水岡俊一の発言 (本会議)

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○水岡俊一君 立憲民主・社民の水岡俊一です。会派を代表して質問いたします。
 総理は、施政方針演説の中で、戦後七十七年がたった今、我々は再び歴史の分岐点に立っているとおっしゃいました。しかし、お話を聞く限り、問題や課題が山積している中、分かれ道のそれぞれの先に何があり、日本は一体どの道を進もうとしているのか全く理解できません。また、これまでの時代の常識を捨て去り、強い覚悟と時代を見通すビジョンを持ってとも話されましたが、これまでの常識を捨て去る判断は正しいと言い切れるのか、時代を見通すビジョンとは一体どんなものなのか、それらをお示しになるのが施政方針演説なのではありませんか。そうでなければ、国民の代表である国会議員も、テレビ、ラジオ、インターネット、新聞などを通して見聞きする皆さんも、総理の考えておられることがさっぱり分かりません。
 正直なところ、私は、演説をお聞きしてびっくりしました。あれもやる、これも大事、矛盾をはらんでいようが、とにかく何でもかんでもやるというお話で、一つ一つに深まりがなく、総理の意図や本気度が伝わってきませんでした。
 先日、民主主義について書かれたある本を読みました。政治にも政治家にも選挙にも私はまるで興味が持てない、どうでもいい、そう感じてしまう、楽しく笑顔で生活したい人間は近寄らないにこしたことがなさそうだと辛辣な言葉が続きました。これが多くの国民が感じているところだとすると、まさに日本の民主主義は崩壊寸前ではないかと私は身震いしました。
 そこで、最初の質問です。総理は、選挙の投票率が極めて低いことに代表されるように、日本の民主主義が危機的な状況であることを認識されていると思いますが、その原因はどこにあると思われますか。
 続いて、質問二。今こそ、総理始め閣僚が、国民からの信頼を得た上で、熱意と誠意を持って国会で政策を語ることが求められていると考えますが、総理の見解はいかがですか。
 ここで、国会における議論について基本認識を問うておきたいと思います。
 総理は、演説の中で、政府の検討も決断も、政府における議論も国会における議論も全て重要かつ必要であり、それらに等しく全力で取り組むと意思を表明されました。これについては、はっきり申し上げて、憲法の定める議会制民主主義の認識が根本から間違っていると言わざるを得ません。なぜなら、憲法に定められた国民主権に基づき、内閣法第一条二項には、「内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う。」とあり、行政権の行使に対する民主的統制の重要性を強調している趣旨に反しているからです。国会審議をせずして、政府が秘密裏に議論、検討し、勝手に決議することは、議院内閣制の下での国会による内閣監督の機能が全く損なわれているわけです。
 そこで、質問三。総理は、政府の議論や決断を国会の議論と同等だと正当化することは憲法と内閣法を犯すことであるとの認識がありますか。岸田政権になってからも、閣議決定を先行させ国会での議論をないがしろにしていることは、国民主権を真っ向から否定していると考えますが、いかがですか。
 続いて、国会の役割という観点で、参議院に対する総理の認識についてお伺いをします。
 二〇〇七年一月三十日、参議院本会議で民主党の輿石東議員会長が次のように述べています。参議院は、時として衆議院のカーボンコピーと呼ばれることがあるが、二院制はほとんどの先進国で採用され、安定した政治のためには欠かすことのできない制度である。今ほど国民生活の全ての分野において税金の使い方、使われ方が問われているときはない。この分野で参議院の果たす役割は大きい。
 これに続く質問で、自民党の青木幹雄議員会長が次のようなことを発言されました。決算審査の強化は、参議院の独自性の観点からのみで主張しているわけではない。深刻化する少子高齢化や財政状況の悪化など様々な課題を克服し、我が国が永続的に発展していくためには、決算を予算に反映させ、行財政執行の適正化を図ることが不可欠と考えるからである。
 このようなやり取りが過去に何度も繰り返され、参議院における決算重視、参議院の存在意義の確認が与野党を超えて展開をされてきました。当時を知る議員も少なくなってきましたが、紛れもない参議院の歴史として刻まれ、その精神は生き続けています。
 そこで、質問四です。改めて、総理から参議院の存在意義についてどのようにお考えであるか、お示しください。
 質問五です。昨年末の臨時国会では、政府・自公政権は、あらゆる追及から逃れたい一心で一刻も早く店じまいをしたいと、従来から参議院で重要視されてきた決算審査の本会議をすっ飛ばして強引に閉会しました。このことにおける総理の責任をどうお考えか、お聞かせください。
 演説の中での矛盾に満ちた説明の典型は防衛力についてです。
 反撃能力の保有や大幅な防衛予算増額など防衛力の抜本的強化をうたいながら、安全保障政策の大転換ですが、憲法、国際法の範囲内で行うものであり、非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての我が国としての歩みをいささかも変えるものではないとおっしゃる。これが矛盾でないと誰が言えるでしょう。
 総理が率いる宏池会の重鎮である古賀誠自民党元幹事長は、敵基地攻撃能力を持てば、完全に専守防衛を逸脱してしまうのではないかと警鐘を鳴らしています。かつて内閣で安全保障を担当された柳澤協二元内閣官房副長官補は、台湾問題をめぐって万一有事となった場合は安保法制に従って対応すると総理は言うが、これは事実上参戦するということ、敵基地攻撃、つまりミサイルの撃ち合いという状況で、日本が戦場になると、国民の命を守ることは不可能と、専守防衛からの逸脱について重大な危惧を指摘をしています。
 そこで、質問六です。総理、安全保障政策の大転換と平和国家としての歩みをいささかも変えないことが矛盾しないとすれば、その理由を御説明ください。
 質問七。専守防衛から逸脱するケースを綿密にシミュレーションされているとすれば、逸脱しないポイントはどこにありますか。
 質問八。これほど重大な安全保障政策の転換について、国会に詳しく説明せず、議論する場を設けないまま閣議決定し、広く公表したのはなぜですか。
 質問九。総理は、絶対に戦争はしないという決意と確信がありますか。まさか時と場合によっては戦争もやむなしと考えていることはないでしょう。お答えください。
 さて、地球が誕生してからの四十六億年を四十六年に縮めたとすると、産業革命が始まったのは今から約一分前のことになります。このたった一分間で、人間活動を起因とする温暖化が起こり、人間の様々な需要による開発が世界の森林を破壊し、生物多様性に多大な損害を与えました。人間の罪深さを痛感するところです。
 総理が気候変動対策に関して述べられたのは、もはや待ったなしとなっているのが深刻さを増す気候変動というくだりだけでした。認識の薄さを思い知らされます。一歩でも前進させなくてはならない気候変動対策は排出削減対策の強化であり、今回の通常国会でその立法提案がないことは甚だ疑問です。
 二〇三〇年度に温室効果ガス排出を四六%削減し、さらに五〇%の高みを目指すという目標達成のために、もはや残された時間はありません。立憲民主党では、緻密なデータを分析、シミュレーションして、二〇三〇年六〇%の削減も可能であるとエネルギー転換戦略で提案をしています。
 質問十です。総理、この目標に変わりはありませんか。そして、目標達成の道筋をどのように見通していますか。
 昨年開催されたCOP27の首脳会議で、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、我々は生死を懸けた闘いのさなかであり、しかも敗北しつつある、我々は気候変動の地獄へと向かう高速道路をアクセルを踏んだまま走っていると発言しています。
 二〇三〇年までの重要な十年間は、もう残り七年しかありません。スウェーデンでは昨年、環境・気候問題担当大臣に、史上最年少、二十六歳の女性、ロミーナ・ポルモタリさんが起用されました。思い切った若手起用です。
 立憲民主党は未来世代のための法案も作っており、二〇五〇年代を人生の真っただ中で生きていく今の二十代の人たちを環境行政の中心に据えた将来問題研究チームをつくって、日本の環境行政を進めていくというようなビジョンが必要だと私たちは考えています。
 質問十一です。日本は地獄へ向かうアクセルを踏んだままなのに、総理の頭は思考停止状態ですか。さて、どうします。急ブレーキを踏む判断は付きましたか。気候変動に関する思い切った政策を実行するおつもりはありませんか。
 二〇二〇年秋、日本学術会議会員候補のうち、六人のみの任命を当時の菅政権が理由の説明もなく拒否しました。二年がたった昨年末、日本学術会議に組織改革を求める方針を岸田政権が示しました。私は、この方針文書を一読して、極めて異様だと感じました。それは、A4用紙でたった三枚の文中に、政府等と問題意識や時間軸を共有という文言が四回も出てくるからです。
 何を勘違いしているのでしょうか。そもそも、日本学術会議法には会議の独立性が明記されています。アカデミーは政府の有識者会議や諮問会議ではありません。
 そこで、質問十二です。独立した存在である日本学術会議は、政府等と問題意識や時間軸を常に共有する必要はありません。むしろ、時には異なる目線で課題を提起する必要があると考えますが、総理、いかがですか。
 その後に示された具体化検討案では、今次通常国会で関連法案の提出を目指すことなどが含まれていました。任命拒否問題を機に、日本学術会議は改革方針をまとめ、実行に取り組んでいます。そうした事実を無視し、立法事実もなく拙速な法制化を進めることは認められません。このことは、ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章日本学術会議会長も懸念するとおりです。
 質問十三です。学術会議側の進めている改革を実行させずに日本学術会議法の改正を急いで行おうとするのはなぜですか。今回の法改正の根拠となる立法事実をお示しください。
 十七歳から十九歳の若者で将来必ず結婚すると思っているのは僅か一六・五%しかいないという驚くべき結果が、日本財団の行った十八歳意識調査で分かりました。一方、結婚願望について尋ねると、六五%以上があると答えているのです。
 総理、この意味をお考えください。婚姻の自由は憲法で定められており、結婚しないことも自由なので、結婚を押し付ける必要はありません。しかし、若者が結婚をしたいのにできないというのは大きな問題です。
 総理は、年頭の記者会見で、異次元の少子化対策に挑戦し、若い世代からようやく政府が本気になったと思っていただける構造を実現するべく大胆に検討を進めると述べられました。私は笑ってしまいました。やっぱり政府はまだ本気でなかったのだと誰もが認識したでしょう。そして、いまだに本気だとは思えない。
 異次元の少子化対策という言葉。次元が異なるということは、これまでの小粒で的外れな対策ではなく、例えば多様な家族の在り方を認めない現在の婚姻制度を改めたり、雇用制度などの社会構造やライフスタイルを抜本的に改革するなど、従来とは全く発想を変えてこそ異次元と言えるのではないでしょうか。
 そこで、質問十四です。総理、異次元の少子化対策の異次元とは具体的にどのような意味ですか。少子化対策の一環として、多様な家族の在り方を認めない婚姻制度を改革し、選択的夫婦別姓制度や同性婚を導入する考えはありますか。
 そもそも世の中の皆さんは、これまで最低限の少子化対策すら講じていないのに、一足飛びに異次元なんて信じられないと思っています。子供関連予算がOECDで最低水準であると岸田総理も発言しており、優先して確保するべきは防衛予算より子供予算です。
 そこで、質問十五です。防衛予算は五年間で四十三兆円をと明確です。対して、子ども・子育て予算はいつまでに幾らを投入するつもりでしょうか。もし今示せないとすると、やはり優先順位は子ども・子育てよりも防衛ということでしょうか。総理、お答えください。
 産めよ増やせよは時代錯誤です。政府に少子化で国が滅びると言われて、じゃあ出産しようと思う若者がいるでしょうか。ナンセンスも甚だしい。生きにくい社会に人は増えません。安心して子育てできる環境があれば、子供は自然と増えていきます。
 新型コロナの拡大から約三年。政府は、新型コロナが社会経済活動に制限を掛ける疾病であるため、感染法上の位置付けを変更して五類にする方向で議論を進めることを発表しました。しかし、類型見直しの議論は医学的な見地から慎重に行うべきであり、これまでに得られた医学的データや臨床記録を客観的に検証、分析し、それを基に冷静な判断と対応が求められます。
 そこで、質問十六です。二類、五類の二者択一ではなく、新型コロナに合った類型を考えるべきとの指摘がありますが、総理のお考えをお聞かせください。
 質問十七。政府が国際クルーズ客船の受入れを再開しました。二〇二〇年に発生したダイヤモンド・プリンセス号の集団感染を重く受け止める上で、クルーズ客船の受入れ再開をどのような場で議論し、どのような判断で認めることになったのか、御説明ください。
 全国の学校で教員不足が深刻です。政府の無策により働き方改革が進まない中、二一年度病気休職者は過去最高の八千三百十四名に上り、心の病で一か月以上休んだ教員は何と一万人を超えているのです。
 沖縄のとある小学校でついに信じられない出来事が起こりました。病気で休まれた先生の代わりを見付けられないことから、一年生の一クラスを閉鎖することとなったのです。年度途中の学級解散でクラスは解体され、子供たちは他のクラスへ割り振られました。子供たちのショックはどれほどであったか、想像するだけで胸が締め付けられます。各地でこのような事態が起きてしまうほど教員不足は深刻です。
 総理は教職員の処遇見直しを通じた質の向上と述べておられますが、質どころか、そもそも教員がいない状態です。
 そこで、質問十八です。各自治体は教職員を何とか確保しようとしていますが、焼け石に水の状態。地方自治体に責任を押し付けている場合ではありません。国として根本的な対応策が必要だと考えますが、総理、いかがですか。
 二〇二三年度、公立小学校の教員採用試験においては、十二の自治体で採用見込み数より合格者数が下回る深刻な状況となっています。また、東京都の教員採用試験では、新年度より教員免許を持たない二十五歳以上の社会人でも受験できるようにしました。深刻な教員志望者減少を受け、無免許の方でも教職を検討してほしいとアピールしています。
 総理、このことの意味を御理解いただけますか。自民党は十四年前に不適格教員排除とばかりに教員免許更新制度を導入しました。予算を渋って適切な教職員配置を行わず、その上に定額働かせ放題を押し付けて、結果としてこの有様です。
 質問十九。総理、文教政策の失敗によりこのような状況を生んだ与党・自民党の責任をどのように考えますか。そして、今後の文教政策をどのように転換していくおつもりなのか、お答えください。
 質問二十。財務大臣に聞きます。ここまで教員不足が深刻化している中で、依然として教職員定数の合理化を前面に出すことにどんな意味や思慮があるのか、お答えください。
 総理が演説で触れられた包摂的な経済社会づくりについてお尋ねします。
 私たち立憲民主党は、全ての人に居場所と出番のある共生社会を目指していますが、今の政府が目指している社会は方向性が大きく違うように思えてなりません。
 二〇一四年に日本が障害者権利条約を批准してから、私たちの暮らしの中でバリアフリーや合理的配慮が進んできました。この参議院も同様です。批准後に日本がどのように取り組んできたのかを国連の障害者権利委員会が昨年初めて審査しました。
 日本政府への勧告は全体で十八ページにも及び、他の国への勧告と比べても分量が多いものでした。その中で、国連が勧告の中でより力点を置き、強く要請とした一つが日本のインクルーシブ教育についてです。
 インクルーシブ教育は、全ての子供たちが国籍や人種、宗教、性別、貧富の差、障害の有無にかかわらず共に学べる教育のことです。国連が日本政府に強く要請したのは、分離された特別支援教育を中止せよということでした。日本では、障害がある子供たちが地域の学校になかなか受け入れてもらえず、特別支援学級、学校へ行くことがその子のためだと教育委員会が勝手に決め付けている実態があり、強く非難されているのです。
 インクルーシブ教育への転換で日本は世界から大きく後れを取っています。政府の行っている特別支援教育の推進は、分離教育であってインクルーシブ教育ではありません。それを国連に指摘されています。ところが、国連のこの厳しい勧告に対して、驚くことに、文部科学大臣は特別支援教育の中止は考えていないと宣言したのです。
 総理にお聞きします。
 質問二十一。国連の勧告についてどのように受け止めていますか。勧告に従い、分離教育をやめませんか。
 質問二十二。日本が進めているインクルーシブ教育システムと国際的なインクルーシブ教育には大きなギャップがありますが、その隔たりを埋めていくつもりはないのですか。
 質問二十三。総理のおっしゃる包摂的な経済社会づくりとは何ですか。また、多様性について触れるとき、あえて経済と付けた意味を教えてください。
 日本の人口ピラミッドは、もはやピラミッドの形ではなく棺おけ型と呼ばれ、現在は年間六十万人も人口が減少しています。二一〇〇年には、日本の人口は約六千万人になると予測をされています。二一〇〇年というと遠い未来のように感じるかもしれませんが、今年おぎゃあと生まれた赤ちゃんが八十歳になる頃がまさに二一〇〇年です。そう思えば、二一〇〇年は全く遠い未来ではなく、既に当事者がいる近い未来なのです。
 その未来世代のため、私たちがきちんと当事者目線で政策決定ができているのか、政府はもちろん、ここに座る皆さんにも改めて考えていただきたいのです。もっと良い未来のため、もっと良い未来のため、総理及び大臣の真摯な答弁を求めまして、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕

発言情報

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発言者: 水岡俊一

speaker_id: 27705

日付: 2023-01-26

院: 参議院

会議名: 本会議