神保謙の発言 (財務金融委員会安全保障委員会連合審査会)

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○神保参考人 慶應義塾大学の神保でございます。
 本日は、貴重な機会にお招きいただきましたことを委員の皆様に深く御礼申し上げたいと思います。
 私自身は、安全保障、防衛問題の専門家として、また、本日は参考人として、防衛政策、軍事、財政、それぞれの専門の皆さんがいらっしゃいますので、私の方からは、今回の戦略三文書と、その防衛力の抜本的な強化の前提となっている考え方について申し上げまして、その後の議論に資する形で問題提起をさせていただければと思っております。
 本日お配りした資料に沿って進めていきたいと思います。
 まず、前提となる、日本を取り巻く安全保障環境について申し上げます。
 これまでの、安全保障政策の従来からあった前提というのは、アメリカの圧倒的な軍事的優位が西太平洋、アジア太平洋において確立していたということを前提に組み上げられてきたということだったと思います。
 今日の前提は、それが、特に中国のいわゆるA2AD、接近阻止、地域拒否環境が拡大することによって、アメリカの前方展開戦力及び戦力投射能力の優位性自体が自明とは言えない状況となってしまっているということに加えて、日本と中国との関係でいいますと、大体二〇〇五年ぐらいまでは日本の防衛力と中国の軍事費というのは大体同じぐらいの規模だったわけですけれども、それが今日であると四倍、五倍。防衛費の対GDP比一%のまま二〇三〇年代を迎えたとすると、恐らく実質の軍事費の差というのは一対九から一対十へと拡大する、そのぐらいの物すごいギャップの拡大というものが生じているという状況です。
 その中で、二〇一八年十二月の防衛計画の大綱では、初めて、もし自衛隊が航空、海上優勢が確保できない場合、こういう文言が加わったことに見られるように、様々な自衛隊・防衛省の戦力評価の中で、この優勢という概念が、海上及び航空面に関して極めて厳しい環境になっているということを前提として組み上げられた安全保障戦略であるというふうに考えております。
 その中で、今回の三文書では、必ずしも、これが何々戦略であるという戦略の名称自体は明示していないわけなんですけれども、専門家の立場からして、これは、いわゆる日本が採用した積極的な拒否戦略、アクティブディナイアルということが今回の鍵概念であるというふうに捉えております。
 これはどういう概念かというと、必ずしも、今回の防衛費の増強、実質、防衛費、GDPの二%ということを一つの目安としてこれから積み上げていくわけでございますけれども、仮にこの二%を達成したとしても、中国の軍事費にマッチするような規模が確保できるとは言えません。こちらの表にあるように、恐らく、二%を確保したとしても、二〇三〇年代前半の日本の防衛力は恐らく中国の軍事費の五分の一程度であろうというふうに考えているわけでございます。
 したがって、日本の防衛力が確保すべき能力というのは、必ずしも、中国の軍事力と日本の防衛力を規模的に、量的にマッチさせて、そこで均衡を保つことによって抑止力を発揮するというよりは、そうではなくて、中国が仮に力による現状変更を試みようとしたとしても、それがペイしないような形で、つまり、彼らのいわゆる作戦遂行能力自体を自衛隊の能力がどれだけ拒否できるかということによって組み立てられた拒否的抑止の概念、これによって積み上げられたのが今日の三文書が目指している防衛力の姿だというのが私の解釈ということでございます。
 それに従って、二番以降、どのような形で装備計画等を作り上げていったのかということを申し上げていきたいと思います。
 二ページ目以降を御覧いただきますと、陸海空それぞれの形で様々なこれから装備、能力を培っていくということなんですけれども、防衛省が示しました主たる七分野というのは大変重要であるということでございまして、基本的な考え方は、向こう五年間は、現有の装備をより充実化させていって、それがいわゆるサステーナビリティーとか強靱性といったものに資する形で強化をしていく。特に、武器弾薬、そしてその貯蔵施設、そしてそれをいわゆる機動戦力としてモービライズしていくための装備というものが向こう五年間大変重要だということが、七分野の以下の最後の二つですね、示されたところで強調されていた内容でございます。
 それと同時並行的に目玉として挙げられているのがいわゆる反撃能力を含む話ですけれども、先進的なスタンドオフ防衛という体制を様々なプラットフォームによって整えていくということと、そして統合ミサイル防空、総合的なミサイル防衛システムというものを整備していくということが大事な要素となっているということでございます。
 重要なことはタイムラインでございまして、向こう五年間と、そしてそれから二〇三二年までに、我々の自衛隊がどのような形で、安全保障環境にマッチした形で、積極的な拒否戦略を充当するために必要な装備を整えていけるかということがこれからの装備計画の中では大変重要だということを申し上げたいと思います。
 この統合ミサイル防空に関しましては、当然、今、北朝鮮、中国は様々なミサイルを強化しているわけですけれども、そのミサイルの種類、撃ち方、その運用の仕方というものが大変多様化しているわけでございます。
 そういったことから考えますと、従来の二層構え、いわゆるPAC3とSM3による低高度と中高高度の防衛に加えて、例えば、巡航ミサイル、極超音速、変則軌道のミサイル等に対応できるようなシステムとして二〇二〇年代後半を迎えていくということが今まで以上に大変重要な投資ということになると思います。
 スタンドオフ防衛能力と反撃能力に関しましては、様々な御意見がこの委員会の中でもあるということを承知しております。こちらも、細かくいくと、対北朝鮮に関しましては、当然、日本を射程に収めるミサイルの脅威をどれだけ局限するかということを、ミサイル防衛の強化を通じて強化すると同時に、その反撃能力を装備することによって、飛来するミサイルの総数を超えたり、あるいはその被害を局限したり、場合によっては北朝鮮のミサイル発射という作戦機能自体を妨害していく、こういったことに使っていくことが大変重要だということに考えているのに加えて、当然、東シナ海、非常に広域な海や、そして中国本土を含めた陸地、いわゆる固定目標に対しても我々が攻撃をできる能力を持つことによって、自衛隊自身の攻撃の縦深性、縦深性というのは広く深いという意味ですけれども、それを上げることによって我が国の防衛自体の体制というものを手厚くしていくと同時に、当然、これから考えるべきは、より高強度の、台湾海峡危機等を踏まえた様々なクライシスのシナリオに対しても、日本の装備というものが、自らの防衛と、そして同盟の協力という中で、その威力を発揮していくということのために装備計画を整えていくということが大変重要であろうというふうに考えているわけでございます。
 三番目は、先端技術の軍事分野での応用と研究開発ということでございますけれども、少子高齢化がこれからも進む日本の中で、日本の自衛隊の人員の充足率を整えていく、これからも大変難しい時代を迎えていくということになると思います。
 その中で、できるだけ、先進的なテクノロジーと、そして無人化技術、人工知能等のプロセッシングや識別機能、そしてそれをどういうふうに意思決定の中に応用していくのかという仕組みを整えることによって自衛隊の機能というものを飛躍的に伸ばしていくための研究開発、科学技術分野への投資というものを積極化していく必要があるというのが三番目でございます。
 四番目は日米同盟でございますけれども、この日米同盟が直面する最大の課題は、冒頭にも申し上げましたように、中国の軍事力の近代化による接近阻止、地域拒否の環境の拡大であるということに考えております。
 その中で、日米同盟の基本的な方針というのは、このA2AD環境の下であったとしても、アメリカ軍が前方展開を確保し、その戦域内、つまり、第一列島線と中国がみなすような地域の中で戦えるような作戦をしっかりと支援していく体制というものが重要だということになると思います。
 この中で、アメリカの海空軍の最新鋭の攻撃アセットが展開できるようになる状況というものは重要ですし、また、先ほど申し上げましたような、先進的なスタンドオフ攻撃を可能にするような追加アセットの配備というものを通してアメリカ軍が活動できる領域というものを確保するということが大変重要だということになっております。
 時間も限られておりますので、最後の六番と七番を申し上げて冒頭の発言を終わりにしたいというふうに思います。
 六番は、防衛技術基盤の拡充、国際共同研究、装備移転ということでございますけれども、この五年の期間を使いまして、日本の防衛技術基盤の強化、技術イノベーションを加速する仕組みというものを、是非構築を強化していただきたいというふうに考えております。とりわけ、無人化システム、ロボティクス、ナノテクノロジー、そして人工知能の領域、これが軍事分野で、各国で様々な形で実装化される中で、日本にとって戦略的に重要な分野で技術的な優位性を確保するということが大変重要ということでございます。
 そのために、防衛装備庁の体制強化、あるいは、国内企業や大学との連携強化や国際共同研究体制の強化を通じて、未来における戦い方の在り方ということについての革新的な改革というものを是非御支援いただきたいというふうに考えているところでございます。
 最後に、防衛力の抜本的な強化に向けた財政基盤、まさにこの委員会が対象としている議題ということでございますけれども、ポツの二番目、戦略性に基づいた防衛力の整備という観点から、実効的な防衛力の確保、七分野への重点的な配分をするとともに、日本の防衛構想に適合することを前提として、今後の技術革新のタイムラインに沿った、様々な技術というのはアベーラビリティーのタイムラインが異なるわけでございますから、これに沿った研究開発への投資と、防衛産業と技術基盤の確保ということが、予算の傾斜配分ということで大変重要だということが一点目でございます。
 最後に、財政的基盤の整備と最適化への努力ということですけれども、四十三兆円という向こう五年間の予算の確保の中でもということなんですが、戦略的な防衛力の整備のための自衛隊の組織改編、戦力組成の最適化、装備体系の最適化、特にレガシー装備体系を見直し、優先順位を明確化し、様々な事業に関する見直しということを並行的に進め、仕様の共通化、最適化、調達の効率化、長期契約の活用や開発費の高騰リスクの低減、そして安全保障上の優先度を踏まえた研究開発の重点化、研究開発のプロセスの最適化などを通じた努力を通じまして、財政の基盤整備というものを効率的に進めていくということがこれからの防衛政策にとって喫緊の課題であるということを申し上げたいと思います。
 私からの問題提起とさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 神保謙

speaker_id: 12334

日付: 2023-04-28

院: 衆議院

会議名: 財務金融委員会安全保障委員会連合審査会