川上高司の発言 (予算委員会公聴会)
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○川上公述人 皆さん、おはようございます。拓殖大学の川上でございます。よろしくお願いします。
今日は、二十分という限られた時間でございますので、十一点につき簡単に御説明いたしたく思います。
今日なんですけれども、現状認識から、どういう具合に我々は日本としてやったらいいのかというふうな、かなり総論から各論まで論じていきたいと思います。
一番最初なんですが、現状認識なんですけれども、我々は今どういうふうな現状にいるのかというふうなことでございますが、新しい戦前、戦争前の状況、これをアメリカの軍事作戦部長のリチャードソンは、グレーウォー、つまり本当の戦争になる直前のこととして表していたわけなんですが、我々が述べていますグレーゾーン事態の戦争は、今既に台湾のみならず日本でも開戦されているというふうなところで、この点につきましては、先生方御承知の国家防衛戦略の冒頭で、中国を名指しして、中国に対する抑止力の強化と、いつもにない強い調子で、本当に、戦前、つまり戦争の前にあるというふうなことを論じ、それに応えて防衛戦略三文書が出されたというふうなところで、ありていに言いますと、今、台湾危機を前にして、我々はちょうど戦時の前の体制に多分、軍事状況では入っているのかと。
これは本当に抑止力強化の面で必要なことでございますが、その状況はいかなる状況かといいますと、ウクライナで戦争がいまだに継続しているわけでございますが、これはウクライナ型戦争と我々は呼んでいるんですが、つまり、米軍は、軍事的に直接は介入しないけれども、違う領域、ドメインで戦い方が行われている、こういう新たな戦争の時代に入っておりますので、恐らく、これから先、少なくともバイデン政権の間は、そういった、オールドメインといいますが、全領域戦の戦いをするのは間違いない。したがって、軍事力行使はしないけれども、ほかの領域で戦いをやるというふうなことでなっていると思うわけでございます。
そこで、脅威というのは、当然ながら、能力掛けるの意思で示されるわけでございますけれども、二点御提案したいわけです。
一点目は、脅威を減じる努力を我々はしなくちゃいけない。
抑止力は日米一体化で本当に今どんどんなされている状況で、ほとんど盤石な体制に入りつつあるというようなことなんですが、一方ではやはり、脅威を減じるということで、中国に対する信頼醸成措置、これが必要じゃないかと思うわけでございます。
二番目は、これほど戦争が間近に迫っている状況を我々は認識すべきだと思うんですが、戦争回避のシナリオ作り、これは現在まで、CSIS、アメリカの国際戦略研究所、日本では戦略フォーラムのところで、いわゆるウォーゲームということではかなりそういうシミュレーション、我々、ポリティコ・ミリタリー・ゲームということを、私も二百回も三百回もやってきたんですが、そういうところでシナリオを立てられていたんですけれども、これほど危機が迫った段階では、そのいわゆるシミュレーションゲームのほかに、いわゆる戦争回避のためのシミュレーション、こういうふうなところが必要ではないかと今強く思っている次第でございます。それでも、戦争に巻き込まれる可能性は九〇%以上というふうなところで備えなくちゃいけないと私は認識している次第でございます。
そこで、実は、私が理事長を務めている日本外交政策学会というところでポリミリゲームを行わせていただいて、いかに台湾有事における日本に対する危機管理、これが起こるかということをやらせていただきました。ここでは戦争を抑止するための努力が必要で、幸いにして、いろいろな、アメリカチーム、中国チーム、日本チーム、台湾チームとありまして、そこで米中間における話合いがあり台湾危機は回避された。これは日本にとっては、現状維持でございますので、一番いいシナリオだったわけでございますけれども、そういうのがありました。
さて、ここから本題といいますか、ウクライナ型戦争と台湾アナロジーということで問題に入らせていただきますが、言うまでもなく、その背景は、中国の脅威の高まり、軍事的、経済的、これでアメリカは単独では対抗できないというところで、特にバイデン政権に入りましてからは、同盟国の力、日本を含む、そういうところを使って、全部の同盟力でもって中国を封じ込めよ、若しくは、最近では、中国とロシア、それから北朝鮮、若しくはイラン、そういうふうな非共産主義圏対民主主義同盟というような戦いになってきていますので、それにはアメリカだけでは戦えないというところで、同盟諸国の力を今やっているわけであります。
ウクライナ型戦争なんですが、これは統合抑止戦略ということで、しっかりとアメリカの戦略の中に、この間、国防戦略の中にそれが入れ込まれているわけでございますけれども、これは、簡単に申し上げますと、いろいろな読み方があるんですが、アメリカの目的はプーチン政権の弱体化にあり、つまり、そういう体制間の紛争の中でまずロシアの脅威を減じる、それから二番目には多分、中国の力を減じる、そのほか、イラン、北朝鮮のいわゆる体制間の力を減じるというふうな、かなり大きな新冷戦型の備えに対してこの統合抑止戦略を展開しているというふうなところでございますが、もしそうであるならば、ウクライナで戦った戦争は台湾でも同じように戦われるのではないかというふうなところ。
そこで、問題は、もし台湾で有事になった際、故安倍総理が台湾有事は日本有事であると申し上げられたとおり、我が国にとっては即戦争になるわけでございまして、そう考えるんでしたら、日本が、ウクライナに対する支援をしているポーランドというふうな状況になるのか、若しくは日本自体がウクライナになるのか、そういうふうなことになってくると思われるわけでございます。
そういうところで、台湾アナロジーとしまして、最初に台湾でもし何かあった場合には、アメリカは恐らく、軍事的なものを優先するよりも統合抑止戦略でほかのドメインで戦う。現在もう既に戦っていると思いますけれども、そういう戦いが行われ、アメリカはもちろん助けに来るんですが、時差を置いて、当然ながら自衛隊が戦い、その後に、一、二週間後にもしかするとアメリカが来ることになるかもしれない、そうじゃいけないんですが。ただ、それは覚悟しておかなくちゃいけないというふうなことになると思います。
ここで簡単に、アメリカにとってのウクライナ戦争のバランスシートというのを考えてみますと、プラスの面というのは、ロシアが弱体化した、アメリカにとってですね。民主主義同盟の結束というのがここで強固になった。それから、体制間戦争でアメリカは非常に優位にあるというふうなところになりますし、マイナスの面では、忘れてはいけないのは、トランプ政権のときには、中国に対して抑止力を利かせるために、バランシングというものでロシアを使っていたわけですね。ところが、このウクライナ戦争によってロシアと中国がほとんど一体化してきた。そうすると、そのときに対して世界全体が平和から対立へというふうな具合にシフトしてきてございますので、その点は核戦略の一部としても考えなくちゃいけない。
つまり、もしロシアと中国の核が同じく日本に向けられる、若しくは北朝鮮に向けられるとするならば、核時代の極がMAD体制から三極体制に入ってきた、この時点で日本の拡大抑止はもしかすると破られているのかもしれない、そうすると、この時点では間違いなくニュークリアシェアリングが必要になる。韓国はその論議が始まっていますし、そういう具合に考えられることになってございます。
それから、その次なんですが、防衛三文書、これはいろいろな論議がありますが、私の方からは二点指摘いたしたく思います。
まず一番目、指揮系統なんですけれども、これは国家防衛戦略の中に、「いついかなる事態が生起したとしても、日米両国による整合的な共同対処を行うため、同盟調整メカニズム(ACM)を中心とする日米間の調整機能をさらに発展させる」必要がある、これをどう読むかなんですが、福島第一原発のときに、アメリカは太平洋軍を日本に上げて、統合支援部隊、JSFを横田基地に設置したのは皆さん御承知のとおりでございますが、この状況はトモダチ作戦を展開する際ももちろん非常に有効だったわけでございますが、そのときに自衛隊とともに共同調整所をつくり、そこでは、有事の際、これは有事ですね、そのときにアメリカが指揮権を取り、自衛隊はその傘下に入るとまでは言いたくないんですが、やはりそこに従って日本のトモダチ作戦を展開し、しかも中国軍が出るために日本の海上自衛隊等々は展開したわけです。
そういうふうなことが同じように行われる、つまり、常設部隊を現段階から日本に置くというふうなところで、問題はそのときの指揮権なんですが、日本が独自に展開できればいいんですが、事有事になってしまったらやはり米軍主導になる、そうなれば、本当に日本の防衛は日本が思うように作戦展開ができるかというのが一点。
それから、二点目なんですが、反撃能力です。
反撃能力、これは本当に願ってもないことで、抑止力はもちろん、抑止力というものはそういう懲罰的抑止と拒否的抑止でやられているわけなので、拒否的抑止につきましては、ミサイルディフェンスで淡々といまだにやられています。ところが、懲罰的抑止、これがなかったわけです。
現に、中国の東海岸には千発以上のミサイルが展開していまして、INF条約でアメリカはできなかった、それを廃止して、第一列島線上に、PDIというふうな戦略に基づいて、パシフィック・ディターレンス・イニシアチブに従って、アメリカは、その線上に今、中距離弾道ミサイルを置こうとして、中国を抑止しようとしているというふうなことであります。
もちろんこれはウェルカムで、当然、今回防衛三文書に入りましたトマホークとかいろいろなもの、これはそれに対する懲罰的抑止としては有効なものでございますが、ポイントは、その発射権が日本にあるかどうか、これが大問題です。
対敵基地攻撃能力という言葉が外れ、反撃能力ということになったわけなんですけれども、その際に、多分、有事になった際には、ミサイルを撃つという段階になった場合には、日本はアメリカにコンサルテーションをしながら撃たなくちゃいけない。アメリカ側だったら当たり前のことです、巻き込まれますから。それは日米間の一体化した、アメリカの戦略に基づくそういう展開がなされる。これをどう考えるかなんですね。我が国防衛のために本当に反撃能力が使えるかどうか、これを申し上げたい。
それから、四番目なんですが、これは私の大好きな作家で、三島由紀夫が大好きなんですけれども、三島由紀夫がバルコニーで割腹自殺を遂げたときに、自衛隊は永遠にアメリカの傭兵として終わるだろうと、すごいことを言って亡くなった。割腹したわけですね。これはありていに言いますと、もちろん必要なわけなんですけれども、これは日米同盟のジレンマ、つまり捨てられる恐怖と巻き込まれる恐怖があって、現在、今我々はそういうジレンマに直面し、それで今現在、日本はアメリカの力を使って抑止しようというふうな体制に入っていますので、その逆の巻き込まれる恐怖というのがございまして、これに対する捕捉も十分必要であるわけでございます。
それから、五番目なんですが、アメリカは、本気で中国と戦争する、できるのか、するのか、やるのか、こういう状況なんですが、もちろんやりますが、言いましたように、統合抑止戦略の下でやるとするならば、アメリカは軍事力は使わずにその他のドメインで入るわけですから、実際に向かい合うのは恐らく自衛隊と中国人民解放軍、この可能性も否定できないというようなところを我々は考えながら戦略を立てなくちゃいけないというのは間違いございません。
それから、六番目なんですけれども、では、日本はアメリカの軍事的影響力から脱することができるのか。
我々は、戦後、吉田茂総理のときから、私も中曽根総理のときから十年間一緒に働かせてもらいましたが、特に戦後政治の総決算というところで、目的は、日本が防衛力を持てるかどうか。本当に、自分のことを考えて自分の国益に基づいて自分の戦略を展開し、アメリカの戦略と一緒に重なった部分で日本がそういう防衛戦略を展開できるのか。
よく、私の友人のマイケル・グリーンと、それからアーミテージと何年も岡崎大使の下で話し合ってきたんですが、いわゆる米英同盟型に我々は同盟体制をグレードアップできるのか、多分これなんですね。日米同盟は不可欠なんですが、ただ、自分独自の防衛戦略ができるかどうか。これは、パワーシェアリングということで私とマイクは言っていましたが、そういうようなことでございます。
台湾有事のシナリオ、これはもう本当に百も二百もあって、いろいろなシナリオができるんですが、簡単に言うと三つに分けられると思います。中国勝利、米国勝利、それから引き分け。いずれにしましても、中国勝利の場合には、第一列島線を中国が突破して第二列島線まで来るわけですから、ちょうど我々の今いる東京の真下の小笠原ぐらいまでの第二列島線上に中国の艦船、海警、それから漁船が何千隻と現れるような状況になるわけです。これはどうしても阻止しないといけないわけですが、ただ、その状況はいかに、そこまで考えなくちゃいけません。
ちょうど、アンドリュー・マーシャルがネットアセスメントで、アメリカの国防総省で百年の戦略を立てましたが、そこまで、我々は少なくとも五年、十年先まで考えなくちゃいけないというようなことでございますので、いずれのシナリオでも台湾から米軍は引かざるを得ないことに中長期的にはなるんじゃないかというようなことが考えられるわけでございます。
あと、残りなんですが、核シェアのところで一点だけ申し上げますと、アメリカで盛んに行われていますのが、ケネス・ウォルツとスコット・セーガンの論理がありまして、核を持った方が戦略的に安定すると論議が行われているんです、アメリカでは。これが全く日本では報じられていない。この学者が何百人という具合にアメリカにおります。NATOにもいます。こういうふうなことを考えながら、我々は戦略的安定のために逆の方向も考えなくちゃいけないというふうなことでございます。
残り時間が迫ってきましたので。
それから、バイデン政権後のことも我々は考えなくちゃいけないわけですね。アメリカにいる私の友人たちから電話がありまして、本当に日本は大丈夫か、アメリカの戦略に乗って、いや、バイデン政権の戦略に乗って政策は展開しているが、もしトランプが現れた場合どうなるんだ、真逆になるんじゃないかと。ロシアともう一回手を結び、それから、トランプ大統領のやったことは、同盟ではなく、アメリカ・ファーストをやり、しかも、ロシアとそういう具合にもう一回手を結び直し、中国とはディールするんじゃないか、そうしたときに、我が国ははしごを外された段階でどうするんだというふうな声が、実は民主党政権の研究員から上がっているわけでございます。
最後なんですけれども、こういう具合なことを述べてみますと、我々は絶体絶命のピンチにあるような状況に立たされているわけでございまして、しかし、これを、考えてみるならば、戦後七十八年間アメリカの影響力からなかなか脱し得ない日本が脱する千載一遇のチャンスだとも考えられるわけで、これはまさに、解答から言いますと、ビスマルク的な外交戦略を展開し、それで日本がバランシング、バランサーとなればいいわけでございます。
これはイギリスが取ってきた歴史的な知恵でございますけれども、そういうことをやりながら、日本は戦略的地位として台湾とアメリカの間に立つ国でございますので、これほどいい戦略的地位、若しくは地政学的地位を持っている国はありません。したがって、日本が中心となり、アメリカと中国をバランシングする。
最後に、そういうことで、日本は幕末と同じような状況に今立っているわけでございまして、こういうふうな弱肉強食の時代でありますところで、我々は、特に、日本の独立を守るために、とにかく、強く、それからしなやかに、周到に、時にはマキャベリ的に振る舞う行動をしなければ生き残れないというふうなことだと思っております。
以上で、時間になりましたので終わります。
以上でございます。(拍手)