半田滋の発言 (予算委員会公聴会)

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○公述人(半田滋君) 本日は、こういった予算委員会の場で私の意見を発表する機会を与えていただき、ありがとうございます。
 早速意見を申し述べます。
 政府は、昨年十二月の閣議で安全保障関連三文書を改定をし、安全保障政策を大転換しました。改定された国家安全保障戦略には、「本戦略の内容と実施について国民の理解と協力を得て、国民が我が国の安全保障政策に自発的かつ主体的に参画できる環境を政府が整えることが不可欠である。」とあります。そこで、本日は、国民の理解と協力が得られるかという視点で三文書を見ていきます。
 政策は、専守防衛を定めた憲法との整合性、法的、運用面での課題、費用対効果の三点について検証が欠かせないのは言うまでもありません。しかし、今回の安全保障政策の大転換は、国会における議論を経ることなく、閣議により決まりました。その中身を議論すべきこの国会、通常国会においても、現状では国民の理解と協力を得られるほど詰め切れていないと指摘することができます。
 資料一を御覧ください。反撃能力について防衛省がまとめたものです。反撃能力は、やむを得ない必要最小限の措置として行うことが明記されています。憲法の制約の下で行う反撃ですから、必要最小限であるのは当然のことです。
 二月二十七日の衆議院予算委員会で長妻昭議員から、戦闘機による爆撃、上陸作戦も解禁されたのかと質問された岸田首相は、ミサイルによる対処が基本としながらも、スタンドオフ防衛能力以外にもあり得ることは否定できないと答弁しています。現に三文書にも、スタンドオフ防衛能力等を活用するとあります。末尾に等などがあることにより、ミサイル反撃以外の方法も想定していることが分かります。戦闘機による爆撃や上陸作戦は戦争そのものと言えます。緊急避難的にミサイル基地の破壊を目指し戦争を呼び込むとすれば、必要最小限の措置と言えるでしょうか。その点に大きな疑問があります。
 また、資料一のとおり、反撃能力は武力の行使の三要件に基づくとあります。武力行使の三要件は平和安全法制で定められています。
 仮に、武力攻撃事態が発生したとします。資料二を御覧ください。これは、防衛省が作成した地上発射型の中距離ミサイルについての一覧表です。注目されるのは、中国が合計二千二百発のミサイルを保有している点です。米国防総省は、中国のミサイルのうち、千二百五十発が日本を射程圏に入れているとしています。日本が巡航ミサイル、トマホークを持ったとしても、その反撃能力は限定的であり、中国のミサイルが強力であることを示しています。
 次に、資料三を御覧ください。これも防衛省の資料です。
 昨年、北朝鮮は多くのミサイルを試射しました。注目されるのは、変則軌道との表記が多いことです。米国で開発され日本が導入したミサイル防衛システムは、変則軌道のミサイルに対してはほとんど無力です。武力攻撃事態に際し、中国や北朝鮮に対してミサイルで反撃することは、倍返しどころか日本を壊滅的被害に導くおそれがあると言えます。
 今年一月、米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所、CSISが、二〇二六年に中国が台湾に着上陸侵攻するというウォーゲームを実施し、分析したレポートを発表しました。レポートは、中国本土を攻撃する計画を立ててはならないとし、実際のウォーゲームでも、艦艇、航空機への攻撃にとどまり、中国本土を攻撃対象としていません。核戦争への発展を避けるためです。
 米国でさえ行わない中国本土への攻撃を日本は行うのでしょうか。それとも、核保有国か否かの違いによって反撃能力の行使についてさじ加減をするのでしょうか。このままでは国民の理解と協力を得るのは困難と言えます。
 政府は、ミサイル発射の着手をもって反撃可能との見解を示していますが、三文書には着手の定義は示されておらず、今国会においての野党からの質問に対しても、政府は相手国に手のうちを明かすことになると繰り返すばかりです。また、自民党が昨年まとめた提言の中で、反撃対象は指揮統制機能等を含むとありますが、何を反撃対象とするか、三文書には書かれていません。現状では、反撃のタイミングも反撃対象も不明なままです。これでは、国民の理解と協力を得られないばかりでなく、他国にも日本の政策変更の実態が伝わらず、安心供与につながらない残念な結果になっています。
 再び資料一を御覧ください。
 一番下に、日米の基本的な役割分担を変更するものではなくとありますが、岸田首相は今月一日の参議院予算委員会で、今後、アメリカの打撃力に完全に依存することはないと言明しました。日本が盾ばかりでなく矛も持つことになるのですから、明らかに役割分担の変更に当たります。
 存立危機事態における反撃能力について見てみます。
 これまでの政府答弁から、密接な関係にある他国に米国が含まれることは明らかです。それも、米国が攻撃された場合に限らず、米軍の損耗だけでも存立危機事態に当たる可能性があることは否定できません。
 資料一には、先制攻撃は許されないことは言うまでもないとあります。存立危機事態が認定される時点では日本は攻撃を受けていない可能性が高いのですから、日本から反撃を受けた相手国にとっては先制攻撃されたことになります。三文書には先制攻撃はしないとあるので、明らかに矛盾します。
 専守防衛の堅持、先制攻撃はしないと何度言明されても説得力を持ち得ないのは、三文書の中身と国会における政府答弁がその言葉どおりに受け止められないからだと考えられます。
 日本が反撃した場合に受ける影響について考えてみます。
 例えば、台湾有事が発生して在日米軍が出撃すれば、その基地が攻撃されて、日本有事に発展します。米軍が損耗を受けて存立危機事態が認定された場合であっても、日本が受ける影響は同じであると言えます。
 中国に近い南西諸島の沖縄県には百四十六万人の県民がいます。全て離島にいるので、住民避難は極めて困難です。国民の生命、財産を守るには、戦争を回避する必要があります。三文書にはその処方箋として防衛力強化を提示していますが、防衛力強化による抑止は破られることがあるからこそ、三文書は対処力の強化、つまり防衛力の使用についても触れています。その一方で、外交による戦争回避への言及が驚くほど少なく、不安を感じないわけにはいきません。
 次に、資料四を御覧ください。これは、米政府から装備品を購入する際の対外有償軍事援助、つまりFMSによる契約額の推移です。
 二〇二三年度防衛予算案では一兆四千七百六十八億円となっており、過去最も多かった二〇一九年度の七千十三億円の実に二倍以上となっています。トマホークなどのまとめ買いが契約額を押し上げる要因です。FMS契約に無駄はないのでしょうか。
 今月一日の参議院予算委員会でも取り上げられましたが、滞空型無人偵察機グローバルホークには問題が多い。自衛隊装備品の購入は、陸海空いずれかの幕僚監部から要求が上がり予算化されますが、このグローバルホークは背広組の内局が予算要求しています。つまり、政治と接点を持つ内局が要求した政治案件であると推測することができます。しかも、届いた機体は米軍が廃棄を決めた旧式のブロック30である上、陸上監視が得意な機体を周囲が海ばかりの日本でどのように活用するのか大いに疑問と言うほかありません。
 海上自衛隊は、二〇二三年度から青森県の八戸基地で洋上監視用の無人偵察機シーガーディアンの試験運用を開始をします。八戸基地では、先行してシーガーディアンの運用を始めた海上保安庁と連携するので、コスト面、運用面の効果が期待されます。費用対効果を考えたときに、グローバルホークとシーガーディアンの二機種を併せ持つのではなく、一機種に絞るという政策決定がないことは残念と言うほかありません。
 イージス・アショアの代替策として建造することにしたイージスシステム搭載艦も問題が多いと考えられます。地上に置くべき大型レーダーを載せることから、艦艇自体が大型化し、全長二百十メートル、全幅四十メートルと報道されました。最新のイージス護衛艦「まや」型の全幅二十一メートルと比べて二倍近く幅が広く、鈍重な艦艇となるおそれが出てきたことから、小型化へ向けた見直しが始まりました。
 振り返れば、イージス・アショアの導入が閣議で決まるまでに、当時の安倍首相が就任したばかりのトランプ大統領と首脳会談を行い、その際、米国製兵器の追加購入を求められてから僅か十か月、配備中止からイージスシステム搭載艦の建造を決めるまでたった半年でした。
 先日、書籍「防衛省に告ぐ」を上梓した元海上自衛艦隊司令官香田洋二元海将は、イージス護衛艦の構想から建造まで足掛け六年を費やしたと書いています。それと比べると、いかにも拙速な印象を受けます。香田氏は、陸上から海上へ、大型艦を小型化へと二転三転するイージスシステムは、まさに政治的な迷走の象徴ですと指摘しています。
 イージスシステム搭載艦は、米海軍の最新版レーダー、SPY6を採用することなく、日本オリジナルのSPY7を発注したことで、開発経費や運用経費を米国と分担できるスケールメリットを失いました。将来のバージョンアップも、米政府の提示する言い値を払い続けるので、多額の出費が予想されます。
 香田氏は、レーダーに伴うコスト増を数千億円単位と見込み、一体この責任は誰が取るのか、恐らく誰も取らないと指摘しています。そして、こう断言しています。今のまま防衛費を対GDP比二%に増やしても防衛力強化につながらない、政治と自衛隊の間で意思疎通できていなければ、自衛隊が有効に機能することはない。
 FMSによる米政府への支払が増えたことから、防衛省は支出年限特別措置法を国会上程し、国内産業などへの分割払期限を五年から十年へと二倍に延長してきました。国内では防衛部門から撤退する企業が目立ち始めていました。防衛費を倍増させる対GDP比二%という数字が積み上げ方式でないのは、米国製装備品の爆買い路線を維持しつつ、国内企業への支払問題を解決する魔法の数字を求めた結果であると言うことができます。予算が倍増され、余裕が出てきたせいでしょうか、綿密な将来見通しの上に立ち装備品開発を計画しているのか、大きな疑問が出てきました。
 三文書には、一二式地対艦誘導弾能力向上型、島嶼防衛用高速滑空弾、極超音速誘導弾という三種類の国産ミサイルを同時開発することが記されています。
 一二式地対艦能力向上型の開発と量産は三菱重工業が受注しました。元々、一二式は三菱重工の八八式地対艦誘導弾を改良したもので、八八式のSSM1に対してSSM1改と呼ばれています。
 二〇〇四年、同社は必要な強度試験を行わないまま試射を実施、さらに、設計の不備や評価書の誤記など多くのミスも見付かりました。SSM1改の納入が遅れたことから、防衛省は延納金を請求、さらに、二週間の競争入札指名停止処分としました。
 SSM1からSSM1改への改良は、短射程ミサイルから短射程ミサイルへの移行です。今回の能力向上型は、射程を十倍にも伸ばす新型ミサイルの開発に等しい事業に当たります。予定する二〇二六年度までに納入できるのでしょうか。
 同じ年度には、島嶼防衛用高速滑空弾の配備も始まります。一方、FMSで米政府からまとめ買いするトマホークは、やはり二〇二六年度に配備予定となっています。国産の二種類のミサイルとトマホークが同じ年度に納入となる理由は、国産ミサイル開発が遅延するのを見越してのこととされています。
 新型ロケットH3の打ち上げ失敗、国産ジェット旅客機の開発断念などを見るとき、巨額の費用を投じ、結局予定どおりにならないという事態にならないか、精査した上での同時開発なのか、疑問が残ります。
 前出の香田氏は、昨年十二月二十三日付け朝日新聞でこう述べています。今回、二%の掛け声が先行し、政治からあれもこれもやるべきだという声も強かったのではないでしょうか。それに悪乗りしている防衛省・自衛隊の姿が見えるのです。
 見てきたとおり、今回の三文書と三文書をめぐる政府答弁は、専守防衛を定めた憲法との整合性、法的、運用面での課題、費用対効果の三点において疑問があります。綿密な検討が行われた結果とは考えられません。修正を図らなければ、国民の理解と協力を得ることは困難となり、周辺国に対しても誤ったメッセージとなることから、国会における更なる議論が不可欠だと考えます。
 御清聴どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 半田滋

speaker_id: 737

日付: 2023-03-09

院: 参議院

会議名: 予算委員会公聴会