打越さく良の発言 (憲法審査会)

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○打越さく良君 立憲民主・社民の打越さく良です。
 最近の衆参の憲法審査会で、選挙の実施が困難な場合には国会議員の任期を延長できるよう改憲すべきだとの主張が展開されていますが、立法事実も定かではなく、また、内閣の権限濫用のおそれと国民主権の原理への弊害を拭うことはできず、反対です。
 任期延長を唱える主張において、肝腎の選挙の実施が困難な場合という要件は曖昧です。曖昧なままではどのような事態でも選挙の実施が困難な場合に該当すると認定でき、恣意的な濫用の歯止めにはならず、権力の抑制と均衡が崩れてしまうからです。
 選挙の実施が困難な場合の前例があります。一九七四年七月七日、三重県の一部で、台風八号の影響で選挙が実施できない地域で繰延べ投票が実施されました。今でも国会議員の補欠選挙が数か月行われないこともありますが、特に問題とされていません。比例代表でも、投票できる地域は確定させ、投票できない地域は繰延べ投票で対応すればいいだけです。
 この点、改憲を主張する五会派は、参議院の緊急集会は二院制の例外と主張します。参議院の緊急集会は、緊急事態に際しても国会中心主義を貫くための制度です。国会中心主義は、明治憲法時代の立法二元制の反省に立った原則です。明治憲法の下では緊急勅令や独立命令など議会を通さない立法の仕組みがあり、そのため民主主義的基盤のない立法がなされた反省に立って、日本国憲法は四十一条で国会が唯一の立法機関であると定め、国会中心主義を原則としたのです。
 参議院の緊急集会は、緊急事態に際しても国民主権を貫徹させるための制度です。緊急集会が例外だから問題だというのであれば、議員任期延長は国民主権の例外の例外であり、明治憲法下における緊急勅令や緊急財政処分こそが立憲主義という近代法の基本原理の例外であることと同様に問題ではないでしょうか。
 参議院の緊急集会は、明治憲法の反省を踏まえて設けられたものです。いたずらに議員任期延長論に傾き、例外に例外を設けようとすることは、選挙権の保障に関する国会の怠慢とのそしりを免れません。立憲主義や民主主義をわきまえない不見識は避けるべきです。
 かつて我が国では、衆議院議員の任期延長が一度だけ行われました。一九四一年に衆議院議員任期延長法が特例法として立法されたのです。明治憲法には衆議院議員の任期の定めがなかったから可能だったわけですが、いま一度、当時の背景を振り返ってみましょう。
 延長の理由とされたのは、今日のような緊迫した内外情勢下に短期間でも国民に選挙に没頭させることは、国政について不必要にとかく議論を誘発し、不必要な摩擦、競争を生じせしめて、内治外交上甚だ面白くない結果を招くおそれがあるのみならず、挙国一致、防衛国家体制の整備を邁進しようとする決意について疑いを起こさしめぬとも限らぬので、議会の議員の任期を延長して、今後ほぼ一年間は選挙を行わぬこととしたと、「第七十六帝国議会新法律の解説」の中で解説されています。
 憲法学者の高見勝利先生は、任期延長は戦争遂行の国内体制を整備するためのものであったというのが、少なくとも我が国における衆院議員の任期延長の実例が示すものであると厳しく批判しています。私には、国会議員の任期延長は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言した日本国憲法前文からは最も遠いものに感じられます。
 そういえば、十年前の二〇一三年、憲法九十六条、憲法改正の発議要件緩和が議題になっていました。今では全く聞きません。感染症対応の不手際を憲法のせいにしようとしてでしょうか、一昨年、昨年は、感染症対応が主たる話題となりましたが、法的手当てでできてしまうことが明らかになったからか、最近は下火です。改憲自体が自己目的化しているかのように、その都度その都度進められそうなテーマに飛び付いてはブームが去り、また次のブームに飛び移る、そんな改憲自体が自己目的化した議論は、私たち参議院は避けるべきです。
 以上で私の意見表明といたします。

発言情報

speech_id: 121114183X00420230510_039

発言者: 打越さく良

speaker_id: 26780

日付: 2023-05-10

院: 参議院

会議名: 憲法審査会