山地憲治の発言 (経済産業委員会)
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○参考人(山地憲治君) 御紹介いただきました地球環境産業技術研究機構、RITEの理事長を務めております山地でございます。
私は、今はほとんど卒業しましたが、二十年以上にわたって総合資源エネルギー調査会の様々な審議会に関与させていただきました。その経験も踏まえて、略称ですけど、GX脱炭素電源法、この法案について、お配りしております意見メモ、本当一枚物の簡単なメモですが、それに沿って参考人として発言させていただきます。
まず、本法案の位置付けについてですが、本法案は、GX実現に向けた基本方針に基づいておりまして、既に成立した、これも略称ですけど、GX推進法とともにGX実現のために不可欠な法案と考えております。
重要なことは、我が国のエネルギー政策の基本であるSプラス3Eのバランスを回復することです。最近のエネルギー政策は、二〇五〇年カーボンニュートラル実現という野心的な目標が掲げられたことで気候変動対策に偏っていたと思います。そのような状況の中で、ロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー安全保障やエネルギー価格の安定の重要性がハイライトされました。つまり、エネルギー安定供給確保を前提としたGXに向けた取組が必要です。そのためには、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限に活用する必要があり、本法案はその政策を明確にしたものと考えます。
本法案は大きく、再生可能エネルギーの導入支援と原子力の活用、この二つで構成されていると思います。
まず、再生可能エネルギーについては、規律ある再生可能エネルギーの主力電源化が必要ですが、これまでの政策について、二〇一二年から施行されているFIT、固定価格買取り制度の導入以降を振り返ってみたいと思います。
劇薬と呼ばれたFITには功罪があります。劇薬と言われたのは、効果も大きいが副作用も大きいと懸念されていたためです。FITの導入によって、特に太陽光発電が急速に拡大し、今では八千万キロワット以上、以前の、第五次のエネルギー基本計画の二〇三〇年目標はもう既に上回っています。また、太陽光発電の発電量は水力の発電量を超えました。
一方で、FIT賦課金という名の国民負担が二〇一七年度に年間で二兆円を超えまして、昨年度まででの累積で十七兆円という巨大なものに膨れ上がっております。しかも、残念なことに、国民が負担したお金の多くは国内で回らず、太陽光パネルのほとんどは中国からの輸入という状況でございます。
ここ十年ほどで太陽光や風力など自然条件によって出力が変動する電源が急速に増大して、へき地とか洋上など需要地から遠く離れた位置に設置されていたために、電力需給バランスの維持のために、発電コストに加えて、調整力の調達や電力系統整備など、系統の統合費用と呼ばれる発電に加えた外部コストが発生しています。また、FITによって投資リスクが大幅に低下しまして、リスクの低い小規模太陽光案件が乱立して、設備認定の権利を転売するなどの行為も多発しております。これに伴い、景観の悪化や土壌流出など、地域社会とのトラブルとか不十分な管理による災害なども発生しております。
このような状況に対して、二〇一七年から運用を始めた改正FIT法、それから二〇二〇年に成立して順次運用が始まっているエネルギー強靱化法による対応が行われました。
改正FIT法では、健全な再エネ事業促進に向けて、それまで設備認定ということでやっていたんですけど、事業認定ということに変えまして、認定時期の変更を行って運転開始期限を設定しました。これは太陽光パネルの値下がりを待って建設や稼働を遅らせる未稼働案件への対応です。また、FIT対象事業者に設備管理や情報開示などを義務付けました。そのほか入札制度の導入等も行われました。
エネルギー強靱化法、これは束ね法案ですけど、その中で再エネ特措法の改正、電事法の改正があるんですが、ここでは市場価格に一定のプレミアムを上乗せする市場連動型のFIPという制度を導入を定めました。フィード・イン・プレミアムと申します。また、再エネのポテンシャルを生かすため、送電網の増強費用の一部を賦課金方式で支える制度、それから太陽光パネルなど設備の廃棄を適切に行わさせるために廃棄費用の外部積立てを原則義務化としました。また、認定後も一定期間内に運転開始しない場合には認定を失効させるということが可能になりました。
このような対応を踏まえた上で、今回のGX脱炭素電源法が準備されたわけです。今回の法案では、地域と共生した再エネの導入拡大支援として大きく三項目設定されています。既に説明されていると思いますけれども、系統整備のための制度、それから再エネの追加投資の促進、それと事業規律の強化です。いずれも今までの対応を更に充実させるものです。系統整備では、マスタープランとも呼ばれる整備計画の認定、それから工事に着手した段階からの交付金の交付などがあります。
また、追加投資促進では、追加投資部分に既設部分と区分した新たな買取り価格を適用する制度が導入されます。従来は、既設部分も含めて新たな買取り価格を適用していたわけですが、買取り価格は時間とともに低下されますので、既設部分に対しても低い買取り価格が適用されるということで追加投資のインセンティブがなかったんですけれども、インセンティブを付けるようにした。
それから、事業規律強化では、法令等への違反をした事業者に対してFIT・FIP交付金の一時留保、それから違反が解消されなかった場合は交付金の返還措置、それから認定要件として周辺地域への事前の周知が追加されております。
今回の改正法案、審議会での議論も踏まえて、今までの対応をより充実させて実効性のあるものにするということで、規律ある再エネの主力電源化に向けて高い意義を持つと考えております。
次に、原子力の活用についてですけれども、私自身は関連する審議会での議論には関わっておりませんので、断片的になりますが私見を述べさせていただきたいと思います。
今回の法案は、原子力活用の意義の確認と活用のための制度整備に向けたものと受け止めております。
まず、二〇一一年三月、福島原子力事故後、原子力政策は極めて曖昧な状態が続いていたと思います。最新の第六次エネルギー基本計画でも、二〇五〇年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応というところにおいてこう書かれている。原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していくと、こう記述されているんですけど、その上で、安全を最優先し、経済的に自立し脱炭素化した再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減するとも記されているわけです。
また、二〇五〇年を見据えた二〇三〇年に向けた政策対応についても、原子力は長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源であると記してはおりますが、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進めると記されています。
結局のところ、原子力の価値は認めつつも、安全性が確認された原子力発電所の再稼働を進めると書かれているだけで、原子力の未来が開かれていないと感じておりました。
これに対して、今年二月に示されたGX実現に向けた基本方針では、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用するとしておりまして、その上で、地元の理解を得た原子炉の再稼働を進めるに加えて、次世代革新炉の開発、建設に取り組むとか敷地内での次世代革新炉への建て替えに言及しておりまして、運転期間についても、原子力規制委員会による厳格な安全審査を前提に、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めるとしております。
今回の法案は、このGX実現に向けた基本方針に沿うもので、冒頭にも述べましたが、Sプラス3Eのバランスの回復に向け意義あるものと考えております。
ただ、運転期間について、原則四十年を維持していることには科学的観点から違和感を持っております。現行の原子炉等規制法の運転期間制限と、これを電事法に移管して柔軟性を持たせたこと自体は改善だと考えておりますけれども、そもそも、現行の炉規法における運転期間制限は政治的に決められたことであって科学的根拠はないと私は考えておりますので、そのことは指摘しておきたいと思います。
それから、ロシアのウクライナ侵攻以降、世界的な原子力復活の動きがありますが、この動向に沿って我が国でもというのではなくて、そもそも、エネルギー政策の基本方針であるSプラス3Eのバランスある実現のために我が国では原子力活用が必要だという認識を持っていただきたいと思います。
最後に、今回の法案に廃炉拠出金制度が含まれておりますが、電力自由化の中で原子力活用を進めるためには、この制度も必要だと思っております。原子力の電源としての経済的特徴は、投資が巨大、つまり固定費が高くて燃料費などの運転費が安いということです。また、原子力への懸念を持つ方が多くて、巨額の投資には大きなリスクが伴います。したがって、新設投資の回収リスクを下げる対応が必要です。今年から実行される長期脱炭素電源オークションで対応できるかどうか、ここについては見極めが必要と考えています。また、原子力には、運転後あるいは運転終了後も使用済核燃料とか廃炉とか、負のバックエンド資産が残ります。これに対応しなきゃいけない。今回の法案における廃炉拠出金は、このような負の残存資産に対応するものとして適切と考えております。
私からは以上でございます。