家平悟の発言 (地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会)

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○参考人(家平悟君) それでは、発言させていただきます。
 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会の家平といいます。障害者、家族の立場で発言させていただきます。
 現在、国会で審議されているマイナンバー法等の一部を改正する法案は、現行の健康保険証を廃止し、任意取得のはずのマイナンバーカードを健康保険証と一体化させることで実質的な強制取得を推進するものであり、大きな問題です。
 また、このマイナ保険証の強要は、これまで長年にわたって築き上げられてきた、全ての国民が安心、安全に医療を受ける権利を保障する国民皆保険制度を崩壊させるとともに、特に、日常的に医療が必要不可欠な障害者や介護が必要な高齢者などの医療を受ける権利を奪いかねないものであるだけに、私たち障全協は、同法案に断固反対し、以下の意見を表明いたします。
 初めに、私自身の医療の必要性ですが、私の障害は、首の骨を折ったことで全身に麻痺が残ったいわゆる頸髄損傷者です。首の上部を傷つけたために、呼吸器にも障害があり、風邪や肺炎などで重症化するリスクが高いため、首からすぐにたん吸引ができるように気管切開もしています。そのため、二週間に一度は訪問診療を受けており、緊急時には二十四時間体制で医師が駆け付けてくれます。この医療体制のおかげで何度命を救われたか分かりません。私のみならず、多くの障害者は命と健康を守るために医療は欠くことのできないものですが、この重要な医療へのアクセス権が後退しようとしています。
 マイナ保険証の問題性についてですが、国民皆保険を破壊させ、障害者に不利益をもたらします。
 現行の健康保険証には保険者の発行・交付義務がありますが、この責任がなくなり、自己責任に基づく申請主義に変更されれば、多くの無保険者がつくり出されます。こうした制度変更の影響を大きく受けるのは障害者や介護が必要な高齢者であり、特に、最も多くの社会的困難を抱える自己決定や意思表示が難しい人たちが不利益を被り、知らないうちに無保険者になるリスクが極めて高くなります。医療を最も必要とする人たちが医療を受けられなくなることは絶対にあってはなりません。
 では、なぜこうした指摘をせざるを得ないかといえば、マイナンバー法の一部改正法案は、マイナンバーカードの申請、取得、管理、利用に最も困難を抱える人たちを置き去りにしておきながら、まことしやかなメリットだけを強調して取得を推し進めるからです。
 政府は、同法案の説明で、マイナンバーカードによるオンライン資格確認を受けることができない状況にある方は資格確認書を発行するとし、そうした状況にある人の具体例として、介護が必要な高齢者や子供など、ここに障害者が含まれると思われるんですが、そういう人を挙げています。
 しかし、そもそもマイナ保険証を作ることが難しい人や資格確認書を発行せざるを得ない人たちがいることを前提にすること自体が大きな問題です。現行の健康保険証廃止によって、任意取得としながらマイナ保険証を取らざるを得ない状況に追い込みながら、一方では、医療を最も必要とする人たちの医療受給権に支障が出る事態があることを、任意取得を言い訳にして放置しているとしか思えません。
 日本には、全ての国民を公的医療保険で保障するという世界に誇る国民皆保険制度があるにもかかわらず、今回の改正法は国民に医療を受ける権利の不平等を持ち込むことにほかなりません。
 加えて、政府は資格確認書の発行で対応することを強調しますが、資格確認書は一年更新であり、自分で申請しなければ更新されない点においても現行の健康保険証の利便性とは全く違うものです。マイナンバーカードは情報漏えいの問題などがあるため任意取得を確保する必要がありますが、取得しても取得しなくても同じ条件で医療が受けられなければ、受けられることを大前提とするべきです。
 では、マイナ保険証の申請、利用についての障害者の困難な実態を報告します。
 今回の法案の最大の問題は健康保険証の廃止を決めていることですが、特に障害者の場合、マイナンバーカードの申請、取得、管理、利用のそれぞれに大きな問題を抱えています。そのことを放置し、しっかりとした対応や具体的な支援が示されないまま、医療を受ける権利の根幹を変えてしまおうとするのです。
 この間、私たちの団体に寄せられてきたマイナンバーカードやマイナ保険証の申請や利用における問題事例の幾つかを報告します。
 申請時、申請却下の事例です。
 顔写真の背後に車椅子のヘッドレスト、まあ僕が後ろに付けているようなものですが、こういうものが写っているから却下されたというような事例があります。幾ら行政の窓口で説明しても、それがないと駄目だと、それを取らないと駄目だということを言われたということです。障害者の中には、首を固定するためのこういうヘッドレストが必ず必要で、そんなことは取れないと言うにもかかわらず、そういう意見も聞かないという実態もあります。
 次に、全盲で、病気のため黒目がないというような人についても、黒目がないから写真を撮り直せというような指導が幾つもあったというようなことも聞いています。障害者の証明写真については、横を向いているだとか視点が合っていないだとか、そういう数々のことでトラブルが起こっているというのも現状です。
 意思表示ができないというようなことなどを言ってしまうと、交付がされないというような事例もあります。
 そして、事業者の方からでは、申請の補助や代理について、意思決定が難しい人の暗証番号などをどう取り扱うべきかの国としての方針もないまま福祉現場任せにすること自体が大きな問題、また、個人情報などの重要なプライバシー情報を管理する責任の重さを担保する制度的保障も全くないのが実態で、にもかかわらず代理申請をさせるのかというような強い意見もあります。
 これらの問題について、私たち障全協が四月に行った厚労省との医療交渉の中でも、意思表示ができない人には成年後見制度を付けないとマイナンバーカードが交付できないのではないかというような質問に対して、資格確認書などの職権交付などできめ細かく漏れないように対応するというような回答でしたが、どのような対策が取れていくのかということがやはり曖昧なまま健康保険証の廃止だけが先行しているということは本当に許されるような問題なんでしょうかということです。
 次に、利用時、マイナ保険証を取得した人が利用時に、医療を受診するときの問題です。
 先ほど、保団連の方から言われることも本当にありますし、行った障害当事者の人からは、通院時の顔認証にエラーがなると。不随意運動があったりとか一定のところに顔を置けない人なんかについては、そんなこと、カメラの認証が、動かないだとか、暗証番号入力は難しいというような実態だとか、まあそれができないならば言葉で伝えてやってもらうということになるんですが、そんなことも、個人番号の情報を伝えることの怖さというのもあるというのが当事者の方からも挙がっています。
 次に、じゃ、そういうことを代行して、代行というか、付添いをしたり代行したりする施設や介護者からの意見もあります。
 施設が行う支援として通院がありますが、マイナンバーカードを預からなければならないが、施設がマイナンバーカードを預かるのは大きな問題だと。暗証番号も教えてもらわないと保険証として使えない場合があるのですが、そこまで個人情報を扱えないと。障害者本人や家族も抵抗感があるし、今後、通院支援ができなくなるかもしれないというようなことも挙げられています。
 居宅介護サービスについても通院支援というのがありますが、特に居宅の通院支援については、病院の送り迎えが基本ということで、障害者の場合、通院の介助も中の院内の介助もしたり実態に合わせてしているんですが、基本は看護師にお願いするというような状況になるにもかかわらず、その都度、そうした重要な情報を他人に任せてやらざるを得ないというようなことについては、障害者側にも介助する側にも、双方に重い責任が課せられるというような問題が生じます。こうした問題があるがゆえに、個人情報を集約させたマイナ保険証ではなく、保険証の機能だけにとどめている現行の健康保険証が存続することが一番の解決策だということです。
 あわせて、福祉現場では、非常勤職員が多く、きちんとした身分保障がないようなパートやアルバイトで支えられているというのが実態があります。特にグループホームなどは、全く福祉現場で働いたことのない人が、今日採用されてその晩から働くというようなこともあります。このような脆弱な支援体制しか確立されていない障害者福祉や介護現場において、マイナンバーカード等の重要な個人情報を取り扱う責任を課してよいのか、そういうような根本的な問題があるという、こうした実態に対して政府はどのように対応しようと思っているのか、見解を明らかにしてほしいと思います。
 さらに、こういう懸念も挙がっています。政府が福祉現場にこれまで以上の個人情報の管理や利用を担わせようとする中で、こうした高度な管理について別途費用を徴収して行うようなことになるのではないかというような不安も挙がっています。
 現在の福祉サービスは、事業者と利用者の直接契約となっており、営利目的の企業参入も増えている中で、人材不足や人手不足が常態化している福祉現場において、実費負担を行うことによって対応せざるを得ない状況にも追い込まれることが考えられます。今までどおり医療を受けるために、必要な申請手続に行く費用、例えば移動支援のヘルパーの同行などの費用を始め、マイナ保険証や資格確認書をもらうための別途支援の費用が必要ということになれば、大きな制度的後退です。政府はこうしたことについても想定して対応しておられるのか、疑問に思うところです。
 一方、個人情報の取扱いについては、情報漏えいの不安も広がっている中で、特に難病や内部疾患、精神障害者などからは、見られたくない個人情報が医療を受けるときにいつも見られてしまうことへの懸念や不安の声が多く寄せられています。また、医療情報等の民間事業者に共有されることへの不安、悪用、給付抑制とか医療費の削減などに利用されるのではないかという声も多く聞かれます。
 このように、障害者にとっては、健康保険証の廃止、マイナ保険証の利用についての問題が山積しているにもかかわらず、政府は、来年秋の廃止だけを決定するような事項として、障害者や介護が必要な高齢者への対応策を曖昧にしたまま、同法案を強行成立させようとしています。こうした実態を無視したやり方はやめていただきたいと強く訴えます。
 あわせて、社会保障制度をゆがめているという問題です。
 マイナ保険証の導入に伴い、現行の健康保険証とマイナ保険証を利用する人では診療報酬に違いがあり、それゆえに自己負担額にも違いが生じていることです。
 現行の保険証を使う人の方が自己負担が高いというのは、無差別平等であるべき社会保障の根幹をゆがめていきます。にもかかわらず、政府は、マイナ保険証のメリットとして自己負担が安くなることを挙げています。これ自体、制度的不平等を政府が推進するという、考えられない暴挙だと言わざるを得ません。
 障害者の場合、上記に挙げたように、マイナ保険証の利用には大きなハードルがあり、利用するには、国、公的責任によるマイナンバーカードの申請、取得、管理、利用のしっかりとした支援が確立されない限り利用はできないにもかかわらず、診療報酬に格差を付けることは制度的差別に当たり、絶対に許されません。
 また、政府は、マイナンバーカードの取得を強引に推し進めるために、マイナンバーカードやマイナ保険証を申請するとポイントを付与するなど、特典を強調して利用推進、促進を図ろうとしています。そして、これに三兆円の予算をつぎ込んでいます。
 しかし、本来、国がまずやるべきことは、誰一人として無保険者をつくらないという姿勢を示すことであり、それを担保する公的責任に基づく制度的保障です。介助が必要な障害者や高齢者の支援策を構築することにこそ税金を使うべきであって、そうした検討がすっぽり抜け落ちている今回のマイナンバーの改正案には断固反対し、少なくとも現行の保険証を存続し、医療権を守っていただくように、改めて強く要請いたします。
 最後に、マイナンバー改正法案は、明らかに制度の後退であり、いつでもどこでも誰でもが医療が受けられる国民皆保険を崩壊させます。と同時に、障害者や介護を必要とする高齢者など、社会的に弱い立場に置かれている人たちをより困難な状況に追い込みます。
 こうした国による社会的弱者をつくり出す法制度の改悪は、障害者や高齢者など支援を必要とする人たちの社会的地位を大きく引き下げ、障害者を厄介者、いなくてもよい者など、人間としての生きる価値や意味までもおとしめることにつながります。政府関係者の皆さんや国会議員の皆様については、深くこのことを考えていただきたいと思います。
 かつて、障害者の尊厳や人権を踏みにじった優生保護法やらい予防法……

発言情報

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発言者: 家平悟

speaker_id: 12918

日付: 2023-05-17

院: 参議院

会議名: 地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会