柴愼一の発言 (本会議)
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○柴愼一君 立憲民主・社民の柴です。柴愼一です。
私は、会派を代表して、議題である我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案について、反対の立場から討論いたします。
本法案に反対する理由の第一は、財源論の前提となる今後五年間で総額四十三兆円、GDP比で二%に引き上げるとする防衛費の増額が身の丈に合わない過大なものと考えるからであります。
政府は、現実的なシミュレーションを通じて予算を積み上げた結果この額になったと主張しますが、そのシミュレーションが具体的にどういったものなのか、委員会質疑で何度問うても、ついに詳細を明らかにすることはありませんでした。
法案の了承を求めるのは政府の側です。予算総額の算定根拠を具体的に示さず、ただ額面だけ認めろと言われても、賛成できるはずがありません。幾ら安全保障には機密性が重要だとしても、これでは国権の最高機関である国会軽視と言わざるを得ず、国民への説明責任を果たそうとする姿勢も見られません。国会において真に必要な防衛力に関する深い議論ができないならば、そのための財源論の議論など深めることができるはずもありません。
本法案は、防衛財源のうち税外収入一・五兆円を確保するものですが、令和五年度予算において本法案で措置する以外の税外収入三・一兆円が繰り入れられており、今年度の防衛予算の執行に何も問題がないことが既に証明されています。進行年度である令和五年度の外為特会の剰余金を本法案によって先取りする必要も全くありません。つまり、本法案は廃案にしても何も問題は生じないのです。
防衛予算を総額ありきで議論を進めた結果、政府が苦し紛れに提出した財源案には、当然ながら幾つもの綻びが生じています。
政府は、税外収入、決算剰余金、歳出改革、そして税制措置、増税という四つの財源を全て防衛費増額のために投入するとしていますが、まず、何よりもその額の見積りが余りにも甘いことを指摘しなければなりません。
委員会質疑でも再三指摘されたように、決算剰余金は直近十年間の平均から毎年〇・七兆円、七千億円ほど生み出せると政府は想定しますが、コロナ禍で膨らんだ令和二年度の決算剰余金の異常値を含んだ平均値を安定財源だという政府の主張に全く説得力はありません。
また、政府は、防衛費の増額分の財源に赤字国債は用いないと強弁しますが、通例、決算剰余金は補正予算の財源として利用されており、決算剰余金を防衛費の財源にするとなれば、補正予算を組むときに結果として赤字国債を発行せざるを得なくなります。防衛財源には事実上国債が使用されるのです。加えて、決算剰余金の元となる予算には国債が含まれており、赤字国債ロンダリングとのそしりを免れることはできません。
歳出改革についても、委員会で何度も指摘されたとおり、政府は、歳出削減ではなく、物価の上昇等で見込まれる予算の伸びを防衛費に振り替えているだけで、実際に何かの歳出を削って防衛費を捻出しているわけではありません。
来年度以降、いかなる歳出改革を行い財源を確保するのか、全く見通しが付いていない中で、五年間で総額三兆円余りの金額を見込むのは、財源論として余りに無責任です。
東日本大震災の復興財源フレームは、歳出削減についても具体的な予算項目を挙げて計上していました。当時の政府の財源に対する真摯な態度を見習い、現政府は法案を出し直すべきです。
そして、何より税制措置、増税については、復興特別所得税のスキームを流用し、実質的な増税なのに、あたかも負担が増えないと見せかける悪質極まりない措置です。これは、被災地の方々のみならず、税を通じて被災地の復興を支援しようとしてきた全ての納税者に対する裏切りにほかなりません。
福島での地方公聴会では、復興財源に影響がないことを理解された上で、苦しく複雑な思いを聞かせていただきました。被災地、被災者の皆様にそんな思いをさせてしまっていることを政府はどう認識しているのでしょうか。
また、たばこ増税は、取りやすいところから取っているだけで、それがなぜ防衛費に回されるのか、何の理屈もありません。目的税としての税の理論は完全に崩壊しています。
加えて、さきに明らかになった骨太の方針原案には、税外収入の上積みやその他の追加収入を含めた取組状況を踏まえ、増税時期を柔軟に判断するとされるとともに、新型コロナウイルスで膨張した歳出の構造を平時に戻していくとの方針が示され、決算剰余金の見積額が確保できないことが容易に想定できます。法案の審議をしている最中にその議論の土台となる政府の方針がぐらぐらと揺らいでいるのです。それらの検討を踏まえて、法案を出し直すべきです。
総額ありきの防衛費増額のためにあらゆる財源をそこに投入するとなれば、結果としてほかの政策を実行する財源確保に大きな、重大な影響が生じます。
最も象徴的に表れているのが、さきに決定されたこども未来戦略方針での財源です。政府は、少子化対策の具体的な財源を示すことができず事実上先送りしたのみならず、当面の財源をつなぎ国債の発行を通じて賄うことを示唆しています。
防衛費増税のしわ寄せが、これこそまさに有事とも言える少子化対策のための財源確保に深刻な悪影響を及ぼしていると言わざるを得ません。
結局、防衛費の世界だけ国債に頼らないと言って財源が確保できたように装っても、財政全体で見れば国債発行に歯止めは掛からず、我が国の財政余力は確実に損なわれていくのです。
財政余力の毀損は、安全保障上の有事となれば事態は深刻です。財務省自身も、有事の際の資源や防衛装備品確保に伴う財政需要の大幅な拡大に対応するためには、国際的な市場の信認を維持し、必要な資源を調達する財政余力の重要性を認識しているとのことですが、実際にやっていることは真逆です。
防衛力確保と少子化対策は、与野党の別なく、どちらも我が国にとって極めて重要な政策課題です。財政余力を確保しつつ、どちらの課題にも的確に対応していくためには、防衛費と少子化対策の予算規模と財源を一体的に検討することが必要です。
立憲民主党は、現下の安全保障環境の変化に基づく問題意識から、真に必要な予算を積み上げた結果として防衛費の一定の増額につながっても理解できるとしてきました。しかし、五年間で四十三兆円という巨額の防衛費増額は、身の丈に合わない過大な防衛費と言わざるを得ません。
また、政府・与党が容認したスタンドオフ防衛能力等による反撃能力、他国領域へのミサイル打撃力の保有については、専守防衛を逸脱する可能性があり、防衛政策の大きな転換と言えるものですが、政府内での一方的な検討で決められたものであり、国会での徹底した議論から始めるべきです。
今般の防衛力の抜本的強化の方針において、政府は本当に有事を想定しているのか疑問視せざるを得ません。その最たるものが、今回の防衛力整備計画において国民保護についての措置が四十三兆円のうちたったの二兆円、つまり五%にすぎないという点です。
最近のJアラートに関わる対応についても、残念ながら現体制では十分でないことが明らかになりつつあります。避難施設についても、各自治体による避難場所の指定は進んでいるものの、本当に安全に身を守ることができるシェルター整備については、令和四年度の第二次補正でようやく調査研究が始まったばかりです。しかも、予算額はたったの七千万円。こうした事実は、政府が本当の有事というものを想定していないとしか言えないものです。
国民の被害、犠牲を徹底的に回避するための措置が十分でないままミサイル能力などを強化するのは、防衛費増額が目的化していると言わざるを得ません。
そもそも、我が国が反撃能力を保有、強化していくことは、矛と盾を前提とした日米同盟を質的に転換するものです。日米安保体制の下でなぜ反撃能力を保有するのか、明確な説明もありません。
むしろ専守防衛の観点から、原発などの重要施設の防御、国民保護などにより多くの予算を使い、従来の日米同盟の役割分担を堅持し、平和外交に徹すること。政府は、外交には裏付けとなる防衛力が必要としていますが、それは裏を返せば、強い者の意見が通る、強い者の意見しか聞かないと言っているものであり、岸田総理の言う法の支配を否定し、力の論理にくみするものではありませんか。日本がこれまで行ってきた平和外交の努力を誠実に積み重ねていくべきです。
我が国が直面する課題は多岐にわたります。それぞれに的確に対応し、国力としての総合的な防衛力を強化していくため、本法案は一旦廃案とし、防衛費のみを聖域化することなく、現に直面する有事である少子化対策と一体で検討する、その重要性を強く申し上げ、反対討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)