井上ひろみの発言 (内閣委員会)
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○参考人(井上ひろみ君) お願いいたします。
私は、21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会、略称21・老福連の事務局長をしております井上ひろみと申します。
本日は、このような貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。
当会は、老人福祉の向上を目指して活動している老人福祉施設関係者の全国連絡会です。私は、当会で昨年度二回実施いたしました全国アンケートの結果から、また、高齢者施設などを運営する社会福祉法人の理事長の立場から意見を述べさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
御承知のように、コロナ禍、特に第六波、第八波では高齢者施設のクラスターが急増いたしました。六波は三千二百件、七波は六千六百件、八波は八千九百件と増加しています。また、八波では高齢者の死亡者数が急増いたしました。
二月に変更されました基本的対処方針には、社会経済活動を維持しながら、高齢者等を守ることに重点を置いて感染拡大防止策を講じるとあります。私は、この対処方針の具体化を進めるとき、高齢者施設クラスターの多発と高齢死亡者の増加の要因を現場の実態に即して把握いただき、新たな指揮命令の仕組みや、組織によって感染拡大の状況に応じて迅速で的確な対応がなされることが非常に重要と考えております。
そのような点から、高齢者施設でのクラスター発生と施設内療養の実際についてお伝えしたいと思います。
初めに、高齢者施設について簡単に説明させていただきますが、高齢者施設は、経済的理由や疾病、障害で自宅生活が困難な方、身体介護や認知症など介護や見守りが必要な方の入所施設です。人権と尊厳を守って介護や生活支援を行い、食事は日常は一緒にする、行事や交流をするなど、入居者同士や地域との交流を大切にしている施設です。二百人定員の大規模な施設もあれば、九人で家庭的に生活するグループホームのような場所もあります。このような施設でクラスターが多発いたしました。
資料をお配りしておりますので、資料の二ページを御覧ください。
令和四年九月の新型コロナ感染対策分科会では、七波での高齢者クラスター多発の要因として、ゾーニング、換気、陽性者対応時の感染防護が不十分であるということ、そして利用者のマスク着用困難や職員の感染持込みが要因として挙げられています。したがって、施設への感染を持ち込ませない対策が重要であるということを指摘されながら、ただ、感染対策を徹底しても、それでもクラスターが生じる場合があるとも指摘しています。
東京都の老人福祉施設協議会が老人ホームなどを対象に実施いたしました七波の調査では、クラスターが発生しやすい理由として、感染対策が困難という入所者特性、一緒に食事をするなどの施設の特性のほか、感染した利用者が入院できずに施設にいるからとの回答が八六%を占めています。その結果としての施設内療養で職員の負担が過大となり、感染防止、拡大防止が不十分になりやすかったと九割の施設が回答しています。
資料の三ページを御覧ください。
七波に行った私どもの21・老福連の調査では、全国の特別養護老人ホーム、養護老人ホーム二千十施設の七五%が陽性入居者は全員入院を徹底するべきと回答しています。その理由は、病状悪化したときに対応ができない、施設ではコロナの適切な治療ができないが多数です。また、施設内療養すべきの回答は一七%ありますが、回答施設の半数以上が受入れ医療機関がないからとの理由を選択しており、やむを得ないとの受け止めであることも分かります。
次に、施設内療養の実際についてです。資料の四ページを御覧ください。
21・老福連の八波の調査では、回答施設の半数以上でクラスターが発生し、その九八%が施設内療養を実施しています。陽性者の九割以上が施設内療養となった施設が半数を超え、陽性者全員が施設療養したところは三割もございました。陽性となった入居者の八七・四%が施設内で療養し、一施設当たり平均十七名の陽性者に対し、介護職が感染防護をして身体介護や認知症の方へのケア、そして病状の観察を行ったことになります。
同じページの下の表に入院できなかった理由というのがありますが、入院できなかった理由の多くが病床の逼迫、国や自治体の入院基準を満たさなかったです。病床逼迫はもとより深刻ですが、高齢者は原則入院であるはずなのですが、それ以外の入院基準により入院できない事例も相当数あったということです。
京都府の保険医協会が行った七波以降に障害者施設も含めて行った調査では、陽性者の八〇%が施設内療養。東京都の先ほどの調査でも、八三%が施設内療養になったと報告されています。どの調査でも八〇%以上ですから、もはや原則施設内療養であったというのが現場の実態です。
続いて、クラスター発生や施設内療養の中で入院や適時適切な医療にアクセスできずに入居者が亡くなられている現状についてお話しします。資料の五ページを御覧ください。
七波のアンケートでは、二千施設のうち百三施設が施設内で亡くなった方がおられると回答しました。二回通院しても入院できず、ようやく決まった入院前日に急変して救急搬送したが、病院にも入れずそのまま亡くなった、保健所に入院しても助かる見込みはないと言われ、施設でみとったなどの回答がありました。
また、八波のアンケートでは、療養期間中に感染により施設や入院先で亡くなった方は陽性入居者の三・五%でした。アドバイザリーボードで示されています七波での八十歳以上の致死率は一・六九%、この二倍です。感染の影響で亡くなった方を含めると六・五%です。十五人に一人が亡くなっています。高齢者の命が見捨てられているように感じてならないとの記述もありました。
感染や感染の影響で亡くなられた方、御家族はどれほど無念だったことかと思います。施設職員は、施設で感染されたこと、適切な医療につなげられなかったことに責任を感じ、本当に苦悩しています。同時に、事実上原則となった施設内療養が施設入居者の死亡者を増やしているのではないかとの懸念もあります。
資料の六ページを御覧ください。
八波のアンケートでの入院率と死亡者数をグラフにしています。入院率五〇%以上の施設では施設内で亡くなった方はおられません。入院率が高ければ施設内で亡くなる人は少ないのではないかと思わせる結果です。けれど、少ないデータですので、もっと大きなデータで是非検証いただきたいと思っています。
ある高齢者施設の例ですが、施設クラスターの中で感染した基礎疾患のある七十五歳の方が抗ウイルス薬を服用しても病状が悪化し、保健所に入院相談をしました。けれど、入院調整を行うセンターが入院は不可と判断しているとの返答でした。理由は、その方が心肺停止時の蘇生処置を拒否していること、施設で点滴や酸素吸入、病院のような酸素吸入ではありませんが、酸素吸入、投薬ができることでした。入院ができないまま数日が経過し、血中酸素飽和度が急激に下がり、救急車を要請し、救急車が到着したものの、入院調整を行うセンターからは、病院でできる対応と施設でできることは変わらないので入院は不可と言われました。施設職員が、このままでは亡くなってしまうと食い下がりましたが、それでも病院ではそれは同じだとの回答でした。その後、救急隊員も酸素投与量を二倍以上に増やして、何とか改善の見込みがあるということを証明し、交渉の上、何とか入院ができました。この方は、治療の後に施設に再入所され、御自分で歩き、施設で毎日の日課である新聞を読むなど穏やかに生活しておられるそうです。施設職員は、この方の元気な姿を見るたびに、あのとき諦めていたらと胸が苦しくなると話しています。
この事例から分かるのは、さきのアンケートで、このままみとってくださいと医療機関で診察が受けられずに亡くなった方の中には、入院加療をすれば、又は重症化する前に適時適切な医療が受けられれば回復された方があるかもしれないということです。高齢であっても施設入居者であっても、新型コロナの治療を受ける権利を奪うことは決してあってはならないことだと思っています。
高齢者施設クラスターを起こさないためには、感染の施設への持込みを防ぐこと、五類移行後も感染対策や集中的検査が非常に重要であることは間違いありません。現場の私たちも、引き続き対策を継続していきたいと思います。同時に、医療にアクセスできずに施設入居者が亡くなる事態を起こさないためには、陽性者の原則入院を徹底して施設内療養をなくしていくこと、万一クラスターが発生しても最小限に抑えられるようにすること、重症化防止のための治療と、そして重症化した場合に確実に入院加療できるようにすることが今最も必要なことです。
資料の七ページを御覧ください。
今後も、地域で感染が拡大すれば施設への持込みや感染拡大リスクは高まります。三月十日に出された感染症法上の位置付け変更に伴う医療体制及び公費支援の見直しでは、地域包括ケア病棟などでの陽性者の入院受入れの促進も出されましたが、本当に受入れが進むのかと非常に不安です。また、入院が必要な人が確実に入院できるようにするためには、施設と医療機関の連携強化に任せてしまうだけではなくて、保健所や都道府県による入院調整がやはり必要です。
五類移行に当たっては、私たちの連絡会だけではなく、全国の老人福祉施設の協議会は施設入所者の陽性者は必ず入院と求めていますし、老人保健施設の協会も、施設医師が重症化リスクが高いと判断すれば重症度にかかわらず原則入院を求めています。入院が必要な高齢者が必ず入院できるよう、そういったことを日本の隅々で行えるように切にお願いいたします。
最後に、高齢者施設や介護現場で今後感染が拡大しても高齢者に必要なサービス提供を続けるために必要なことについてです。
八ページを御覧ください。
クラスター発生や感染により困ったことや苦労したことで最も多かったのは、職員の感染により勤務体制が組めなくなったことです。職員が次々に陽性となり二十四時間のシフトが組めない、疲れ果てて精神状態が保てない、虐待してしまいそうだと職員が訴えた、このほか、保健所からは駄目だと言われたが、職員の少ないグループホームでは、陽陽介護、陽性者が陽性者を介護するということをせざるを得なかったなどの回答であふれました。
私の法人の特別養護老人ホームでは、二十人から二十四人の要介護ほぼ三以上の入居者の方を夜間は一人で介護しています。介護保険の基準の一・五倍の職員配置でこの状態です。平時から極めて少ない人数で介護しているところ、感染発生によって職員が休業し、さらに感染防護をしての介護ですので、過酷を極めています。職員体制が組めなくなることで、感染していないフロアや感染していない入居者の介護にも大きく影響し、感染していない方の入浴も全てストップしたという回答も出されました。感染症蔓延時にも福祉・介護サービスを継続するには、平時から余裕のある職員配置基準への見直しや担い手不足への対策を是非ともお願いしたいと思います。
また、事業の休止による大幅な減収、掛かり増し経費や施設内療養補助の事務手続も苦労したということが挙がっていました。
資料九ページを御覧ください。
五類移行後も継続すべき対策、対応としては、入院受入れ医療機関の拡充のほかに、ワクチンの無料接種の継続、掛かり増し経費の継続が多数を占めました。ワクチン無料接種は令和五年度は継続されると伺っていますが、高齢者と同様に、施設従事者も、そして在宅サービスの従事者の接種も必ず進めていただきたいと思っています。
また、アンケートでは、九四%が掛かり増し経費かそれ以上の経営への補助が必要と回答しています。病床逼迫で入院ができないために施設内での療養となり、応援体制を取るため、また陽性者を分離するためにデイサービスやショートステイを休業しています。この場合、感染発生がしていないこと、事業を休止しているということでデイサービスやショートステイは掛かり増し費用や介護報酬の特例からは対象外となり、何も補償されません。
これは高齢ではないんですが、ある障害者施設では、こういった休業によって八千万円の損失となったなど、事業継続そのものが危ぶまれるという状態です。高齢者や障害者の日常生活に不可欠な福祉サービスを安定して提供するには、事業を継続するというための支援が必要です。是非御検討いただきたいと思います。
最後の資料です。
これまで主に七波、八波での高齢者施設の現状をお伝えいたしました。その上で、今回の新型インフルエンザ特措法等の改正については、これまでの新型コロナ対策を踏まえていただきたい、検証していただきたいというふうに思っています。高齢者施設の実態や入院加療できずに亡くなった施設・自宅療養者について調査し、改善する対策を是非ともお願いします。そして、高齢者の死亡者の増加は国民生活に甚大な影響を及ぼす事態だというふうに認識いただいて、高齢者を置き去りにしないことに重点を置いて、新たな組織や司令塔が迅速で的確な措置を講じていただきたいというふうに願っております。
以上で私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。