若林秀樹の発言 (政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会)

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○参考人(若林秀樹君) 御紹介いただきました若林と申します。
 今の佐藤仁先生の最後の発言にエコーする形で申し上げたいんですけれど、やはり、特にNGO業界も若い人が入ってこない。それは魅力ある職場であるかどうかという問題もありますが、一方、やっぱり処遇が悪いんですよね。昔は三十歳問題というのがあって、三十になると大体辞めていったというところが、今入ってこないんです。それだけやっぱり処遇、特に賃金の格差が大きいということは非常に将来課題になる可能性はあって、せっかく大学院まで出た人が、夢も希望も破れてほかの業界に行ってしまう、企業に行ってしまうのが今の現実ですので、そういう意味では、政府開発援助についても、政府ができない協力をやっていくというのが市民社会組織の役割だと思いますので、そういう意味で非常に危機感を感じているので、最初、冒頭申し上げておきたいなというふうに思っております。
 私自身は、二種類の資料で、横長のパワーポイントの資料を刷ったもので私の名前が書いてあるやつと、もう一つ、日本のODAに関するデータというのを御説明をさせていただきたいと思います。
 一枚目めくっていただきますと、自己紹介がそこに出ているんですが、まあちょっと変わった経歴でですね、元々、一九九三年にワシントンで、日本大使館で、ODA担当官、一等書記官として三年間勤務をいたしました。元々民間企業出身でありますけれど、労働組合、そして国会議員として、参議院議員としてこの場に立って質問をした側が二〇〇六年です。そういう意味では、二〇一七年に参考人として一回出ていますが、それ以来の登壇ということになるかなと思いますし、その後、シンクタンクで少し国際協力を研究し、そして今、このJANICという国際協力をやっているネットワークNGOで事務局長を五年ほどして、今、シンクタンクを立ち上げてこの問題にも取り組んでくるところです。
 そういう意味で、三十年ほどを振り返って、非常にいい機会だったなというふうには思うんですけれど、この間のやっぱり変化、あるいは、どういうふうに開発協力が変化しているのかということを踏まえて、ちょっと感想も含めてお話をしたいなというふうに思います。
 まさに九〇年代は日本はトップドナーでした、断トツのですね。それが今は第三位でありますけれど、まず、この日本のODAに関するデータというのを見ていただきたいなと思っています。この縦長の表です。是非、皆さん方の御理解を確認しながら進めていきますので、是非見ていただければなというふうに思っております。
 これは、四月の十六日にデータ出た、ほやほやの速報値であります。日本は、アメリカ、ドイツに次ぐ日本は第三位でありまして、百七十四億ドルですね、単位としては。一位のアメリカが五百五十二億ドル、ドイツが三百五十億ドルです。トップドナーだった最後は二〇〇〇年なんですね、日本が。それを一〇〇とすると、アメリカは五・五倍に増えています。ドイツは七倍です。日本は一・三倍です。
 どこかで見たグラフのように、この三十年間の変遷を見ると、本当に日本のODAの実績は伸びていないです。これが実態なんですが、さらに、課題は、日本のODAは円借款が極めて多いんです。
 日本の円借款は、DAC全体の六三%が日本の円借款で占めているんです。二国間贈与、無償資金協力とかそういうものと円借款含めると、五割を超えているのは日本だけなんです。本来は無償資金協力が国際協力をやるべきだという論争もあったんですが、結局、この実績で上乗せしているのは日本の円借款であると、そこも一つ大きな課題であるということもお知りおきいただければと思いますし、今民間資金があふれ出ているんですよね。むしろ、民間資金の方がODAのそれよりは多いんです。
 そういう意味で、この円借款を増やすのもいいんですけれど、もっと大事なのは、一般会計予算におけるODA予算が減っているんです。これもう二分の一ですから、二十五年前の。結果的に防衛予算が増えてODA予算が下がっているということが、この中身の中でなかなか見えにくいんですけれど、そういう実態になっているということをまず御理解をいただきたいなと思っています。
 二ページ目が、ODAの対GN比、比です。〇・七%目標というのは聞かれたと思うんですけれど、速報値で日本は〇・三九%であります。
 ここ増えているんですが、ウクライナの問題もありますし、円借款が増えていて、結果的には〇・三九で高いんですけれど、まだまだ〇・七%には程遠いというのが今の現状になりますので。G7ではドイツのみが〇・八三%で、〇・七%を超えている。これをどうやって国際目標に近づけていけるかというのも是非お考えいただいて、皆さん方のリーダーシップでこの〇・七%目標を達していただければなというふうに思っております。
 それから、更にページをめくっていただきますと、これもこれでショッキングな数字なんですけれど、NGOを通じた政府開発援助の数字が、日本、どこにあるか分かりますか。右から二番目の一・三%ですよ。単純平均で二〇%ぐらいなんですけれど、ODAをNGOを通じてやるというのが結構、国際的にはスタンダードになっているんですが、日本は極めて低いんですよね。これについては後でちょっともう一回触れたいなと思っています。
 それから、その下の政府全体のODA予算が、一九九七年が一兆一千六百八十七億あったものが、今年は五千七百九億で、半減です。これが結果的に二国間援助、無償資金協力の減少につながっていて、表面的には上がっている感じもしますが、実は中身は大きく変わって、無償資金協力がめちゃくちゃ減っているというのが現実だということを御理解をいただきたいなというふうに思っております。
 この横長の資料に戻りたいんですけれど、一枚めくっていただきますと、何のための開発協力大綱なのかということを二枚にまとめているところであります。
 私から見ますと、非常にまとまったいい文書であるんですが、役所の論理が詰まった、調整して整合性が取れたいい文書であるんですが、これを見た人たちが本当に夢を持ってこの業界に入ってくるでしょうか。経済安全保障、国益だ云々という、そうではなくて、何のために開発協力があるかということがこの大綱からにじみ出て、それを読んだ若者が、若い人がこの業界に入ってこないといけないんですよ。そういう意味では、非常に役所の文書としてはいいんでしょうが、私はやっぱり開発協力大綱は何のためなのかということについては少し、一回どうなのかということを考えてもいいんじゃないかなというふうに思っております。
 外務省によれば、開発協力というのは、政府だけではなく民間部門や地方自治体も含めたオールジャパンの協力なんですね。もうこれはそのとおりなんですけれど、一方、大綱を見てみますと、びっくりするんですが、中盤ですね、開発協力はいまだに開発途上地域の開発を主たる目的とする政府及び政府関係機関による国際協力活動という定義があるということは、すごいこれ矛盾しているんですよね。これ、国際協力はもう政府だけのものではないし、資金的には民間部門の方が多いわけですよ。こういう捉え方自体が全体のこの文書の整合性を欠けていることになって、後ほど、いろんなところと連携しなきゃいけないということで、企業とか民間部門とか出てくるんですけれど、定義そのものがこういうことになっているというのがこのスタート段階であるんじゃないかなというふうに思いますので。
 やはりこの三十年間、東西冷戦が終わり、九〇年ですかね、で、九二年に最初の大綱が出ているんですが、そのときは東西格差があったんです、南北格差があったんです。そういう格差の中、日本はトップドナーで頑張って開発援助をずうっとやってきたんですが、もうグローバルサウスと呼ばれる途上国の所得がどんどん上がってきています。最貧国が数が減っています。ほぼアフリカの一部の国で、日本も停滞していますが、その格差は減っているんですよね。
 ですから、全体的なこの文書は、やはり援助、援助国、援助してあげる立場の国の文書であるという感覚がここから抜け出ていない。一方、被援助国、あなたは援助される国ですよというのがこれ全面的に出ているというのは私の感覚で、これ読むと、三十年間を振り返ってそう思うわけで、もはやそういう意味では時代遅れの文書ではないかなというのが私のちょっと全体的な印象であります。
 とはいえ、日本は開発協力に関するやっぱり資金力もありますし、技術、ノウハウも含めてあるんですよ。だから、そういう意味では、一緒につくり上げていく、共創、共生、そういう分野で現地主導の、現地が中心の開発に一緒になって協力していくというのは本来はこのトレンドに合わせて出てこなきゃいけないんですけれど、そういう方には残念ながらなっていないんですね。相変わらずやっぱり国益中心、経済安全、あっ、経済安全保障はないんですけれど、安全保障が重要だとか国の戦略の一環だとか云々、そういう何か自分たちの主張だけを、これが出ているのがこの文書じゃないかなというふうに思っています。
 四ページ目を開けていただきますと、さらに二番目なんですけれど、開発途上地域の人々の暮らしの向上が大綱の全体を流れる哲学であるんですが、現地の人の顔も見えない、あくまで日本の貢献なんだと。現地主導の開発とかそういうことがなくて、日本の安全保障上の危機、我が国の国益の実現に貢献、開発協力の戦略的な活用が前面に出ているという意味では、人々の暮らしの向上、人間の安全保障を第一義的な目的とするべきなんですけれど、残念ながらこれは、この立て方はそうじゃなくて、本来やっぱり国益というのは中長期的に日本の国益の増進が達成されるんであって、短期的な外交目的とか国益の達成のための手段として開発協力を扱うというのはやはり慎むべきではないかと。日本の顔としてのこの国際協力をやる以上、それが今、全面的に国益のためにやっているんだというのがもうあからさまに出ているというこの文書が途上国の人にどう映るでしょうか。是非そんなところもお考えいただければなというふうに思っております。
 そしてまた、何のために改定するのかという五番目であります。
 ですから、人間の安全保障、人々の暮らしの向上であれば、この改定に基づく日本の援助が途上国の開発途上地域の人々にどう貢献しているのか、被援助国の政府の声がどうなのかという、何が現状の大綱では問題なのかというギャップ分析がないんですよ。本来はそこからスタートするべきですよね、この問題、何かあるのかなと。あれば当然改定ということになるんですが、完全に、国際情勢の安全保障上の危機が来ている、国益をもっと出さなきゃいけないということを前提にこの文書がなっているという意味においては、立て方自体に、私は何のための改定なのかということを非常に感じるわけでありますので。
 中西先生は座長で苦労されたと思うんですけど、僅か四回、数時間で大綱のその報告書をまとめられて提出し、それが今の大綱になっているんですが、本当に御苦労されたんじゃないかなというふうには思いますけれど、そういう総合的な国際協力の長年の歴史の上にこの改定がどういう意味があるのかということのギャップ分析がないまでに慌ててまとめて、四回やって出した、それが今回のこの大綱につながっているということでありますので、そういう意味では、開発の大綱ありきというところがあるかなというふうに思っております。
 この私が用意した資料を全部説明するのは時間がないので、後ほどの質疑の中でお答えしたいなというふうに思っております。
 全体の印象なんですが、これ、今回の大綱のまとめ方は、当初の案よりすごいマイルドになっています。客観的な分析も非常にいろんな意見を取り入れているんですね。これ、市民社会の声も非常に取り入れられています。
 そういう意味では評価できるところはあるんですが、元々の文書の起点が、国家安全保障戦略の防衛三文書の中に出ているんです。そこにODAが、国際協力を戦略的に活用し、ODAとは別に、同志国の安全保障上の能力、抑止力向上のための新たな協力の枠組みを設ける、これが後の、今話題になっているOSA、政府安全保障能力強化支援につながっているという、起点がもうそこで閣議決定されているわけですから、なかなかやっぱり変えようがないんですよね。
 ですから、これまで意見交換会ずっとやっていますけれど、これでいいという参加者の声ないんですが、全く変わらないし、恐らく変わる可能性は少ないんじゃないかなというところにおいて、そういう位置付けの文書になっていることを御理解をいただければなというふうに思いますが、そうはいっても皆さん方が声を上げていただければ変わり得る要素はありますので、後で、後ほど後悔しないように、しっかりこの文書を見て変えていただくということは必要じゃないかなと思っております。
 市民社会の連携もすごい後退しています。
 市民社会と連携してほしいというのは、もちろん我々の気持ちはありますけれど、何のために開発協力があるのか。それは、人々の、市民の生活向上、人間の安全保障なんですね。そういう意味ではその人たちのやっぱり連携とか声とかそういうものを大事にしなきゃいけないんですが、残念ながら非常に書き方が薄いし、僅かであるというところは、そこ見えるんじゃないかなと思っています。
 後ほど、八ページ目を開けていただきたいんです。これショッキングなんですけれど、NGOを通じた日本のODAは極めて低いんです。一・三%です。これ、単純平均して一九・四%、二〇%あるんですが、日本は僅か一・三%なんですね。
 何でこうなっているか。世界では、NGOが関わることによって効果的な意味のある開発協力になっているということが前提ですので、みんな安定しているわけです。そういう意味では、草の根レベルで政府では届けにくいきめ細かなニーズを拾って、専門性を生かし、現地コミュニティー、人づくりに貢献できるのがNGOを通じたやっぱり支援でありますので、是非この辺も今後増やしていただきたいなというふうに思っております。
 それ以外にも、人間の安全保障等ありますけれど、非軍事原則についてちょっとやっぱり触れなきゃいけないので。
 十ページ目ですね。一昨日のニュースでありましたように、ミャンマーに供与した船舶が兵器や船員の輸送に使われていたというのが分かって、外務省は抗議をしたと、先方にですね。こういうのは元々分かっていたことなんですよ。そういう一回渡したものがどう使われるかということをモニターするのは特に難しい。それも、やっぱり開発協力の中でのその非軍事原則の原則のぎりぎりのところで。それがあった上で、さらにOSAという新しいやり方も線を引くのは無理なんですね。受け手にとっては、ODAだろうとOSAだろうと、もらったものはどう使おうと関係ないというのが通常のやはり開発協力でありますので。
 そういう意味で、そういうものが、戦後つくり上げてきた我が国の中立性や国際協調主義が後退し、平和主義理念に基づいてきたODAの財産を失いかねないというところにありますので、是非、最後のまとめも行かないでもう終われということでありますので、後ほどの質疑の中でまたポイントについてお答えしたいと思います。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 若林秀樹

speaker_id: 15788

日付: 2023-04-28

院: 参議院

会議名: 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会