井上浩之の発言 (憲法審査会)
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○参考人(井上浩之君) 高知県の副知事の井上と申します。どうかよろしくお願いいたします。
本日は、浜田高知県知事からコメントを預かってまいりましたので、私の方から大きく四点お話をさせていただきます。お話が重複する部分もありますけれども、御了承いただければと思っております。
まず一点目といたしまして、参議院の徳島県・高知県選挙区の現状についてお話をしたいと思います。
両県とも人口減少が進んでおりまして、合区導入前である平成二十五年の参院選から直近の選挙であります令和四年の参院選までの間に、有権者数は約六・六万人、率にいたしまして五・一%減少しているという状況にございます。また、投票率につきましては、合区導入直前の平成二十五年は高知県で四九・八九%と、五割を若干割っているものの全国では中位の程度でございました。しかし、初の合区選挙となった平成二十八年の高知県の投票率は四五・五二%に下落し、徳島県、高知県両県とも過去最低の投票率となりました。高知県が全国ワースト一位、徳島県がワースト二位でございます。その後の本県の投票率は、令和元年は四六・三四%、全国三十四位、令和四年は四七・三六%、全国四十一位と、若干は改善しておりますけれども、依然として低迷している状況にございます。
さらに、先ほどもお話がございましたけれども、全体の投票に占めます無効投票の割合でございますが、全国はおおむね二・五から三%程度で推移をしておりますけれども、高知県、平成二十八年には六・一四%ということで、票にしますと一万七千五百票余りになりますが、それほど急増しておりまして、全国一位の無効投票率となっております。しかも、白票がその多くを占めているという状況でございます。これは、有力とされます候補者がいずれも徳島県を地盤とした方でございまして、有力候補者が出ていない本県におきましては、自らの県の代表を選べないといった失望感もございまして無効投票が増えたのではないかというふうに思われるところでございます。
次に、大きな二点目といたしまして、合区に対する県民の皆さんの受け止めと、その解消に向けた思いにつきましてお話をさせていただきます。
先ほど申し上げました投票率の低下や無効投票の増大は、一県一代表ではないという合区制度に起因する県民の関心の低下や失望といったものによるものと推察をしております。四十七都道府県のうち四県だけがこうした形で、言わば一人前ではないような扱いを受けているということに関しまして、県民の皆さんの気持ちが深く傷ついているものということの表れではないかと感じています。実際そうした声も直接お聞きをしているところでございます。
こうした関心の低下や失望による政治離れが投票率の低下につながり、その結果、政治への無関心が更に加速をし、投票率の低迷が続くといった負のスパイラルが生じているようにも思われるところです。
合区制度は、いわゆる一票の較差の是正策として導入されたものです。その背景には、地方の声の重要性よりも一票の価値の平等性が圧倒的に重視をされたという経緯があると考えております。
今後もこうした人口比例原則を徹底して貫く限り、更なる合区の拡大は不可避です。その結果、大都市部の議員ばかりが増加をいたしまして、都市部に先んじて人口減少や少子高齢化などの課題に直面をいたしました地方の議員はますます減少し、地方の声がより一層届かなくなるのではないかということを非常に懸念をしております。したがいまして、合区の固定化や拡大は断じて容認はできず、一刻も早い解消を求めたいというのが我々当事者であります県の一貫した思いでございます。
昨年七月の参院選前に高知県の地元メディアが行った世論調査では、合区を解消すべきとの意見が八割を超えておりました。我々はそうした県民の声に応えていかなければならないと考えております。
大きな三点目は、抜本的な議論の必要性についてでございます。
この問題に関する司法の見解には非常に厳しいものがあると認識をしております。令和四年の参院選における一票の較差訴訟の高裁判決では、都道府県を各選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はない、あるいは、合区の解消を強く望む意見や合区県における無効票の増加といった事情だけでは一票の較差が三倍を超えるような投票価値の不平等を是認することはできない、そうした較差が都市部における投票行動に与えてきた影響と併せて公平に検討しなければならないといった、我々が目指す合区の解消にとって非常に厳しい見解が示されております。
合区解消のための方法論といたしまして、憲法改正によらず、参議院独自の役割や機能を国会法に明確に位置付けた上で、それとセットで都道府県単位の議席配分を行うという考え方もあると承知をしております。しかしながら、今述べましたような司法の見解を踏まえますと、我々といたしましては、やはり憲法改正によって抜本的な対応を図ることが必要ではないかと考えております。
最後に、四点目として、合区の解消に向けた憲法議論の今後の方向性について若干の御意見を申し上げます。
我が国は二院制を採用しておりますが、憲法上、衆議院と対比した場合の参議院独自の性格、役割といった点がある種曖昧な状態になっているということがあるように思われます。その結果といたしまして、衆議院と参議院の機能や選挙制度が似てきております。加えて、憲法には地方自治に関する規定が余り手厚くないという課題もございます。
そうした点を考えますと、憲法改正を前提とした参議院の在り方については、例えば米国の上院なども念頭に置きまして、衆議院よりも人口比例の原則を緩和した形で位置付けることが妥当ではないかと思っております。衆議院は人口比例の原則により全国民の多数の民意を反映させる、一方、参議院は地域の代表として各地方単位での多様な意見を反映させる、言わば地方の府として位置付けることによりまして、二院制を取っている意義を踏まえたよりバランスの取れた制度、組織体系になるのではないかと考えております。
これは、国あるいは立法府の形を大きく変える大きな改革となります。憲法審査会におかれましては、是非そうした骨太の議論を展開していただきたいと大いに期待をしているところでございます。
浜田知事の意見は以上となります。どうかよろしくお願いいたします。