杉尾秀哉の発言 (本会議)
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○杉尾秀哉君 立憲民主・社民の杉尾秀哉です。
私は、会派を代表して、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案について、断固反対の立場から討論を行います。
まず、冒頭に申し上げます。
マイナンバーカードをめぐる深刻なトラブルが次々と明らかになり、マイナンバー制度に対する国民の信用は地に落ちました。共同通信の最新の世論調査では、マイナンバーカードの活用拡大に不安だという人が実に七〇%にも達しています。こうした状況にもかかわらず、今週水曜日に法案の委員会質疑が打ち切られ、討論と採決が行われました。国民の命と健康や、個人情報保護などをめぐる不安の声にでき得る限り応え、熟議の府の参議院らしい充実審議を求めた我々の声が踏みにじられたのは残念でなりませんし、また、断じて許されるものではありません。ここに満腔の怒りを込めて抗議します。
事の発端は、マイナンバーカードを使ったコンビニの証明書交付サービスで別人の住民票が誤って交付されているのが発覚したことでした。最初は小さな報道でしたが、その後、参議院での審議が本格化するにつれて徐々に問題が拡大、マイナ保険証での別人の情報へのひも付けから、マイナンバーと預貯金口座をひも付ける公金受取口座の登録ミス、さらにはマイナポイントの別人への付与など、トラブルの連鎖が続きます。
これまでに分かっているだけで、コンビニでの証明書サービスの誤交付が、住民票、戸籍の一部と印鑑登録証明書など、八つの自治体で二十七件、マイナ保険証での別人の個人番号とのひも付けが七千三百十二件で、うち薬剤情報などの閲覧事例が五件、公金受取口座の登録ミスが十四自治体二十件、マイナポイントの誤付与が九十七自治体百二十一件などとなっています。
現在、各自治体や健保組合などで件数やデータ等を精査中ですから、トラブルの全貌はいまだ闇の中、まさにいつまで続くぬかるみぞです。
しかし、これだけ深刻な事態が次々と発覚しても、河野大臣を始めとして、デジタル庁や総務省、そして厚労省など担当者の答弁はまるで人ごとのよう。口先では反省の意を示し、深刻な風を装いながらも、システム業者や現場の自治体、保険者、それに共通端末の操作を誤った住民など、利用者らに責任を転嫁するかのごとき弁解に終始したのは誠に遺憾と言わざるを得ません。
更に深刻なのは、これらの重大なトラブルが去年の春から夏頃までの段階で各自治体から総務省やデジタル庁に報告されていたにもかかわらず、情報共有が担当者止まりで、大臣はおろか幹部にも報告が上げられていなかったらしいことです。もちろん、大臣や幹部が知っていて公表しなかったら大問題ですが、今年五月の一連の問題発覚まで大臣や幹部が知らなかったというのはもっと大問題、全く組織の体を成していません。
ひたすらマイナンバーの用途拡大とマイナカードの普及に血道を上げる河野大臣らに担当者がそんたくしたのかもしれませんが、上司にも報告せず、国民にも知らせず、こっそりとシステム改修などトラブル処理を進めていたのは、事実上の隠蔽工作と言われても仕方がないでしょう。ちなみに、足立信也大分市長は、誤登録が去年の十一月に発覚し、デジタル庁に報告したのに、デジタル庁は自治体名を公表しない姿勢だったと明らかにしています。
委員会での質問に対する河野大臣や政府参考人の知らなかったという答弁の連発を聞いて、私はまさに開いた口が塞がりませんでした。と同時に、こんな組織には国民の大事な個人情報は任せられないとも思いました。日本の官僚機構は一体どうなってしまったんでしょうか。
問題の根底にあるのは、政府が今年三月末までに全国民にマイナカードを行き渡らせるという目標を掲げ、交付率アップをしゃにむに目指して総額二兆円もの予算を投じたマイナポイントや、期限を切った健康保険証の廃止などの諸施策を強引に進めてきたことにあります。その拙速な政策のツケがここに来て一気に噴き出したと言わざるを得ません。
また、様々なトラブルが続発する中で浮かび上がったのが、マイナンバーというシステム自体が抱える根本的な問題です。これは決して偶然ではありません。利活用の範囲をどんどん広げた結果、付随するシステムのバグや人為的ミスが次々と発生し、その都度対処療法で済ませようとしているのはまるでモグラたたきのよう。かかる事態の深刻さを把握しようともせず対処療法を繰り返す政府に、世界でも例を見ない前代未聞のマイナンバーという巨大システムを果たして適切に運用できるのか、国民の不安と疑念は膨らむ一方です。
こうした一連のトラブルの中でも、国民生活に最も重大な影響を与えかねないのは、マイナカードと保険証の一体化と健康保険証廃止問題です。
そもそも、カードの取得自体は申請主義で任意であるのに、国民皆保険の下での健康保険証を一方的に廃止し不利益を生じさせることは断じて認められません。とりわけ、障害がある人や介護を必要とする高齢者など、社会的に弱い人たちをより困難な立場に追い込みかねない極めて深刻な問題です。
実際の医療現場ではマイナ保険証をめぐる混乱が続いていて、例えば全国保険医団体連合会の調べでは、オンライン資格確認システムを運用している医療機関の何と五九・九%で他人の情報がひも付けられていたなどのトラブルが発生、また保険加入の資格が確認できず窓口で医療費が全額自己負担となったケースは実に三百九十三件にも上るそうです。それでも今はまだ紙の保険証で確認できるから何とかなりますけれども、来年秋に保険証が廃止されたら一体どんな混乱が起きるのか、想像するだに恐ろしい。
また、入所者の保険証を預かるところが多い高齢者施設では、九四%がマイナンバーカードの管理ができない、このように回答しています。
さらには、廃止後の健康保険証に代わる資格確認書の運用も全てはこれからということで、幾ら何でもこれはでたらめ過ぎではないでしょうか。
政府の一連の対応に、今、医療現場や介護現場には不安と怒りや抗議の声が渦巻いています。こうした国民皆保険や地域医療の崩壊にもつながりかねない施策を、私たちは絶対に認めるわけにはいきません。来年秋の健康保険証廃止方針を撤回するか、さもなくば保険証に代わる資格確認書を全ての国民に職権で交付すべきです。
なお、今回の束ね法案には、マイナンバーのなし崩し的な用途拡大や、公金受取口座の登録促進のために一定期間内に登録不同意の回答がなければ自動的にマイナンバーと口座をひも付けすること、さらには戸籍などの記載事項に氏名の振り仮名を追加する項目も盛り込まれていて、これらの法改正が地方自治体や国民に与える影響も無視できません。
もちろん、一連の法案の中には、国民の利便性向上につながり、賛同できるものもあることは事実ですけれども、それ以上に懸念点が多過ぎることや国民に対するデメリットの大きさなどを考えると、こうした法案審議のやり方そのものに重大な疑義があることも申し述べます。
冒頭申し上げたマイナ保険証の誤登録やマイナポイント、公金受取口座など一連のトラブルを受けて、岸田総理は河野大臣に対して、データやシステムの総点検などの徹底を指示しました。また、マイナ保険証の別人登録でも、厚労大臣が医療保険者に対して全ての加入者データの点検を指示したばかりです。
そこで、再度申し上げます。
これらの作業が進められているさなかに法案を可決させるべきではありません。まずは、ここで一旦立ち止まり、制度の不備など実態を把握し、トラブルの全容を解明した上で、再発防止のための対策について再検証すること、そして何より、問題の根底にあるマイナンバー制度とマイナカードに対する国民の不安と不信を解消することが先決です。
そのためにも、政府にはマイナカードの運用を一旦停止する勇気を持っていただきたい。そして、天下の愚策である保険証廃止方針を撤回していただきたい。それまでは絶対に法改正を急ぐべきではありません。
今回の一連の審議の過程で、誰一人取り残さないデジタル化という政府のスローガンが全く空疎なものであることがはっきりしました。何が誰一人取り残さないですか、全くうそじゃないですか。河野大臣の責任は極めて重い。
私たちこそが真の国民のための行政を推進する政党です。そのことを強く強く申し上げて、反対討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)