浅田均の発言 (憲法審査会)

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○浅田均君 参議院の緊急集会について意見を述べます。
 参議院の緊急集会は、衆議院が解散されたとき、国会の機能をどう維持するのかという議論です。これは、私たちが言う緊急事態のごく一部の話でしかありません。司法機能も行政機能も立法機能も喪失した事態さえ想定しておく必要があると思いますが、私たちは現実的な緊急事態条項を条文化しました。しかし同時に、関連する現行憲法の問題点も解決する必要があります。
 以下、問題点を指摘します。
 令和三年五月十九日の当審査会で、私は、現行憲法の成立の過程と憲法条文の関連について、特に九条の成立過程について発言しました。今回は、まず九条に関することで、条文以外で私が問題であると思う点を三点指摘したいと思います。
 一点目は、主権、国家主権に関してです。
 現行憲法は、前文で、ここに主権が国民に存することを宣言し、ソブリン・パワー・リザイズ・ウイズ・ザ・ピープルと、主権在民について述べていますが、国家主権、ソブリン・パワー・オア・ソブリンティーそのものについては何も書かれていません。これは、国連憲章二条一項にある加盟国の主権平等の原則、ザ・プリンシプル・オブ・ジ・イコーリティー・オブ・オール・イッツ・メンバーズと同じだと考えられますが、世界中の国が国家主権を持っているということを述べているだけで、肝腎の主権、国家主権が何であるかは何も記載がありません。
 ウェストファリア条約によって初めて成立した主権国家体制、つまり、国家より上位の権力を認めず、ここでは国連等の国際機関は除外しておきます、国家間が対等な立場に置かれることを前提とした国家間関係は今も生きているということになります。この主権国家は、一、国境により他国と区別された領土を持つ、二、領土内統治については排他的権利を持つ、三、他国とは対等ということであり、だからロシアのウクライナ侵略は認められないということになります。
 二点目は、独立という言葉です。
 国家の独立があるから国家主権が成立します。主権があり、他国と対等だから自由があります。ところが、現行憲法にはこの独立という言葉がありません。他方、自衛隊法では、「自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、」、自衛隊法三条、とあり、我が国の独立を守るという目的が明記されています。ここで、この独立と平和は言わば対立概念であり、どうバランスさせていくかは国家にとって重要問題です。
 そこで、考えなければならないのが国際法と憲法の関係です。これが三点目ですが、前回議論の延長になります。
 憲法九十八条二項は、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」とありますが、現行憲法の起草時に芦田小委員長と鈴木義男委員らの努力により成文化されたと言われていますが、このとき彼らが国連憲章等の国際法をどれだけ理解していたのか不明です。
 一九五一年九月、日本はサンフランシスコ講和条約を結び、独立を回復しますが、同時に、吉田茂内閣総理大臣とディーン・アチソン米国務長官との間で交換された公文には、サンフランシスコ講和条約の効力発生と同時に、日本国は、国際連合が国際連合憲章に従って取るいかなる行動についても同憲章第二条に掲げる義務を引き受けることになると書かれてあります。
 この交換公文が要求しているのは、日本が国連に加盟する五年前から国連に加盟したのと同様の義務を果たさなければならないということであり、現に、この公文を根拠に一九五四年二月に日本国における国連地位協定が日本と朝鮮国連軍参加九か国との間で締結され、現在に至っています。つまり、日本は、国連に加盟する前から国連の集団安全保障体制に組み込まれ、国連憲章に従って集団安全保障上の義務を果たしていたのです。
 集団安全保障の話をしましたが、緊急事態が要求しているのは、カール・シュミットが言う例外状態において誰が何をどのように守るべきかの議論です。電磁パルス攻撃、サイバーテロから隕石の衝突まで、例外状態リスクはカール・シュミットの時代とは比較にならないほど大きくなっています。いかにして例外状態を法秩序につなぎ止めることができるのかという議論が不可欠です。
 以上で終わります。

発言情報

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発言者: 浅田均

speaker_id: 29554

日付: 2023-04-12

院: 参議院

会議名: 憲法審査会