2023-04-28
参議院
焼家直絵
政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会
焼家直絵の発言 (政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会)
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○参考人(焼家直絵君) WFP日本事務所代表の焼家です。
この度は、本委員会にお招きいただき、誠にありがとうございます。
本日は、世界の飢餓の現状やWFPの活動についても簡単に御紹介することで、国際機関から見た国際開発協力の現状と課題についてお話しし、開発協力大綱の在り方についての議論に貢献できますと幸いです。
まず、お手元の水色の表紙の資料の二ページ目を御覧ください。
現在、世界はかつてない規模の食料危機に直面しています。今年、世界では三億四千五百万人以上が深刻な飢餓に直面し、緊急の人道支援を必要としています。
なぜ飢餓がかつてないほど増えているのか。それは、紛争や気候危機、新型コロナウイルス感染症の影響や価格の高騰、経済の悪化など様々な要因が重なり引き起こされています。紛争は依然として飢餓の最大の要因で、世界の飢餓に苦しむ人々の約六割は戦争や暴力の影響を受けた地域に住んでいます。ウクライナでの戦争の勃発で、食料、燃料、肥料価格が世界中で高騰しました。加えて、気候危機は世界的な飢餓の急増の要因の一つで、世界人口の四〇%以上が異常気象に対し非常に脆弱な地域に居住していると推定されています。
次に、三ページ目を御覧ください。
このような状況の中、WFPは、昨年、百二十を超える国と地域で過去最多となる一億五千八百万人以上を支援しました。飢餓の深刻化に伴い、必要な支援金額も増加しています。
WFPは、人道支援と両輪で、地域のレジリエンス強化のために、小規模農家の支援、地産地消の学校給食支援、栄養支援のほか、災害や危機に強いインフラづくりなどを通じて、持続可能な食料システムの構築に貢献しています。
国連機関を通じた支援の強みですが、WFPを始めとした国連機関には現場での強固なプレゼンス、支援対象国政府への影響力があります。首都以外の地域にも活動拠点があり、治安上の理由などから日本による二国間協力ではアクセス困難な地域においても、最も脆弱な立場にいる人々に支援を届けることができます。また、平時より支援対象国政府との良好な関係構築に努めており、いざというときは国連の影響力を発揮して迅速な支援を行うことができます。
次に、四ページ目をお願いします。
さて、冒頭に申し上げましたとおり、飢餓状況は、近年、複数の要因が複雑に重なり悪化しており、複合的危機の時代と言えるでしょう。世界の食料安全保障を推進し、また、持続可能な開発を実現するために、緊急の人道支援と同時に中長期的な平和の構築、そして地域のレジリエンスを強化する支援が必要とされています。
近年、世界各地で多発している自然災害も、気候変動の影響によって同じ場所で繰り返される傾向が強まっています。一方で、現行の国際開発協力のスキームではこういった複合的な危機に十分には対応し切れていない現状があると考えます。
例えば、二国間支援とマルチセクターでのそれぞれの分業が目立ち、国際開発協力アクター全体で大局的な目標を目指した連携が少ないのが実情です。また、人道支援機関と開発支援機関での役割のすみ分けが固定しがちであり、人道支援の予算は人道支援機関に、また気候変動などの開発支援の予算は開発支援機関にといった形での支援が顕著です。しかし、現実には一つの機関で人道も開発も、支援、開発支援もカバーしているケースも見られ、両方の分野に効果的に拠出がなされなければ包括的なSDGs達成が促進されないと考えます。
次に、五ページ目をお願いします。
では、どうしたらいいのかということですけれども、人道と開発と平和の連携を軸に分野横断的な国際協力の形がより一層必要とされています。特に国際開発協力機関の間では連携強化が求められます。若者や雇用支援、農業、水、ジェンダー、教育、またインフラ構築などといった分野は互いに密接に影響し合っており、様々なアクターが集まり、包括的に活動していく必要があります。
現在は、機関ごとに主にターゲットとするSDGsや活動するセクターが分けられている状況ですが、その既存のセクターに活動範囲を制限するのではなく、互いに得意分野を生かし合いながら、包括的な支援の形をつくっていくことが求められます。
さて、日本の支援についてなんですけれども、災害への対応など緊急時に迅速な拠出をいただいており、現場からも高い評価が上がってきています。更に国際協力分野で日本のプレゼンスを上げるためにも、他国の支援の形と比較した上で幾つか提言させていただきます。
まず一点目として、複数年にわたる事業支援です。単年ごとの緊急支援だけではなく、中長期的なレジリエンスの強化などの支援の実施のためには複数年にわたる安定した資金の下で事業運営をしていくことが必要不可欠です。
また、紛争による難民の発生や気候変動など、国ごとでの支援ではカバーし切れない課題が多く、国境をまたぐ地域的な支援がより効果的なケースが多くなっています。ですので、地域的なアプローチで支援を行うことが容易になるよう期待しています。その際には、AU、例えばアフリカ連合などの地域規模機構や連合との連携促進も効果的だと考えます。
最後に、テーマ別の事業募集と選定による拠出の形が新たに組まれていくことを期待します。例えば、気候変動対策、学校給食とか、一つのテーマの下で事業を募集し、選ばれた事業に日本が拠出をするという形です。このことにより、機関ごとの人道や開発といった垣根を取り払い、真に大局的な目標達成を目指した支援を実現することができます。また、国際機関やNGO、民間企業やアカデミアなどのパートナーシップを促進し、そのテーマに対して日本ならではのイニシアチブを打ち出しながら支援していくことができるのではないでしょうか。
次に、六ページ目をお願いします。
このように、複合的危機に対して分野横断的な解決策が求められている昨今、今回の日本の開発協力大綱改定において、ODAの更なる活用を図る上で、特に、オファー型支援の推進、官民連携の強化と民間資金の動員、ノンイヤマーク拠出や現金給付支援などの検討、GNI比〇・七%目標達成に向けたODA予算の増加に注目しています。
まず、オファー型支援について、要請主義の原則に加えて、日本から積極的に提案を行うオファー型の支援も盛り込まれたことで、日本の得意分野で日本の外交目的に沿った支援を効果的に打ち出していくことができ、ODAの大きな転換点になるのではないのかと期待しております。日本政府が支援メニューを提案するに当たっては、WFPを始めとする国連機関も時機に応じた情報共有や政策協議をさせていただくことで、現代的な諸問題への対処に向けて共に協働していけるものと確信しております。
このような連携を進める上でも、国際機関における邦人職員、とりわけ幹部職員を増強することが重要となります。ただ、まだまだ国際機関における幹部職員は少ないので、政府による働きかけが必要と考えます。
次に、官民連携や民間資金について、気候変動を始めとした現代的な課題に対処していくには、従来の伝統的な開発協力にとどまらず、様々な手法を活用していくことが求められます。とりわけ民間企業が有する専門的知見や最新の技術を活用することで、デジタルトランスフォーメーションやグリーントランスフォーメーション、すなわち脱炭素社会の実現に向けた取組を通じた経済社会システムの変革を推進していくことができます。
このような幅広い開発課題の解決には、民間資金の活用がより一層重要性を増しており、民間企業が開発協力における大きなアクターとして認識されることを期待しています。
続いて、ノンイヤマーク拠出や現金給付などについて、国際開発協力機関では、近年、使途を限定しないノンイヤマーク拠出や緊急支援における現金給付が国際的な潮流となりつつあります。ヨーロッパの主要ドナー国の中には、ノンイヤマーク拠出が大半だというところもあります。アカウンタビリティーを確保しなければならないのはもちろんでありますものの、日本においても迅速で柔軟な拠出の在り方が議論され、積極的に取り組まれていくことを期待しています。
そのような拠出方法の議論に加えて、ODAとしての拠出額そのものについても開発協力大綱改定に際して議論が進むことを期待しています。ODAの対国民所得、GNI比は二〇二一年実績で〇・三四%にとどまり、GNI比〇・七%とする国際目標には程遠いのが現実です。
外交のツールとしてODAを活用していくことで、国際社会における日本のプレゼンスを維持強化でき、リーダーシップを取ることができます。開発協力大綱改定の機に、ODA予算増加につながるような具体的な目標設定がなされるか注目しております。
また、開発協力大綱改定において、食料安全保障が経済安全保障の枠組みで重要視されていることを歓迎します。食料安全保障は全てのSDGs達成につながるものであり、グローバルな食料安全保障を推進することは日本の経済安全保障にもつながります。WFPとしても、引き続き、人道支援とレジリエンス強化の両輪で世界の食料安全保障に貢献してまいります。
現代の複合化する危機に対応できるよう開発協力大綱を時代に沿ったものに改定することで、日本の外交政策や地球規模課題に対する日本の政策を明確化し、日本が確固たるコミットメントを世界に対して積極的に示していくことを期待します。
国際機関の立場からも、ODAの戦略性の一層の強化に着目し、日本らしい地球規模課題への取組を通じた国際的な指導力の強化が重要だと考えます。より一層、人道、開発、平和の連携を促進する国際開発協力の形、また、気候変動など複雑な課題に対する分野横断的な解決を模索していくスキームの立ち上げを期待いたします。
御清聴ありがとうございました。