清水秀行の発言 (予算委員会公聴会)

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○清水公述人 ただいま御指名をいただきました連合の清水でございます。
 本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝を申し上げます。
 連合は、資料の冒頭にあるとおり、働くことを軸とする安心社会を目指しております。
 本日は、働く者の立場から、必要な政策について申し述べたいというふうに思います。
 初めに、現下の経済社会の課題認識について申し述べます。
 まず、世界に目を向けますと、ロシアによるウクライナ侵攻から一年が経過しようとしています。そのような中、今年五月に広島でG7サミットが開催されます。サミットでは、ルールに基づく国際秩序、国連憲章の原則、人権、平和、国際協力へのコミットメントを今こそ世界に発信すべきであり、日本は議長国としてその中心的な役割を果たす必要があります。加えて、ミャンマーにおける重大な人権問題が風化しつつある今、アジアで唯一のメンバーとして、民主化の進展を着実に進めるための積極的な支援強化を求めたいと思います。
 次に、我が国に目を向けると、昨年来の資源、エネルギー、原材料、食料品を中心とした物価高騰が、とりわけ低所得者層の暮らしや中小企業の経営に大きな打撃を与えています。また、我が国では、三十年余りもの間、平均賃金の水準向上が見られず、二〇二二年の出生数は統計開始後初めて八十万人を割り込むことが見込まれるなど、経済社会の構造的課題は深刻さが増しています。
 今こそ、このような構造的課題の解決に向けた抜本的な対策を示す必要があり、個別の論点について連合の考え方を申し述べたいと思います。
 初めに、賃上げ実現についてです。
 連合は、「くらしをまもり、未来をつくる。」をスローガンに、二〇二三年春季生活闘争を日本の未来をつくり変えるターニングポイントとすべく取り組んでいますが、その成否の鍵を握るのは、雇用労働者の七割が働く中小企業と、四割を占めるパート、有期、契約などの非正規雇用で働く仲間の賃上げ実現であります。
 資料三ページを御覧ください。
 中小企業の賃上げを実現するには、労務費を含む価格転嫁が実現できるかに懸かっておりますが、パートナーシップ構築宣言の状況を見ると、資本金三億円超の大企業の宣言数は一千百十一社で、全体の一割にも満たない状況です。円グラフは昨年九月に中小企業庁が実施した価格交渉の調査結果ですが、価格交渉が全くできていない企業の割合は一三・九%と、前回調査よりも三・九ポイント上昇しています。
 次に、資料四ページを御覧ください。
 同じ調査において価格転嫁率を聞いたものですが、コスト全体を転嫁できた割合が五割弱、四六・九%でございます。また、前回調査から上昇し、ゼロ割あるいはマイナスと答えた企業の割合は低下しましたが、ゼロ割やマイナスの企業は、依然として二割、二〇・二%を超えています。
 政府は、パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージに基づき、価格転嫁対策に全力で取り組むとしていますが、中小企業が安心して賃上げできる環境が整っているとは到底言い難く、政府には、大企業のパートナーシップ構築宣言の拡大と価格転嫁の実効性を高める取組の早急な実施を求めたいと思います。
 雇用形態間の処遇格差の是正も同様に重要です。同一労働同一賃金に関する指導、助言の実施件数は、二〇二一年度で一万件を超えています。労働組合は、組合員であるか否かにかかわらず、同じ職場で働く仲間の労働条件向上を要求、交渉しますが、政府には、同一労働同一賃金が全ての職場で実現されるよう、労使双方への周知と監督指導の徹底に取り組んでいただきたいと存じます。
 二〇二三春季生活闘争は、回答引き出しの山場を三月十三日の週に予定していますが、先行組合が引き出す賃上げの流れを労働組合のない企業も含め多くの中小企業などに波及させることが肝要であり、政労使による社会的メッセージの発信なども検討すべきと考えます。
 そして、賃上げと併せて実現すべきは、物価高騰の影響を特に受けやすい低所得者への対策であり、税による所得の再分配を通じた格差の是正が必要ですが、今回の税制改革関連法案には特段見当たらないため、連合として導入すべきと考える施策を三点申し上げます。
 一点目は、租税原則の公平の原則に基づき、金融所得課税を強化するとともに、将来的な所得税の総合課税化に向けた検討を行うことです。
 二点目は、所得税の人的控除について、できるだけ社会保障給付や各種支援策等に振り替え、残すものは、税負担軽減が高所得者ほど大きい所得控除から、所得水準にかかわらず一定である税額控除に変えることです。
 三点目は、マイナンバー制度を活用した正確な所得把握を通じて、早期に給付つき税額控除の仕組みを構築し、基礎的消費に係る消費税負担分を給付する消費税還付制度や、社会保険料、雇用保険料における労働者負担分の半額相当分を所得税から控除する就労支援給付制度を導入することです。
 次に、子供、子育て政策について申し上げます。
 何よりも重要なのは、子供、子育てを社会全体で支えるという認識を共有することです。連合は、全ての子供を平等に社会全体で支える仕組みの充実を通じ、子育て世帯が応援してもらっていると実感できる社会の実現を求めています。
 妊娠期から寄り添う伴走型相談支援など、子供、子育て支援の仕組みは拡充されつつあるものの、当事者の実感にはまだまだつながっておりません。子供を育てたいと考える全ての方にとって子供の養育や教育に係る費用の負担は大きく、将来の生活設計に不安を感じています。そのため、児童手当は、保護者の所得の多寡にかかわらず、全ての子供へ支給すべきと考えます。
 教育費についても同様です。家庭の所得格差が教育機会の格差となってはなりません。学習指導上必要な教材や部活動など、学びに係る費用は社会で負担すべきと考えます。また、高校の無償化は年収要件を撤廃すべきであり、高等教育においても学費の低額化や奨学金制度の拡充が必要です。
 さらに、仕事と子育ての両立には保育サービスの確保が不可欠ですが、都市部を中心にいまだ待機児童問題が解消されておりません。特に放課後児童クラブは、一万五千人を超える待機児童が存在しています。
 加えて、保育施設における児童虐待や不適切な保育に関する報道が後を絶ちません。その背景には、保育士等の人材不足、重い業務負担、業務に見合わない処遇などの課題があると考えます。配置基準を見直すなど、これらの課題を早急に改善し、安心して長く働き続けられる労働環境を整備することで、保育人材を確保していく必要があります。
 なお、子ども・子育て関連三法の附帯決議で確認された、保育等の質の向上を図る〇・三兆円の財源が確保されないまま現在に至っていますので、早期の確保を求めます。
 その上で、改めて、社会保障・税一体改革の原点に立ち返りつつ、子供、子育てを社会全体で支えていこうという今、政府の子供政策の強化で十分なのかを国会で明らかにするとともに、国の責任において必要な財源が確保されることを求めます。
 次に、曖昧な雇用で働く就業者の法的保護の拡充について申し上げます。
 現在、政府においては、フリーランスに係る取引の適正化等に関する法律案が検討されていると認識しています。報酬支払いの遅延や一方的な業務内容の変更等のトラブルが頻発する中、本法案は就業者保護に資するものと評価をしております。他方で、仲介事業者に対する業規制、実効性ある履行確保措置など、検討すべき課題は多くあると認識しています。
 フリーランスの方が安心して働ける環境を整備するためには、実態として労働者性が認められる場合は労働関係法令が適用されることを周知徹底し、厳正な指導監督を行うことが必要です。加えて、労働基準法における労働者性の判断基準を社会の実態に合わせて見直し、法的保護の拡充を図ることが喫緊の課題だと考えます。
 次に、労働移動、リスキリングについて申し上げます。
 政府は、成長と分配の好循環の実現に向け、労働移動の円滑化、リスキリング、構造的な賃上げに一体的に取り組むとし、人への投資に五年間で一兆円の予算を確保するとしています。
 人への投資の抜本的強化が必要との認識に相違はありませんが、成長と分配の好循環は労働移動のみで実現するものではなく、むしろ、リスキリングを含む能力開発と処遇改善による雇用の質の向上を軸に実現していくべきと考えます。
 成長分野等への労働移動については、労働者自らが移動を希望したくなるような移動先の処遇や安定した雇用環境の整備が何より重要と考えます。
 なお、労働移動促進という観点から、解雇規制や労働法制の緩和につながるような議論がなされることがあってはならないと申し上げておきたいと思います。
 リスキリングについては、労働者や求職者個人への支援策拡充はもとより、企業を通じた支援策も、企業の成長に資する人材育成支援として、引き続き維持、拡充が必要と考えます。その上で、これら施策を実効性あるものとするには、企業等のニーズを踏まえた対応が重要であり、訓練プログラムの充実や中小企業等に対するノウハウ支援を行い、全体的な底上げを図る必要があります。
 また、全ての労働者にひとしく能力開発等の機会を確保していくことが重要です。とりわけ、非正規雇用で働く者への人への投資は、処遇改善、正社員転換、キャリア形成支援に資するよう、企業の取組に加え、政府による支援の拡充が不可欠と考えます。
 次に、GXの推進について申し上げます。
 国際公約と我が国の競争力強化、経済成長の同時実現を目指すGX推進法案が今国会に提出されました。
 資料の五ページを御覧ください。
 連合は、GXの実現には公正な移行を通じた働くことを軸とする安心社会の実現と連携させることが必要であると考えますが、昨年末に確認されたGX実現に向けた基本方針にある公正な移行が、GX推進法案では明示されていません。
 また、基本方針に示された方向性を具体化するためには課題も残されており、現時点で連合の考える懸念点を三点申し上げます。
 一点目は、失業なき労働移動の実現についてです。
 雇用形態に関わりなく学び直しの機会が担保されるとともに、その間の生活を保障する資金援助や住宅補助など、重層的なセーフティーネットの構築が必要です。また、中小零細企業の雇用への影響に対しては、サプライチェーンだけでなく、国や地域での目配りと強力な支援が必要です。
 さらに、今後の政策立案に当たっては、政労使を含む関係当事者が加わる社会対話の枠組みが国、地域、産業レベルで行われるとともに、地域脱炭素化や産業移転に伴う地域経済の在り方を含めた分野横断的課題の深掘りも重要であり、各省庁が連携した推進体制を求めます。
 二点目は、GX経済移行債の投資の対象についてです。
 基本原則の一つである国内の人的、物的拡大につながるものに、付加価値の高い、グリーンでディーセントな雇用の創出にもつながるものとの要件を加えるべきと考えます。
 また、投資を受ける企業は、いわゆるESGのS、社会的責任や、G、健全な企業統治の側面においても法令遵守や人権に関するデューデリジェンスが確立されていることを前提にすべきであると考えます。
 三点目は、カーボンプライシングについてです。
 既にエネルギー価格が高騰している中、創設される賦課金や排出量取引の下での事業者の負担水準など具体的な制度の検討においては、現行制度の見直しも含め、労使を含む関係当事者の意見を取り入れ、丁寧な議論を進めていただきたいと思います。とりわけ、負担は特定の産業だけに偏ることなく、広く国民でなされるべきであり、事業者が適正に価格を転嫁できる環境整備も必要となります。
 次に、日本社会のありようについて申し上げます。
 社会の根底には、平和、自由と民主主義の普遍的原理、そして人権の尊重が貫かれていなければなりません。政府の目指す多様性のある包摂的社会や、連合が目指す多様性を認め合う社会を考えるとき、先日の元総理秘書官の発言は、時代錯誤かつ人権意識が希薄であり、断じて許されるものではありません。
 資料六ページを御覧ください。
 G7各国の状況を見ると、性的指向、性自認に関する差別を禁止する法律を持たないのも、同性婚を認めていないのも日本だけです。G7議長国であるにもかかわらず、日本は世界の潮流から大きく遅れている状況です。
 一方で、同性カップルを婚姻関係と同等に認めるパートナーシップ条例は、二〇二三年一月十日時点で二百五十五自治体で制定されており、人口カバー率は六五・二%です。これは、政府の政策の遅れを自治体がカバーしている状況と言えます。
 同性パートナーの権利保障のため事実婚に準じた扱いとすることや戸籍変更要件の緩和など、性的指向や性自認に関する課題の解消に向けた民法の整備と、差別を禁止する法律の早期制定が求められます。
 また、G7各国の中で選択的夫婦別氏制度を認めていないのも日本だけです。
 資料七ページを御覧ください。
 連合の調査でも、夫婦の姓について、同姓でも別姓でも構わないと答えた人が六四%に上り、多くの人たちが選択的夫婦別氏について容認していることが分かりました。
 一九九六年に法制審議会が選択的夫婦別氏について法律案要綱を答申してから二十七年、今こそ、多様性を認め合う社会の実現に向けて、選択的夫婦別氏制度を導入すべきときと考えます。
 最後に、あらゆる差別を禁止し、国際社会における差別禁止のスタンダードと言える、ILO第百十一号条約について申し上げます。
 第百十一号条約は、一九五八年に採択されたもので、百七十五か国が既に批准しています。しかし、日本はいまだに未批准であり、世界から見て周回遅れのランナーと言える状況です。
 政府が取りまとめたビジネスと人権に関する国別行動計画に基づき、日本が人権を尊重しているということを国際社会に示す意味でも、ILO第百十一号条約の早期批准を強く求めたいと思います。
 以上を申し上げ、私の意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 清水秀行

speaker_id: 14864

日付: 2023-02-16

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会