小林信一の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(小林信一君) ただいま御紹介いただきました静岡県立農専大学の小林と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、一枚のこのレジュメを基にお話ししたいと思うんですが、既に日本経済新聞の五月二日号に今日お話ししたい内容、書いてあります。これは、今日はお持ちじゃないかもしれませんが、既に配付されていると思います。
 それでは、このレジュメに従ってお話ししたいと思います。
 まず、一番の酪農、畜産の現状ということについては、ここに書いてあるとおりですが、次の金谷参考人から具体的なかなり厳しいお話というものがあると思いますので、そちらに譲りたいというふうに思います。
 まず、御確認いただきたいのは、酪農、畜産の存在意義ということで、食料供給以外に、農地や環境の守り手ですとか、酪農教育ファームに代表されるような命の教育、もちろん雇用創出といったような様々な役割を持っているということ、これが前提だと思います。
 そして、これちょっと三番ですけれども、現在、酪農、畜産に起きていることというのは、地域の集中化、そして大規模少数化ということです。
 例えば北海道では、酪農の約、生乳生産の四割というのが北海道のしかも東半分、道東、道北が担っているということで、このことはすばらしいことではあるんですが、一面非常にリスクを持っているというふうに考えております。
 例えば、首都圏周辺の生乳生産が減少している中で、北海道からのフェリーによる生乳移送が今恒常化しております。ところが、二〇一八年に地震があって、全道ブラックアウトがありました、九月の五日でしたけれども。その結果、特にまた台風シーズンであったということで、フェリーが欠航するとか運べないということで、あわやスーパーで、首都圏のスーパーで牛乳が欠配されるという、そういうリスクがあったということで、それは全農さんを始めとして様々な生産団体の御苦労で、全国から牛乳を集めるということで何とか欠配は免れたというふうに聞いております。
 もう一つ、例えば肉牛繁殖経営、これも今、子牛価格が下落しておりまして、多くの経営者がやめていくということがあるんですけれども、その繁殖経営というのは、中山間地域で高齢者の方が、もう八十、九十の方がやっていらっしゃるという、それが今、価格下落に伴ってやめていかれるということが非常に多くなっているということで、これは中山間地域の農村の維持ということに非常に大きな問題になるんではないかと思います。
 それから三番目としましては、今問題になっております感染症の蔓延ですね。口蹄疫、先ほど、先日、韓国で再び出ましたけれども、二〇一〇年の宮崎では三十万頭以上の牛、豚を殺処分にしたということがありますし、鳥インフルエンザは、御案内のように、卵の価格が高騰する、供給が足らないというような状況がある。そして、豚熱が蔓延して、これも供給にかなり影を差しているということで、こういった地域集中あるいは大規模経営を行うということが非常にリスクがあるんだということをやはり知らしめているんではないかというふうに思います。
 四番目は、特定地域において、ふん尿問題で環境負荷への増大が高まっているということ。これは、例えば、道東なんかでは以前から水産業者とのあつれきということがありますし、九州地域では地下水汚染ということがやはり取り沙汰されているということで、畜産、酪農というのは、実は全国に散在する多くの方たちが畜産、酪農を行うということが正しい姿ではないかというふうに私見しております。
 四番目としましては、こうした畜産、酪農を支える現行の政策というのがこの三十年、四十年の間にどう変化してきたかということを私なりに考えました。残念ながら、そういう経営を支えるセーフティーネットの機能というのが徐々に失われているんではないかというふうに考えます。
 例えば、酪農について言うと、一九六六年に不足払い制が成立しました。これは、乳価紛争で大変なときに、生産者団体と乳業メーカーと、そして国、農林省が一生懸命話し合って、その着地点として不足払い制度というものをつくったと。これによって、それ以後の酪農が非常に発展していたというふうに考えております。
 それが、二〇〇一年の酪農・乳業対策大綱を受けて固定支払に変わってしまいました。この結果、所得補填機能というのは大幅に低下しまして、二〇〇八年、九年でやはり同じように餌高があって酪農家が非常に苦境に陥ったんですが、あのとき不足払い制度があったならば、当時の八倍ぐらいの補填を受けられたということで、あれほどひどい経営的なダメージはなかったんではないかというふうに思います。
 そしてもう一つは、先ほどの首都圏での生乳の需給調整といいましょうか、台風でなかなか、首都圏のスーパーで牛乳がなくなるんじゃないかという問題があるんですけれども、こういうものを調整していた指定生乳生産者団体の機能というものが弱まっているんではないかと。
 実は私は、二〇一八年の改定畜安法のときも参考人として意見を述べさせていただきました。そのとき、法案に対して危惧の念を表したんですけれども、結果的にはそのときのおそれが現実のものになっているんではないかというふうに思います。生産者団体の力が弱まってしまったということによって、過剰基調にある中で生産者による需給調整機能が失われるということで、更に経営が混乱していくということがあり得るというふうに思います。
 そして、資材や餌の高騰あるいは負債問題が繰り返し行われております。一九八〇年代にも、負債固定化の問題で、北海道の酪農家の三分の一が実質的に倒産したというふうに言われていました。そして、二〇〇〇年の、二〇〇七、八、九年ぐらいの餌高のときもそうです。
 こういったことが繰り返し行われているということに対して、セーフティーネットというのがやはり機能をしていないんではないかと。これは是非、肉牛ですとか養豚にはマルキンというのがあります。これ、まあいろいろ課題はあるというふうに思いますけれども、しかし酪農はマルキンさえもないと。是非、酪農マルキンというものを実現していただきたいというふうに思います。酪農は収入保険がありますけれども、これほとんど入っていませんし、酪農経営の悪化の要因というのはやはり餌ですとかそういう資材ですので、それをカバーするようなものに是非していただきたいということです。
 五番目は、畜産の持続的発展に必要な政策ということで、今、基本法農政の、基本法の見直しが行われていて、みどりの食料戦略システムとの合体というふうなことも言われているようですけれども、それに対しては全く賛成でございますが、どういうふうにみどり化していくかということであります。
 以下述べる提案といいましょうか提言は、実は二〇一三年に、今日資料でお付けしましたけれども、全国酪農協会等から提言ということで、これが三回目の提言だったんですけれども、行っておるものとほとんど変わらないものです。十年前に提案したものが依然として現実化されていないということに本当に残念で無力感を感じるんですけれども、是非今回それを実現、先生方のお力で実現させていただきたいというふうに思います。
 内容的には、先ほど申しましたように、所得を補填するような、補償するような制度で、これは諸外国、例えば米国においては乳価と飼料費の間の所得を補填する、補償するような保険制度があります。EUにおいてはもう三十年以上直接支払ということで、価格支持政策と切り離した直接的な所得を補償するというような制度があります。日本も直接支払、部分的にはあるんですが、それを全面的に展開していただきたいというふうに思います。
 もう一つ、みどり化との関係でいうと、自給飼料に基づいた畜産生産ということで、農地利用を基準にした直接支払制度、EUでは品目横断的な直接支払というふうにもう既に変わっておりますが、すぐには無理かもしれませんが、日本においても農地を利用するということに対して、農地を確保するというのは今の基本法の見直しの中で入ると思いますけれども、平時における食料安全保障というものの要でございますね、その農地を確保するためには、私は畜産的な利用というのが最もあるいは唯一の手段ではないかというふうに思っております。
 で、濃厚飼料依存からの脱却ということで、大変恐縮ですけれども、餌基金というものをやはり見直すということも場合によっては必要であろうと思いますし、あるいは、自給飼料生産の振興ということで、畜産的な活用というのは飼料生産だけではなくして耕作放棄地や林地を活用した放牧というものも当然考えられますし、あるいは、今問題になっているのは、例えば飼料米ですとか飼料用のホールクロップサイレージを作っても家畜の口に入るまで非常にだんだんと遠くなってしまっていると、輸送費だけでもう販売額が、販売費がなくなってしまうというふうなばかげたことが起こっているんですね。
 やはり、生産したところで使うということが一番であるということでいうと、集落営農で家畜を導入して耕畜連携を図るという方向が一つの方向ではないかと。具体的に、もう既に、例えば鳥取県の八頭船岡農場、これは旧村が一つの法人経営として行っておるんですけれども、余り条件の良くないところは耕作放棄地を放牧にして和牛を取り入れる、あるいはほかのところでも耕種生産を取り入れて多くの新規就農者を迎え入れているということがあります。
 事例の二としては、山口県の杵崎の里というところですが、ここは、耕作放棄地、今は二十五ヘクタールになっておりますけれども、そこを放牧によって再生して、しかも、ここでは地域の焼き肉店と連携して、放牧肥育、濃厚飼料をほとんどあげない肥育を行って、それを焼き肉店で提供して、非常に消費者の好評を得ているというふうに言われております。
 つまり、農地政策というのは、我々の目から見ますと、やはり米政策中心であると。例えば、飼料用稲ですとか、飼料用米ですとか、青刈りトウモロコシを水田で作った場合、飼料用稲の場合は、まあ収量によって違いますが、十万五千円、飼料用米は十万五千円、ホールクロップサイレージの場合は八万円、ところが、青刈りトウモロコシの場合は三万五千円というふうに大きな差があります。
 例えば、中山間地域直接支払においても、地目別の交付単価が、水田の場合は二万一千円に対して、畑は半分、採草放牧地は僅か千円というふうに大きな差がありまして、水田のあぜを切ったらこれ半分になってしまうんじゃないかというふうに現場の危惧する声も聞こえております。
 これは、段々畑を、水田を例えばオーナー制度で利用するというのが一つの手かもしれませんが、やはり畜産的に放牧するとか、そういう形で農地として利用していくというのが合理的な方法ではないかというふうに思います。
 それから、③としましては、先ほどの山口の例のように、これまでは輸入牛肉との差別化ということで霜降り重視ということで一生懸命やってきたんですが、そろそろそれを見直すような契機になっているんではないかと。いわゆるみどり化というものの内実としまして、霜降りをそれほど重視しないような肉牛生産の在り方というものも誘導するということも必要だと思います。それには、格付制度の見直しということもあるんではないかと。
 それから四番目としましては、クラスター事業で今一生懸命生産を拡大してきたんですが、それが残念ながらややもすると箱物行政になって、今は多額の借金を負って、この収益性が悪い中で再び負債問題が顕在化するということになりつつあるということを非常に恐れております。
 このクラスター事業というのは、本来は地域で畜産経営を支えるという言わばソフト事業だったはずなんですね。そこに立ち返っていただきたいと。そして、特に、経営を見守るようなコンサル事業というものをやはりもう一回充実していただきたいと。
 それから五番目には、余り畜産では言われていないんですけれども、種鶏、種畜ですね、国産化。これ、種苗法の改正の問題、改悪というか廃止の問題というのは様々問題になって、県が頑張っていらっしゃるわけですけれども、例えば養鶏は国産は数%しかありません。海外から輸入し続けなきゃいけないんですね。これはまさに食料安保にとってゆゆしき問題で、その海外の種畜会社も世界で数社しかないわけですね。独占状態です。ここを何とかメスを入れていただきたいと思います。
 最後に、担い手育成。これは新規就農者。やはり平時における食料安全保障の問題としましては、農地の確保と技術を持った担い手、若い人の確保ということで、これが充実、重要です。我田引水ですけれども、我が静岡県立農林環境専門職大学は、我が国初めての専門職大学であります。
 そして、最後に一点だけ。私たち……

発言情報

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発言者: 小林信一

speaker_id: 27855

日付: 2023-06-01

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会