警備官が女性区をのぞき見た、セクハラをした、このようになります。
それから、再三の警告、説得に応じない場合の制圧です。制圧とは、暴れている自傷他害に至る可能性のある被収容者を抑える行為のことで、被収容者を負傷させないことが大原則です。そのためには、暴れている者の動きを短時間のうちに完全に止める必要があります。そのために役割分担をします。頭を防護する、手足を抑える、本人をなだめる、全体を見て指示を出す、状況を記録するなどのために、入国警備官七、八人ぐらいは必要です。これが外部に伝わると、入国警備官が、口論の末、無抵抗の被収容者に集団で暴行を加えた、こういうことになります。過剰な制圧行為が認められるものでないことは当然ですが、暴れている者を制圧することは容易なことではないということを御理解いただければ幸いです。
暴力行為の常習者、性犯罪、殺人、傷害、強盗、放火、薬物犯罪の前科がある者、配偶者間暴力の加害者であっても、収容の長期化や病気により、仮放免許可への圧力が高まります。しかし、仮放免中に性犯罪や殺人など新たな犯罪に手を染める例も少なくありません。引率者である支援団体の責任者は何も説明しないんでしょうか、性犯罪を繰り返していた男性被収容者との面会で自宅が近いとの話題で盛り上がったと喜んでいる女子学生の姿には驚愕いたしました。他の官署で仮放免を許可された者の妻とその母親が、身の危険を感じて保護を求めてやってきたこともありました。このようなことから、仮放免許可の決裁のときには、私自身、新たな被害者が出ないかと判こを持つ手が震えておりました。
他の長期収容の原因として、被退去強制者の本国及びその駐日公館の非協力的な姿勢があります。自国民の引取りや自国民への帰国用の旅券の発給すら拒否する国、送還日の開示を旅券発給の条件とし、入管がそれを伝えると、大使館がそれを被収容者に伝えて、難民認定申請や訴訟により送還を免れる、逃れる機会をつくり出す国、根拠なく被収容者の在留許可を求めてくる国などがあります。経験上、自国民保護の範囲を超えていると感じます。
しかし、ほとんどの国は、法違反をした自国民に冷淡です。自国民が収容施設を汚損、毀損し、多額の損害を発生させた場合も含めて無反応です。帰国の説得、本国の親族との連絡、帰国旅費の送金の仲介など、日本の在外公館が行っている邦人保護のせめて半分だけでもいいので、御対応いただきたいと思っております。このような非協力的姿勢が入国審査の厳格化をもたらし、最終的には円滑な人の流れを妨げることになり得るということを忘れるべきではありません。
なお、自発的な帰国は、以上のような負担が大幅に軽減されるので、お互いにとって理想的な形です。
しかし、入国警備官が法律に従って退去強制令書執行の一環として帰国説得を行うと、即、被収容者に対する嫌がらせ、脅し、精神的拷問との批判になります。その結果、入国警備官が被収容者と意思疎通を図ることが一段と難しくなっております。
その他の点について申し上げます。
まず、退去強制の決定がなされた者に、送還が不可能であるからといって就労を認めることは適切でないと考えます。たとえ送還までの生活費獲得のためであっても、就労の容認はかえって入管法違反を助長することになるからです。
次に、収容決定の際の司法権による事前審査導入にも疑問があります。
入管法違反者のほとんどを占める不法残留者の違反事実は、客観的証拠により既に明白です。しかし、経験上、実際に収容されるのは、不法残留状態に陥った者全体の三割から四割です。最近の公表資料によると、現在ではもう少し少なくなっているというふうに伺っております。といいますのも、当初の時点で在留を付与すべきことが明らかである者、逃亡のおそれがなく自発的な帰国が見込まれる者を、制度上、運用上、収容しない、こういうことにしているからであります。
そもそも、入管の手続では、いわゆる三審制の下、慎重な手続を行っており、事後的な司法審査を受けることも可能です。事前の司法審査が必要なのか、司法審査になじむのか、非常に疑問を持っております。
さらに、収容期間の上限設定も不適切と考えます。
一律放免には、既に申し上げたような、新たな被害者の発生の問題があります。他方、実定法上、上限のない国も少なくありません。事後的であっても司法審査の対象ですので、現状でも適正手続は保障されております。
出入国在留管理は、国家の三要素の一つである国民の構成など、国家のありように大きな影響を与える重要な業務であります。その中で、本件法案は、現在及び将来の国民及び在留外国人が平和な社会の中で暮らす共生社会の実現という目的を達する手段と、それを行使する根拠を与えようとするものです。
「世界をつなぐ。未来をつくる。」という入管庁の新しい標語のとおり、入管庁職員が一丸となって、健全な国際交流の発展に寄与していくことを期待するものです。
御清聴どうもありがとうございました。拍手
伊
伊
藤
藤原崇#11
○藤原委員 衆議院の藤原でございます。
今日は、四名の参考人の先生方、大変ありがとうございました。
それぞれのお立場、御経験から、私も大変勉強になったなと。理論のお話、実務のお話、そしてそれぞれの御経験についてということで、非常に今回の法案審議の参考になったというふうに思っております。
そういう中で、幾つか私の方から質問をさせていただきたいと思っております。
まず、安冨先生にお聞きをしたいんですが、難民認定の件について、参与員をお務めの経験があると思うんですが、難民認定率、これは、外国と比較して低いのであろうかどうなのか、そういう点について御見解をいただければと思っております。
この発言だけを見る →今日は、四名の参考人の先生方、大変ありがとうございました。
それぞれのお立場、御経験から、私も大変勉強になったなと。理論のお話、実務のお話、そしてそれぞれの御経験についてということで、非常に今回の法案審議の参考になったというふうに思っております。
そういう中で、幾つか私の方から質問をさせていただきたいと思っております。
まず、安冨先生にお聞きをしたいんですが、難民認定の件について、参与員をお務めの経験があると思うんですが、難民認定率、これは、外国と比較して低いのであろうかどうなのか、そういう点について御見解をいただければと思っております。
安
安冨潔#12
○安冨参考人 お答えを申し上げます。
認定率が低いかというのは、先ほども参考人から御説明がありましたけれども、難民認定制度は、それぞれの国において、それぞれ個別に事情を判断して認定する、しないを考えていますので、一概に他の国の率がこうだ、我が国の率がこうだということで、数字だけを見れば少ないというのは、それは事実かもしれませんけれども、それ以上に何らかの評価を加えるというのは、必ずしも合理的とは言えないんじゃないかというふうに考えます。
この発言だけを見る →認定率が低いかというのは、先ほども参考人から御説明がありましたけれども、難民認定制度は、それぞれの国において、それぞれ個別に事情を判断して認定する、しないを考えていますので、一概に他の国の率がこうだ、我が国の率がこうだということで、数字だけを見れば少ないというのは、それは事実かもしれませんけれども、それ以上に何らかの評価を加えるというのは、必ずしも合理的とは言えないんじゃないかというふうに考えます。
藤
藤原崇#13
○藤原委員 ありがとうございます。
滝澤先生からもございましたけれども、人道的配慮を含めて見てみれば、数字としては低くてもということで、遜色としてはそこまでないんだというような御趣旨のお話があったのかなというふうに思っております。
それから、安冨先生にもう一点お聞きをしたいのは、送還停止効の例外で、三年以上の、懲役刑というか禁錮刑、拘禁刑というか、これを対象としているということ、この点についてどのように御評価なさっているかということをちょっとお聞きをしたいなと思っております。
この発言だけを見る →滝澤先生からもございましたけれども、人道的配慮を含めて見てみれば、数字としては低くてもということで、遜色としてはそこまでないんだというような御趣旨のお話があったのかなというふうに思っております。
それから、安冨先生にもう一点お聞きをしたいのは、送還停止効の例外で、三年以上の、懲役刑というか禁錮刑、拘禁刑というか、これを対象としているということ、この点についてどのように御評価なさっているかということをちょっとお聞きをしたいなと思っております。
安
安冨潔#14
○安冨参考人 お答えを申し上げます。
先ほどの陳述の中でお話をさせていただきましたけれども、送還停止効の例外を設けることというのは、一回目、二回目という、そのところで難民不認定という、行政処分として確定をしている人、その方が三回目の申請をされるということになった場合に、それはもう既に行政処分としては難民不認定というふうに判断されているわけなので、そういう方については我が国から退去していただくという退去強制の手続に乗せるといいますか、それはそれで合理性があるのではないかというふうに考えます。
この発言だけを見る →先ほどの陳述の中でお話をさせていただきましたけれども、送還停止効の例外を設けることというのは、一回目、二回目という、そのところで難民不認定という、行政処分として確定をしている人、その方が三回目の申請をされるということになった場合に、それはもう既に行政処分としては難民不認定というふうに判断されているわけなので、そういう方については我が国から退去していただくという退去強制の手続に乗せるといいますか、それはそれで合理性があるのではないかというふうに考えます。
藤
藤原崇#15
○藤原委員 ありがとうございます。
三年以上の場合も送還停止効を外すということで、これは橋本先生からも御見解があったと思うんですが、送還停止効のことで、橋本先生の御提案のことでちょっとお伺いをしたいのは、三回目以降であったとしても簡易迅速な手続で審査をすべきであるというような改正の提案をいただいたと思うんですが、これについて、手続の詳細についてはいろいろなものを参照してくださいということで、多分、時間の関係上、そういうふうにやっていただいているんだと思うんですが、ぱっと考えてみると、仮に三回目、四回目で拾うべき人というのが、司法審査のときにもたまにある、ないわけではないので、となった場合に、普通に文言だけを聞くと、簡易迅速な手続ではなかなかそこが拾えないのではないかなというのが、ちょっと思うんですけれども、この簡易迅速な手続というのは、具体的に、もうちょっと詳細に、イメージが湧くように説明をしていただければなというのをお聞きしたいと思います。
この発言だけを見る →三年以上の場合も送還停止効を外すということで、これは橋本先生からも御見解があったと思うんですが、送還停止効のことで、橋本先生の御提案のことでちょっとお伺いをしたいのは、三回目以降であったとしても簡易迅速な手続で審査をすべきであるというような改正の提案をいただいたと思うんですが、これについて、手続の詳細についてはいろいろなものを参照してくださいということで、多分、時間の関係上、そういうふうにやっていただいているんだと思うんですが、ぱっと考えてみると、仮に三回目、四回目で拾うべき人というのが、司法審査のときにもたまにある、ないわけではないので、となった場合に、普通に文言だけを聞くと、簡易迅速な手続ではなかなかそこが拾えないのではないかなというのが、ちょっと思うんですけれども、この簡易迅速な手続というのは、具体的に、もうちょっと詳細に、イメージが湧くように説明をしていただければなというのをお聞きしたいと思います。
橋
橋本直子#16
○橋本参考人 御質問ありがとうございます。
EUでも様々に困っている部分もございまして、本当に詳細はそちらを御覧いただければと思うんですけれども、例えば、日本でいえば、現在は難民審査参与員まで必ず審査が参りますけれども、そうではなく、例えば行政不服審査法での不服申立てを、何と申しますか、その権利を認めないですとか、ただし、司法への判断を仰ぐということは確実に、EUでも可能とすべしというところは担保されているということでございます。
この発言だけを見る →EUでも様々に困っている部分もございまして、本当に詳細はそちらを御覧いただければと思うんですけれども、例えば、日本でいえば、現在は難民審査参与員まで必ず審査が参りますけれども、そうではなく、例えば行政不服審査法での不服申立てを、何と申しますか、その権利を認めないですとか、ただし、司法への判断を仰ぐということは確実に、EUでも可能とすべしというところは担保されているということでございます。
藤
藤原崇#17
○藤原委員 ありがとうございました。
これは法務委員会の議論の中でもあるんですが、入管法の中の手続とは別で、不服申立てというか、取消し訴訟みたいな、行政訴訟という手続があるんですけれども、御承知のとおり。三回目以降で送還停止効が仮に外れたとしても、そこは最終的な司法審査の中での、退去強制令書を含めての効力を止めるというのも、これは私も、ちょっと昔のことなのであれなんですけれども、そういう司法審査に移行して、そこで救済をするという制度じゃなくて、三回目になったとしても送還停止効を外さないということとの違いというか、そこというのをちょっと教えていただきたいなと思うんですね。三回目になったときに送還停止効がなかったとしても、それは司法審査の中で、取消し訴訟の中で対応してやっていくという救済の方法もあるような気がするんですが、これを、送還停止効を残すということにすることというところの違いというか、そこの意義についてちょっと御教示をいただきたいなと思っております。橋本先生にお願いします。
この発言だけを見る →これは法務委員会の議論の中でもあるんですが、入管法の中の手続とは別で、不服申立てというか、取消し訴訟みたいな、行政訴訟という手続があるんですけれども、御承知のとおり。三回目以降で送還停止効が仮に外れたとしても、そこは最終的な司法審査の中での、退去強制令書を含めての効力を止めるというのも、これは私も、ちょっと昔のことなのであれなんですけれども、そういう司法審査に移行して、そこで救済をするという制度じゃなくて、三回目になったとしても送還停止効を外さないということとの違いというか、そこというのをちょっと教えていただきたいなと思うんですね。三回目になったときに送還停止効がなかったとしても、それは司法審査の中で、取消し訴訟の中で対応してやっていくという救済の方法もあるような気がするんですが、これを、送還停止効を残すということにすることというところの違いというか、そこの意義についてちょっと御教示をいただきたいなと思っております。橋本先生にお願いします。
橋
橋本直子#18
○橋本参考人 ありがとうございます。
実は、その点はちょっと時間がなかったのではしょったところに重なるんですけれども、全ての、例えば、三回目以降の申請人が裁判に移行するとなりますと、率直に申し上げて、日本では難民認定手続において、訓練を受けた、必ずしも、裁判官ないしは独立した第三者機関というのがございませんので、そうなりますとなかなか、難民認定が司法に移ったときに、率直に申し上げて、どれだけ充実したものになるのかというのは、若干、私の中では、現在の形では不安に思っております。
と申しますのも、難民認定というのは、刑事事件や民事事件とは全く異なりまして、過去の事実認定だけではなくて、将来の迫害のおそれの程度をある意味査定するものでございます。当然、日本の裁判官の方々は優秀でございますので、一般の刑事、民事、行政であれば当然の御専門家であるとは思いますけれども、全くふだん裁判官の方々が扱っていらっしゃる事件とは考え方が違う部分において、現在までも、どのくらい本当の難民というのが救われていたのかどうかというのは、私は、正直、若干不安に思っております。そこに、私はやはり、司法で全て救済する、もちろんかなりの人数もまた停滞することにもなると思いますし。
取りあえず、以上でございます。
この発言だけを見る →実は、その点はちょっと時間がなかったのではしょったところに重なるんですけれども、全ての、例えば、三回目以降の申請人が裁判に移行するとなりますと、率直に申し上げて、日本では難民認定手続において、訓練を受けた、必ずしも、裁判官ないしは独立した第三者機関というのがございませんので、そうなりますとなかなか、難民認定が司法に移ったときに、率直に申し上げて、どれだけ充実したものになるのかというのは、若干、私の中では、現在の形では不安に思っております。
と申しますのも、難民認定というのは、刑事事件や民事事件とは全く異なりまして、過去の事実認定だけではなくて、将来の迫害のおそれの程度をある意味査定するものでございます。当然、日本の裁判官の方々は優秀でございますので、一般の刑事、民事、行政であれば当然の御専門家であるとは思いますけれども、全くふだん裁判官の方々が扱っていらっしゃる事件とは考え方が違う部分において、現在までも、どのくらい本当の難民というのが救われていたのかどうかというのは、私は、正直、若干不安に思っております。そこに、私はやはり、司法で全て救済する、もちろんかなりの人数もまた停滞することにもなると思いますし。
取りあえず、以上でございます。
藤
藤原崇#19
○藤原委員 ありがとうございます。
やはり、難民かどうかを判断するというのは、基本的には供述のところというのが一つ大きな柱になるというのは、ほかの裁判と比べると、おっしゃるとおり、証拠を積み重ねて客観証拠から見ていくというのとはまた違う分野があるので、そういう点では難しいのかなというのも非常に感じているので、先生のおっしゃることは、今後の裁判の在り方もやはり検討していく必要があるのかなというふうに感じております。
そういう中で、滝澤先生にちょっとお聞きをしたいのは、UNHCR駐日事務所での御経験があるということで、そこと入管のコミュニケーション、今はしっかり覚書を交わしてやっているわけなんですが、元々、UNHCRでの御経験もございますし、法務省というか入管でも御勤務の御経験がある先生から、今後どういう形で、協力関係というか、いい関係を築いていくべきなのか、お互いに何か反省すべき点はあるのかというのは、ちょっと御所見をいただければと思います。
この発言だけを見る →やはり、難民かどうかを判断するというのは、基本的には供述のところというのが一つ大きな柱になるというのは、ほかの裁判と比べると、おっしゃるとおり、証拠を積み重ねて客観証拠から見ていくというのとはまた違う分野があるので、そういう点では難しいのかなというのも非常に感じているので、先生のおっしゃることは、今後の裁判の在り方もやはり検討していく必要があるのかなというふうに感じております。
そういう中で、滝澤先生にちょっとお聞きをしたいのは、UNHCR駐日事務所での御経験があるということで、そこと入管のコミュニケーション、今はしっかり覚書を交わしてやっているわけなんですが、元々、UNHCRでの御経験もございますし、法務省というか入管でも御勤務の御経験がある先生から、今後どういう形で、協力関係というか、いい関係を築いていくべきなのか、お互いに何か反省すべき点はあるのかというのは、ちょっと御所見をいただければと思います。
滝
滝澤三郎#20
○滝澤参考人 お答えいたします。
UNHCR事務所と受入れ国の政府との関係というのは、基本的には緊張関係にあるんですね。UNHCRはやはり難民の人権を守る、それに対して政府の方は治安等も考えるということで、基本的には緊張関係にある。
したがって、駐日代表又はUNHCRのカントリーダイレクターは、非常に難しい、政治的な判断といいますか、難しい交渉なんかが必要なんですね。それがうまくいっている国は難民政策もうまくいく。うまくいかない、つまりUNHCRの事務所と受入れ国政府がこうやっているところでは、UNHCRが何を言っても聞いてもらえない。したがって、UNHCRの効果が薄いということですね。
私は、二〇〇七年の一月にこちらに来たんですけれども、これは実は志願して来たんですけれども、そのときは非常に関係が悪かったんですよ。駐日事務所と入管庁がプレスリリースでお互いに批判し合うと。つまり、クルド人の強制送還、アフガンでしたっけ、その時期があって、コミュニケーションがゼロだったんですね。お互いの不信感が物すごく強いということで、そういう中に来ました。
やはり、一番の大切なことは、お互いの言い分を言いっ放しにしないということです。それをすると、要するに言いっ放しですから何にも変わらない。結果的には政府のものが通っちゃうんですね。ですので、UNHCRとしては、やはり政府がどういう問題を抱えているかについての理解が必要だと思うんですよ。それをしないままに、いや、難民申請者がこう言っているんだから、我々は正義の代弁をしているんだから、あなた方だって聞くべきでしょう、聞かないのはあんたが悪い、そういう姿勢を取っている限りは、これは別に日本だけではなくて、どこの国に行ってもうまくいきません。
ですので、まずUNHCRとしては、各国の違ったいろいろな問題がありますので、それを理解して、そういう中で、私たちは、世界各国の難民状況の中で、こういう方法がありますという具体的な提案をするということですね。批判よりもまず提案する。
実際に、一つの提案をしても、それが実行されるまでにはいろいろな問題がありますし、さらには、その提案自身が新しい問題を作るということもあるわけです。その典型としては、これはUNHCRが主導したかは分かりませんけれども、送還停止効もその一つですね。送還停止効が導入されたときに、まさかそれが濫用される、誤用されるとは誰も考えなかったと思う。善意だったんですよ。でも、結果的には濫用された。
同じく、難民申請をして、半年後には自動的に難民が働くことができる、申請者が働くことができるという、これを導入したときも善意でやったんですよ。困っているんですよ、働けないのにどうやって生きていくの。善意なんですけれども、それが濫用された。
ですので、ある政策を導入するときには、それがどういう結果になり得るかというのをよく考えないといけないんですね。ですから、UNHCRとしてもそれを考える必要があります。ただ、いや、これが難民条約だからやりなさい、やらないのはおかしいというアプローチは駄目です。
他方で、政府の方は、これは、UNHCRが国際機関であって、加盟国全部の総意を表しているということですね。特に、国際人権の原則を広げようという、そういう機関であるということを鑑み、ちゃんと傾聴する、聞く必要があると思います。ともかく、いや、UNHCRが何言ったって我々は聞かないよじゃ駄目ですね。やはりUNHCRの言うこともきちんと聞いて、その中で情報を得て折り合いをつけていくということだと思います。
今、日本では、入管庁と、それからUNHCR、プラス支援団体の間に信頼感がありません。コミュニケーションが成り立っていないというふうに私は考えています。ですので、これが一番問題です。お互い、何を言っても相手が聞いてくれないという不信感の中で、断絶があって、これを超えないことにはどんな法案を作ってもうまくいかないと思いますね。
最後ですけれども、私が駐日代表だった頃は、ともかく、コップに水が半分あるのか、コップが半分空なのかということについて、我々としては、UNHCRとしては、コップに半分ある、これはいっぱいにできますよ、そういう評価ができますよという姿勢を取りました。それが入管庁、当時の入国管理局のトップに評価されて、第三国定住は思いがけなく非常に順調にいきました。この第三国定住は今少しずつ大きくなっていますけれども、その例を見ましても、お互いに相手の問題を理解して歩み寄るという姿勢が大切だろうと思っております。
この発言だけを見る →UNHCR事務所と受入れ国の政府との関係というのは、基本的には緊張関係にあるんですね。UNHCRはやはり難民の人権を守る、それに対して政府の方は治安等も考えるということで、基本的には緊張関係にある。
したがって、駐日代表又はUNHCRのカントリーダイレクターは、非常に難しい、政治的な判断といいますか、難しい交渉なんかが必要なんですね。それがうまくいっている国は難民政策もうまくいく。うまくいかない、つまりUNHCRの事務所と受入れ国政府がこうやっているところでは、UNHCRが何を言っても聞いてもらえない。したがって、UNHCRの効果が薄いということですね。
私は、二〇〇七年の一月にこちらに来たんですけれども、これは実は志願して来たんですけれども、そのときは非常に関係が悪かったんですよ。駐日事務所と入管庁がプレスリリースでお互いに批判し合うと。つまり、クルド人の強制送還、アフガンでしたっけ、その時期があって、コミュニケーションがゼロだったんですね。お互いの不信感が物すごく強いということで、そういう中に来ました。
やはり、一番の大切なことは、お互いの言い分を言いっ放しにしないということです。それをすると、要するに言いっ放しですから何にも変わらない。結果的には政府のものが通っちゃうんですね。ですので、UNHCRとしては、やはり政府がどういう問題を抱えているかについての理解が必要だと思うんですよ。それをしないままに、いや、難民申請者がこう言っているんだから、我々は正義の代弁をしているんだから、あなた方だって聞くべきでしょう、聞かないのはあんたが悪い、そういう姿勢を取っている限りは、これは別に日本だけではなくて、どこの国に行ってもうまくいきません。
ですので、まずUNHCRとしては、各国の違ったいろいろな問題がありますので、それを理解して、そういう中で、私たちは、世界各国の難民状況の中で、こういう方法がありますという具体的な提案をするということですね。批判よりもまず提案する。
実際に、一つの提案をしても、それが実行されるまでにはいろいろな問題がありますし、さらには、その提案自身が新しい問題を作るということもあるわけです。その典型としては、これはUNHCRが主導したかは分かりませんけれども、送還停止効もその一つですね。送還停止効が導入されたときに、まさかそれが濫用される、誤用されるとは誰も考えなかったと思う。善意だったんですよ。でも、結果的には濫用された。
同じく、難民申請をして、半年後には自動的に難民が働くことができる、申請者が働くことができるという、これを導入したときも善意でやったんですよ。困っているんですよ、働けないのにどうやって生きていくの。善意なんですけれども、それが濫用された。
ですので、ある政策を導入するときには、それがどういう結果になり得るかというのをよく考えないといけないんですね。ですから、UNHCRとしてもそれを考える必要があります。ただ、いや、これが難民条約だからやりなさい、やらないのはおかしいというアプローチは駄目です。
他方で、政府の方は、これは、UNHCRが国際機関であって、加盟国全部の総意を表しているということですね。特に、国際人権の原則を広げようという、そういう機関であるということを鑑み、ちゃんと傾聴する、聞く必要があると思います。ともかく、いや、UNHCRが何言ったって我々は聞かないよじゃ駄目ですね。やはりUNHCRの言うこともきちんと聞いて、その中で情報を得て折り合いをつけていくということだと思います。
今、日本では、入管庁と、それからUNHCR、プラス支援団体の間に信頼感がありません。コミュニケーションが成り立っていないというふうに私は考えています。ですので、これが一番問題です。お互い、何を言っても相手が聞いてくれないという不信感の中で、断絶があって、これを超えないことにはどんな法案を作ってもうまくいかないと思いますね。
最後ですけれども、私が駐日代表だった頃は、ともかく、コップに水が半分あるのか、コップが半分空なのかということについて、我々としては、UNHCRとしては、コップに半分ある、これはいっぱいにできますよ、そういう評価ができますよという姿勢を取りました。それが入管庁、当時の入国管理局のトップに評価されて、第三国定住は思いがけなく非常に順調にいきました。この第三国定住は今少しずつ大きくなっていますけれども、その例を見ましても、お互いに相手の問題を理解して歩み寄るという姿勢が大切だろうと思っております。
藤
藤原崇#21
○藤原委員 ありがとうございました。
福山参考人に御質問できなかったんですが、現場の大変貴重なお話もいただいて、インタビューの記事も読ませていただいております。四先生方、大変貴重なお話、ありがとうございました。
終わります。
この発言だけを見る →福山参考人に御質問できなかったんですが、現場の大変貴重なお話もいただいて、インタビューの記事も読ませていただいております。四先生方、大変貴重なお話、ありがとうございました。
終わります。
伊
大
大口善徳#23
○大口委員 四人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見を賜りまして、今回の法案の審議に生かしていきたい、こういうふうに思っております。ありがとうございます。
それでは、まず、早速なんですが、一つは、難民認定率のお話については、それこそ安冨先生、滝澤先生からもお話がございました。難民認定の基準が他国より厳格だと指摘されている立場の方もいらっしゃるわけでありますが、この点についてどうなのかということで、難民審査参与員である、長くやっておられます安冨先生にお伺いをしたいと思います。
この発言だけを見る →それでは、まず、早速なんですが、一つは、難民認定率のお話については、それこそ安冨先生、滝澤先生からもお話がございました。難民認定の基準が他国より厳格だと指摘されている立場の方もいらっしゃるわけでありますが、この点についてどうなのかということで、難民審査参与員である、長くやっておられます安冨先生にお伺いをしたいと思います。
安
安冨潔#24
○安冨参考人 お答え申し上げます。
先ほど申し上げたことと、繰り返したりあるいは重複するようなお話になるかもしれませんけれども、難民認定制度は、我が国は我が国、ほかの国はほかの国、それぞれの国でどのような認定制度をつくるかということは、その国ごとに決められていることだと思います。
我が国の場合は、いわゆる難民条約の難民の定義を基に、それを誠実に判断しているということなんだと思います。それを厳格というふうに評価するのか、それとも緩いと評価するのか、それは評価の問題ですので、ここでお答えすることは難しゅうございますけれども、少なくとも、我が国の難民審査の、認定の場合もそうですけれども、難民審査の場合もそうだと思います、条約で決められた五つの要件がありますけれども、その要件に沿うかどうかということを判断しているものというふうに考えます。
このことは、難民審査の手続だけでなく、裁判所においても同様な判断で難民該当性についての判断をされておるというふうに承知しております。
この発言だけを見る →先ほど申し上げたことと、繰り返したりあるいは重複するようなお話になるかもしれませんけれども、難民認定制度は、我が国は我が国、ほかの国はほかの国、それぞれの国でどのような認定制度をつくるかということは、その国ごとに決められていることだと思います。
我が国の場合は、いわゆる難民条約の難民の定義を基に、それを誠実に判断しているということなんだと思います。それを厳格というふうに評価するのか、それとも緩いと評価するのか、それは評価の問題ですので、ここでお答えすることは難しゅうございますけれども、少なくとも、我が国の難民審査の、認定の場合もそうですけれども、難民審査の場合もそうだと思います、条約で決められた五つの要件がありますけれども、その要件に沿うかどうかということを判断しているものというふうに考えます。
このことは、難民審査の手続だけでなく、裁判所においても同様な判断で難民該当性についての判断をされておるというふうに承知しております。
大
橋
橋本直子#26
○橋本参考人 御質問ありがとうございます。
私はまだ二年でございますので、また、御存じのとおり、三名一組で、百二十名ぐらいいらっしゃいますので、ほかの先生方がどういうふうな御判断をされているのを、私が何か評価申し上げることではないというふうに思います。
一%、何%という数字がありますけれども、実は私も安冨先生と同じく、認定率というのは、どういう庇護申請者がやってくるかに完全によりますので、試験の点ではないので、高ければ高いほどよい、高ければ高いほど正しいかというと、そこはそうではない。ただ、客観的な事実として、一%というのは、率直に申し上げて、国際学会などで発表しますと、ちょっと議場がどよめく数ではございます。
なぜ、じゃ、こんなに認定率が低いのか。私は、先ほど厳格だということも申し上げましたけれども、やはり、この委員会でも数日前に検討がございました、今回、手引では、現実的な危険の有無という言葉が出てきました。何が現実的なのかというのが一点。この手引はできたばかりですので、今後、より精緻化されていくことを期待いたしますけれども、例えば、それが八〇%、九〇%までないと現実的ではないのか、あるいは五〇%でいいのか、ないしは、私としては、難民法を専門としている立場としては、二〇%、三〇%ぐらいでよいというのが国際難民法学者の間では一般的に言われていることでございます。そこが、日本政府としてどのぐらいに標準を定めているのかというのは、私はちょっとまだよく分からないというところがございます。
また、よく日本政府が引用される、迫害が起こるような、まあ、人権侵害ですね、が起きているような国から遠いのではないかと。ただ、そもそも、恐らくそれは先進国の多くがそうですけれども、難民申請しそうな人にはビザを発給しない、そもそも難民申請をすること自体が難しい、他国に逃れること自体が難しいというのが一点ございますが、例えば、難民発生地、人権じゅうりん国から遠いカナダなんかでは、やはり、かなり、御案内のとおり、難民認定率は高いわけでございます。
また、難民認定は、どこの国から来ているかだけではなくて、その個人が迫害を受けるというおそれがあるかないかですので、必ずしも、いわゆる平和的に見えるかもしれない国から来る難民、例えば北欧諸国などから来る庇護申請者、難民というのもいる、世界中に見るといるわけでございます。ですので、どこの国と近いかということだけで判断するというのも難しいかというふうに私は思っております。
取りあえず、以上でございます。
この発言だけを見る →私はまだ二年でございますので、また、御存じのとおり、三名一組で、百二十名ぐらいいらっしゃいますので、ほかの先生方がどういうふうな御判断をされているのを、私が何か評価申し上げることではないというふうに思います。
一%、何%という数字がありますけれども、実は私も安冨先生と同じく、認定率というのは、どういう庇護申請者がやってくるかに完全によりますので、試験の点ではないので、高ければ高いほどよい、高ければ高いほど正しいかというと、そこはそうではない。ただ、客観的な事実として、一%というのは、率直に申し上げて、国際学会などで発表しますと、ちょっと議場がどよめく数ではございます。
なぜ、じゃ、こんなに認定率が低いのか。私は、先ほど厳格だということも申し上げましたけれども、やはり、この委員会でも数日前に検討がございました、今回、手引では、現実的な危険の有無という言葉が出てきました。何が現実的なのかというのが一点。この手引はできたばかりですので、今後、より精緻化されていくことを期待いたしますけれども、例えば、それが八〇%、九〇%までないと現実的ではないのか、あるいは五〇%でいいのか、ないしは、私としては、難民法を専門としている立場としては、二〇%、三〇%ぐらいでよいというのが国際難民法学者の間では一般的に言われていることでございます。そこが、日本政府としてどのぐらいに標準を定めているのかというのは、私はちょっとまだよく分からないというところがございます。
また、よく日本政府が引用される、迫害が起こるような、まあ、人権侵害ですね、が起きているような国から遠いのではないかと。ただ、そもそも、恐らくそれは先進国の多くがそうですけれども、難民申請しそうな人にはビザを発給しない、そもそも難民申請をすること自体が難しい、他国に逃れること自体が難しいというのが一点ございますが、例えば、難民発生地、人権じゅうりん国から遠いカナダなんかでは、やはり、かなり、御案内のとおり、難民認定率は高いわけでございます。
また、難民認定は、どこの国から来ているかだけではなくて、その個人が迫害を受けるというおそれがあるかないかですので、必ずしも、いわゆる平和的に見えるかもしれない国から来る難民、例えば北欧諸国などから来る庇護申請者、難民というのもいる、世界中に見るといるわけでございます。ですので、どこの国と近いかということだけで判断するというのも難しいかというふうに私は思っております。
取りあえず、以上でございます。
大
大口善徳#27
○大口委員 三月二十四日、難民該当性判断の手引、これは本当に長年求めていたことでありますが、これが発表されたわけでございます。
この点について、滝澤参考人は高く評価をしていただいています。それこそ、UNHCRで長年難民の仕事をやってこられて、今は教えておられるわけでありますが、この難民該当性判断の手引の評価について、滝澤参考人、そしてまた、安冨参考人、橋本参考人は参与員ということでもございますので、評価についてお伺いしたいと思います。
この発言だけを見る →この点について、滝澤参考人は高く評価をしていただいています。それこそ、UNHCRで長年難民の仕事をやってこられて、今は教えておられるわけでありますが、この難民該当性判断の手引の評価について、滝澤参考人、そしてまた、安冨参考人、橋本参考人は参与員ということでもございますので、評価についてお伺いしたいと思います。
滝
滝澤三郎#28
○滝澤参考人 私がこの新しいガイドラインで評価する点で、恐らく長期的に大きな影響を与えるであろうというのは、迫害の定義において明確に、かつては人命とか物理的な自由を拘束されるということが中心だったんですね、今回は、それに対して、先ほども申し上げましたけれども、例えばこんなように書いてあります。
殺害や不当な拘束などがその典型であるが、その他の人権の重大な侵害や差別的措置、例えば生活手段の剥奪や精神に対する暴力等についても、迫害を構成し得る。さらには、それ自体としては迫害に当たるとまでは言えない措置や不利益等であっても、それらの事情が合わさった結果として、迫害を構成する場合があるというふうに明確に書いてある。
これは、今後、いろいろな難民審査また不服申立てについてこれが参照されるわけですね。裁判でも使われるわけです。ですので、これは非常に大きな影響があるだろうと思います。これが第一点。
第二点は、この手引の中で、例えば、指導的な立場、よく言われるのは、指導的な立場になければいけない、反政府運動のですね。それについても、指導的な立場にあれば、それは加点要素ではあるけれども、ないからといって、それが迫害の可能性を減じるものではないといったこと。その類いの、必ずしもそうではないというのが至る所にあるんですね。
これは、私は、今までの定義なり要素よりも拡大しておる、したがって、今後、事例が積み重なるに従って認定数が増えていくんだろうと思います。
入管庁は、いや、今回の手引は決して認定の在り方を変えるものではない、認定基準を緩めるのではないというふうにおっしゃっていますけれども、私は、実はかなり変わっているだろう、そんなふうに考えております。
この発言だけを見る →殺害や不当な拘束などがその典型であるが、その他の人権の重大な侵害や差別的措置、例えば生活手段の剥奪や精神に対する暴力等についても、迫害を構成し得る。さらには、それ自体としては迫害に当たるとまでは言えない措置や不利益等であっても、それらの事情が合わさった結果として、迫害を構成する場合があるというふうに明確に書いてある。
これは、今後、いろいろな難民審査また不服申立てについてこれが参照されるわけですね。裁判でも使われるわけです。ですので、これは非常に大きな影響があるだろうと思います。これが第一点。
第二点は、この手引の中で、例えば、指導的な立場、よく言われるのは、指導的な立場になければいけない、反政府運動のですね。それについても、指導的な立場にあれば、それは加点要素ではあるけれども、ないからといって、それが迫害の可能性を減じるものではないといったこと。その類いの、必ずしもそうではないというのが至る所にあるんですね。
これは、私は、今までの定義なり要素よりも拡大しておる、したがって、今後、事例が積み重なるに従って認定数が増えていくんだろうと思います。
入管庁は、いや、今回の手引は決して認定の在り方を変えるものではない、認定基準を緩めるのではないというふうにおっしゃっていますけれども、私は、実はかなり変わっているだろう、そんなふうに考えております。
安
安冨潔#29
○安冨参考人 お答えさせていただきます。
難民該当性判断の手引につきましては、先ほど滝澤参考人の方からもお話がございましたとおり、第六次の出入国管理政策懇談会の下でまとめられましたものを、規範的要素を明確化するということに基づいて策定されたもので、少し時間がたっておりますけれども、その間、いろいろな方からお話を伺われて整理されたものというふうに承知しているところでございます。
この手引は、我が国の実務上の先例でありますとか、それから裁判例、こういうものを踏まえまして、条約難民で規定されている難民の定義に含まれる文言、この意義を具体的に説明するということ。それから、その際に、難民該当性の判断をする際にどういう点を考慮すべきなのかということのポイントを示しているものというふうに思っております。
殊に、具体的なお話は、今、滝澤参考人の方からございましたけれども、記述の中に、審査時の留意点、それから判断の視点、こういうことで、かなり詳細に書かれてあります。これは必ずしも基準というものではないと思いますけれども、難民認定制度で難民かどうかを判断する上では重要な考慮事項になってくるというふうに評価しております。
この発言だけを見る →難民該当性判断の手引につきましては、先ほど滝澤参考人の方からもお話がございましたとおり、第六次の出入国管理政策懇談会の下でまとめられましたものを、規範的要素を明確化するということに基づいて策定されたもので、少し時間がたっておりますけれども、その間、いろいろな方からお話を伺われて整理されたものというふうに承知しているところでございます。
この手引は、我が国の実務上の先例でありますとか、それから裁判例、こういうものを踏まえまして、条約難民で規定されている難民の定義に含まれる文言、この意義を具体的に説明するということ。それから、その際に、難民該当性の判断をする際にどういう点を考慮すべきなのかということのポイントを示しているものというふうに思っております。
殊に、具体的なお話は、今、滝澤参考人の方からございましたけれども、記述の中に、審査時の留意点、それから判断の視点、こういうことで、かなり詳細に書かれてあります。これは必ずしも基準というものではないと思いますけれども、難民認定制度で難民かどうかを判断する上では重要な考慮事項になってくるというふうに評価しております。