桜井徹の発言 (国土交通委員会)

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○参考人(桜井徹君) 日本大学の桜井です。本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。
 私が述べることは、まず目次を御覧ください。大学の講義でも滑舌が悪いということで学生の評判が非常に良くない、そういう人間が今日こういう晴れの舞台で内容を説明する上で皆さんに御迷惑掛けるかもしれませんが、三十枚のスライドです、急いでやりますが、付いてきてください。
 目次です。まず、「はじめに」では、私の立場を説明いたします。その後、ローカル鉄道危機の一般的背景、それから特殊的背景、その後、ヨーロッパ、特にドイツにおけるローカル線維持方策の特徴から見た我が国の、今回法案でも上下分離の導入が言われてますけど、その問題点について述べたい。最後に、結びであります。
 三枚目です。初めに、本法律案に対する参考人の視点です。いろいろ書いてありますけど、三つです。ローカル鉄道問題はローカルだけの問題ではない。確かにローカルの問題ではありますけど、ローカルだけの問題ではないんですということを言いたい。二番目には、鉄道事業は公益事業として理解する必要がある。社会資本とも呼ばれますが。三番目、その際に、ヨーロッパ、特にドイツの経験に学ぶ必要がある。私は、長い間、日本とドイツの鉄道改革の比較をしてきました。
 それではまず、ローカル鉄道危機の一般的背景について、外部要因、内部要因、相互連関、三つについてお話しします。
 五枚目です。外部要因というのは、いろんなところでも、国土交通省及び今回のモビリティ刷新検討会議でも述べられていますけれども、人口減少、マイカーの増加、高速道路の普及が挙げられています。しかし、それらはあくまでも与件です。ギブンとして言われているだけであって、その政策そのものを転換しないと、人口減少やマイカーの増加、高速道路の普及そのものがそのまま進んでしまうわけです。それに対して受け身で、パッシブにやっていたら問題が解決しないと。
 じゃ、この外部要因を促進した要因は何かと、原因は何かというと、それは自然現象じゃなくて政策だと私は思います。グローバリゼーションによる産業空洞化、東京一極集中の国土・産業政策、道路偏重のインフラ投資政策、そういう、まちづくりでも道路中心のまちづくり、そういうものを転換する必要があるわけです。その際に、特に強調したいのは、総合的なインフラ投資政策が、計画が日本では必要じゃないかと。
 その際に、参考としてドイツの連邦交通路計画二〇三〇を六枚目に挙げておきましたので、参考にしてください。ドイツ語ばかりですが、ちょっと日本語にも翻訳してあります。
 それでは次に、内部要因について言います。七枚目です。内部要因というのは、負のスパイラル、悪循環とも言われます。これは私が言っているんじゃなくて、国土交通省も言っていますし、モビリティ刷新検討会議も言っているわけです。経営努力としての列車の減便、減車、優等列車の削減、廃止、駅の無人化等の経費削減政策、あるいは投資の抑制、そういうものが結果として路線の廃止につながっていく、そういうものが負のスパイラルです。
 問題は、この負のスパイラルがなぜ起こっているかということで、企業の独立採算制に問題があるんじゃないかと思います。確かに国鉄分割・民営化で、日本の鉄道はほとんど私企業として経営されてきます。じゃ、私企業だから負のスパイラルは許されるか、そうじゃありません。あくまでも公益事業ですので、政府が、いわゆる、アメリカでもそうですが、公益事業統制をしなけりゃいけないんです。ところが、日本では、御存じのように、一九九九年に審議され、二〇〇〇年に公布されたと思いますが、鉄道事業法の改正で、休廃止がそれまでの許可制から届出制になって規制緩和されたんですね。いや、規制緩和されても大丈夫だというんですけども。
 次のページ、八ページに、ある研究が書いてあります、載せてあります。需給調整廃止前後における新設延長と廃線延長ということで、二〇〇〇年を境に、大手私鉄、第三セクターを中心にどしどし廃止の申請があって行われたと。
 その次、私鉄、大手私鉄や第三セクターの廃線が進んだ後、その後、二〇一五年頃からですね、九枚目ですけども、今度はJRが路線廃止をするわけです。それもこれもと言ったら語弊がありますが、やはり鉄道事業法の改正が影響しているんじゃないかと思うわけです。ですから、今回鉄道事業法を見直すわけですけども、こういう方向で見直していただきたいと思っております。
 いや、大臣指針があるじゃないかと、完全民営化した後、きちんとそういう路線の廃止を進めないようにするための大臣指針があるじゃないかと言われるんですけども、あくまで指針であります、あくまでガイドラインであります。
 次に、相互連関行きます。
 外部要因と内部要因それぞれを促進した政策、そのための政策転換が必要なんですけど、更に問題は、外部要因と内部要因が相互連関しているということです。ここを見なければいけないわけです。つまり、負のスパイラルという内部要因と、人口の減少、マイカーの増加、そういうのは連関しているんですね。
 鉄道事業が廃止、それは、済みません、十一枚目、連関を示しているのが資料一です。駅の廃止、運行本数の低下ということと沿線人口の減少が関係あるんじゃないかという研究が幾つかあります。そういう駅の廃止あるいは鉄道の廃止がそういう人口減をするんですけど、鉄道の廃止の後、バス転換がよく出てきます。今回の法案でもそうですが。
 資料二を御覧ください。バス転換をしたらうまくいくか。いかない、あくまで利用者減。aからeまでいろいろ書いてあります。BRTになっても駄目。十二枚目の右側の方に、利用者減は鉄道よりバスの方が大きいと書いてあります。これは、今回の参考人の質疑のために送っていただいた資料の中にあったものです。鉄道よりバスの利用者の方が減少が大きいんですよ。ですから、バスになったから、ああ、大丈夫だということには決してならない。
 そういうような内部要因、外部要因、そして相互連関、そういうのを全部ひっくるめて解決しないとローカル鉄道の危機はそのまま進行してしまう、それを図に表したのが十三枚目の図一です。お読みください。私、一生懸命頑張って書いたんですからね。結構、パワポでこういうの書くの結構しんどいんですけど、まあ何とか頑張りました。
 次行きます。
 一般的背景はそういうことです。でも、一般的背景だけではないんですよ。特殊的な背景がある。コロナ禍で、多くの公共事業者、JRも含めて赤字になっている。特に、一九八七年以降、分割・民営化以降初の上場JR三社が赤字になって、あっ、大変だと、新幹線、都市圏輸送による地方線の内部補助が崩壊すると、あっ、大変だということで、特に二〇二一年五月頃からJR西日本なんかが、いや、内部補助が崩壊しているので何とかできませんかということで今回こういうようになってきていると思うんですけども。
 内部補助の問題、これから入るんですけども、内部補助崩壊が問題なのかどうか。先ほども言いましたように、JRを含め多くの公共交通機関が赤字なんです。ですから、そのとき政府がコロナ支援を大々的にやるべきだった。
 資料三を御覧ください。十五枚目です。ドイツにおけるコロナ禍での公共交通への財政支援です。ドイツ鉄道に対しても、公共近距離旅客輸送、まあ日本の公営事業者あるいは私鉄事業者全てが入ったものですけど、そういうものに対して全体で一兆円ぐらい、日本円にして一兆円をばっとやっている。日本でもGoToトラベルとかいろいろやっていましたけれどもですね、まあそれ、もうそれ以上言いません。
 次行きます。
 そういうようなわけで、コロナ禍で大変だから、じゃ、内部補助が崩壊したから今回分離をお願いしたいね、自治体が関与してくださいよねということが今回の法案です。
 じゃ、その内部補助の崩壊の問題で、次、三番目ですが、先ほど、済みません、十四枚目に戻ってください。その中で、いろいろ内部補助の崩壊って、内部補助の問題は非常に難しい問題です。衆議院の参考人質疑でも山内さんが一生懸命、それ難しいと言っています。モビリティ刷新会議の委員の中でも六名中三名が内部補助を維持するべきだという意見もあったりして、なかなか割れております。
 その中で注目されるのは、湯崎広島県知事です。内部補助をするということで、そういう約束で国鉄分割・民営化したんじゃないの、今更何を言ってくれるんだということで、そうであれば国鉄分割・民営化に遡って検討してほしいというのが湯崎広島県知事の意見です。それは資料五を御覧ください。資料五にあるので見てください。
 問題は、じゃ、こっち、国鉄分割・民営化のときに地方交通線の取扱い、どうやったか。図二を御覧ください。十九枚目です。ピンク色の部分が最終的に国鉄再建監理委員会がJRから分離すると言ったわけです。ところが、その一年前に国鉄再建監理委員会の緊急答申、第一次緊急答申、第二次緊急答申ありました。そのときには、上のダイダイ色といいますか、ちょっとダイダイ色じゃないな、黄土色といいますか、薄い黄土色の部分がありますが、百七十五線、約一万百六十キロを全部新会社が継承しないというように緊急提言で言ったんです。ところが、国民の反対があったのか、法案を通りやすくするためか、どちらか分かりませんが、とにかくこのピンク色の部分だけになってしまった。だが、今回、そうでないならば、いや、分割・民営化に遡れという議論も、湯崎さんの議論もむべなるかなと思っております。
 二十枚目に行ってください。二十枚目の下、JR東日本の元会長、住田さんが著書で、旧国鉄から引き継いだ七千五百キロの路線を使い、いかに良いサービスを提供するかということがJR東日本の追求すべき公共性だったとちゃんと述べています。今はその、まあもうこれ以上やめておきます。
 次行きます。
 で、そういうこともあるんですけど、じゃ、内部補助の崩壊について実際どうかということで、次の二十一枚目の表二を見てください。これはJR東日本とJR西日本のものを表したものです。もう時間がないのですが、要するに、収支差額、二千人未満の収支差額と、特にJR西日本がそうですが、株主還元額がほぼ同じなんですよ。赤字になっているのに、内部補助をやりながら、助けてねって言っているのに株主に還元こんなにするのはどうかと思っております。
 関連事業もやっているんですけれども、それはもう省略いたします。
 最後、もう四十五分、二十四枚目を見てください。ここでは、要するにドイツでは、もう宇都宮参考人とかが衆議院でも言われていますけれども、ドイツでは公共サービスだと、上下分離していますよと。で、近距離旅客輸送は地方政府が供給責任を持ちなさいと言っています。で、その際に、連邦政府が地域化資金ということで、赤字の六〇%以上を補填できるような資金を鉱油税から、まあガソリン税ですね、そこからいっているということを書いてあります。特に最近は、この廃止路線、やはり民営化ですから廃止路線もありました。それがだんだん復活しているということが書かれてあります。私、ドイツを研究してきて、やっぱり、ドイツの人はなぜこれだけ気候変動問題、温暖化防止に熱心かなというのは、一九八七年に初めてドイツに、八九年に、までにドイツに行ったときに感じました。
 それで、最後、もう二十八枚目、鉄道事業再構築事業としての上下分離の問題点と書いてあります。自治体保有にするということですけれども、一定進歩ですけれども、やはり自治体の財政力に限界がある、やはり国が前面に出さないと、出ないといけないのです。自治体が保有して各鉄道が上下分離をしたときにネットワークが失われるんですね。そういう点も重視、そういう点も考えてもらいたいと思っております。
 じゃ、おまえは日本の鉄道改革をどうするんかという質問があったときのために、二十九枚目に一応大胆にも書いておきました。なかなか私も苦労しながら図を作っているわけですけど、まあそういうことであります。でも私は、ヘーゲルが、合理的なものは現実的であり、現実的なものは合理的と言いましたけれども、頭の中で考えて合理的なものはやっぱり現実的になるんだと私は信じております。
 次に、最後はもう①から②、③と書いておりますので、読んでおいてください。
 最後に、ゲーテの言葉を引用したい。外国語を知らぬ者は自国語については何も知らない。外国の鉄道を知らないと日本の鉄道も知らないんじゃないかということであります。手前みそでありますけど、ドイツの鉄道を研究してきた、七十五歳にはまだならないんですけど、それに近い人間の箴言として述べておきたいと思います。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 桜井徹

speaker_id: 7259

日付: 2023-04-18

院: 参議院

会議名: 国土交通委員会