山本淑子の発言 (厚生労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(山本淑子君) この度、このような発言の機会をいただき、ありがとうございます。全日本民主医療機関連合会、全日本民医連の山本と申します。
 全日本民医連は、病院や診療所、薬局、介護施設や介護事業所など、全国千七百四十余りの事業所が加盟する団体です。どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは、現在御審議されている健康保険法等一部改正法案について反対する立場から、これ以上の高齢者への負担増はやめてほしい、この一点で、現場からの声をお伝えしたいというふうに思っております。
 健康保険法等一部改正法案、全世代型社会保障構築のための法改正とされております。しかし、全世代で負担をするという側面が強調され、少子化対策と高齢者施策、この二つの世代での対立がされているかのように見受けられます。高齢者のため現役世代の負担が重くなっているかのように感じておられる方も少なくありません。ですが、実は今、多くの高齢者自身も、年金も減り、医療や介護の負担も増しており、安心して暮らせないというのが実情ではないかと思います。
 もちろん、私自身も子育てしながら働き続けてまいりましたし、子育て支援の充実を願っております。出産手当一時金の増額も大変歓迎しております。しかし同時に、若者たちが結婚できる給料、非正規雇用のような不安定な働き方を将来を見通せる安定した雇用へ、そして重い高等教育費の負担の解消、こうしたことをトータルに行わなければ出生率も上がらないままではないかというふうに考えております。そして、将来、高齢になっても十分な年金ももらえない、必要な医療も受けられない、このような状況では、それこそ全世代、明るい安心できる未来を描くことはできないのではないでしょうか。是非社会保障予算全体のパイを大きくして全世代の社会保障を拡充してほしい、最初にそのように申し上げたいと思います。
 これまで、全世代型社会保障改革の中で、年金の受給開始時期の選択肢の拡大や七十歳までの就業機会を確保できるようにして、高齢者も生涯現役で活躍してもらう、負担能力のある高齢者には御負担いただこう、そういう見直しが進められてきたかと思います。
 しかし、年金はこの十年ほど引き下げられてきており、二〇二三年はプラス改定となりますが、昨年来の物価高騰に追い付くものではございません。以前から、年金だけでは生活ができず、不足する生活費のためにパートやアルバイトで収入を得ていた高齢者もおられましたが、コロナ禍で仕事が減ったり仕事を失った方もおられます。そこに追い打ちを掛ける負担増となったのが、昨年十月に実施された後期高齢者の一部窓口負担二割化です。
 私ども全日本民医連が実施した七十五歳以上医療費二割化実施後のアンケート調査に基づいて、この負担増について、高齢者の声、実態を御紹介したいと思います。
 本日は、この調査報告から抜粋し、一部自由記載欄を加えて配付していただきました。お手元の資料を御覧ください。
 このアンケートは、三ページにございますように、昨年十二月から今年二月まで、全日本民医連の病院や診療所、薬局など窓口で、四ページ、五ページにあるような項目のアンケートに御回答いただいて、御協力いただいたものです。
 六ページ御覧いただくと、三十四都道府県から一万五千三百六十八件寄せられています。
 七ページにあるとおり、そのうち七十五歳以上の方が一万二千八百三十一件、さらに、そのうち、十月以降窓口負担が二割になった方が七千六百十五件でした。
 八ページには、七十五歳以上で二割になった方の負担感書いてあります。六割近くの方は、二割になる前から窓口負担重いというふうに感じておられました。十月実施以降、二割負担になって負担と感じる割合が増え、とても重いが二七%、重いが五八%、八割の方が負担が重いというふうになっております。
 続けて、一言欄に寄せられた声を一部読み上げながら御紹介したいと思います。
 まず、九ページ、年金も減らされて、生活も大変という声です。切り詰めるものがない。年金も減り、これ以上負担が増えると困る。生活用品の物価が上がり苦しい生活になってきた。手書きの部分には、年金が減る中、保険料の占める割合が高く、負担がとてもきつく感じます。窓口負担だけでなく、保険料も負担だという訴えがありました。そして、老人は死ねと言っているみたい、とんでもない。
 十ページ、これ以上の負担増はやめてという声です。高齢ですので、タクシーが利用できなくなると病院に通うこともできない。地方では公共交通機関が減り、高齢で免許証を返納すると、病院に受診するときにタクシーを利用せざるを得ない地域もあります。そのタクシー代も大きな負担となっております。必要な治療、薬、負担が増えるのは苦しいが、生きるために必要なので、ほかは削ってでもと思うと。そして、手書きの部分の二番目ですが、これ以上高くなると、もう病院に行けなくなりそうです、とても不安に暮らしています。そういう声です。
 そして、十一ページ目、実は、少なくない高齢者の方々は、自分たちの医療費などが若い世代の負担になっていて申し訳ないと、このように思っておられます。医療費は安い方が助かるが、国の財政も心配です。高齢者よりも若者の負担を減らしてほしい。長生きし過ぎている、若い人たち、孫に負担が行くくらいなら仕方がない。手書きの部分には諦めたような記載があります。現状では負担はやむを得ない、若い世代に回してほしい、限られた財源だから。少子高齢化の時代ですので、しようがない。
 最後、十二ページです。若い世代に申し訳ないと思いつつ、どうしても言いたい、そんなやり場のない高齢者の怒りの一言です。見捨てられ感がある、不安、苦痛を取り除いてくれるのが医、医療ではないか、出産費用五十万、老人の保険から。恐らく、もっと言いたいけれども、その先は我慢して飲み込んだ、そんな一言だと思います。出生率が減っているから出産に掛かる費用を高齢者の財源から充てるとは、年寄りに早く死ねと言っていることか、ほかに幾らでも財源はあるはず。そして、手書きの部分には川柳のような一言がありました。年重ね医薬倍とは何事ぞ。
 若い世代に申し訳ない、国の財政が心配だから我慢する、長生きし過ぎた、高齢者にこのようなことを言わせる社会であっていいのだろうかと、そのように考えてしまいます。同時に、高齢者がこんなことを思いながら身を縮めるように暮らしている姿を見て、現役世代が明るい未来を描けるのだろうか、それは無理だろうと、そのように思います。
 御紹介した一言一言の背景に大事な点が二つあります。一つは、これ以上負担できないという高齢者が、ではどうするのかという点です。受診を控えて我慢をする、薬を間引いて飲む、そういったことが起き、早期に受診すれば治る病気、定期受診で管理がされていれば悪化を防げる病気が重症化しかねません。
 もう一つ、身近に御家族や現役の子供世代がいる場合、親の医療費の負担を肩代わりする。つまり、現役世代の負担軽減といいながら、結局現役世代が負担せざるを得ない事態も起こり得るということです。
 十三ページを御覧ください。アンケートでは、今までどおり受診すると回答された方が八割近くになりました。しかし、十四ページにあるように、今までどおり受診すると回答された方のうち複数回答されている方の回答を見ますと、預金を切り崩して受診する、交際費を削って受診する、水光熱費を削って受診する、そして、これ以上切り詰められない、こういった回答が並びます。
 つまり、十五ページを御覧ください。これまで、現在受診されている方、半数近くが既に生活を切り詰められて受診をされているということです。これ以上の負担増は更に生活を圧迫し、受診控えが起こるのではないかと、そのように危惧いたします。
 こうした負担増への対応として、二割化実施に際しまして、三年間に限り、一か月の負担が三千円以上に増えないようにする配慮措置が講じられましたが、煩雑で高齢者には分かりにくく、高額療養費の手続が必要です。十六ページのとおり、このアンケート調査の実施したときですけれども、まだ手続をしていない方が五五%、手続の仕方が分からない方が二八%おられました。手続をしていない方の半数は、手続の仕方が分からないと回答されています。
 十七ページ、御覧ください。高額療養費の手続について、申請書等は来ないし見た記憶がないと、申請書は届いていない、制度も知らなかったと、高齢なので分からない、自動的に医療費三千円以上は払戻しされると思っていたなどの声がありました。届いても分からずにしまい込んでおられる高齢者の方もいらっしゃるかもしれません。でも、高齢者が分かるように、対象となる方誰一人取り残すことなく必要な手続ができるようにしてこそ配慮措置と言えるのではないでしょうか。
 十八ページ、御覧ください。収入に占める医療費の比率は、やはり高齢者の方が圧倒的に高くなっています。この上、更なる高齢者の負担増を検討しているとなれば、高齢者にはこれ以上医療を受けるなと言われているかのように感じられるのではないかと思います。
 少し話がずれますが、コロナ禍においても、感染症拡大の大きな波の中で、高齢者施設に入所する高齢者に対して、十分な医療が整っていない施設への留め置きが行われました。第八波のコロナによる死者数、九割は七十歳以上の高齢者でした。医療提供体制の問題、医療従事者の不足等、様々な背景ありますけれども、高齢者の命を何としても救おうと頑張っている医療・介護現場で奮闘した医療従事者、介護職員にとって、高齢者の医療を受ける権利がないがしろにされた、とてもつらい経験でした。
 そもそも後期高齢者医療制度は、収入の限られた高齢者だけを切り離して別建てにし、現役世代も負担する形でつくられた制度です。高齢者がつくってくれとお願いした制度ではございません。高齢化の進展、高齢者の有病率や高齢者の医療費負担増、医療費の増などは、制度設計時にも予測されていたはずです。それをここに来て、高齢になること、病気になることが悪いことのように思わされて、高齢者の存在自体が現役世代の負担かのように言われるのは筋違いではないかと、そのように思います。
 最後に、まとめとして述べたいと思います。
 昨年十月の二割負担実施で、これだけ高齢者に負担増を強いる制度変更が行われています。実施後、高齢者の生活、受診行動への影響、調査をされているのでしょうか。そうした検証もないまま次の負担増を検討されるのだとすると、非常に疑問を感じます。
 本日御紹介したアンケート調査は、全日本民医連と日頃つながりのある方々という非常に限られた範囲であります。しかも、現在受診をされています。しかし、地域には、そもそもお金の心配をして受診をためらい、諦め、受診をされない高齢者が既におられます。
 全日本民医連では毎年、地域の中で経済的な理由で受診が遅れて手遅れとなり命を落とした事例、手遅れ死亡事例をまとめております。
 昨年、八十代の方で、御夫婦の年金収入が少ないため、症状がありながら余裕がなくて受診を控えたために、がん治療ができずに亡くなられた事例がありました。また、別の八十代の方は、御本人の年金と、同居されているお子さん、お孫さんなどの就労収入で生活されていました。しかし、お子さんは腰痛のために介護の仕事を辞めて、コロナ禍で新しい仕事もない、お孫さんもパート、世帯として困窮されている状態でした。御本人が自宅で転倒されて大腿骨骨折となりましたが、経済的な余裕がなくて入院も手術もできずに自宅で寝たきりとなり、最後は私ども全日本民医連の無料低額診療事業で入院治療につながりましたが、亡くなられたという事例です。
 こうした痛ましい事例はどうすればなくせるのか。健康に生きる権利を保障し、必要な医療は経済的な心配なしに受けられるようにしていただきたい、このように申し上げたいと思います。
 繰り返しになりますが、これ以上の高齢者の負担増となる法案、廃案にしていただきたい、そのことを申し上げまして、私からの発言を終わります。ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 121114260X00920230427_009

発言者: 山本淑子

speaker_id: 16251

日付: 2023-04-27

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会