杉原浩司の発言 (外交防衛委員会)
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○参考人(杉原浩司君) ありがとうございます。武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表の杉原浩司です。貴重な機会をありがとうございます。
陳述にタイトルを付けてみました。貧国強兵の大軍拡を実行し、日本を死の商人国家に堕落させる軍需産業強化法案を許さない、参議院は良識の府の矜持を持って徹底審議を行え。
さて、私は、かれこれ三十年ほど、反戦、平和、軍縮の市民運動を続けてきました。状況は著しく悪くなるばかりですが、市民社会の一つの地声をこうやって立法府に直接届かせ、責任ある国会議員の皆さんと事前通告なしの真剣勝負ができるというのは、かけがえのないことだと思っています。さきのお二人とは異次元の陳述を気合を入れて行いたいと思います。
陳述の本編に入る前に、どうしても確認しておかなければならない点があります。本法案は、衆議院で、参考人質疑を除いた実質審議は僅か五時間にすぎません。余りにも短いです。そして、この参議院においても、本日が最初の審議であるにもかかわらず、いきなり参考人質疑から始まり、聞くところによれば、あさって六月一日にも、五時間の質疑後に即委員会採決を行うのではないかと言われています。これで審議を尽くしたと言えるのでしょうか。二十一人の委員がおられますが、一人三十分の短い質疑だとしても十時間以上は必要です。衆議院が五時間だから参議院もせいぜい同じ時間という慣習にのっとっているなら、まさしく形式主義の極みです。参議院は、本来、良識の府ないしは再考の府と呼ばれてきました。衆議院が僅か五時間なら、参議院はその二倍、三倍掛けても当然ではないでしょうか。
衆議院の議事録を読みましたが、軍需工場の国有化など、法案が抱える数々の問題点は全くと言っていいほど解決されていませんし、議論の俎上にすら上っていないものもあります。問題点に即して、一度ならず二度、三度と参考人質疑も行ってはいかがでしょうか。武器輸出問題をフォローされてきた憲法学者、軍事企業の元労働者、国際協力NGOの方など、私から推薦してもいいです。中央公聴会、地方公聴会も開くべきでしょう。
なぜこれほど重大な法案をこれほど拙速に通そうとして恥じないのか、阿達委員長や与野党理事、そして委員の皆さんの見識を疑います。今ならまだ間に合うでしょう。阿達委員長や与野党理事の皆さん、衆議院のような拙速な採決はしない、もっと時間を掛けて審議を尽くすと、ここで確約してください。参議院の矜持を見せてください。私は、参考人としてここに座っていますが、結論ありきの出来レースの刺身のつまになることは全力で拒否します。いかがでしょうか。
まあここでは結論が出るわけではないんですけれども、ここで結論が出せないなら、どうか、今後開かれる理事会で、参考人の強い意見を真摯に受け止め、想定していた拙速な審議日程を抜本的に見直していただくよう、改めて強く要望します。そして、議論の結果を私に必ず知らせてほしいと思います。
大事な前置きが長くなりましたが、急いで本論に入ります。
私たちNAJATは、二〇一五年十二月に結成した当初は武器輸出反対ネットワークという名称で、主に日本の武器輸出に反対する活動をしていました。しかし、その後、米国などから爆買いする武器が専守防衛を踏み破る敵基地攻撃兵器として運用されるだろうことに強い危機感を覚え、武器輸入にも反対しようと、名称を取引に変えました。それ以降、やるべき仕事は増えるばかりです。
今回提案されている軍需産業強化法案は、五年で四十三兆円、武器ローンも含めると六十兆円を超える異様な大軍拡を推進するために不可欠のものとして位置付けられていると思います。ですから、衆議院で早々に法案賛成を決めた野党第一党の立憲民主党が言うような、綻びを見せる防衛生産基盤の整備という一般論のレベルにとどまるものではありません。立憲民主党の安易な賛成によって、衆議院安全保障委員会では、三十人の委員中、反対は日本共産党の赤嶺政賢議員だけという、まるで大政翼賛会をほうふつとさせる惨状が出現しました。立憲の伊藤俊輔理事が読み上げた十八項目の附帯決議は、全てが法を促進するものばかりでした。軍拡財源確保法案と軍需産業強化法案は、言うまでもなく一体であり、前者には反対だが後者に賛成というのはあり得ないことです。立憲民主党は、今からでも、大軍拡に加担する賛成方針を見直すべきです。
限られた時間の中で、私が反対してきた武器輸出に関する側面を中心に述べたいと思います。
衆議院の議事録を読んでまず思ったのは、武器輸出が必然的にまとうことになる血の臭いがほとんど感じ取れないことです。プーチン容疑者によるウクライナへの侵略戦争において、いかに武器が残虐に命を奪い、町や村を廃墟に変えているかを目の当たりにしているにもかかわらずです。そもそも、武器を装備品と言い換えることで、巧妙に血の臭いを消し去ろうとしています。
語られているのは、例えばコストの論理です。販売先が限られているから価格が高くなり、競争力が付かない、だから輸出しようと。あるいは、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出のためであると。自分たちにとって都合のいい環境をつくるために武器を輸出しなければならないとは、平和国家も地に落ちたものです。
一方で、武器輸出は、国際法に違反する侵略を受けている国への支援のための重要な政策的手段なのだとしています。しかし、これは極めて欺瞞的な物言いです。なぜなら、日本は、二〇一五年からサウジアラビアとともに中東の最貧国であるイエメンの内戦に軍事介入して残虐な無差別空爆を繰り返してきたUAE、アラブ首長国連邦に、川崎重工製の軍用輸送機C2を輸出しようと企ててきたからです。侵略を受けている国ではなく、侵略に匹敵する戦争犯罪を行っている紛争加害国に対して、欧米の名立たる軍事企業をまねて、武器を輸出しようとしてきたのです。直ちに非道な企てを中止すべきです。
また、現在、殺傷能力のある武器輸出に道を開くのかを最大の焦点にしながら、自民、公明の与党による秘密協議が行われています。しかし、既に既成事実を先行させる形で、殺傷能力のある武器の輸出が企てられています。インドネシアに三菱重工製の最新鋭の多機能護衛艦30FFMの輸出がもくろまれています。情報が隠されているため、進捗状況は闇の中です。これは紛れもない殺傷能力の高い武器の輸出案件ですが、輸出では防衛装備移転三原則の運用指針に抵触するので、共同生産の形式でその壁を擦り抜けようとしているとの報道がありました。極めてずるい手法です。また、その失敗で有名な二〇一六年のオーストラリアへの潜水艦輸出も、共同開発の形で突破しようとしたものでした。ですから、今行われているのは後付けの議論にすぎないのです。
しかし、それでも、公然と殺傷能力のある武器輸出に踏み込むことは、大きな政治的意味を持つでしょう。要するに、それは、平和国家から死の商人国家への堕落です。本法案に仕組まれた武器輸出経費の一部への税金投入は、その危険な道を加速させるものにほかなりません。
時間がないので、審議を通して見えた問題点の一部を指摘します。
まず、武器輸出経費を税金で負担する補助金として四百億円が積まれていますが、その根拠を政府は、日本が諸外国から引き合いを受けている装備移転の具体的案件の積み上げとしています。しかし、その具体的内容は、相手があるからとかたくなに回答を拒否し続けています。これでは、四百億円もの予算が適正かどうかを検証することができません。少なくとも野党は、この根拠が公表されない限り採決に応じるべきではありません。
次に、装備品等秘密を指定して企業の従業員に法律上の守秘義務を課し、違反した場合、これは情報漏えいのみならず、企て、教唆、幇助に対しても刑事罰を科すことについてです。
衆議院での赤嶺政賢議員の質疑により、従業員が秘密を漏えいして問題になったのは三十年近く前の僅か一件にすぎないことが明らかになりました。要するに、立法事実が存在しないのです。そうである以上、少なくともこの企業版秘密保護法案ともいうべき部分を全面削除しない限り、法案の成立はあり得ません。
最後に、この法案を成立させて武器輸出を促進することは、政府・与党などの意に反してレピュテーションリスク、評判リスクを高め、国内企業の撤退をむしろ加速しかねないということを警告しておきたいと思います。なぜなら、殺傷能力のある武器を輸出し、その武器によって他国の人々が殺傷されることが現実になれば、当該企業は正真正銘の死の商人となり、日本は死の商人国家の仲間入りを果たしたことが世界にさらされます。
日本の消費者を侮るべきではありません。人々は、的確な消費行動によって戦争犯罪に加担する企業に審判を下すでしょう。この間の世論調査でも、ウクライナへの武器提供に反対、殺傷能力のある武器輸出に反対という声が圧倒的多数でした。どっこい平和主義は主権者の中に息づいているのです。まだ間に合います。その確かな声に真摯に耳を傾け、この悪法を一旦廃案にしてください。少なくとも十分な審議を尽くし、継続審議にしてください。
「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と宣言する憲法前文と、戦争放棄の憲法九条を持つ日本は、言わば良心的軍事拒否国家として軍事協力以外のあらゆる方策を徹底して追求し、その役割を果たすべきだと思います。
戦争を徹底して回避し、軍縮や緊張緩和を推進することはもちろん、難民の受入れを大幅に拡大し、気候危機や貧困など命に関わる問題の抜本的な解決に尽力すべきです。ウクライナ侵略戦争に即して言えば、ロシアの侵略の資金源となっているサハリンの天然ガスなどの輸入は当然ながらストップすべきです。そして、難民への死刑執行宣言に等しい入管法の改悪や石炭火力、原発の維持などもってのほかです。
今ならまだメード・イン・ジャパンの武器が他国の人々を殺傷する未来を防ぐことは可能です。日本に戦争を欲する軍産学複合体をつくらせるわけにはいきません。コストの論理が平和の倫理を駆逐することを許してはいけません。そのためには、この死の商人育成法案を葬ることが必要です。参議院がそのためにこそ役割を果たすことを求めて、私の意見陳述を終わります。
とりわけ、法案に賛成する会派の皆さんからの質問を歓迎したいと思います。
ありがとうございました。