高見澤將林の発言 (財務金融委員会安全保障委員会連合審査会)
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○高見澤参考人 御紹介いただきました高見澤です。
今日は、貴重な機会をありがとうございます。
昨年十二月に策定された戦略三文書に示されております国際情勢認識、政策課題、事業内容、いずれを取りましても、賛否はありますけれども、画期的なものであるというふうに考えております。
私は、今回の戦略というのは、国際社会の多面的な構造変化に対応して、我が国として分野横断的で実践的対応力を緊急的に整備する、それとともに、機能的、限定的な抑止力の構築を図り、持続的で不可分一体の安全保障力の実現を目指すものだというふうに言えるかと思います。
これまで、大綱の見直しなどにおいては、その都度、国際情勢認識と構想のアップデートが図られてきたわけです。残念ながら、それを裏づける予算配分には大きな制約がありました。
お配りしてあります資料一を御覧いただきますと、ここに大きな谷ができているわけでございまして、仮に、一番左の年から四半世紀、二十五年間、年率一%でもいいから継続的な伸びが確保されていたという場合には、令和四年の防衛予算は六・三兆円を超えているということになるわけでして、この累積効果、いわば負の累積効果というのが非常に大きい。もしそれが順調に伸びていれば、累積のお金も含めますと、状況は大きく改善されていたのではないかという感じがしております。
そういうこともあって、今回、大幅な資源増加と、しかも、安全保障と経済財政の関係について明確な位置づけがなされたということは、非常に意義深いものではないかと考えております。
これによりまして維持整備費ですとか施設整備などに光が当たったということは、資料二を御覧いただきますと、非常に維持費が高騰化している、しかも人員は非常に厳しいという中で、即応態勢や装備品の可動率の低下という自衛隊の現場が抱えていた問題、それが少しでもその苦悩の解消につながるものではないかというふうに考えております。
新たな戦略におきましては、資料三に示すとおり、我が国の安全保障を支えるために強化すべき国内基盤というものが掲げられておりまして、この中に、経済財政基盤の強化が最初に来ております。安全保障と経済成長の好循環、有事の際の持続的な対応能力の確保、有事の際の財政需要の大幅な拡大への対応などの観点から、経済、金融、財政の基盤の強化に不断に取り組む重要性が指摘されました。また、それが防衛力の抜本的強化を含む安全保障政策を継続的かつ安定的に実施していく前提でもある、こういう認識が示されております。この点は今後の対応を考える上で重要な視点であると思いますし、まさにそのために本委員会で法案審議が行われているものと認識をしております。
岸田総理が、「スピード感を持って防衛力を抜本的に強化していきます。」と述べられたのは、実はウクライナ侵攻前の令和三年の十二月の所信表明演説だったわけです。つまり、ロシアのウクライナ侵攻の前に起きたことなのに抜本的な強化ということを言っていたわけですけれども、この一年以上にわたるウクライナ侵攻の、戦争の展開というのは、我が国としても、幅広い分野における総合的で持続的な対応能力を確保することがいかに重要かということを再認識させるものでありました。
この背景には、やはりウクライナ戦争以前から生じていた国際社会の多面的な構造変化があると思います。その点については資料四を御覧いただきますとよく分かるわけですけれども、私は、この中でも、グローバリゼーションと相互依存のみによって国際社会の平和と安定は保障されないことが改めて明らかになったということ、さらには、インド太平洋地域、とりわけ東アジアにおいて、戦後の安定した国際秩序の根幹を揺るがしかねない深刻な事態が発生する可能性が排除されない、この二つの認識が重要だというふうに考えております。
資料五と六は、少し細かい資料になりますけれども、これまで累次策定されてきた防衛大綱の国際情勢認識などの変遷を示したものです。青い部分は相互依存関係による国際関係の安定化ということでございますけれども、三〇大綱をやや別にすれば、この点が強調されてきたというふうに思います。
そしてまた、防衛力についても、深刻な事態を想定した必要な対応能力を確保する、そういう視点より、その時点の現有防衛力を基準に調整を行うという手法が取られてきたということが否めないと思います。長い間我が国が前提としてきた戦略環境、こうした戦略環境にこれまで見られなかった質的変化が生じた結果、新たな対応が迫られている。それが防衛力のプランニングの面でも財政面でも迫られているということではないかと思います。
したがいまして、今回の特別措置法案というものは、こうした国際情勢の変化を踏まえて、その悪化を防ぎ、これを反転させるという観点から評価すべきものだと考えております。
また、新たな防衛力整備計画の検討に当たっては、資料七にあるような形で、相手の能力と新しい戦い方を踏まえ、想定される各種事態への対応について、能力評価等を通じた分析により将来の防衛力の在り方の検討が行われたわけでございます。そして、その上で、防衛力の達成目標について、編成定数とか装備規模という従来の手法にとどまらず、それに先立って主要分野ごとの能力目標が示されております。しかも、五年後と十年後という二段階の目標を具体的に設定したということであります。ですから、今回の三文書において、このように諸計画の体系が明確になったということも画期的なことではないかと考えております。
いずれにいたしましても、こうした事業の具体化には従来の戦略の実施過程とは全く異なる発想と格別の努力が求められていると考えます。検討を先送りせずに結論を出すスピード感、それから、事業の見える化など透明性のあるプロセスの確立が不可欠だと思います。また、これを実現するためには、財源やそれに加えて人材の確保が大きな課題であると思います。これらの措置の実施に当たっても、新しいアプローチに見合うような、従来にない機動的な手法を積極的に取り入れることが重要であると考えています。
今回の戦略三文書には、こうした観点が随所に含まれております。非常にすばらしい点もあると思います。しかし、私は、計画の策定よりもその具体化というのがいかに困難かということを非常に強く感じておりますので、資料八にありますけれども、こうした戦略を実現するための方策について、繰り返しになりますけれども、この場で私が重要と考える点を述べさせていただきたいと思います。
その項目は五つありますけれども、ここでは、官民協力の体制の確立のためのソフトウェアの強化、さらには、変化に応じて柔軟に計画、事業を見直すメカニズムの確立、そして、関係府省の各種事業の見える化、生きたデータベース化、さらには、計画の戦略的、機動的実施、検証のためのメカニズムの構築ということで書いております。
その中では、まず何より、政府による積極的な情報発信、あるいは関係者間における機微なものを含めた情報共有を可能にする制度の導入、さらには国民の安全保障意識の形成、定期的な訓練やセミナーなどを通じたオール・ジャパンとしての能力の検証などが必要だというふうに思っております。
また、年度予算制度の制約の克服や安全保障環境への加速化という観点からは、柔軟に計画、事業を見直し、機動的かつスピーディーに計画を実施していくということが非常に重要であると思います。そのためには、研究開発における進行段階での目標水準の引上げ、あるいはリスクが高くとも先端的な内容を目指す研究に対する支援の拡大、あるいは事業の進捗の加速化に対するインセンティブ規定の活用、集中的整備のための予算の柔軟配分、さらには機動的な資金の活用や会計手続などの簡素化であります。
こうしたことは安保委員会でも審議された法案でかなりの実現はしておりますけれども、更に加速化させていく必要があるのではないかというふうに思っております。
最後になりますけれども、新たな国家安全保障戦略の最後に「結語」として、「我々は今、希望の世界か、困難と不信の世界のいずれかに進む分岐点にあり、そのどちらを選び取るかは、今後の我が国を含む国際社会の行動にかかっている。」、こういう「結語」がございます。
私自身、新たな戦略のこの言葉には非常に共感するものでありまして、まさに、先を見通すための情報の統合力、変化に対する感度豊かな戦略的機敏さ、そして、計画を実行、検証、改善し続ける粘り強さというものが必要だというふうに思っております。
国会及び政府におかれましては、官民を挙げて幅広い人材がこうした認識の下に、それぞれの持ち場で積極的に対応できるような環境を構築していただきたい。そのために、複数の選択肢と結論に至る思考過程、さらにはその判断に至った考慮要素を明示され、客観的なデータと関連情報を十分に発出され、検証を踏まえた政策の機動的な転換と迅速な実施に努めていただくようお願いするところでございます。
今日は、御清聴ありがとうございました。(拍手)