三原岳の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(三原岳君) おはようございます。ニッセイ基礎研究所の三原です。
 今日は、こういう機会をつくっていただき、ありがとうございます。今日は、全世代型対応の社会保障に関して、独立した立場でお話しさせていただければと思います。
 ニッセイ基礎研究所に私は所属していますけれども、研究者としては非常に独立した立場で、社会保障制度を中心に、特に医療、介護を中心に政策研究をやっております。今日もそういう立場でこの後お話しさせていただければと思います。
 資料を作ってまいりましたので、資料を基に説明させていただきます。
 一枚おめくりください。
 今日は、初めにということで論点整理を少しして、それから、かかりつけ医の強化の話、医療、介護の話、さらに、最後、終わりにという流れになります。
 一枚おめくりください。
 今日の、今回の法案は様々な内容が盛り込まれているわけですが、今回は、私の説明の内容に応じて四つで整理しました。かかりつけ医の強化、医療・介護制度の持続可能性確保、それから三ページ目ですが、少子化対策、その他という整理です。
 私は、今日はかかりつけ医の強化に関して大体八割から九割ぐらい、あと、医療、介護に関して残り一割、二割、最後、ちょっと少子化に。私は少子化の専門家ではありませんが、少しだけ少子化の話も触れたいと思っています。
 一枚おめくりください。五ページ目へ飛んでください。
 今回のかかりつけ医機能の強化に関しては、去年の年末に社会保障審議会医療部会が意見書を出しました。その中の内容というのは四つで私は整理されていると思います。一つはかかりつけ医機能の定義の法定化、二番が医療機能情報提供制度の刷新、三番目がかかりつけ医機能報告制度をつくるよという話です。四番が書面交付の仕組みをつくるという話です。これをちょっと図にしたのが六ページ目になります。
 国民、患者がかかりつけ医を選ぶときに情報が必要なので、その医療情報提供制度を刷新して国民に情報をきちんと渡していくというのがまず左側の矢印になります。それから右下ですが、都道府県がかかりつけ医に関する情報を集約して開示して、それを基に地域の医療機関と協議しながらかかりつけ医機能の向上を目指すというのがかかりつけ医機能報告制度。左上が、書面交付制度というのは、医学的管理が必要な患者さん、例えば高齢者とか障害者の方、こういった方に対して、患者が望むのであれば書面を交付すると。かかりつけの関係を一定証明するというようなことが今回の制度改正の肝、内容かなと思っております。
 赤で囲ったところが私の気になっている点、あるいは今後論点になるかなと思っている点なんですが、これはちょっと字に起こしましたので、七ページ目、御覧ください。
 かかりつけ医機能のまず定義の法定化の意味合いですけど、私はこれはプラスだと思っています。医療法に今まで、かかりつけ医機能あるいはプライマリーケアという国民にとって身近な医療が一切位置付けられていなかったという点は私はマイナスだと思っていましたので、これが位置付けられること、これは一定程度プラスだと認識しています。一方で、むしろ私は遅きに失したんだと思っています。
 これは、四十年前に、家庭医に関する懇談会、家庭医をつくるつくらないで実は厚生省と日本医師会がもめまして、曖昧なかかりつけ医を拡大していくということで合意した経緯があります。そのときの経緯は、参考資料の二十四ページ目から三十ページ目辺りに当時の経緯が整理してあるんですけれども、そのときの経緯があるので、曖昧な形でかかりつけ医をつくってきた、運営してきたわけです。それが一定程度位置付けられることは意味があるかなと思っています。
 ただ、国民、患者から見たら、ちょっと分かりにくい点は否めないかなと思います。例えば、今回は、かかりつけ医の法定化ではなくて、かかりつけ医機能の定義の法定化です。これを私はちょっと自分の両親や大学の同級生にこの違いを説明するというのはなかなか難しいなと思っていまして、ちょっとその分かりにくいという点は今回の制度改正の課題かなと思っています。ただ一方で、プライマリーケアが位置付けられたこと、これはプラスかなと思っています。
 二番の医療機能情報提供制度、かかりつけ医機能情報提供制度も、どうやって実効性を担保するのかということが課題になるかなと思います。特に、医療機能情報提供制度というのは国民に使ってもらうシステムですから、国民に使い勝手のいいシステムの情報を出していく必要がある。
 厚生労働省は、全国統一のシステムで分かりやすく提示すると書かれていて、この医療機能情報提供制度にしてもかかりつけ医機能報告制度についても、今後の制度設計は有識者の検討に委ねるとなっていますけれども、例えば、私がかかりつけ医機能報告制度を使って近所のスズキ先生のところに行って、スズキ先生、医療機能情報提供制度でオンライン診療やられているって聞いたんですけどやられているんですかと聞いた場合に、いや、実は半年前にやめたんだよねと言われたときに、私はどう思いますかね。医療機能情報提供制度って使えないなって多分思うんだと思うんです。
 やはりそれは、全国統一のシステムをつくるだけじゃなくて、やっぱり半年とか、多少のタイムラグがあるのはしようがないと思うんですけど、半年とかの周期でローリングをしていく、情報の見直しをしていかないと、恐らく使えるシステムにならないと思います。これは都道府県が制度を運用しますので、都道府県の主体性、それから地域の医師会の協力、これが欠かせないことになってくると思います。
 四番の、書面の交付の患者、医師の関係性という点なんですけど、これも、かかりつけの関係を一定程度証明するというのは非常に私は意味があると思います。なぜかというと、医師というのは患者と医者の信頼関係で私は成り立つと思っていますので、これを一定程度担保するには意味があると。
 ただ、これが医療部会の意見書を読むと、一人の医師だけにその書面交付の発行をできるようにするのか、あるいは複数にするのかというのが両論併記になっているように読めます。それはつまり、三原という患者に対してスズキ先生が書面を交付できるだけ、スズキ先生だけが書面を交付できるようにするのか、スズキ先生もサトウ先生もタナカ先生も書面を交付できるようにするのかというのがよく分からないんですね。
 かかりつけ医というのは何でも相談できるお医者さんなわけですよね。その人を中心に、その人の責任、その人がケアの責任者になって、その人を中心にいろんな人と、多職種と連携するというシステムですので、医療の入口が複数にまたがるというのはいささかどうなのかと思いますので、私はこれは一対一でなければならないだろうと思っています。それをしなければ、かかりつけ医の機能を強化した私は意味が半減するとぐらい思っていますので、この辺りは次の診療報酬改定との絡みもありますから、今後の論点なのかなと思っているところです。
 八ページ目、御覧ください。
 先ほど申し上げたとおり、今回の制度は都道府県に主体性を委ねていますので、やっぱり都道府県の主体性、それから地域の医師会の主体性が求められます。様々な制度改正は都道府県に今委ねられていまして、介護に関しては市町村が主体性を求められていますけれども、かかりつけ医機能もそういうことだと思います。
 こういうことを言うと、大体メディアの皆さんから、それは都道府県はできるんでしょうかという問合せがあります。私は答えはイエスだと思っています。二十年間の地方分権の成果として、都道府県がその能力を持っていることは、今回のコロナでも一定程度明らかになったんだと思います。
 ただ、こういう質問になると答えはノーに変わります。それは、全ての都道府県で対応できますかという問いとか、全ての都道府県で制度が安定的に回りますかという問いを受けると、私は答えがノーに変わります。
 それはなぜかというと、やはり都道府県の担当者によってレベル感、やる気とか能力によって、またレベル感は違います。それから、地区医師会のリーダーシップの違いもあります。あと、地区医師会と、例えば医師会と政治との関係がちょっとぎくしゃくしているとかいろんな変数があって、やっぱりうまくいかないところもあればうまくいくところもある。だから、そこら辺はどうしても格差が出るんだろうと思います。
 今回は、地域の実情に応じて実践と自治を積み上げていく取組だと思っていまして、これは非常に大事だと思うんですけど、これだけで本当に制度改正ができる、基盤が強化されるのかと言われたら、ちょっとそこは私はクエスチョンマークが付いています。
 実際、厚生省は、三十年前にかかりつけ医のモデル事業をやりました。これは医師会を中心にやってくださって、当時の資料とか読むと、かなりの、一部の医師会は相当前向きだったと理解しています。今回も恐らく、かかりつけ医機能報告制度を使って、かなり、一部の医師会が前向きにやってくださるんじゃないかと思って期待しているんですけれども、かかりつけ医推進、かかりつけ医モデル事業、当時のモデル事業の資料を読んでも、これが今続いているとはやっぱりちょっと到底思えないんですよね。やはりその自治と実践というのは、担当者が替わるとか、そういった形で長続きしない面がありますので、やっぱり制度で担保する必要もあるだろうと思っています。で、一層の制度改正が、やっぱり議論が必要だろうと私は思っています。
 今回の制度改正は一定程度進歩、前進がありますけれども、今回のその制度改正の論点、制度改正に至るまでの論点というのは、かかりつけ医はかなりもめましたけれども、論点は幾つかありましたが、患者、医師の関係性に着目すると、こういった点だと思います。
 かかりつけ医の制度化に賛成の人、つまり登録制に賛成の人というのはこういう分類をしました。つまり、三原という患者がサトウ先生を例えば登録医に指名したら、サトウ先生が健康管理をしてくださる、コロナのワクチンの接種もしてくださる、発熱対応もしてくださる、ケアの責任体制が明確になりますという言い方をしたわけです。私はこの立場に近いので、そこはよく分かるんですが、これには実はちょっとマイナス面もあります。
 つまり、フリーアクセスが制限されるわけですよね。例えば、スズキ先生のところの診療所がすごく混んでいて、処方箋だけもらいたいんで隣のタナカ先生のところに行きたいというのが行けなくなるわけです。まあ、制度設計次第の面もありますが。なので、ケアの責任体制を明確にするということとフリーアクセスを維持する、患者の受療権を確保するということは一種トレードオフなので、このトレードオフの間でずっと議論が平行線をたどったと私は認識しています。
 これを私は神学論争と当時思っていたんですが。じゃ、その神学論争は乗り越えられないかと言われると、実は乗り越えられると私は思っています。
 これが十ページ目ですが、登録制に賛成の人というのは必ずイギリスの医療制度を参考にします。私もイギリスの医療制度、十年前に見に行きましたが、やっぱり合理的なシステムだと思いました。つまり、ゼネラルプラクティショナーという家庭医が、プライマリーケアとして全人的かつ継続的なケアをして責任体制を、そこで責任が明確になっている。必要に応じて二次医療機関を指名する。
 ところが、やっぱり患者に受療権はありません。登録制ですから、そこに行くしかないわけですね。だから、日本のフリーアクセスとは明らかに違います。だから、イギリスの仕組みと日本の仕組みは違うという指摘を反対派の方はよくおっしゃいます。私もそのとおりだと思います。
 ただ、日本はフリーアクセスなんでしょうか、純粋に。実は、紹介状なし大病院受診って七千円取っているわけですよね。だから、フリーアクセスは実質的に軌道修正されています。
 フランスの医療制度をそこに間に挟むと、実はそんなにイギリスの医療制度と変わらないんじゃないかというのがこの絵になります。フランスのかかりつけ医制度は、登録は義務付けられています。ただし、登録した医療機関以外に行ったら高い値段を取るよという仕組みになっているわけですね。ここを、このフランスを間に挟むと、日本とイギリスというのはそんなに懸け離れてなくて、フランスが日本とイギリスのハイブリッドのようなイメージで理解できるんじゃないでしょうか。フランスは実際、日本のようなフリーアクセスでした。
 なので、そういうふうに考えると、こういう神学論争のようなゼロか一かではなくて、歩み寄る努力が私は必要だったんじゃないかなと思っています。
 次の改正もそういった形、次もし制度改正議論するのであれば、こういうトレードオフの関係に配慮しながら幾つかの選択肢を考えていくということが考えられるんじゃないでしょうか。例えば、患者の登録が問題であるならば、義務が問題であるならば任意にする。任意にする代わりに、かかりつけ医に誘導する代わりに、例えば高い値段を、高い値段というか、それ以外の医療機関に行ったら高い値段を取る、任意にした場合は保険料を下げる、そういった幾つかのオプションが私はあると思います。そのオプションを今後はずっと模索しながら、ケアの責任体制を強化しながら患者の受療権を確保するという難しいトレードオフに次はチャレンジしていただきたいなと思っています。
 残り、医療、介護の話と少子化の話を少し触れたいと思います。
 医療保険に関しては、今回の改正は、簡単に言うと、私は全世代で能力に応じた負担対応を強化したという流れだと思っています。これは、一定程度私はやむを得ないと思っています。ただ、制度の複雑化が一層進んでいます。これはやむを得ない面があって、利害調整するときに、足して二で割る、足して二で割るというのをやっていくわけですよね。これはしようがないんです。ただ、どんどんどんどん国民にとって制度が複雑化していっている点が気になっています。
 社会保険方式というのは、本来は、負担がこれぐらいあるから受益がこれぐらいある、受益がこれぐらいあるから負担がこれぐらいあるという、負担と受益の関係性が明確なのが社会保険方式のメリットだと言われ、どの教科書にもそう書いてあるんですが、今の医療保険制度を見ると、それが機能しているとは到底思えません。ただ、制度をガラガラポンするのはやっぱり難しいので、少しずつ少しずつ簡素にしていくという努力を私はしていかなきゃいけないのかな、つまり、あとは制度の複雑化を食い止める、そういう努力も必要なのかなと思っています。
 十三ページ目ですけど、介護に関しては、今回様々な法案、多くの法案、結論、議論を次の制度改正に先送りしたような形になっていますが、生産性向上が一つの論点だと思っています。この辺り、介護の人材不足というのは本当に制約条件として大きくて、ただ、生産性向上とか人手不足って、なかなか逆転ホームランで一発逆転ホームランというのはないので、少しずつ少しずつ積み上げていくしかないと私は思っています。
 生産性向上に関しても、厚労省は、都道府県に窓口をつくってそこで現場と意見をすり合わせながら地域の実情に応じて生産性向上をやっていくというふうに、スタンスでいっていますけれども、私はこれは正しいと思っています。なので、これは少しずつやっていく必要があるでしょうし、介護報酬改定などの誘導も一定程度考えられるのかなと思っています。
 では、終わりにという流れになり、終わりにということで、十五ページ目を御覧ください。
 かかりつけ医機能に関しては、これまで制度面でほとんど手付かずだったんですけど、今回の対応は私は前進だと思っています。むしろ遅きに失した感も否めません。ただ、かかりつけ医の曖昧さは非常にやっぱり残されたなという印象です。
 それから、具体的な詳細な制度設計はこれからだということですが、どんな情報を公開するのか、やはりここは国民目線で議論していただきたいなと思っています。それから、書面を交付する制度をどうするのか。それから、地域の自主性を重んじた制度になっていますから、都道府県医師会の主体性が求められる。それだけでは私はうまくいかないと思うので、一層の制度改正として議論していかなきゃいけない。そこにトレードオフが発生しますから、トレードオフをどう対応するかということを考えていかなきゃいけない。医療、介護に関しても様々な論点があります。
 少子化に関して最後ちらっと述べます。私は少子化の専門家ではありませんので余り詳しく述べられませんけど、やはり給付を増やす議論だけじゃなくて、やっぱり負担を増やす議論も必要だろうと思います。税財源も含めて負担と給付の見直しを、向けて国民の合意を付けていく、そこに国民の代表である立法府ももちろん関わっていくことが大事だと私は思っています。
 少し早口になりましたが、以上です。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 三原岳

speaker_id: 19435

日付: 2023-04-27

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会