香田洋二の発言 (外交・安全保障に関する調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(香田洋二君) 香田です。
今、浅田参考人、それから植田参考人から、それぞれ御専門の分野から戦争防止についてのお考えが紹介があったわけですけれども、私も、主として現場にいたといいますか、その観点でこれをどう考えるのかということについて、少し違った観点から考え方を御紹介させていただきたいと思います。
まず、今回御案内がありましたときに、戦争防止って、これ何だろうと。恐らく皆さんも同じだと思うんですけれども、もう私は冷戦時代で二十年間やっていました。あのときって本当に戦争は怖かったです。アメリカとソ連が本当にやり出したら、大げさに言いますと、地球が消滅するなということですから。あのときの戦争防止と今の戦争防止とどう違うんだろうということですね、ということなんですが。
そこで、私なりに時代を区切ってみますと、冷戦時代というのはなったんですが、米ソを中心とした恐怖の、通常戦力、戦術核、戦略核の抑止、バランスが成立していたんですね。ということは、このバランスを崩したら駄目ぞという別の力学がありまして、怖いけど最後は何とか踏みとどまろうという、恐らく共通の相場観が我にも彼にもあった。そういう意味で、何とか回避できるだろうという見方が一つあったわけですね。
今度、一九九〇年。八九年、九〇年、九一年、ベルリンの壁崩壊。アメリカに言わせると、冷戦に勝利をしたと。西側諸国、NATOも我々もある意味そうは思ったわけですけれども、そのときに当時のブッシュ父が言った言葉、ニューワールドオーダーなんですね、新たな世界秩序、これはまさにパックス・アメリカーナといいますか。で、もうロシアは九〇年を境にしてがたがたと崩れていったと。中国はようやく経済が離陸をしたところということで、基本的に世界の秩序というのがアメリカのリードでできた。すなわち、アメリカにチャレンジする国がなかった。ということは、大国間の戦争が起こりようもなかったというのが一九九〇年代の十年なんですね。で、今度、二〇〇〇年代に入りますと、まさに九・一一がそうなんですが、テロという新たな脅威が具現してきたと。
その中で、じゃ、世界各国はどうかというと、イデオロギー、かつての共産主義、民主主義、自由主義との対立ではなくて、テロとの戦いにどう組むかということで、実は、ソ連から変わったロシア、中国共に、チェチェンとか、あれですね、ウイグル自治区、イスラムということで、それぞれ国内に、厳密にテロと言うのかどうかは別にして、異端分子を持っていましたので、非常に緩い格好でテロとの戦いということで一緒になれたんですね。
そして、更にロシアと中国にとって都合のいいことは、テロとの戦いという看板を上げれば、人道問題をある程度カバーできたんです。アメリカでも文句を言えない。テロで、自分たちの国民を守るんだから、相当激しいことやっているんだけれどもそこはちょっと片目つぶってくださいという論理まで成立したわけで、やっぱりこの二〇〇〇年代の十年というのにつきますと、米、ロ、それから中のルーズな、何となく仲間意識ができまして、やはりこのときというのは大国間の戦争というのはほとんど心配する必要はなかったということですね。
それが、まさに二〇〇八年、九年に中国がGDPで日本を追い越し、ロシアも二十年、冷戦後二十年で相当核戦力、通常戦力が復活してきた。その中で、さらに、例えばNATO、十八か国から三十か国に増えた。国益の調整というのは非常に難しい。同盟国内でやや不協和音が起きてくる。
そういう中で、それぞれの国益の調整が難しい中で、特に米、中とロの国益の対立というのが非常に先鋭になってきたということで、ざくっと言いますと、二〇一〇年以降というのは、新たに大国間の対立というのが極めて現実味を帯びてきた、更にその度合いが増している。で、恐らく、今、まさに今回提示された大きな勉強項目の中で平和をどうするかという問題が出てきたんだというふうに私は考えております。
といいますと、ここの第一項目のまとめとしましては、やはり二〇一〇年ぐらいを一つのスタートラインとして、現在から見通し得る将来について言いますと、ますます、特に米中に代表される大国間の武力衝突、あるいはロシアみたいに大国が核を使って非核保有国を力で押し潰していく、自分の意図を押し付けていくという構図がこの先ますます出るおそれが大きくなってきたということが、恐らく今回の命題のもの、バックグラウンドにあるんだろうというのがまず最初の私のまとめであります。
次、二つ目ですね。といいましても、やはり無視できないのは実際に起こっている戦争です。これ、ロシアは戦争と呼んでいませんけれども、ウクライナ戦争をどう見るかと。
ここで、軍事の専門家として申し上げますと、まず一番最初に申し上げたいのは、今教訓は導き出すことは非常に危険だということです。これ何かといいますと、戦争というのは非常にいろんな要素がありますので、ウクライナとロシアの戦いにおいて適用し得る教訓というのがあるわけですね。しかし、それは日本には関係ないかもしれない。同時に、普遍的に各国に共通するような教訓というのもあるわけです。これは我々しっかりと押さえなければならない。あるいは、その中で、インド、アジア、あるいはアジア、中国を中心とするアジア地域にある程度翻訳して適用すべき教訓というのもあるわけですね。
これは、今この時点で、まあマスコミでいろいろな方が、軍事専門家あるいは研究家の方が言われていますけれども、これは非常に私は時期早尚だと思います。やはりこれは、一番現場に近いEU、NATO、それと日本、こういう国が戦争が終わって一段落してからしっかりと事実関係を確認をして今の三つの観点から教訓というのを導かないと、例えばドローン、それは普遍的な話なんですけれども、やはり、例えば圧倒的な航空戦力を持っている、あるいはレーザーなんかももう既に実用化しているアメリカが入った戦いだと、全く違った様子になるかもしれませんね。
ただ、これはドローンがいいんだということで日本の政府が飛び付いてもらっちゃ、ひょっとしたら怖いかもしれないんですよ。そういうことはしっかりと、今、専門家のチームを、まあ、そのもう下準備は、私はEU、NATO、日本でやり始めてもいいのかなと、教訓導出チームをつくるということですね。というのが一つあると思いますので、まあ、余りマスコミに振られる必要はないのかなという感じがしています。
ということで、特に過早な教訓というのにつきましては非常に危険だということで、じっくり今何が起こっているのかということを、皆様の、一番重要なのが常識のフィルターで物を見ていただくということが重要だと思います。
そして、その前提で、ただし二つだけ、まあ、言っていいのかなというのが、今から申し上げる二点ですね。
それの二つ目の二の①ですけれども、要するに、ウクライナ、一つの特徴というのは、武力侵攻をクリミア二〇一四年に続いてやるともう腹を決めた核保有国のロシアのプーチン大統領という人を外交で翻意はできなかったということです。で、プーチン大統領にとっては、もう国際法はもう関係ありません、条約も関係ありません、過去のいろんなミュンヘン合意とか、そういうものも関係ありません、やるんだと。こういう大国が出てきたときに我々はどう備えるのか。
で、もっと言えば、お隣の習近平さんも、例えばですけれども、ある意味、国際法の自分に都合のいい解釈で、南シナ海の埋立てをしたり、オバマ大統領との非武装の、南シナ海非武装化を完全にほごにしたり、香港返還のイギリスとの約束というのももう一晩でほごにしてしまったと。こういう傾向にある中国というのをどう見るのか。私は決め付けることは危険だと思いますけれども、兆候はあります。
そういう中国も含めて、外交努力は重要です、当然。外交の失敗が戦争ですから、簡単に言いますと。戦争に持っていっちゃいけないわけですから。しかし、腹を決めた一国のリーダー、それも専制国、権威国のリーダーを外交で翻意をするというのについては限界があるというのが今回の一つの教訓であろうというふうに考えます。
二つ目は、専守防衛です。
専守防衛という言葉は適切かどうか。私は、軍事の専門家としてはこれ非常に不適切な言葉と思っていますけれども、専守防衛、ここは、日本の場合もウクライナも自発的に相手の侵略国を攻撃しない、していないんですね。で、ウクライナの場合は、日本国憲法の制約ありませんので、彼らはできたんです。しかし、物理的に一つは能力がなかった。それから、西側諸国のあれだけの大きな軍事援助を受け入れる一つの暗黙の了解として、ロシアの本国を攻めたら核を使われるぞ、おそれがあるぞと、そのリスクは取りあえず最小にしようじゃないかという、これはもうまさに国家交渉も要らないぐらいのコモンセンスですよね。
ということは、ウクライナは、自分たちが一方的に撃たれながらも、自発的にロシア、まあ一部空軍基地とか攻撃はしましたけれども、あれはまあある意味でジャブでしょうけども、組織的に自国に対する侵略戦争を止めるための侵略国の攻撃というのはやっていない。
日本の場合、今までこの七十年間、専守防衛という一つのイメージは会議室のイメージであって、自衛隊は侵略地域で戦う、そこには、事に臨んでは身の危険を顧みないという自衛隊の宣誓で自衛隊は頑張っている、頑張るんだろうというのは当たり前です。で、我々国民は、ひょっとしたら通常の生活ができるんじゃないかという、何の根拠もないイメージがあったのかもしれませんね。
ところが、実際こういう事態が起きてみると、前線で戦っている兵士以上に困苦欠乏に耐えなければならないのは国民である。ということは、専守防衛というものが本当に成り立つのかどうか。専守防衛を成り立たせるということは、国民にあれだけの困苦欠乏、困難、辛苦を耐えてくださいということを国、政治がお願いするということを、覚悟が要りますよということですよね。この論議が日本でできているかどうか。戦争防止の中では、この理解なくして、私は、戦争の防止ということについて言うと、やや舌足らずになるんじゃないかというふうに思います。
ということで、外交、専守防衛、私は無力だとは言いません。しかし、機能しない場合がある。危機管理とか防衛、安全保障というのは、機能しない場合に国民をどう守るかというのが危機管理なんですよ。機能しているときは、もう皆さんは枕を高くして寝ていていただいて結構なんです。機能しないときに皆さんが本当に汗をかいて動いてもらうというのが危機管理でしょうからということですね。
じゃ、次のページで、あとはそこで、もう申し上げたんですけれども、二人の参考人の方ももう言われましたけれども、去年の十二月十六日に安全保障の三文書が出ました。これは、私は出版物も出していますし、いろんなマスコミでも申し上げていますけれども、ある意味政府に同情的であり、極めて厳しく批判しています。両方持っています。何だ、あいつ、定まらないなとお思いかもしれませんが。
まず、二%という数字は別にして、防衛費を少なくとも一%というおもしを取ったということについて言うと、これは私は極めて、まあ私、徳島県出身で三木総理大臣の同郷なんですが、三木さんが定めた一%がやっとなくなったということですよね。尊敬していますよ。しかし、それでどれだけ自衛隊が苦しんだか。
豆腐ですよね、豆腐一丁の中で、ショーウインドーから見える側は全部きちんとした四角の豆腐なんですよね、自衛隊というのは。しかし、一%という、後方とか教育訓練というのを削っているものだから、ウインドーを横から見ると、豆腐がこんなもうがたがたになって、後ろないんですよ。詐欺です。で、戦うことを求められているわけですよね。これは、私は、国民として本当に考えていただきたい、国民の皆様に。政治に考えていただきたい。二%に上げるということは、それを前から見ても、縦から見ても、横から見てもきちっとした四角の豆腐になれる機会があるんじゃないかということですよね。
と同時に、新しい装備も必要です。当然、特に中国、すごいスピードで行っていますから。しかし、日本の技術力とか防衛産業基盤とかを考えたときに、本当に全て我が国でできるんですかということです。我が国でできるのはやらにゃいかぬのですけれども、それでそこに対して政府の非常に説明が不足であると。
一つだけ申し上げますと、防衛省が防衛秘に係ることだから言えないというのは、岡田さんの質問でトマホーク何発買うんだと。これは駄目ですよ。アメリカは、最終的にこれは米国の武器を輸出ですから、最終的にアメリカの議会と、国務省は議会に了解を取ります。そのときに何発というのは出るんですよ。それなのに、今は国民に防衛上の理由で言わない。これはだましですよね。F35、百四十機買うと言っているんですよ。これは防衛上の秘密じゃないんですか。
私が言いたいことは、国民にこれだけの、二%のお金をいただく、税金をいただくのに、本当に理解をしてもらう、その覚悟と決意が私は欠けていると思います、元自衛官として。自衛隊、自衛隊員が現場で戦うというのは、最後、ウクライナと一緒です。国民が本当に支援をしてくれている、そこで戦えるんですから。いい装備だけじゃないんです。そこを政治が考えていただきたいんです。ということが、広く言いますと、我が国の平和、世界の平和に、軍事力というのを使わない方がいいんだけれども、最悪のときにどう機能させるかということですよね。
ということで、あと最後に、米中関係で台湾ということの見方なんですが、よく言われています、いろいろもうごまんと、マスコミあるいは本。つい先々週ですね、一月の第二週、CSISがシミュレーションを出しました。
ただ、この手のシミュレーションというのを気を付けにゃいけないのは、条件を変えると結論が反転することがあるということですよね。私も、部隊指揮官でテストされるんですよ。一生懸命日本を守るために海上作戦をやるときに、シミュレーションというのはここで止められるんですよね。止めて、ちょっと待てと。あんた、ここまで来たねと。じゃ、相手がここでこうしたとき、どう来ると来たときに、実は私が今までやってきたことが反転し得る。うまく、うまくここいってなかったですよねと、こういう考えがあったんじゃないですかということで、実は、最初からあなたこっちのBというプランを取っておけば日本防衛がもっと効率的にできたんだろうというようなことの比較ができるわけですね。
ということで、ああいうシミュレーションというのは、何も一つ日本を巻き込むとか、被害が幾らとか、特に被害なんかはミサイルの命中率を〇・五%変えることによって戦闘機の落ちる数は五倍になります。あるいは五分の一になります。負傷人員も大きく変わります。そういうことじゃないんですよ。
例えばなんですけれども、あれを全て信用していただく必要はないんですが、あれは何を言いたかったかというと、CSISという一民間の研究機関がアメリカの政府に対して、将来、中国と本気で構えるときは、戦争をするしないは別ですよ、抑止も含めて、日本がいないと駄目だということを言いたかったんです。なんで、ちょっとその被害が大き過ぎるとか、日本が巻き込まれるとかいう、やや近視眼的な論議になり過ぎている。これはやはり、戦争というものをどう抑止するかと、あるいはとどめるかという意味では、こういう論議に偏ると、やや不健全というか目的を見失うということがあるんじゃないかということでニュースに接していただきたいということをお願い申し上げまして、私の発言を終わります。
以上です。ありがとうございました。