石井夏生利の発言 (地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会)

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○参考人(石井夏生利君) 中央大学国際情報学部の石井と申します。着席のまま失礼いたします。
 本日は、マイナンバー法等の一部改正案について意見を述べる機会を与えていただきましたことを大変光栄に感じております。
 私からは、今回の改正法案について五点の意見を申し上げたいと思います。
 まず第一は、マイナンバー法の利用範囲の拡大と情報連携に係る規定の見直しについてです。
 マイナンバー法が二〇一三年五月に成立してから約十年が経過いたしました。その間、様々な社会の変化が生じております。ビッグデータ、クラウドコンピューティング、SNS、IoT、ここ最近ではメタバース、ウェブ3、生成AIなどが次々と登場し、情報分野の技術発展、新たなサービス展開が多様化するとともに、スピードもますます加速している状況にあります。こうした状況変化によって公的分野においてもDXが求められるようになりましたが、いまだ道半ばの状況にあると認識しております。
 私自身も、大学以外からの御依頼をお引き受けする際に、承諾書ですとか報酬に関わる書類を郵送でやり取りすることが多く、件数がかさむと負担を感じることもあります。公的部門のDXを進める上では、国民に悉皆的に番号を付与し、行政機関の保有する情報を効果的にやり取りする仕組みであるマイナンバー制度を円滑に運用する重要性は極めて高いと考えております。
 マイナンバー法の理念規定の中にも、一、個人番号及び法人番号の利用について、社会保障、税及び災害対策以外の行政分野における利用を促進するとともに、行政分野以外の国民の利便性の向上に資する分野における利用の可能性を考慮すること、二、行政事務以外の事務処理において個人番号カードの活用が図られること、三、社会保障制度、税制、災害対策以外の行政分野における情報提供ネットワークシステムの利用を促進すること、特定個人情報以外の情報の授受に情報提供ネットワークシステムの用途を拡大することなどがうたわれておりまして、マイナンバー法の基本理念の中に個人番号、特定個人情報、情報提供ネットワークシステムそれぞれについての用途の拡大が盛り込まれているところであります。
 今回の改正は、それらの中でも、個人番号の利用範囲を拡大し、情報連携に係る規定を見直すものであって、法が本来目指す理念を実現する方向の改正であると考えております。
 第二は、今回の見直しの範囲についての意見です。
 改正法案は、事務の範囲については三分野以外の行政事務を対象とすること、個人番号の利用範囲については法定の事務に準じる事務とすること、情報連携の範囲は個人番号の利用が法律上認められているものに限るとされており、過度な拡大を意図したものではないという理解でおります。改正法の定め方においても、拡大される行政事務は国家資格等一部の事務、準ずる事務は事務の性質が法定のものと同じものに限るということで、拡大の範囲にも配慮がなされているものと考えます。
 特に、情報連携については、別表二に基づいて情報提供ネットワークシステムを介して新たに情報連携を行おうとすると、法令改正のために一年単位の期間が掛かり、スムーズな情報のやり取りの支障となってしまう面があります。今回の改正はそうした問題を解消するためのものと理解しております。
 ただし、この点に関しまして、留意すべき事項を述べさせていただきます。
 元々別表二を設けた趣旨は、個人情報保護への配慮に基づくものでありました。また、行政機関が適法な行政活動を行うためには法律の規定にのっとる必要があります。そのため、主務省令で情報連携を行えるようにすることは、制度の柔軟性を高める一方で、個人情報保護、法律による行政の観点からは慎重な見方も必要になってまいります。ついては、主務省令を通じた情報連携を行う際には、法定の事務に基づいていることを適切に確認するプロセスが重要であろうと思料いたします。
 主務省令が改正される場合にはパブリックコメント手続に付されるわけですが、この手続自体が必ずしも国民に広く浸透しているわけではないと思いますので、どのような手続において情報連携がなされているかは、別途、デジタル庁のウェブサイトなどを通じて周知を図っていくことが望ましいと考えます。
 また、一般法である個人情報保護法においても、行政機関等が個人情報を保有するに際しては、法令の定める所掌事務又は業務を遂行するために必要な場合に限るということをうたっておりますので、一般法の基本的な考え方を逸脱しないという観点も重要であると考えます。
 そして、国民は、自己の情報のやり取りを確認する手段として、情報連携の記録をマイナポータル上で照会できるようになっており、利用登録者数も約六千万近くに上っていると伺っております。マイナポータルは、国民が自己の情報の取扱状況を確認する重要なツールであって、用途も拡大しておりますが、国民がマイナポータルを積極的に使えるような環境整備も求められると思われます。
 第三は、プライバシー、個人情報保護との調整についての意見になります。
 マイナンバー制度は、国が全国民に唯一無二の番号を悉皆的に割り当てて個人情報を取り扱う制度ですので、個人情報保護の要請に対しては一定の譲歩を求めるという性質を持ちます。この点は、制度創設時の検討において論点が整理されておりまして、一、番号をキーに個人の様々な個人情報が名寄せ、突合されて一元管理されるのではないかという国家管理への懸念、二、番号を用いた個人情報の追跡、名寄せ、突合による外部漏えいや、本人が意図しない形の個人像が構築されたり、特定の個人が選別されて差別的に取り扱われたりすることへの懸念、三、番号や個人情報の不正利用等により財産的被害を負うのではないかという懸念を想定いたしました。
 マイナンバー制度は、これらの懸念に対処するために、システム上は個人情報を機関ごとに分散管理し、制度上の手当てとしては手厚い個人情報保護措置を講じております。具体的には、独立監視機関である個人情報保護委員会の設置、個人番号の利用範囲の法定、特定個人情報の収集の制限、個人番号の取得時の本人確認、特定個人情報を提供する際のポジティブリスト方式、特定個人情報保護評価に加えて委託や再委託への制限、個人情報保護法よりも重い法定刑などが制度上手当てされております。
 令和三年の最高裁判決においても、こうした様々な保護措置を踏まえ、行政機関等がマイナンバー法に基づき特定個人情報を利用、提供等する行為は憲法第十三条を侵害するものではないと判断されております。
 今回の改正においても個人情報保護制度に変更は生じませんが、個人番号の利用範囲や情報連携の範囲が拡大した後も、独立監視機関である個人情報保護委員会を中心に、マイナンバー法における個人情報保護措置が適切に担保されるように十分な監督を行っていただきたいと考えております。
 なお、個人情報の利活用については、もっと広く民間を含めて利活用すべきだという議論もあろうかと思われます。確かに、行政分野以外に個人情報を使うことは可能性としてマイナンバー法の理念にもうたわれておりますので、そのような議論もあり得るかとは思います。他方、マイナンバー制度の主眼は、行政手続における本人確認をスムーズに行い、国民の利便性を高めることにありますし、個人情報保護の観点からも、識別強度の高い個人番号の利用を民間に広げるというような議論は、その適法性の担保や個人情報保護委員会の監督が十分に及ぶかという点に懸念が生じます。
 マイナンバー制度を社会のインフラとして機能させるためには、まずは、マイナンバー法の目的を達成するに適した行政分野での利活用を一層進めるということが求められるべきと考えます。そのため、利用範囲の拡大に際しては、行政分野での個人番号の利用が円滑に行われるということを軸に据えた上で、民間での利用可能性があるにしても、あくまで法の目的を実現するに資する範囲に絞るべきというように考えております。
 第四は、マイナンバーカードについての意見になります。
 マイナンバーカードに関しましては、なぜ持つ必要があるのか、持つことでどのようなメリットがあるのかといったことを取材などを通じてよく質問されてきました。
 元々マイナンバー制度設計時には、マイナンバーカードを国民が保有せずとも制度を運用できるようにしておりましたので、カードの申請状況や交付率自体は、主に国民のマイナンバー制度に対する受容性を測る指標であると捉えておりました。マイナンバーカードの交付開始後も、国民からの関心はなかなか得られず、あるいは個人情報保護への懸念があったということを承知しておりますが、ここ最近になって申請率や交付率が急激に伸びたのは、マイナポイントなどの政府の施策が徐々に効果を生じてきたことによるものと思われます。
 交付率を高めることによってマイナンバーカードを国民のデジタルIDとして使うことが可能になってくるわけですが、それに向けた大きな取組が、保険証の廃止とマイナンバーカードによるオンライン資格確認であると考えます。
 これは、マイナンバーそのものを使うのではなく、カードの本人確認機能を使ってオンラインの資格確認を行うための措置でして、この仕組みが普及すると、マイナンバーカードのデジタル身分証としての利便性は高まると思いますし、医療機関側の事務負担や検査費用の軽減等にも資することになります。また、顔写真のない健康保険証と比べて、身分証明の際の成り済ましのリスクも格段に減ることが期待されると思います。
 他方、一般国民にしてみると、マイナンバーが券面に記載されたカードは気軽に使いにくい面があろうと思います。カードを使ってマイナンバーが漏れると大変なことになるのではないか、オンラインで身分を証明する手続がマイナンバーを使っているのかそうでないのか分からない、保険証で用が済むうちはマイナンバーカードを使う気にならないといった理由から、保有はするものの使うことには積極的になれない方もいらっしゃるでしょうし、最近発生しました住民票などの誤交付についても、マイナンバーカードを使った手続ですので、国民に心配を与える原因になってしまったと思われます。
 このようなことから、マイナンバーカードについては、マイナンバーを使った手続であるのか、本人確認機能を使った手続であるのかが国民に分かるように説明される必要があると思います。
 あわせて、ICチップに記録される個人情報に機微なものが含まれないことや、暗証番号を何度か間違えるとロックが掛かるなど、カードを紛失、盗難しても機微な情報が取られるわけでもなければ、マイナンバーから機微な情報が引き出される仕組みになっていないことなど、国民がマイナンバーの記載されたカードに触れることについて過度な心配をしなくて済むような説明は必要であろうと考えます。
 あわせて、マイナンバーカードの正しい理解や、今後広がっていくであろうメリットを説得的に国民に伝えるためには、マイナンバーカードの利用者側である個人から前向きな情報発信があるということが望ましいと考えます。政府が懸命に説明を行っても国民には伝わりにくい傾向が見られると感じておりますので、ユーザーからの前向きな評価を得ることがマイナンバー制度が真に受容される上で求められることであると考えました。
 また、今後は、マイナンバーをカードに記載しているインターフェースの妥当性についても見直しを検討すべきであろうと考えます。
 第五は、公金受取口座についてです。
 口座情報を国に把握されることについては国民の間に一定の抵抗があることは承知しております。しかし、特別定額給付金の支給時に混乱が生じましたように、マイナンバー制度がありながら、給付事務を円滑に進めるべきときにそれが円滑に進まないということは避けるべきであると考えます。今後も災害又はそれに類する事態が生じることが予想されますので、その際に迅速な給付を行えるよう、給付事務に限っては公金受取口座の登録を促進することが望ましいと考えました。
 その際に問題となるのが、個人情報の取扱いに関する同意です。法的に有効な同意を得るためには、自由意思で承諾をすることが必要になります。例えば、本人に対して、一定期間内に回答がない場合には同意したものとみなす旨の電子メールを送り、当該期間を経過した場合に、本人の同意を得たと見ることはできない旨の解釈が個人情報保護委員会から出されております。
 今回の改正法案は、公金受取口座の登録率の低い年金受給者を念頭に、既に行政機関等に提供している年金受取口座を公金受取口座に利用するためのものであって、新たな情報提供を求めるものではないこと、同意については書留郵便等で回答を求めること、登録結果を通知すること、回答を行わなかった結果、登録に至ったとしても、事後的にいつでも抹消できること、本人が郵便物の到達や内容を把握しにくい場合には同意したものとしないことなどを保障し、本人の自由意思を担保するための措置は講じられているものと考えております。
 以上五点が私の意見となります。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 石井夏生利

speaker_id: 21140

日付: 2023-05-17

院: 参議院

会議名: 地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会